キーナの魔法

小笠原慎二

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奴の名はサーガ

サーガとお別れ

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とある街道を進む三人の人影。
どうやらサーガも無事に戒めを解いてもらえたらしい。
男二人の前をルンルンと歩を進めるキーナ。
本当に元気だな。

「ほよ?」

キーナがしゅたたたっと走り出す。
と、道が二手に分かれ、何やら看板が立っていた。
キーナには読めないが、どっちにいくとあっちだと書いてあるらしかった。

「テルっ! サーガ! 分かれ道!」

看板を指さしながら二人に向かってぶんぶん手を振る。
その様子を見ながら、

(元気だな…)
(ガキだからだろう…)

と二人が呟いたことをキーナは知る由もない。

「これからどすんの?」

キーナがテル君に尋ねる。
山を下りてきたはいいが、どこへ向かうのか分かっていない。
というかどこへ向かえばいいのか分からない。

「そうだな…とりあえず、四人の血を引くという人達を探してみようとは思うが、いかんせん手掛かりがまったくない」
「む~ん…」

キーナとサーガが同時に唸った。
竜もさすがにそこまでは知らない。
あとは自分たちで情報を集めて、探すしかない。

(それに…)

テルディアスは内心考える。

(キーナが御子として目覚めるのはまだ時間もかかるだろう。光の者達から逃げるいい口実にはなる。だが…)

おじいさんが最後に言った言葉がテルディアスには引っかかっていた。

『もし御子と知ったらお前から離れていってしまうかもしれん…』

(あれはどういうことなんだ…?)

自分が元の姿に戻るための希望として、キーナを手放すわけにはいかない。
それになにより…。
テルディアスは思考を止めた。
考えてはいけないような気がしたからだ。

「そのことなんだがよ~、俺、一つ知ってるかも…」

サーガが呟いた。

「え?!」

キーナの顔が煌めいた。
テルディアスの顔は曇った。

「噂で聞いたんだが…、ここよりずっと南の方の国に水の王国って呼ばれてる国があって、その国の巫女祭だかなんだかで宝玉を使うとかなんとか。なんでもえらい希少な宝玉らしいぜ?」
「それだべさ!」

キーナがびしっとサーガを指さす。
人を指さしてはいけません。

「行くべさ! テル!」
「べさ?」

とりあえずおかしな口調にテル君つっこんだ。

「んじゃ、お前らはこっちだな」

とサーガが左の道を指さした。
左がその国の方面へ行く道らしい。

「お前ら?」

お前らとは? サーガは?

「サーガも行かないの?」
「行かねーよ」
「えー!! 行かないのぉー?!! RPGじゃ一度仲間になったらずっと一緒だよお?!」

キーナがサーガに掴みかかった。

「意味わかんねーよ!!」

確かに意味わからんだろう。
この世界にRPGなどない。
まあキーナの言いたいことは分かるけどね~。
テル君がキーナをサーガからひっぺがす。

「だいたい俺は用心棒であって、仲間じゃねーだろ」

ごもっとも。
キーナに掴まれた首元を直した。

「む~…」

煮え切らない顔のキーナ。

「じゃ、今から仲間!」

とびしっと仲間判定をだすが、

「なるかよ…」

あっさり断られた。

「運がよけりゃまた会えんだろ」
「え~~~~~~」

納得できないキーナであった。
ちらりっとサーガがテルディアスを見上げる。

「俺の情報料は高いぜ?」
「何が望みだ?」

ちらりっとキーナを見て、

「そうさな…」

下げられた視線の意味を読まんとするテルディアス。
自分に向けられた視線に?となるキーナ。
サーガの行動は素早かった。

キーナの手首をつかむと、ぐいっと自分の方へ引き寄せ、キーナの顔に自分の顔を近づけて…。
一瞬のことで反応が遅れたテルディアスの目が開かれる。

「これでチャラにしてやるぜ!!」

キーナからパッと身を離すと、テルディアスにあっかんべーをくれてやる。
そのサーガの首元を狙い、銀色の光が一閃した。

「どうわっ!!」

すんでのところで頭を下げたサーガ。
逃げきれなかった髪がはらはらと舞い落ちる。
サーガを叩こうと用意された手を使えなくなってしまったキーナが固まっていた。

イマノハイッタイ…?

もちろん、サーガを狙ったテル君の剣です。

「お~あぶね~あぶね~。じゃ~な~」

すたこらさっさとサーガは右の道を走り去って行ってしまった。
ともすれば追いかけて行ってしまいそうなテルディアスを、キーナが必死になだめる。

「テル! テル! 本当に死んじゃうから!」

さすがにそんなの見たくないです。

「あの時本当に埋めておけばよかった…」

テルディアスは本気で後悔していた。

「消毒するか? 口が腐るぞ?」

本気で言ってるよテル君。

「口じゃないから!」

そう、口ではないのです。

(ぎりぎり…ね)

でもあと1㎝でもずれていたら…。
わざとなのか、そうではないのか、キーナには分からなかった。
まあもし口だったら…、きっと問答無用で焼いてるだろうけど。









「減るもんでもなし、いーじゃねーかキスくらい」

べろべろべろ

と去ってきた道に向かって舌を出すサーガ。
減る減らないの問題でもないんだけどね。

(あんだけ見せつけられて、一緒になんか行けるかよ)

何気に一応気にしていたのね。
せっかく手に入れたと思ったら、すでに別の男のものだった、と…。
まあこいつにも同情の余地はあるのかな?

「は~あ…」

サーガが盛大な溜息をついた。

「また…、探しなおしか~…」

進む道の先には、何が待っているのか。
それは誰にも分からない。










「サーガ、行っちゃったね」

右の道を眺め、少し寂しげにつぶやくキーナ。

「俺たちも行くぞ」
「うん」

キーナの目に、歩き始めたテルディアスの背中が映る。
それは…

「キーナ?」

テルディアスが振り向くと、キーナが固まっていた。

「どうした?」

すぐにいつものキーナに戻った。

「ん…」

込み上げてくる熱い想いを、キーナは何と言っていいのか分からなかった。
でもとにかく嬉しいのは確かなので、それを素直に体で表現した。

「なんでもなーい!!」

と叫びながらテルディアスの背後に

どごおっ!

とタックルをかます。

「ぐばっ!!」

かなり勢いがついていた。

「お前は~~~~~…」
「あはははは~…」

背中をさすりさすりキーナを睨み付けるテルディアス。
笑ってごまかすキーナ。
しばらくお小言タイムとなりました。
まあ当然でしょ。
お小言を受けながらも、キーナは思った。

(よく分からないけど、ほっとしたんだ。この背中を、また見ていられるんだって!)

テルディアスの広い背中。
温かな気配。
すぐ横にいる安心感。
キーナがずっと追い求めていたもの。
だがそのことに、このニブチンは気づいていなかった。
分かっているのは、またテルディアスと一緒にいることができるということ。
だけだった。
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