異世界は黒猫と共に

小笠原慎二

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黒猫と共に迷い込む

ハヤテが狩ってきました

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ほんみん・・なでねませう。

などとアホなことは言ってないで、リンちゃんとともに草葉の陰でくーかくーか。
草葉の陰は縁起悪かったか?

「まだ寝とるのか八重子」

そんな声が遠くに聞こえ、なんとか意識を持ち直し、目を開けてみれば、こちらを覗き込む黒猫の顔。

「おっふぅ。クロさん…。腹をくれ…」
「まだ寝ぼけとるようだの」

肉球が鼻に押し当てられる。なんのご褒美でしょう。

「あああ、私は今天国にいるのかあああ」
「起きろや」

呆れたクロの声がした。。
起きて辺りを見るも、ハヤテの姿がない。

「あり? クロ、ハヤテは?」
「一通り教えたのでな。何か狩ってこいと言ってある。できればそれをここまで持って来いともな」
「ふ~ん、そか」

この短時間でどれくらい出来るようになったかを見る試験みたいなものですね。
そのまましばらくおちゃおちゃ喋っていると、なんだか急に目の前が暗くなって…。
ドサ
何かが落ちてきた音。
振り向けば奴が…いた。
なんかトカゲのでかいのがいた。

「なぁ、な、な…」

バサリ

と羽音がして、ハヤテが降りてきた。

「ほお、ハヤテ、これはお主が狩ってきたのか」
「クエ」

ハヤテが返事しました。そうみたいです。
恐る恐る近づいてみれば、すでに事切れている様子。良かったね。

「こんな大きいの取って来たの? 凄いねハヤテ」

多分頭から尻尾まで、私と同じか少し大きいくらいだぞ。胴も一抱えもあるし。

「クウ…」

ハヤテが俯きました。
その様子が可愛くて、つい手を伸ばしてしまう私。

「凄いね~。良い子だね~ハヤテ」

その頭をナデナデナデ。ナデナデナデナデナデナデナデナデナデナデナデナデ・・・。
と、止まらん!
なんじゃこの感触!鳥の頭ってこんなに良い感触なんでしょうか?!
猫のお腹も天国並に良い感触ですが、羽毛ってこんなにふわっふわで気持ちいいんかい!
羽毛布団の良さを改めて実感!ちょっと違うかもしれないけど。

「八重子、いい加減止めてやれ。ハヤテが困っておる」

クロからツッコミが入りました。
もっと撫でたい欲を押さえつつ、お手々を引っ込める。また機会があったら思う存分撫でさせてもらいましょう。
ハヤテが顔を上げ、なんだか不思議そうにこちらを見ていますね。何ででしょう?

「さて、街へ帰るにしても、ハヤテ、お主これを持って行けるか?」
「クエ」

大丈夫とばかりに、トカゲを前足で捕まえて翼を広げる。
あああ、今度はその羽もいつか触らせてもらおう。心に誓う。

「我が輩達は下を行くでの。先に出て来た街の門の所まで行っておれ。街中に入るには八重子が共におらねばいかんでの」
「クウ」

ハヤテが返事した。
あああ、猛禽類の目ってなんであんなに可愛いのでしょう。
猫派から鳥派になってしまいそう。

「八重子? 何かアホなことを考えておらぬか?」

クロさん私の思考を読んだ?!








ハヤテはのんびり上空から街へ。私達は森の中を少し急いで街へ向かう。

「ハヤテは良い戦力になるの。これでやれることも広がるの」

クロがちょっと嬉しそう?

「そうだね~。また珍しい鳥とか捕まえてくれるかもね~」
「あの鳥はなかなか見つからぬぞ」

さいですか。

「そうなると、八重子、馬は特に役にも立たぬが、従魔にしておくのかの?」
「え? シロガネが…、そういえば大して役に立ってないかも…」
「な、何を言う! 我とて主をお守りしていたではないか!」
「ハヤテが先に立って戦ってくれるのならば、我が輩が全面的に八重子を守れば良いだけの話。馬は特に必要ないと思うが?」
「な、何を?! 我は防御魔法に関しては自信があるのだぞ!」
「荷を運ぶでもない、八重子を乗せるでもない。ただ食って後を付いてくるだけのただの馬ではないか。いや、ただの馬の方が文句も言わず荷を担いでくれるだけましか」
「な、なんだと?! この、猫の分際で…!!」
「やめやめ、なんで喧嘩になってるの」

クロが一方的に煽ってる感じもするけど。

「縁があってこうなったんだから、余程の事がない限りは手放しません。まあ、余程の事があったら考えるカモだけど…」
「主?!」
「い、いや、ないとも言い切れないので…」

人生一寸先は闇です。

「く…、な、ならば、主。我の背に乗ることを許そうではないか。見たところ主はまだ穢れなき乙女でもあるようだし、我の背に乗せることも遺憾ではない…」
「馬に乗り慣れてないので遠慮します」
「あるじいいぃぃぃぃ!」

なんかシロガネが面白キャラになってるぞ?

「でも確かに、シロガネの背に乗れたら、いろいろ移動が楽になりそうだねぇ」
「我が輩ではさすがに乗せることは叶わぬでの」
「クロは私の頭を乗せてくれたらいいです」
「一番重い所ではないかの?」

そうですね。

「そ、そうであるぞ主。我の背に乗れば遠い所もひとっ飛びである。我も役に立てるのである」

シロガネが胸を張ってる。

「でも落ちそうで怖い」
「そ、そこは我の魔法で補助すれば大丈夫であるぞ」
「できるの?」
「もちろんであるぞ。主を落とすことなどシロガネの名に懸けてしないと誓おう」

余程名前が気に入っているのね。

「なら、試しに乗ってみようか。街まで試乗して、乗り心地が悪かったら二度と乗らない」
「そうなると本当にただの駄馬《・・》だの」
「このク猫…」
「ほらほら、喧嘩しない」

クロとシロだから仲が悪いのかな?色は関係ないか?
ちょっと木々の間がある所まで行って、シロガネに試乗。
わざわざ足を折ってくれたよ。馬って立ち上がるのが大変なんだよね?
なんとなく跨がってみたものの、馬の背中って捕まる所がないと結構不安定。しかもクロを抱きながら。仕方がないので鬣を掴む。

「むう…、まあ仕方がないか…」

シロガネも渋々鬣を掴むのを許してくれた。なんかスマン。
シロガネが立ち上がるのにすこしぐらついたけど、おや、思ったほどグラグラしない。

「すでに風の力で安定出来るように支えている。それほどぐらつきはしないはずであるぞ」

早速シロガネがやっててくれたらしい。

「八重子、我が輩を抱いたままではきつかろう。下ろしても良いぞ」

お言葉に甘えて、クロを股の間に下ろす。クロを足で挟み込むようにして安定させてやる。
リンちゃんは頭の上ですでにスタンバイ。

「では、行くぞ」

シロガネが翼を羽ばたかせた。
風が集まり、フワリと体が浮いた。いや、シロガネが飛んだのだ。

「おおおおおお」

ゆっくりと地面が遠くなっていく。
高い木の梢がみるみる近くなり、また下の方へと遠くなっていく。

「おっほ、おっほ、おっほ」
「ゴリラか」

クロさんのいいツッコミ。

「いや、だけど、これは、凄くない?!」

飛んでますよ!空の中ですよ!人類の夢ですよ!

「ふむ。確かに、凄いの」
「ふふん。そうだろうそうだろう」

嬉しそうにシロガネが鼻息を荒くした。

「クエ」

近くを飛んでいたのか、ハヤテも近づいて来た。

「ハヤテ~、ヤッホー」

手を振る私をキョトンと見つめている。
うああ、あの顔可愛いなぁ。

「八重子、よそ見すると危ないぞ」

クロから注意を受けました。
そのまま並んで街の方へ。
門から少し離れた所で降り立った。
すでに衛兵さん達の顔はあんぐりになってるけど。
いつものように街に入り、いつものようにギルドへ。このトカゲをどうにかして欲しいので。
買い取ってくれるかな?
シロガネは入れないので待機してもらって、ハヤテはトカゲを持って来てもらわなければならないのでそのままギルドへ。
引き摺って来てるからちょっと砂っぽくなってる。
買い取り嬢さんの顔があんぐりになってます。

「すいません。このトカゲ買い取ってくれますか?」
「はっ。は、はい! もちろんです!」

一瞬気でも失っていたのかポカンとしていた買い取り嬢さん、気を取り直してトカゲを…、重くてカウンターに持ち上がりません。

「こ、これ、岩トカゲじゃないですか?!」

ほお、岩トカゲと言うのか。他にも砂トカゲとか、火トカゲ・・・・とかいるのかな?

「い、岩山にいらっしゃってたんですか?」
「いえ、森の中に行ってましたよ」

昼寝してました、とは言いにくい。

「しょ、少々お待ちを!」

そう言ってまた奥へ。あ、このパターンは…。
あの作業着のおっちゃんが出て来た。

「またお嬢ちゃんか」

顔覚えられてた。

「今度は何を持って来たんだい?」

そう言って私の足元を覗き込んで、止まる。

「こ、これは、岩トカゲ?! どこまで行ってきたんだ?!」

遠いのか?

「でも、まだ新鮮に見えるが…」

だと思う。
カウンターから出て来て、ひょいっとカウンターに上げてしまった。
おう、さすが力持ち。
しばらく全体をじいっと見回していたが、

「なるほどな。こいつはこのグリフォンが狩ったやつか。どおりで活きが良いはずだ」

死んでますが。

「ここまで新鮮な奴も初めて見た。ただ、ちょっと皮が傷が多いかな。まあ仕方ないか。いいだろう、良い値を付けてやろう。そうだな…」

しばし思案。

「金貨5枚でどうだ? こいつは肉もそこそこ美味いしな。久しぶりのトカゲ料理だ」

トカゲ料理好きなのかな?舌舐めずりしてる。

「それでいいです。3枚だけもらって、あとは振り込んでおいてもらって良いですか?」
「もちろんだとも」

トカゲはおっちゃんが肩に担いで奥に持っていき、買い取り嬢から金貨3枚だけもらってギルドを出ると、また人だかりが出来てた。
しまった…。忘れてたよ…。
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