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奴の名はサーガ
温泉騒動~その3
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どん!
空気を振るわせる大きな音がすると、湖から触手が踊り出てきた。
「な、なんだ?!」
「グールだ。底に潜んでいたんだ」
ちなみにグールとは、水棲系の妖魔を指す総称であります。
「なるほど…こいつのおかげで…」
ギラリとグールを睨む。
「キーナのしりが拝めたってわけか! ありがとう!!」
そう言うと風の魔法を唱え、空へ駆け上がって行った。
「死にさらせ!!!」
テル君が巨大な岩を投げたが、それは届かず湖に落ちた。
ドバアッ!
グールの本体が湖から出てきた。
三人を飲み込むつもりだ。
触手が気味悪く動き、テルディアスとサーガに襲い掛かる。
「風剣《カウイサ》!」
テルディアスが風の魔法で剣を作り出す。
近づく触手を片っ端から切り刻んでいく。
(剣技かっくい~♪)
おいおい、キーナ、見とらんで隠れなさい。
大事なものが見えちゃうかもしれないでしょうが。
湖上空では、自分の手首を見つめるサーガ。
そこにはガッチリと縛られた両腕。
「コレ外してもらうの忘れた…」
そうだ。それを外してもらうためにテルディアス達の元へ飛んだのに。
キーナのおしりに気を取られて忘れてしまっていたのだ。
これを自業自得という。
触手がサーガに向かって伸びてきた。
「うわっ!」
すんでのところでかわすが、触手は次々と、ほんとに次から次に、これが女の子だったらいいのにとのアホなことを考えつつ、
「やっぱ外さねーと動きづれー。地《ウル》系は苦手だけどしゃーねーなー」
一旦気を落ち着け、両手首に意識を集中させる。
「うおおおおおおおおおおお!!!」
ビキッ、ビキビキビキ…
繊維の切れる音がする。
「があああああああああああああ!!!」
ぶちいっ!!
一気に引きちぎった。
「っしゃあ! 取れたぜ! 風斬巻《カウザギリ》!」
回転する風の刃が、伸びくる触手たちをぶっち切る!
そのまま風の刃はグールの周りを飛び交い、ほぼすべての触手をぶった斬ってしまった。
オオオオオオオオオ…
グールの悲鳴か、重低音が鳴り響く。
「風よ、我が身に纏いて力を成せ」
テルディアスが呪文を唱えると、風がテルディアスの周りに巻き起こる。
そしてそれを剣へと集約していく。
「風よぉ!」
サーガも風を呼び集める。
風は勢いを増して二人の周りに集まって行く。
(凄い風…、サーガの方が…、少し、大きい?)
集約されていく風の量が、サーガの方が大きいようにキーナは感じた。
二人が揃って呪文を完成させる。
「「風斬《カウザ》!」」
解き放たれた二刀の風の刃は、まっすぐグールへと突き進み、真横と上空から十字を描くように四分した。
ザヴォシュ!!
オオオオオ…
悲鳴のような音が鳴り響き、グールが四散し始めた。
黒い闇が浄化されていくのか、淡い光を放ちながら。
「散ってく…」
「囚われた魂でもあったんだろう。この湖で死んだ者達の」
「僕みたいに引きずり込まれて、とか?」
「ああ…」
「そうなんだ…」
グールなどの妖魔は人の恐怖などの負の感情をを取り込み大きくなっていく。
一度囚われると妖魔が消滅しない限りは永遠に囚われたままになってしまうのだ。
そしてその恐怖心などがさらに妖魔に力を与えていく。
消滅する時に見せる光は、そんな魂たちの喜びの光なのかもしれない。
(せめて、冥福をば…)
キーナが手を合わせた。
すると、それに答えるかのように、一段と光を増しながら、グールは消えて行った。
(こんなに派手だったか?)
テルディアスは疑問に思ったが、まあ、こんなに大きな妖魔を倒すことなども稀なことなので…。
そんなもんかと納得した。
「怪我はないか? 大丈夫か? キーナ」
キーナの背後からサーガが現れ、キーナの肩に手を置く。
「うん、大丈夫…」
え? 背後? 茂みに隠れておりますけどね、隠れるというのは湖から見える方向から隠れているということで、背後は…森しかないはずなので…。
感情が高ぶった時、一番呼びやすいのは火の精らしいですね。
つまり火の精を瞬時に集め、
「火球《イラテマ》あ!!!!」
ちゅどーん
「なんだぁ?!」
振り向いたテルディアスが見たのは、燃えながら飛んでいくサーガのアホだった。
「なんでこっちにいるんだよう!」
キーナが叫んだが、サーガの耳には最早届いてはいない…。
「こいつの始末はまかせろ」
「よろしく」
うつ伏せ状態のサーガの足を持って引きずりながら、自分たちの入っていた側の温泉にテルディアスは戻って行った。
きっとサーガの顔は傷だらけになっているであろう。
汚れてしまったのでもう一度温泉で軽く体を流す。
さすがに首まで浸かる気にはもうなれなかったが。
「一波乱あったけど気持ちよかった!」
風の力で体を乾かし服を着る。
その間に目を覚ましたのか、隣からまたやいのやいのと声が聞こえてきていた。
「また何かやってる…」
まあ主に聞こえてくるのはサーガの声なのだけど。
「おっと、そーだこれこれ。テルに渡さなきゃね」
畳んだマントの上に置いておいた二つの赤い耳飾り。
これを渡すためにも追いかけていたのだ。
忘れぬうちにさっさと渡してしまおう。
とキーナがマントを羽織った。
「やい! テルディアス! 俺は風ひいてもいいってのか!」
「馬鹿は風ひかん」
「誰が馬鹿だー!! ちきしょう放せーーー!!」
両手両足を地の力で固定されてしまったサーガが頑張って暴れているが、そんなもの無視して体を流したテルディアスが服を着る。
風の力しか使えないサーガではちょっとやそっとでは外せないだろう。
ああやっと平穏が…
と考えていたテルディアスの耳に、
「テ~ル!」
能天気に自分を呼ぶ少女の声が聞こえた。
もういいかという問いかけかと思い振り向くが、そこにはすでに岩陰から頭がのぞいていた。
「キーナ?!」
「お届け物~♪」
ひょいっと岩を飛び越えて、能天気少女がこちらに入ってきた。
だがその岩陰には…
「き、キーナ?!」
縛り付けられたまるだしのサーガが…
「え?」
思わず声のした方へ視線を走らせる…
「馬鹿!! 見るな!!」
テルディアスが猛ダッシュ!
間一髪。
テルディアスの指と腕に阻まれ、危ない所に目が行くことはありませんでした。
さすがに自分が何をしたかを理解したキーナ。
「危うく汚いものを見るところだった…」
「汚くなーい!!」
ちゃんと洗っとるわー!
というサーガの声は無視。
「お前ももう少し節度をわきまえてだな…」
テル君の説教。
「で? 何しに来た?」
一応用事を聞いてやるテル君。
「おお! そうそう! はい」
差し出された手に乗っていたものは、赤い双子石の片割れ。
もともとテルディアスの右耳につけていたものだった。
「離ればなれになってもこれをつけてれば見つけられるんでしょ? だから…」
あいもかわらずこの少女は、自分を真っ直ぐに見つめてくれる。
「もう、置いてかないでね」
少女にとっては何気ない一言なのであろう。
だが、なぜこの少女の言葉は、こうやすやすと自分の中に入ってくるのか。
不思議な温かさを感じつつ、テルディアスは少女の掌の石を取る。
「ああ、もう二度と、置いて行かない。約束する」
誓いの言葉を立てて。
キーナの顔が喜びに染まる。
「よかった。テルが一人で寂しくて泣いてるんじゃないかって心配で心配で…」
「ガキか…」
なにやらお互いの意識下の違いはあるようだけど、結果オーライ?
そしてそのやり取りを聞いていたサーガ。
自分がやっと見つけた幸せかもしれないものは、手に入らないものだと見せつけられた気がした。
(どんなに離れていてもまた会いたいと思うからあんたに渡すのよ…)
スターシャの言葉が思い出される。
天を仰ぐと、空が広がっている。
どこまでもどこまでも広がる空が。
「俺だって、一緒にいたいと思ってるさ…」
誰にともなく呟いたサーガの言葉は、風に乗って消えて行った。
空気を振るわせる大きな音がすると、湖から触手が踊り出てきた。
「な、なんだ?!」
「グールだ。底に潜んでいたんだ」
ちなみにグールとは、水棲系の妖魔を指す総称であります。
「なるほど…こいつのおかげで…」
ギラリとグールを睨む。
「キーナのしりが拝めたってわけか! ありがとう!!」
そう言うと風の魔法を唱え、空へ駆け上がって行った。
「死にさらせ!!!」
テル君が巨大な岩を投げたが、それは届かず湖に落ちた。
ドバアッ!
グールの本体が湖から出てきた。
三人を飲み込むつもりだ。
触手が気味悪く動き、テルディアスとサーガに襲い掛かる。
「風剣《カウイサ》!」
テルディアスが風の魔法で剣を作り出す。
近づく触手を片っ端から切り刻んでいく。
(剣技かっくい~♪)
おいおい、キーナ、見とらんで隠れなさい。
大事なものが見えちゃうかもしれないでしょうが。
湖上空では、自分の手首を見つめるサーガ。
そこにはガッチリと縛られた両腕。
「コレ外してもらうの忘れた…」
そうだ。それを外してもらうためにテルディアス達の元へ飛んだのに。
キーナのおしりに気を取られて忘れてしまっていたのだ。
これを自業自得という。
触手がサーガに向かって伸びてきた。
「うわっ!」
すんでのところでかわすが、触手は次々と、ほんとに次から次に、これが女の子だったらいいのにとのアホなことを考えつつ、
「やっぱ外さねーと動きづれー。地《ウル》系は苦手だけどしゃーねーなー」
一旦気を落ち着け、両手首に意識を集中させる。
「うおおおおおおおおおおお!!!」
ビキッ、ビキビキビキ…
繊維の切れる音がする。
「があああああああああああああ!!!」
ぶちいっ!!
一気に引きちぎった。
「っしゃあ! 取れたぜ! 風斬巻《カウザギリ》!」
回転する風の刃が、伸びくる触手たちをぶっち切る!
そのまま風の刃はグールの周りを飛び交い、ほぼすべての触手をぶった斬ってしまった。
オオオオオオオオオ…
グールの悲鳴か、重低音が鳴り響く。
「風よ、我が身に纏いて力を成せ」
テルディアスが呪文を唱えると、風がテルディアスの周りに巻き起こる。
そしてそれを剣へと集約していく。
「風よぉ!」
サーガも風を呼び集める。
風は勢いを増して二人の周りに集まって行く。
(凄い風…、サーガの方が…、少し、大きい?)
集約されていく風の量が、サーガの方が大きいようにキーナは感じた。
二人が揃って呪文を完成させる。
「「風斬《カウザ》!」」
解き放たれた二刀の風の刃は、まっすぐグールへと突き進み、真横と上空から十字を描くように四分した。
ザヴォシュ!!
オオオオオ…
悲鳴のような音が鳴り響き、グールが四散し始めた。
黒い闇が浄化されていくのか、淡い光を放ちながら。
「散ってく…」
「囚われた魂でもあったんだろう。この湖で死んだ者達の」
「僕みたいに引きずり込まれて、とか?」
「ああ…」
「そうなんだ…」
グールなどの妖魔は人の恐怖などの負の感情をを取り込み大きくなっていく。
一度囚われると妖魔が消滅しない限りは永遠に囚われたままになってしまうのだ。
そしてその恐怖心などがさらに妖魔に力を与えていく。
消滅する時に見せる光は、そんな魂たちの喜びの光なのかもしれない。
(せめて、冥福をば…)
キーナが手を合わせた。
すると、それに答えるかのように、一段と光を増しながら、グールは消えて行った。
(こんなに派手だったか?)
テルディアスは疑問に思ったが、まあ、こんなに大きな妖魔を倒すことなども稀なことなので…。
そんなもんかと納得した。
「怪我はないか? 大丈夫か? キーナ」
キーナの背後からサーガが現れ、キーナの肩に手を置く。
「うん、大丈夫…」
え? 背後? 茂みに隠れておりますけどね、隠れるというのは湖から見える方向から隠れているということで、背後は…森しかないはずなので…。
感情が高ぶった時、一番呼びやすいのは火の精らしいですね。
つまり火の精を瞬時に集め、
「火球《イラテマ》あ!!!!」
ちゅどーん
「なんだぁ?!」
振り向いたテルディアスが見たのは、燃えながら飛んでいくサーガのアホだった。
「なんでこっちにいるんだよう!」
キーナが叫んだが、サーガの耳には最早届いてはいない…。
「こいつの始末はまかせろ」
「よろしく」
うつ伏せ状態のサーガの足を持って引きずりながら、自分たちの入っていた側の温泉にテルディアスは戻って行った。
きっとサーガの顔は傷だらけになっているであろう。
汚れてしまったのでもう一度温泉で軽く体を流す。
さすがに首まで浸かる気にはもうなれなかったが。
「一波乱あったけど気持ちよかった!」
風の力で体を乾かし服を着る。
その間に目を覚ましたのか、隣からまたやいのやいのと声が聞こえてきていた。
「また何かやってる…」
まあ主に聞こえてくるのはサーガの声なのだけど。
「おっと、そーだこれこれ。テルに渡さなきゃね」
畳んだマントの上に置いておいた二つの赤い耳飾り。
これを渡すためにも追いかけていたのだ。
忘れぬうちにさっさと渡してしまおう。
とキーナがマントを羽織った。
「やい! テルディアス! 俺は風ひいてもいいってのか!」
「馬鹿は風ひかん」
「誰が馬鹿だー!! ちきしょう放せーーー!!」
両手両足を地の力で固定されてしまったサーガが頑張って暴れているが、そんなもの無視して体を流したテルディアスが服を着る。
風の力しか使えないサーガではちょっとやそっとでは外せないだろう。
ああやっと平穏が…
と考えていたテルディアスの耳に、
「テ~ル!」
能天気に自分を呼ぶ少女の声が聞こえた。
もういいかという問いかけかと思い振り向くが、そこにはすでに岩陰から頭がのぞいていた。
「キーナ?!」
「お届け物~♪」
ひょいっと岩を飛び越えて、能天気少女がこちらに入ってきた。
だがその岩陰には…
「き、キーナ?!」
縛り付けられたまるだしのサーガが…
「え?」
思わず声のした方へ視線を走らせる…
「馬鹿!! 見るな!!」
テルディアスが猛ダッシュ!
間一髪。
テルディアスの指と腕に阻まれ、危ない所に目が行くことはありませんでした。
さすがに自分が何をしたかを理解したキーナ。
「危うく汚いものを見るところだった…」
「汚くなーい!!」
ちゃんと洗っとるわー!
というサーガの声は無視。
「お前ももう少し節度をわきまえてだな…」
テル君の説教。
「で? 何しに来た?」
一応用事を聞いてやるテル君。
「おお! そうそう! はい」
差し出された手に乗っていたものは、赤い双子石の片割れ。
もともとテルディアスの右耳につけていたものだった。
「離ればなれになってもこれをつけてれば見つけられるんでしょ? だから…」
あいもかわらずこの少女は、自分を真っ直ぐに見つめてくれる。
「もう、置いてかないでね」
少女にとっては何気ない一言なのであろう。
だが、なぜこの少女の言葉は、こうやすやすと自分の中に入ってくるのか。
不思議な温かさを感じつつ、テルディアスは少女の掌の石を取る。
「ああ、もう二度と、置いて行かない。約束する」
誓いの言葉を立てて。
キーナの顔が喜びに染まる。
「よかった。テルが一人で寂しくて泣いてるんじゃないかって心配で心配で…」
「ガキか…」
なにやらお互いの意識下の違いはあるようだけど、結果オーライ?
そしてそのやり取りを聞いていたサーガ。
自分がやっと見つけた幸せかもしれないものは、手に入らないものだと見せつけられた気がした。
(どんなに離れていてもまた会いたいと思うからあんたに渡すのよ…)
スターシャの言葉が思い出される。
天を仰ぐと、空が広がっている。
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