キーナの魔法

小笠原慎二

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奴の名はサーガ

竜の巣

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「終わったよ」
「お、早いな」
「よし!」

言うが早いか、キーナはまた駆け出そうとする。

「だから走るなっつーに!!」

サーガが必死に食い止めた。










前を行くキューちゃんの動きが止まった。
そして何やらぐるぐると空中に8の字を描き出した。

「なんだ? あの飛び方」
「キューちゃん! いたの?!」
「もう!?」

蜂か。
蜂は蜜のあるところを見つけると8の字に飛んで仲間に知らせるとかなんとか。
二人が駆けて行くと、突然足元が落ち窪み、谷のようになっていて、その先に洞窟があった。
とても大きな洞窟だ。

「おっきい洞窟…」

キューちゃんはそこを目指すような動きをしている。
真新しい足跡が、洞窟の中を目指して消えていた。
確かに誰かが、いや、テルがいるのだろう!

「よっし! 行くぞ!」

と降りようと構えたが、肩をがしっと掴まれる。

「ん?」
「お前は待機!」

サーガが顔をひきつらせながらキーナを引き留める。

「なんで?! テルがいるのに!」
「ありゃあ、ただの洞窟じゃねえ。危険だ。だからここで待ってろ! いいな?!」

なんだか珍しく真剣な怖い顔をしているので、キーナもついて行く! とは言い出せなかった。
大人しく待っていることにする。
サーガは風を纏うと、ひらりと谷に下りた。
冷たい風が通り過ぎる。
目の前に、巨大な洞窟が口を開けている。
あまりにも大きすぎて、そして、あまりにも形が綺麗すぎる。
まるで何者かの手によって掘られたかのような…。

(やっぱり…、竜の巣?!)

竜が住んでいるという伝承が残っているくらいだ。竜の巣があってもおかしくはない。
問題は、その持ち主が今もいるのかどうか…。

(竜の巣に一体何の用があるんだか知らんが…、キーナを遠ざけるいい口実になったな)

腰の剣に手を触れる。
冷たい感触が伝わってきた。

(俺の野望と幸せのために…)

洞窟へ向かって一歩一歩足を運ぶ。

(テルディアス・ブラックバリー、ここで消えてもらうぜ!)

サーガの姿が洞窟の奥へと消えて行った。












洞窟の中はヒカリゴケが群生し、外ほどではないが、行動するには困らないほどの光が溢れていた。
その奥で、一つの人影が、しゃがみこんでいた。
地面を指でなでる。
ヒカリゴケが指に絡みついてきた。

(ヒカリゴケが群生している。ハズレか…?)

溜息一つ、立ち上がろうとしたその時、人の気配に気が付く。
慌ててマスクをつけて、立ち上がった。

「テルディアス・ブラックバリー?」

突然に投げかけられた言葉に驚き、振り向くと、知らない男が立っていた。

「貴様、何者だ? なぜ俺がここにいることを知っている?」

世間では自分は消えたと噂されているのは知っている。
それなのにこの男は自分の名を言い当てた。
しかもここは人が立ち入らないほどの山奥。

魔女の差し金か?

一瞬頭をよぎるが、あの魔女がこんなちんけな人間を送ってくるはずもないと思い直す。
なにより、闇を纏う者の、あのぞくりとした感じを持ち合わせていない。
みるからにただの人間だ。
ならば何故自分がここにいることを知っているのか。

「答える義理はないね」

すらりと剣を抜き放つ。

「俺の野望と幸せのために」

剣を横手に構える。

「死んでくれ!」

地を蹴ってテルディアスとの距離をあっという間に詰めた。
そのまま剣を下から上へと跳ね上げるが、剣は空を切っただけだった。
後ろに跳び、男との距離をとったテルディアス。
だがその間合いもあっという間に詰められ、上段振りかぶってきた男の剣を、素早く抜いた剣で受け止める。

「質問に答えろ」
「やなこった」

ぎゃり!

二人が距離をとった。

「知りたけりゃ俺を倒してみろ!」
「そのつもりだ」

再び間合いが詰められ、剣と剣がぶつかり合った。











洞窟をこれでもかと睨み付けるキーナ。
探しに行きたいけど、サーガが珍しく真剣な顔をしていたし、ここは大人しく言うことを聞いて待っていたほうがいいのだろうけど…。
でも、もう手の届く所にテルがいるのだろうと思うと、いてもたってもいられないのだけど…。
でも、でも、でも…。
さっきから思考は堂々巡り。

「キューちゃん…、行っちゃだめかな?」

お目付け役のキューちゃんに問い質すも、フルフルと横に動くだけ。
つまりはノー。
キューちゃんも何かしらの危険を感じ取っているみたいではある。
だけど、だけど、だけど…。

「まだかな~? テル、いないのかな~?」

じりじりじりとキーナはサーガの帰りを、今か今かと待ち続ける。








頬を生温かいものが流れ落ちる。
血だ。
少しかわしきれなかった剣先が頬をかすめたのだ。
正面にふらりと立つ青年を睨み付ける。
あまりにも自然体過ぎて攻撃を仕掛けるのに躊躇する。

(こいつ…強い!!)
剣を構えなおす。

(お貴族様のちゃんばら剣術なんかじゃない! 死地を乗り越えてきた剣だ!)

フードの奥で鋭くこちらを睨み付けてくる。

(だが…)
「ここで終わるわけにゃいかねえんだ!!」

地を蹴り、テルディアスに押し迫る。
相手も同時に地を蹴った。
ギャギイン!!
剣と剣がぶつかりあう。
2度、3度剣を交差させ、隙をついてテルディアスの死角に潜りこんだ。

(ここだ! このフードの死角から…!)

剣を跳ね上げた。

バッ!

切ったのはフードだけだった。
読まれていたのか、テルディアスの体がぎりぎり間合いの外にいた。

(浅い!)

するとそのフードの中から出てきた顔は…。
銀髪、尖った耳、青緑の肌…。

「な…」

噂では聞いたことがあった。だが…、

「ダーディン?!」

実物を見るのは初めてだった。
慌てて顔を隠そうとするテルディアス。
だがすでにフードは役に立たなくなっていた。

(ダーディンにされた人間…。本当にいるのか?!)

キーナの話を聞いてはいたが、やはりどこか半信半疑だった。
何かの見間違えか、単なる妄想だと思っていた。
だが…、今目の前にいるのは紛れもなく、ダーディンだった。








「う…、うあ…」

必死に顔を隠そうとするが最早何も打つ手はなかった。
目の前のちびい男がフードを切り裂いてしまったせいだ。
そのちびい男は自分の顔を見るなり、驚愕の色を滲ませた。
恐怖、畏れの感情がちびい男から発せられるのがわかる。
昔の記憶が呼び覚まされる。

とある町でダーディンの顔がばれ、半殺しの目にあいながら逃げ回ったこと。
その時の住民達の眼差しは、今目の前にいるちびい男と同じ目をしていた。

(「信じるよ」)

突然頭の中でよく知った声が響いた。
自分の姿を見ながらも怖がらずに普通に接してくれた女の子。
自分に笑顔をくれた、自分に普通をくれた、あの女の子。

(大丈夫だ…。落ち着け。俺にはキーナがいる)

自分の存在を当たり前のように受け入れてくれる人がいる。
自分の存在を信じてくれる人がいる。
心が落ちついてくるのを感じた。
片手に持っていた剣を両手で持ち、構えなおす。
そして、地を蹴った。








(早い!!)

振り下ろされる剣にぎりぎりでタイミングを合わせる。

ギャガン!!

(お、重い…?!)

今までと比べものにならないくらいに重い剣だった。
今までは遊びだったとでもいうのか?

「お前は生かしてはおけん。死ね」

非情な言葉が発せられた。
目の前の男ならばそれを確実に実行することができるだろう。
サーガの背筋が一瞬寒くなった。

「…んで、たまるかあ!!」

途端にサーガの周りに風が急速に集まり、

「風巻(カウ・ギリ)!」

風が渦を巻いた。













そして、その洞窟の奥で、目を覚ました者がいた。
ゆっくりと体を起こし、安眠を邪魔する者達を排除せんがため、動き出した。












ふわり
洞窟の中から風が吹いた。

(風? 魔法の風だ!)

誰かが故意に風の精霊を使役している。
誰が? 何のために?

(中で何か、起きてる?!)

洞窟の中で凶悪な妖魔でも現れたのだろうか?
それともテルが?
でも何のために?
いたたまれなくなったキーナは、キューちゃんを見た。
キーナの動きを警戒するかのように、キーナの周りを飛び回っている。
このままでは洞窟に行けない…。

(おし!)

キーナは決意した。

「キューちゃん♪」

ずずいっとキューちゃんに近づくと、

「ゴメン!!」

一気に雪の中に押し込んだ!
念の為雪を盛って盛って盛って盛って…。
これでもかというくらいに雪を盛って、ぺしぺし固める。
これで少しは時間を稼げるはず。

「よおっし!」

キーナは洞窟めがけて飛び降りた。

(テル! 今行くよ!)

再び風の精霊がキーナの側を走り抜けた。
















洞窟の奥。
二人の男が距離をとって対峙していた。
サーガは上に、テルディアスは下に剣を構え、二人の間を風の精霊が忙しく飛び回っていた。
そして同時に言葉を放つ。

「「風斬(カウ・ザ)!!」」

同時に、風を纏わせた剣を振り上げ、振り下ろす。
風の精霊はその言葉に従い、全てを切り裂く刃となって虚空を走る。
二人の丁度中間地点で風の刃は交わった。

ヒュギュルウウ!!!

風の刃がお互いを削り合う。
そして、

バシュゥッ!

テルディアスの作った風の刃が消えた。

「なんだと!」

迫りくる風の刃。

「地(ウル)…」

とっさに結界を張ろうとしたが、風の精霊に行っていた意識をいきなり地の精霊に持って行くにはテルディアスには経験が足りなかった。

ザシャアッ

「ぐああ!!」

風の刃がテルディアスを飲み込んだ。

「やったぜ!」

サーガの口から思わず歓声がもれる。

(奴の魔力で大分相殺されたとはいえ、魔力は俺のが上!)

あちこち服を切られたテルディアスがサーガを睨み付けた。
相殺されたせいか、皮膚を傷つけるまではいかなかったようだ。

(つまり、魔法での戦いとなれば…)
(勝てる!)
(負ける!)

二人は同時に違う答えを導き出した。
そしてそれがその後の戦況を左右する答えでもあった。

だがしかし、

どすん!

突然響いた地響きの音によって、二人の戦いは中断された。
音のほうを振り向くと、こちらを睨み付ける鋭い瞳。

ぐるるるるるるるるる…

唸り声。
伝説の存在とも言える竜が、二人の目の前にいた。
固まる二人。
そして、

グオオオオオオオオオオオオオオ…

竜が吠えた。

「うわあああああああああ!!!」

我に返った二人が同時に竜に背を向けてダッシュする。

「やい! てめえ! 竜の巣なんぞに何の用があったんだよ!」
「っ、そうだ!」

サーガに指摘され本来の用事を思い出したテルディアス。

「あることを尋ねに…」

振り返ると、竜の口元が何やら光り出していた。

「まずい! ブレスを吐く気だ!」
「なにい!!」

竜のブレスは人の魔法で作り出す熱源の何倍とも言われ、人などあっという間に消滅してしまうだろう。

「「どわあああああああああ!!!」」

二人は力の限り走った。
なんせここは一本道の洞窟。
体を隠すことも避けることもかなわない。
とにかく外に出なければ!
必死に走る二人の前に小さな入口の明かりが…、それと同時に、人影が視界に入った。

キーナだ。

壁に手を伝い、恐る恐る洞窟を進んでくる。
テルディアスの思考が停止した。

「あのバカ! あれほど来るなと…!」

サーガが舌打ちした。
横を並んで走るテルディアスが、前に出た。

「な…?」
(更に早く?!)

自分もほぼ全速力の状態なのに?

「この…!」

負けじとサーガも力を振り絞る。
だが、その差はじわじわと開いていく。

(なんで…、どうして…、縮まらない?)

早さには自信があった。
負けたことなどなかった。
だが、目の前の男は軽々と自分を抜いていき、そして、自分が見初めた少女に近づいていく。

(俺の…、幸せ…)

少女がこちらに気づいて笑いかけた。

「テル!!」

その笑顔は、自分に向けられたものではなかった。
テルディアスがキーナを抱きしめた。







力なく二人の元へたどり着いたサーガ。
抱き合う二人を見ているしかできなかった。

(俺…の…)

自分のものには、できなかった。
テルディアスがハッとして、正気に戻った。
べりっとばかりにキーナを離して、

「って! お前!! なんでここにいるんだ?!」

今更ながらのことを叫んだ。

「へにゃ?」

いきなり抱きしめられて、顔面衝突状態のキーナ。
まだ頭が回り切っていないようだ。

ゴオオオオオオオ………

背後からの不気味な音にサーガとテルディアスが現状に気づく。

「やべえ! 来るぞ!」
「分かってる!」

二人はキーナを庇うように立ち、各々精霊を呼び出す。

「水(クア)…」
「風(カウ)…」

ゴウッ!!

竜の口から灼熱の炎が吐き出された。

「「壁(ロー)!!」」

二人同時に叫ぶと、風と水の結界が二重に張られた。

ドオウ!!

「うわきゃあ!」

突然の熱風にキーナが叫び声をあげた。

「あぢいようテル~~~~!!!」
「我慢しろ!!」

熱風で抑えられているだけでもましなのだ。
結界が解けたらならば、自分たちなど一瞬で消えてしまうだろう。

「このままじゃ動けねえぞ!」

サーガが叫ぶ。
結界を張ったまま後退、できなくもないが、風と水、二重に張られている結界を動かすのは容易ではない。

「分かってる! だが…」

このままでは消耗するだけ。
それは分かっているが。

「僕もやる、僕もやる!」

キーナが手を挙げた。

「地(ウル)…」
「「地(ウル)はやめろーーー!!!」」

テルディアスとサーガが同時に叫ぶ。
この状況で地の力を呼び起こしたりなんぞしたら…。
ご想像にお任せします。

「あ、そか」

事の次第を理解したキーナ。
ぺろっと舌を出してどんまいどんまい。
のんきだな。
火だから…
と少し考えて、手をポンと打つ。
何かいい考えでも閃いたか?

「火(イラ)…」
「「え?」」

二人同時にキーナの唱えた言葉に反応する。
てっきりテルディアスの水の力を強化するものだと思っていたからだ。

「壁(ろー)!」

キーナの言葉に反応し、火の精霊たちが凝縮し、散会した。

ゴオ!!

水と風の結界よりも、遥かに結界域の広い結界が出現した。
ブレスを遮り、その熱風さえも遠ざけてしまう。

「「な…」」

あまりの事に声を失う二人。
そして、竜も目を見張った。
猛る炎の中にゆらめき立つ人影。
赤い髪、赤い瞳、赤い衣に身を包んだその人影は…。
竜の瞳が細められ、それを召喚した少女を見つめた。
そして、竜はブレスを吐くのを止めた。

突然ブレスがなくなり、驚く二人。
だがしかし、

『何故ここへ来た。小さき者達よ』

竜が喋った!
何故竜がブレスを吐くのを止め、話しかけてくれたのか…。
それは多分…。
テルディアスがくるりと後ろを振り返る。
へにゃりとした笑顔を向けてくるキーナ。
きっとこいつが原因なんだろうなと思いつつ、だからと言って確かめる術もなし。
諦めたテルディアス。

だがせっかくの好機なので使わせてもらわない手はない。
勇気を振り絞り、声も振り絞る。

「わ、我が名はテルディアス・ブラックバリー。貴殿に危害を加える気はない。太古より知恵の宝庫である竜族の貴殿に尋ねたいことがあって参った次第。もしご存じならばお教え頂きたい!」

竜がテルディアスを見つめた。

『申してみよ…』
「四大精霊の宝玉の所在…」

サーガが驚いてテルディアスを見た。
キーナは首を傾げている。
竜は嘲笑うようにテルディアスを見た。

『それは異なこと。そればかりは竜族も預かり知らぬことだ』
「な?…」
『その方ら、人間の方がよく知っているのではないか?』
「え?」

思わぬ答えに動揺するテルディアス。
人の方が知っている?

『いつの頃より在ったのか、誰も知らぬ宝玉。それを操るは人のみ。世界に混沌が訪れた時、それは自ずと現れ、秩序を正すだろうと言われている。

世界において人とは精霊の代理人。
この世界の秩序を守るもの。
しかし人は不安定なものでもあり、自ら混沌をもたらす。
故に精霊は最も世界が不安定になった時、己の力を直に継ぐ者を使わし、宝玉を使い、世界に安定をもたらす。

これが我ら竜族に伝わる伝承だ。故に、我らに聞くはお門違いだ。おぬしら人族に聞くがよい。その者らの血を受け継ぐ者達が管理していると我は聞く』
「血を、受け継ぐ者…」
『聞きたいことはそれだけか?』
「ああ、それだけで十分だ。感謝する」
『なに…、私も久々に面白いものを見た…』

?マークの浮かぶ三人。
面白いものって?
だが竜は早く行けと急かしただけだった。
これ以上刺激したらやばいとサーガもテルディアスも大人しく竜の言葉に従った。
キーナだけは、初めて見る竜をもっと間近で見たいと思いつつ、だけども去っていく二人を追わねばならぬと少し躊躇していたが、竜にバイバイと手を振り、二人を追って行った。

その姿を見送りつつ、竜は少し溜息をついた。

『百年ぶりか。光の御使いよ。また世界は混沌に満ちているのか…。それに、ヒズミも出来始めているのか…』

何かを見つめるかのように竜が天を仰ぐ。

『それなのに何故…、光の御使いしかいなかった?! 対為す者がいなければ、世界を安定させることはできない・・・』

竜の瞳が険しさを増す。
地に属する竜族にさえも、対を為す者の気配を探ることはできなかった。
ヒズミだけが、大きさを増していく…。
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