異世界は黒猫と共に

小笠原慎二

文字の大きさ
15 / 194
黒猫と共に迷い込む

突っ込みたくなる絵本

しおりを挟む
依頼書を見るエリーさんが固まっている。
あれ?あの爺さん、ちゃんとサインしてくれなかったのかな?
くそ、騙されたか!
と内心焦っていると、

「ヤエコさん、どんな魔法を使ったんですか…」

その台詞、さっきも聞いた気がするよ?

「いや、私魔法は使えませんて」

「あのくそジジ…じゃなかった、あの人から最高評価頂くなんて! 何をしたんですか?!」

「え、普通に草むしりですけど」

「3人で半日かかるのを…、数時間で片付けて…、評価が5って…。確実にあの人のサインぽいし、不正はしてませんよね?」

「してませんよ。私字書けませんし」

「そうですよね…。他に書く人が…。でもあの人の名前を勝手に書くなんてことする人もいないだろうし…」

ブツブツ呟いてサインを穴が開くほど見つめているエリーさん。
うう…。クロの言う通り、早すぎたかも…。
調子に乗りすぎました。
ちらとクロを見ると、ホレ見ろみたいな顔してる。くそう。

「すいません。ちょっと上の者に確認して参りますので、少しお待ち頂けますか?」

「は、はい…」

やべ、なんか大事に。
エリーさんが席を立って、奥の方へ行ってしまった。
私は仕方ないので、椅子にでも座って待つことにする。
昼間なので、冒険者の姿もほとんどない。ちらほらいるのは、休みの人なのか、仕事にあぶれた人なのか。

膝にクロを乗せて、その背を撫でながら待っていると、なんだか眠たくなって来てしまう。
元々どこでも寝られる体質ではあるが、猫を撫でていると眠たくなってくるのは何故なのだろう?
我が家ではクロを睡眠導入剤とも呼んでいた。
寝顔見てるだけでも眠くなってくるんだもの!
コックリコックリ、小さな船を漕ぎ始めた頃、

「ヤエコさん」

名前を呼ばれた。
はっと目を開け、そっと口元を拭う。大丈夫、涎は垂らしてなかった。
エリーさんの窓口へと向かう。

「お待たせ致しました。確認が取れましたので、依頼完了の手続きを取らせて頂きます。報酬は銀貨3枚になります」

「ありがとうございます」

あ~、良かった。なんとか依頼達成できた。

「それと、今回高評価を頂いたことと、先に申し上げておりました、依頼達成件数割増しがございますので、今回の達成で、達成件数を3追加させて頂きます」

あ~、そんなんありましたね。

「ちなみに、私今依頼達成件数って何件になるんですか?」

「今回ので、合計13件です。凄いですね。まさかこんなに早くここまでできるなんて」

エリーさんも驚き。私も驚き。あと7件こなしたら、Fランクに上がります。

「そんなにやってたんだ~、私」

「ヤエコさんがまさかここまでやるとは、私の人を見る目も落ちましたね…」

あらら、エリーさんが落ち込んでしまったよ。エリーさんの目は間違ってないよと言ってあげたいけど、クロのことを話すわけにもいかないし、自力で立ち直って頂こう。

手続き終えて、報酬貰って、そういえばまだ時間的に昼頃だったと思い出す。
宿に帰っても、また下手するとウララちゃんに追い出されてしまう。

「エリーさん、なんか丁度良い仕事ってあります?」

「う~ん、今からですか? う~ん、良さそうなのはなさそうですねぇ」

依頼書をパラパラと捲って確認するエリーさん。また討伐なら、とか言い出しそう。
これから森に行っても、微妙な時間だし、仕方ない、また街でもぶらつきますか、と考えた所で、

「そうだ、ヤエコさん、単語の勉強はいかがですか?」

「え? まあ、まあまあかな?」

文字の形は何となく分かってきたけど、まだ覚えられてません。

「それでしたら、ギルドの裏手に一応小さいけど図書館がありますので、そちらへ足を運んでみてはいかがでしょう? 絵本などを見て勉強されるのもいいと思いますよ」

え?図書館?あるの?しかもギルドの裏とか。
近すぎて行ってなかったわ。

「そうですね。面白そうなので行ってみます」

行ってみることにした。
ギルドを出て、裏手に回ると、ちょっと大きめの3階建ての建物。
ギルドが2階建てなので、こちらの方がいささか立派に見える。

「クロ知ってたの?」

「一応。あの女の頭を覗いた時にの」

「教えてくれれば良かったのに…」

「単語も分からぬうちに本を読む気か?」

「それもそうですが…」

入ってすぐに受け付けがあって、暇そうに眼鏡を掛けた女性が座っていた。

「身分証を拝見させて頂きます」

そう言われ、冒険者証を出す。
ちらりと確認すると、すぐに返してきた。

「ご利用は初めてですか?」

「はい」

「では、ご説明させて頂きます。こちらは基本自由に閲覧できますが、持ち出すことは厳禁です。机なども自由に使って頂いて構いませんが、飲食は禁止しております。多少の会話は大丈夫ですが、周りの迷惑になるような大声での会話などはご遠慮下さい。何かご質問はございますか?」

普通に図書館と同じだね。

「絵本のコーナーはどの辺りにありますか?」

「左手の奥、低い棚のコーナーが絵本のコーナーになります」

「ありがとうございます」

低い棚を探して左手の奥へと入って行くと、確かに周りよりちょっと低めの棚が3つ程。
子供を想定して低くしてあるのか、はたまた冊数が少ない為なのか…。
クロには肩に乗って貰い、試しに一冊手に取ってみる。
ん?なんか見たことあるような絵なんだが…。

赤い頭巾を被った女の子と、狼のような絵が描かれている。
え~と…、題名は読めないけど、これ、赤ずきんだよね?

ぱらりと中を捲ってみると、お母さんから荷物を手渡されている女の子の絵。
森の中で狼と赤ずきんが出会っている絵。
森の中で花を摘んでいる赤ずきんの絵。
おばあさんの家の前に立っている狼の絵。
おばあさんを食べてしまった狼の絵。
おばあさんの振りをしてベッドに入っている狼、知らずに訪ねてくる赤ずきんの絵。
赤ずきんが狼に飲み込まれる絵。
眠る狼、それを発見する猟師…、ん?これ猟師というより冒険者?
死んでいると見られる狼のお腹の中から、赤ずきんとおばあさんが出てくる。その側には冒険者…。
無事に家に辿り着いた赤ずきんの絵。

うん。この世界用にちょっと作り替えられてますね。

桃太郎っぽいものもあった。
連れているのは犬猿雉ではなく、従魔らしき変な動物。きびだんごじゃなくてなんか契約交わしてるっぽい。
行くのも鬼ヶ島じゃなくて山の中の洞窟。そこにいたのは鬼みたいなやつ。オーガってやつかな?
無事に倒して凱旋。うわお。

シンデレラっぽいものもあった。
そこそこ身分の良さそうな家に継母と義姉妹がやってきて、労働させられて、お城の舞踏会かと思ったら、城では無くどうやら領主の館っぽい。しかも嫁を決めるための試験みたいな物やらされてる。
自分を守ってくれていた精霊っぽいものに助けられながら、数々の難問をクリアし、その功績を認められ、嫁に選ばれる…。努力家だわ。

って、おおおい!先人!何面白い物作ってんだよ!
なんすか?!パロディの世界っすか?!
いろいろ突っ込みたくなる所を必死に我慢する。
図書館では騒いではいけません。

「微妙に分かりそうで分からぬ話だの」

「内容がっすか? 言葉がっすか?」

「言葉であろうが」

色々絵本を引っ張り出し、なんとなく内容を見て文章を想像して、クロと色々な絵本を突っ込みたくなるのを我慢しつつ目を通した。
そして思ったこと。
これ書いた人、印税とか貰ってたのかしら?

しおりを挟む
感想 11

あなたにおすすめの小説

【改訂版アップ】10日間の異世界旅行~帰れなくなった二人の異世界冒険譚~

ばいむ
ファンタジー
10日間の異世界旅行~帰れなくなった二人の異世界冒険譚~ 大筋は変わっていませんが、内容を見直したバージョンを追加でアップしています。単なる自己満足の書き直しですのでオリジナルを読んでいる人は見直さなくてもよいかと思います。主な変更点は以下の通りです。 話数を半分以下に統合。このため1話辺りの文字数が倍増しています。 説明口調から対話形式を増加。 伏線を考えていたが使用しなかった内容について削除。(龍、人種など) 別視点内容の追加。 剣と魔法の世界であるライハンドリア・・・。魔獣と言われるモンスターがおり、剣と魔法でそれを倒す冒険者と言われる人達がいる世界。 高校の休み時間に突然その世界に行くことになってしまった。この世界での生活は10日間と言われ、混乱しながらも楽しむことにしたが、なぜか戻ることができなかった。 特殊な能力を授かるわけでもなく、生きるための力をつけるには自ら鍛錬しなければならなかった。魔獣を狩り、いろいろな遺跡を訪ね、いろいろな人と出会った。何度か死にそうになったこともあったが、多くの人に助けられながらも少しずつ成長し、なんとか生き抜いた。 冒険をともにするのは同じく異世界に転移してきた女性・ジェニファー。彼女と出会い、ともに生き抜き、そして別れることとなった。 2021/06/27 無事に完結しました。 2021/09/10 後日談の追加を開始 2022/02/18 後日談完結しました。 2025/03/23 自己満足の改訂版をアップしました。

40歳のおじさん 旅行に行ったら異世界でした どうやら私はスキル習得が早いようです

カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
部長に傷つけられ続けた私 とうとうキレてしまいました なんで旅行ということで大型連休を取ったのですが 飛行機に乗って寝て起きたら異世界でした…… スキルが簡単に得られるようなので頑張っていきます

異世界で目覚めたら、もふもふ騎士団に保護されてました ~ちびっ子だけど、獣人たちの平穏のためお世話係がんばります!!~

ありぽん
ファンタジー
神のミスで命を落とした芽依は、お詫びとして大好きな異世界へ転生させてもらえることに。だが転生の際、またしても神のミスで、森の奥地に幼女の姿で送られてしまい。転生の反動で眠っていた瞳は、気づかないうちに魔獣たちに囲まれてしまう。 しかしそんな危機的状況の中、森を巡回していた、獣人だけで構成された獣騎士団が駆け付けてくれ、芽依はどうにかこの窮地を切り抜けることができたのだった。 やがて目を覚ました芽依は、初めは混乱したものの、すぐに現状を受け入れ。またその後、同じ種族の人間側で保護する案も出たが、ある事情により、芽依はそのまま獣騎士団の宿舎で暮らすことに。 そこで芽依は、助けてくれた獣騎士たちに恩を返すため、そして日々厳しい任務に向かう獣人たちが少しでも平穏に過ごせるようにと、お世話係を買って出る。 そんな芽依に、当初は不安だった獣人たちだったが、元気で明るい瞳の存在は、次第に獣人たちの力となっていくのだった。 これはちびっ子転生者の芽依が、獣人や魔獣たちのために奮闘し、癒しとなっていく。そんな、ほっこりまったり? な物語。

幼女と執事が異世界で

天界
ファンタジー
宝くじを握り締めオレは死んだ。 当選金額は約3億。だがオレが死んだのは神の過失だった! 謝罪と称して3億分の贈り物を貰って転生したら異世界!? おまけで貰った執事と共に異世界を満喫することを決めるオレ。 オレの人生はまだ始まったばかりだ!

おばちゃんダイバーは浅い層で頑張ります

きむらきむこ
ファンタジー
ダンジョンができて十年。年金の足しにダンジョンに通ってます。田中優子61歳

【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜

一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m ✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。 【あらすじ】 神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!   そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!  事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます! カクヨム(吉野 ひな)にて、先行投稿しています。

通販で買った妖刀がガチだった ~試し斬りしたら空間が裂けて異世界に飛ばされた挙句、伝説の勇者だと勘違いされて困っています~

日之影ソラ
ファンタジー
ゲームや漫画が好きな大学生、宮本総司は、なんとなくネットサーフィンをしていると、アムゾンの購入サイトで妖刀が1000円で売っているのを見つけた。デザインは格好よく、どことなく惹かれるものを感じたから購入し、家に届いて試し切りをしたら……空間が斬れた!  斬れた空間に吸い込まれ、気がつけばそこは見たことがない異世界。勇者召喚の儀式最中だった王城に現れたことで、伝説の勇者が現れたと勘違いされてしまう。好待遇や周りの人の期待に流され、人違いだとは言えずにいたら、王女様に偽者だとバレてしまった。  偽物だったと世に知られたら死刑と脅され、死刑を免れるためには本当に魔王を倒して、勇者としての責任を果たすしかないと宣言される。 「偽者として死ぬか。本物の英雄になるか――どちらか選びなさい」  選択肢は一つしかない。死にたくない総司は嘘を本当にするため、伝説の勇者の名を騙る。

《完結》当て馬悪役令息のツッコミ属性が強すぎて、物語の仕事を全くしないんですが?!

犬丸大福
ファンタジー
ユーディリア・エアトルは母親からの折檻を受け、そのまま意識を失った。 そして夢をみた。 日本で暮らし、平々凡々な日々の中、友人が命を捧げるんじゃないかと思うほどハマっている漫画の推しの顔。 その顔を見て目が覚めた。 なんと自分はこのまま行けば破滅まっしぐらな友人の最推し、当て馬悪役令息であるエミリオ・エアトルの双子の妹ユーディリア・エアトルである事に気がついたのだった。 数ある作品の中から、読んでいただきありがとうございます。 幼少期、最初はツラい状況が続きます。 作者都合のゆるふわご都合設定です。 日曜日以外、1日1話更新目指してます。 エール、お気に入り登録、いいね、コメント、しおり、とても励みになります。 お楽しみ頂けたら幸いです。 *************** 2024年6月25日 お気に入り登録100人達成 ありがとうございます! 100人になるまで見捨てずに居て下さった99人の皆様にも感謝を!! 2024年9月9日  お気に入り登録200人達成 感謝感謝でございます! 200人になるまで見捨てずに居て下さった皆様にもこれからも見守っていただける物語を!! 2025年1月6日  お気に入り登録300人達成 感涙に咽び泣いております! ここまで見捨てずに読んで下さった皆様、頑張って書ききる所存でございます!これからもどうぞよろしくお願いいたします! 2025年3月17日 お気に入り登録400人達成 驚愕し若干焦っております! こんなにも多くの方に呼んでいただけるとか、本当に感謝感謝でございます。こんなにも長くなった物語でも、ここまで見捨てずに居てくださる皆様、ありがとうございます!! 2025年6月10日 お気に入り登録500人達成 ひょえぇぇ?! なんですと?!完結してからも登録してくださる方が?!ありがとうございます、ありがとうございます!! こんなに多くの方にお読み頂けて幸せでございます。 どうしよう、欲が出て来た? …ショートショートとか書いてみようかな? 2025年7月8日 お気に入り登録600人達成?! うそぉん?! 欲が…欲が…ック!……うん。減った…皆様ごめんなさい、欲は出しちゃいけないらしい… 2025年9月21日 お気に入り登録700人達成?! どうしよう、どうしよう、何をどう感謝してお返ししたら良いのだろう…

処理中です...