異世界は黒猫と共に

小笠原慎二

文字の大きさ
55 / 194
黒猫と共に迷い込む

悲鳴

しおりを挟む
「鱗、良かったの? あれってかなり希少なアイテム…というか素材になるんじゃ…」
「良いのじゃ。あそこは痛んでおったのでな。ただ捨てるよりは有効に活用してくれるじゃろ」

枝毛のようなものでした。
依頼を出した商人さんに会いに行く。
商人さんには大喜びで受け入れられた。

「今話題になっているペガサスの冒険者さんにお受け頂けるとは! しかもドラゴンもお持ちになったのですよね? 話は聞いていますよ!」

テンション高かった。
ていうか、いつの間にか有名人になってる?
早めにこの街を出よう。
荷物などはほぼ準備出来ているということで、明日の朝に出発となった。
他に冒険者は?と聞いたが、私の他にはいないそう。私が受けてくれるのなら他の者はいらないだろうと。まあそうか。
私も今日中にいろいろ買い物しておかないと。
明日の朝の鐘のなる頃、北の門で待ち合わせとなった。

「携帯食料はほとんど残ってるから、ちょっと調味料を買いに行こうか」

自分で料理出来るようになったらいいよね。

「あれは料理と言うのか…」
「クロ? 何か?」
「なんでもないの」

クロが何か呟いたけど、聞こえなかった。
調味料を買いに行ったら、また赤い粉を買いに来たのかと言われた。
もうそれはいらないよ…。













夕飯を食し、体を洗い、いつもの通りに八重子が倒れるように眠りに就いた。
クレナイも昨日と同じように八重子の隣のベッドに潜る。
リンちゃんは頭の上。クロは左脇だ。
ところが、少しするとクロがムクリと起きだし、そっと窓の外へと出て行った。
クレナイはそっとそれを目の端に留めながらも、布団をかけ直し、眼を瞑った。

シロガネとハヤテが入る厩舎へと、黒猫が入って行く。

「む、クソ猫か」
「まだ起きておったのか駄馬」
「駄馬ではない! ペガサスだ!」

いつものやりとりをし、ハヤテの方を見てみると、ハヤテは既に夢の中。

「特に変わりはなさそうだの」

ひょいっと柵の上に飛び乗る。

「昼間の従魔泥棒の話しを気にしておるのか」
「まあの。特に必要ないと言え、すでに八重子が仲間と認めてしまっているのだ。お主らがいなくなったら八重子が泣く」
「必要ないとはどういう意味だ」
「そのままの意味だがの」

シロガネがクロを睨み付けるが、クロは涼しい顔のまま。

「そういえば貴様。何故我の雷魔法を知っていた? 他にも何故か知らぬはずのことを知っていたな? 何処で知った?」
「おや、話していなかったかの。我が輩は他人の頭の中を覗くことが出来るのだ」
「は?」
「お主やハヤテ達が良からぬことを考えていないかとの。頭の中を覗いたことがある。その時に知ったのだ」
「あ、頭の中を…?」

シロガネの顔が青くなる

「もちろん、その1回だけであるぞ」

何故かシロガネがほっとした顔をする。

「覗いてはおらぬが、強い気持ちなどは覗かぬでも見えてしまうことがある。もっと八重子にブラッシングしてもらいたいとか、もっと鼻筋を撫でてもらいたいとか、首元を叩いてもらいたいとか…」
「わあああああああああああああああ!!!」

シロガネが顔を赤くして悲鳴を上げる。

「うるさいぞ。ハヤテ達が起きてしまうかもしれないではないか」
「貴様! 貴様! 貴様ぁぁぁああああ!!」
「別に覗いたわけではないぞ。見えてしまっただけだ」
「うああああああああああ!!」

柵の上で涼しい顔をするクロ。その横で身悶えるシロガネ。

「大丈夫だの。まだ・・八重子には言ってはおらぬ」
「い、言うなよ! 絶対に言うなよ!」
「お主が八重子の邪魔をしなければ、言うことはないだろうの」
「じゃ、邪魔などせん! 我は主のお役に立ちたいだけだ!」
「人の姿で八重子に添い寝したいとか…」
「やめろおおおおおおおおおお!!」

しばらくの間、厩舎から何故か悲鳴が聞こえていたのだった。









===================================









シロガネはちょっと不満だった。
新たな主となった人間に不満があるわけではない。
その主があまり自分を大切にしてくれないことが不満であった。

今までであれば、何処へ行ってもシロガネは重宝された。
幻の聖獣だの、超希少な魔獣だの言われ大切にされた。

前の主でさえ、自分にはあまり暴力を振るわず、どちらかというと人に見せびらかして楽しんでいた。
実を言うと、やはり背に乗りたがった。
乗せろと命令されたので大人しく乗せたのだが、乗った途端に前足を思い切り上げ、後ろに振り落としてやったのだった。
ついでに後ろ足の蹴りを見舞ってやったのだが、それは掠っただけで終わってしまった。実に残念である。
強かに腰を打ったらしく、しばらく唸っていた。
それからは二度と乗りたいとは言わなくなったのは有り難かった。

新しい主になった時も、乗りたがるものだと思った。
しかし、その主は乗りたがるどころか、乗ることを拒否する始末。
まあ、それならそれでもいいかと、自分を納得させる。何故納得させたのかは考えない。

前の主のようにグリフォンのハヤテや妖精のリンに、危害を加えるのではないかと最初の頃は様子を伺っていたが、その気配は全くなかった。
2人を守ろうと少し強い言葉で牽制していたのに。
人間になど遜らないぞと思っていたのに、黒猫にさえも遜る人間だった。

全くもって調子が狂う。

そして、妖精のリンが主に最初に心を開いた。
妖精は人の心の機微を感じる所があるから、この人間が自分に危害を加えないと理解したのだろう。
次に、グリフォンのハヤテが主に心を開いた。
優しい手に撫でられ、新しい主が自分を殴ったりしないと分かったのだろう。
2人のことを心配していたシロガネとしても、それは嬉しいことであった。

だが、だがしかし。

自分は最初の頃に主を拒絶するような言動をしている。
それに、やはりプライド的に人間に遜るようなことはしたくない。
なので、ちょっと言動がつっけんどんになってしまっていた。

実は、実を言うと…。

ちょっとしたことで頭を撫でられているハヤテが羨ましい。
自分ももっと撫でてもらいたいし、ブラッシングもしてもらいたい。
肩に止まったりして、時折主と目を合わせて微笑み合っているリンが羨ましい。
しかも寝ている時も側にいるなんて!
自分だって主に笑顔を向けてもらいたいし、もっと側に寄っていたい。

しかし、しかし、しかしいいいぃぃぃぃぃ!!!

人間に遜るなど!

遜るなどおおおおおおおおぉぉぉぉ!

でも、撫でてもらいたい!背に乗ってもらいたい!一緒に寝たいいいいい!
そんな事を考えつつも、そんなことなどおくびににも出さず、平気の平左の顔をしている。
だが、内心は嫉妬の嵐だった。

聖獣っすよ?!崇められる聖獣っすよ?!

どこぞの村に行った時も、「ペガサス様」と呼ばれ、崇められたのに。
宿屋の娘も、「ペガサス様」と言いながら、良い感じにブラッシングしてくれたし。
もうちょっとなんていうか、そういう扱いをしてくれても良いんじゃないかとおもうのだがなぁ~。

シロガネは不満であった。

ハヤテやリンに比べると、自分の扱いがなんとなく粗雑なのではないかと思い、不満を感じていたのだった。
しかし、プライドが邪魔をして、素直に甘えにいけないのであった。
これもツンデレというのであろうか?
しおりを挟む
感想 11

あなたにおすすめの小説

【改訂版アップ】10日間の異世界旅行~帰れなくなった二人の異世界冒険譚~

ばいむ
ファンタジー
10日間の異世界旅行~帰れなくなった二人の異世界冒険譚~ 大筋は変わっていませんが、内容を見直したバージョンを追加でアップしています。単なる自己満足の書き直しですのでオリジナルを読んでいる人は見直さなくてもよいかと思います。主な変更点は以下の通りです。 話数を半分以下に統合。このため1話辺りの文字数が倍増しています。 説明口調から対話形式を増加。 伏線を考えていたが使用しなかった内容について削除。(龍、人種など) 別視点内容の追加。 剣と魔法の世界であるライハンドリア・・・。魔獣と言われるモンスターがおり、剣と魔法でそれを倒す冒険者と言われる人達がいる世界。 高校の休み時間に突然その世界に行くことになってしまった。この世界での生活は10日間と言われ、混乱しながらも楽しむことにしたが、なぜか戻ることができなかった。 特殊な能力を授かるわけでもなく、生きるための力をつけるには自ら鍛錬しなければならなかった。魔獣を狩り、いろいろな遺跡を訪ね、いろいろな人と出会った。何度か死にそうになったこともあったが、多くの人に助けられながらも少しずつ成長し、なんとか生き抜いた。 冒険をともにするのは同じく異世界に転移してきた女性・ジェニファー。彼女と出会い、ともに生き抜き、そして別れることとなった。 2021/06/27 無事に完結しました。 2021/09/10 後日談の追加を開始 2022/02/18 後日談完結しました。 2025/03/23 自己満足の改訂版をアップしました。

40歳のおじさん 旅行に行ったら異世界でした どうやら私はスキル習得が早いようです

カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
部長に傷つけられ続けた私 とうとうキレてしまいました なんで旅行ということで大型連休を取ったのですが 飛行機に乗って寝て起きたら異世界でした…… スキルが簡単に得られるようなので頑張っていきます

異世界で目覚めたら、もふもふ騎士団に保護されてました ~ちびっ子だけど、獣人たちの平穏のためお世話係がんばります!!~

ありぽん
ファンタジー
神のミスで命を落とした芽依は、お詫びとして大好きな異世界へ転生させてもらえることに。だが転生の際、またしても神のミスで、森の奥地に幼女の姿で送られてしまい。転生の反動で眠っていた瞳は、気づかないうちに魔獣たちに囲まれてしまう。 しかしそんな危機的状況の中、森を巡回していた、獣人だけで構成された獣騎士団が駆け付けてくれ、芽依はどうにかこの窮地を切り抜けることができたのだった。 やがて目を覚ました芽依は、初めは混乱したものの、すぐに現状を受け入れ。またその後、同じ種族の人間側で保護する案も出たが、ある事情により、芽依はそのまま獣騎士団の宿舎で暮らすことに。 そこで芽依は、助けてくれた獣騎士たちに恩を返すため、そして日々厳しい任務に向かう獣人たちが少しでも平穏に過ごせるようにと、お世話係を買って出る。 そんな芽依に、当初は不安だった獣人たちだったが、元気で明るい瞳の存在は、次第に獣人たちの力となっていくのだった。 これはちびっ子転生者の芽依が、獣人や魔獣たちのために奮闘し、癒しとなっていく。そんな、ほっこりまったり? な物語。

幼女と執事が異世界で

天界
ファンタジー
宝くじを握り締めオレは死んだ。 当選金額は約3億。だがオレが死んだのは神の過失だった! 謝罪と称して3億分の贈り物を貰って転生したら異世界!? おまけで貰った執事と共に異世界を満喫することを決めるオレ。 オレの人生はまだ始まったばかりだ!

おばちゃんダイバーは浅い層で頑張ります

きむらきむこ
ファンタジー
ダンジョンができて十年。年金の足しにダンジョンに通ってます。田中優子61歳

【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜

一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m ✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。 【あらすじ】 神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!   そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!  事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます! カクヨム(吉野 ひな)にて、先行投稿しています。

通販で買った妖刀がガチだった ~試し斬りしたら空間が裂けて異世界に飛ばされた挙句、伝説の勇者だと勘違いされて困っています~

日之影ソラ
ファンタジー
ゲームや漫画が好きな大学生、宮本総司は、なんとなくネットサーフィンをしていると、アムゾンの購入サイトで妖刀が1000円で売っているのを見つけた。デザインは格好よく、どことなく惹かれるものを感じたから購入し、家に届いて試し切りをしたら……空間が斬れた!  斬れた空間に吸い込まれ、気がつけばそこは見たことがない異世界。勇者召喚の儀式最中だった王城に現れたことで、伝説の勇者が現れたと勘違いされてしまう。好待遇や周りの人の期待に流され、人違いだとは言えずにいたら、王女様に偽者だとバレてしまった。  偽物だったと世に知られたら死刑と脅され、死刑を免れるためには本当に魔王を倒して、勇者としての責任を果たすしかないと宣言される。 「偽者として死ぬか。本物の英雄になるか――どちらか選びなさい」  選択肢は一つしかない。死にたくない総司は嘘を本当にするため、伝説の勇者の名を騙る。

《完結》当て馬悪役令息のツッコミ属性が強すぎて、物語の仕事を全くしないんですが?!

犬丸大福
ファンタジー
ユーディリア・エアトルは母親からの折檻を受け、そのまま意識を失った。 そして夢をみた。 日本で暮らし、平々凡々な日々の中、友人が命を捧げるんじゃないかと思うほどハマっている漫画の推しの顔。 その顔を見て目が覚めた。 なんと自分はこのまま行けば破滅まっしぐらな友人の最推し、当て馬悪役令息であるエミリオ・エアトルの双子の妹ユーディリア・エアトルである事に気がついたのだった。 数ある作品の中から、読んでいただきありがとうございます。 幼少期、最初はツラい状況が続きます。 作者都合のゆるふわご都合設定です。 日曜日以外、1日1話更新目指してます。 エール、お気に入り登録、いいね、コメント、しおり、とても励みになります。 お楽しみ頂けたら幸いです。 *************** 2024年6月25日 お気に入り登録100人達成 ありがとうございます! 100人になるまで見捨てずに居て下さった99人の皆様にも感謝を!! 2024年9月9日  お気に入り登録200人達成 感謝感謝でございます! 200人になるまで見捨てずに居て下さった皆様にもこれからも見守っていただける物語を!! 2025年1月6日  お気に入り登録300人達成 感涙に咽び泣いております! ここまで見捨てずに読んで下さった皆様、頑張って書ききる所存でございます!これからもどうぞよろしくお願いいたします! 2025年3月17日 お気に入り登録400人達成 驚愕し若干焦っております! こんなにも多くの方に呼んでいただけるとか、本当に感謝感謝でございます。こんなにも長くなった物語でも、ここまで見捨てずに居てくださる皆様、ありがとうございます!! 2025年6月10日 お気に入り登録500人達成 ひょえぇぇ?! なんですと?!完結してからも登録してくださる方が?!ありがとうございます、ありがとうございます!! こんなに多くの方にお読み頂けて幸せでございます。 どうしよう、欲が出て来た? …ショートショートとか書いてみようかな? 2025年7月8日 お気に入り登録600人達成?! うそぉん?! 欲が…欲が…ック!……うん。減った…皆様ごめんなさい、欲は出しちゃいけないらしい… 2025年9月21日 お気に入り登録700人達成?! どうしよう、どうしよう、何をどう感謝してお返ししたら良いのだろう…

処理中です...