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始まりの旅
リリィの服屋
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サンスリーはさほど取り締まりのきついところではないので、テルディアスもやすやすと街に入ることが出来た。
ライブレン王国からミドル王国まで続く道に並ぶ九つの観光都市、イファチスト・ニーツ・サンスリー・ヨシフォーン・ゴイブ・ロックス・ナセチブン・ハチェート・キュナクイン。
二つの王国は歴史も深く、古来より協定を結んでいる珍しく仲のいい王国であった。
二つの王国は未だに年に数回はお互いの王国を訪れることもあり、それゆえに道すがらの街々も宿場町として、商業都市として発展しているのである。
因みにそれぞれの街の特産物も世界的に有名で、観光客なども多く訪れている。
たいがいが二つの王国を渡る手頃で安全で軽い旅が出来ると集まってくるもので、王国の発展にも一役買っていたりするのである。
閑話休題。
まずはそのおかしい格好をどうにかしろ。
ということで服屋へ。
見慣れない文字が看板に出ている。
テルディアスに聞いてみると、
「リリィの服屋」
と書いてあるらしい。
扉を押して中に入ると、
「いらっしゃいませ~~~~~~!!!!!」
と・て・も元気のいい店員が飛び出してきた。
「ご、ごめんなさい」
キーナは反射的に誤ってしまった。
なんでやねん。
「リリィの服屋へようこそ!
旅装束からパーティードレスまで幅広くご用意しておりま~す!」
有無を言わさず店の奥へと案内された。流石は商売人。
「どのような服をお探しですか?」
「旅をするのに最適なものを着させてやってくれ」
テルディアスが何とか口を挟んだ。
「まあああぁ! ミドル王国へいらっしゃるのですね! それでしたらちょうどアマンタグースの最新モデルが出たところですわ!」
となにやらいっぱい掛けてある服の間をごそごそとしていると、少し暗いが落ち着きもあり、そこそこ大人びて見えそうな少年ものの服を取り出した。
「こちらなんか人気ですのよ! かっこいいって男の子達の間で!」
やっぱり男物のようだ。
「あの、僕、女なんですけど…」
店員の顔が一瞬凍りついた。
「あ、あ~ら!私としたことが! す、すいません、おほほほほ! こんな可愛らしいお嬢ちゃんを間違えるなんて! お~ほほほ!」
と慌てふためきながら新たに一枚の、ちょっと可愛らしい胸元にハートのアップリケのついた赤い服を取り出した。
「こちらですわこちら! 本当はこちらを出したかったんですの!」
男物と女物の置いてある場所は明らかに違うが…。
デザインをよく見ると、…なんだか幼稚である。大体中二にもなって、胸元にハートのアップリケを付けて歩くってのもなぁ。
ハート好きな人とかはいいかもしれないけど…。
「あの、子供服に見えるけど…?」
聞いてみた。
「ええ、六歳から十歳くらいまでのお子様向けの…、失礼ですが、おいくつで?」
「十四」
店員の顔が又固まった。
「……ひ、人によっては十五歳くらいまででも十分いけますわ!」
ちょっと苦しい。
そしてテルディアスは思った。
(俺も十歳くらいかと思ってた…)
本当のことを言ったらきっとキーナは傷つくだろう。
適当な服を見繕い、キーナは試着室に入っていった。
まぁ、旅をするにそこそこなものだ。
旅をするのだからそんなにちゃらちゃらしたものを着られても困るのだが。
「じゃーーん!どお?」
カーテンを開けてキーナが出てきた。
旅人が着るオーソドックスなもので、特に刺繍やら飾りやらもなくシンプルなデザインのものである。
これで似合うも似合わないもないような気もするが…。置いといて。
サイズもぴったりのようだ。
「別に…」
テルディアスは思ったままのことを口にした。
確かにそうとしか言いようがない気もするが、何かもうちょっと言えなかったのだろうか。女心の分からない奴である。
「まあ! よくお似合いですわ!」
ありきたりの売りつける気満々の台詞を店員が口にする。
「えへへ…」
真に受けてほんのり赤くなるキーナ。おいおい。
とにかくお買い上げとなった。
「ありがとうございました~」
最初から最期までなんだかよく分からない迫力のある店員だった。が、最期はお決まりの文句で気持ちよく送り出してくれた。
「Gパンはちょっともったいなかったかな?」
旅をするのには向かないだろうし、荷物になるからと服屋に売ってしまったのだ。おかげでいい値で売れた。
キーナとしてはGパンで旅しても良かったのだけど、なんとなくここはド○クエのような旅装束をしてみたかったのだ。それにはGパンはちょっと違うんだな。
「珍しい生地だと喜んでたぞ」
Gパンは船のマストから出来たという起源を持つが、この世界ではそういう習慣がないのであろう。
「次はどこに行くの?」
キーナがウキウキしながら聞いた。
「ちょっと道具を…」
そういうと、なにやら変なものを飾ってある店に入っていった。
テルディアスが何かを注文しているので、キーナは店内を見て回ったが、…変なものばかり置いてあった。
サルが踊っているような置物、何が入っているのかよく分からない壺のような物、何かの耳のような何に使うのだかよく分からない物…。
さっぱりわからない。
「おい、行くぞ」
テルディアスの用はすぐに済んだようだ。
変な店から出るとすぐに、テルディアスは今買った物を取り出し、一つをキーナに差し出した。
「つけておけ」
「イヤリング?」
赤い涙のような形をしているイヤリングだった。ルビーのようにキラキラ光っている。
「万一離れ離れになったときに役立つ」
テルディアスがもう一個を持った。
「どういう風に?」
左耳につけながらキーナが聞いた。
初めてつけるイヤリング。なんとなく耳が締め付けられるよう。
「いずれ分かる」
テルディアスはそれ以上言わなかった。
「もったいぶらないで教えてよ」
キーナが迫る。
「そのうちな」
答える気はないようだ。
「今日はここにでも泊まろう」
そういうとスタスタと建物に入っていってしまった。キーナが見上げると、又看板が出ている。
(きっと宿屋とでもかいてあんだろうな)
読めない文字が並んでいた。
(いづれ読んでやる)
などと思いながらキーナはテルディアスの後を追って建物の中へ入っていった。
フロントでキーをもらい、それぞれの部屋へ入った。
ベッドと小さな机と椅子が置いてあるだけの簡素な部屋だった。
唯一ある窓からは通りがよく見える。
そこそこ人の往来がある活気に溢れた通りのようだ。
「ふい~~~」
息を吐きながらベッドにゴロンと横になる。
「疲れた…」
そう言って伸びをした。
「こっちに来てまだ半日しか経ってないのに、色々あったな~。…向こうの世界は何してるのかな…」
なんだか急に眠気が差してくる。
瞼は重力に抗うことを忘れたかのように下の瞼とくっつこうとする。
「お母さん…しんぱい…してる…か…な…」
時を置かず、キーナの寝息が聞こえだす。
スーッ、スーッと規則正しく聞こえてくる。
壁に掛けられた時計の音とキーナの寝息だけが空間を谺する。
その時、軽いノック音が聞こえた。
「キーナ」
テルディアスだ。
「入るぞ」
一声かけてテルディアスが入ってきた。
ベッドではキーナが気持よさそうに寝ていた。
「寝てるのか」
(せめて靴は脱げ)
とテルディアスは思った。
「ま、色々あったからな…」
優しげな瞳でテルディアスはキーナを見つめた。
そして軽くキーナの顔をなでて髪をよけてやった。
その時、キーナが呟いた。
「ん…、お母さん…」
テルディアスの顔が一瞬険しくなった。
能天気なように見えても、やはり母親の元へ帰りたがっているのだ。
それはそうだろう。まだまだキーナは子供だ。
いや、子供にしか見えないというか…。
キーナが母親の元に戻る…。
やはりそれが一番キーナにとっていい事なのだ。
テルディアスはそう思いながらも、複雑な気分であった。
ライブレン王国からミドル王国まで続く道に並ぶ九つの観光都市、イファチスト・ニーツ・サンスリー・ヨシフォーン・ゴイブ・ロックス・ナセチブン・ハチェート・キュナクイン。
二つの王国は歴史も深く、古来より協定を結んでいる珍しく仲のいい王国であった。
二つの王国は未だに年に数回はお互いの王国を訪れることもあり、それゆえに道すがらの街々も宿場町として、商業都市として発展しているのである。
因みにそれぞれの街の特産物も世界的に有名で、観光客なども多く訪れている。
たいがいが二つの王国を渡る手頃で安全で軽い旅が出来ると集まってくるもので、王国の発展にも一役買っていたりするのである。
閑話休題。
まずはそのおかしい格好をどうにかしろ。
ということで服屋へ。
見慣れない文字が看板に出ている。
テルディアスに聞いてみると、
「リリィの服屋」
と書いてあるらしい。
扉を押して中に入ると、
「いらっしゃいませ~~~~~~!!!!!」
と・て・も元気のいい店員が飛び出してきた。
「ご、ごめんなさい」
キーナは反射的に誤ってしまった。
なんでやねん。
「リリィの服屋へようこそ!
旅装束からパーティードレスまで幅広くご用意しておりま~す!」
有無を言わさず店の奥へと案内された。流石は商売人。
「どのような服をお探しですか?」
「旅をするのに最適なものを着させてやってくれ」
テルディアスが何とか口を挟んだ。
「まあああぁ! ミドル王国へいらっしゃるのですね! それでしたらちょうどアマンタグースの最新モデルが出たところですわ!」
となにやらいっぱい掛けてある服の間をごそごそとしていると、少し暗いが落ち着きもあり、そこそこ大人びて見えそうな少年ものの服を取り出した。
「こちらなんか人気ですのよ! かっこいいって男の子達の間で!」
やっぱり男物のようだ。
「あの、僕、女なんですけど…」
店員の顔が一瞬凍りついた。
「あ、あ~ら!私としたことが! す、すいません、おほほほほ! こんな可愛らしいお嬢ちゃんを間違えるなんて! お~ほほほ!」
と慌てふためきながら新たに一枚の、ちょっと可愛らしい胸元にハートのアップリケのついた赤い服を取り出した。
「こちらですわこちら! 本当はこちらを出したかったんですの!」
男物と女物の置いてある場所は明らかに違うが…。
デザインをよく見ると、…なんだか幼稚である。大体中二にもなって、胸元にハートのアップリケを付けて歩くってのもなぁ。
ハート好きな人とかはいいかもしれないけど…。
「あの、子供服に見えるけど…?」
聞いてみた。
「ええ、六歳から十歳くらいまでのお子様向けの…、失礼ですが、おいくつで?」
「十四」
店員の顔が又固まった。
「……ひ、人によっては十五歳くらいまででも十分いけますわ!」
ちょっと苦しい。
そしてテルディアスは思った。
(俺も十歳くらいかと思ってた…)
本当のことを言ったらきっとキーナは傷つくだろう。
適当な服を見繕い、キーナは試着室に入っていった。
まぁ、旅をするにそこそこなものだ。
旅をするのだからそんなにちゃらちゃらしたものを着られても困るのだが。
「じゃーーん!どお?」
カーテンを開けてキーナが出てきた。
旅人が着るオーソドックスなもので、特に刺繍やら飾りやらもなくシンプルなデザインのものである。
これで似合うも似合わないもないような気もするが…。置いといて。
サイズもぴったりのようだ。
「別に…」
テルディアスは思ったままのことを口にした。
確かにそうとしか言いようがない気もするが、何かもうちょっと言えなかったのだろうか。女心の分からない奴である。
「まあ! よくお似合いですわ!」
ありきたりの売りつける気満々の台詞を店員が口にする。
「えへへ…」
真に受けてほんのり赤くなるキーナ。おいおい。
とにかくお買い上げとなった。
「ありがとうございました~」
最初から最期までなんだかよく分からない迫力のある店員だった。が、最期はお決まりの文句で気持ちよく送り出してくれた。
「Gパンはちょっともったいなかったかな?」
旅をするのには向かないだろうし、荷物になるからと服屋に売ってしまったのだ。おかげでいい値で売れた。
キーナとしてはGパンで旅しても良かったのだけど、なんとなくここはド○クエのような旅装束をしてみたかったのだ。それにはGパンはちょっと違うんだな。
「珍しい生地だと喜んでたぞ」
Gパンは船のマストから出来たという起源を持つが、この世界ではそういう習慣がないのであろう。
「次はどこに行くの?」
キーナがウキウキしながら聞いた。
「ちょっと道具を…」
そういうと、なにやら変なものを飾ってある店に入っていった。
テルディアスが何かを注文しているので、キーナは店内を見て回ったが、…変なものばかり置いてあった。
サルが踊っているような置物、何が入っているのかよく分からない壺のような物、何かの耳のような何に使うのだかよく分からない物…。
さっぱりわからない。
「おい、行くぞ」
テルディアスの用はすぐに済んだようだ。
変な店から出るとすぐに、テルディアスは今買った物を取り出し、一つをキーナに差し出した。
「つけておけ」
「イヤリング?」
赤い涙のような形をしているイヤリングだった。ルビーのようにキラキラ光っている。
「万一離れ離れになったときに役立つ」
テルディアスがもう一個を持った。
「どういう風に?」
左耳につけながらキーナが聞いた。
初めてつけるイヤリング。なんとなく耳が締め付けられるよう。
「いずれ分かる」
テルディアスはそれ以上言わなかった。
「もったいぶらないで教えてよ」
キーナが迫る。
「そのうちな」
答える気はないようだ。
「今日はここにでも泊まろう」
そういうとスタスタと建物に入っていってしまった。キーナが見上げると、又看板が出ている。
(きっと宿屋とでもかいてあんだろうな)
読めない文字が並んでいた。
(いづれ読んでやる)
などと思いながらキーナはテルディアスの後を追って建物の中へ入っていった。
フロントでキーをもらい、それぞれの部屋へ入った。
ベッドと小さな机と椅子が置いてあるだけの簡素な部屋だった。
唯一ある窓からは通りがよく見える。
そこそこ人の往来がある活気に溢れた通りのようだ。
「ふい~~~」
息を吐きながらベッドにゴロンと横になる。
「疲れた…」
そう言って伸びをした。
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なんだか急に眠気が差してくる。
瞼は重力に抗うことを忘れたかのように下の瞼とくっつこうとする。
「お母さん…しんぱい…してる…か…な…」
時を置かず、キーナの寝息が聞こえだす。
スーッ、スーッと規則正しく聞こえてくる。
壁に掛けられた時計の音とキーナの寝息だけが空間を谺する。
その時、軽いノック音が聞こえた。
「キーナ」
テルディアスだ。
「入るぞ」
一声かけてテルディアスが入ってきた。
ベッドではキーナが気持よさそうに寝ていた。
「寝てるのか」
(せめて靴は脱げ)
とテルディアスは思った。
「ま、色々あったからな…」
優しげな瞳でテルディアスはキーナを見つめた。
そして軽くキーナの顔をなでて髪をよけてやった。
その時、キーナが呟いた。
「ん…、お母さん…」
テルディアスの顔が一瞬険しくなった。
能天気なように見えても、やはり母親の元へ帰りたがっているのだ。
それはそうだろう。まだまだキーナは子供だ。
いや、子供にしか見えないというか…。
キーナが母親の元に戻る…。
やはりそれが一番キーナにとっていい事なのだ。
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