キーナの魔法

小笠原慎二

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水の都編

水の宝玉

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静かだった。
ただ静かだった。
時を忘れ身を委ねていた。
サラサラと耳に心地よい音が流れていた。
ただそれだけだった。

誰かに呼ばれた気がした。
でも何故か起きようという気が起きない。
閉じられた瞼を開けるのが億劫だった。
そのまま眠っていたかった。
誰かの指が、唇を優しく撫でた。
重い瞼をゆっくりと開けて見る。

水の中だった。

水中をただ浮かんでいた。
どこかから湧き出た空気の泡が、疾るように傍を通り抜けていく。
宙に浮くかのように、水の中に浮かんでいた。

「あれ? 僕・・・」

息ができた。
言葉を発せた。
すぐ傍を何かが素早く通り抜ける。

「わっ」

驚いて声を出す。
通り抜けたものを目で追うと、先程の巨大なウナギのような生き物。
全身真っ白で、よく見ると体側に手足のようなものがあった。
ゆっくりとそれは近づいてくると、

「クゥ」

と小さくなき、スリスリと頭を擦り寄せてきた。

「へ?」

さっきは体に巻き付いてきたのに?
よく見ると、なんだか心配そうな目をしてこちらを伺っている。

「心配してくれてるの?」

そういって微笑むと、スルリと体を擦り寄せて甘えてきた。
















「きゃっほ~い!」

キーナの楽しそうな声が洞窟に谺する。
水中なのでそこまで広がりはしないが。
巨大ウナギのようなものの背に跨がり、キーナは凄い勢いで水底を目指している。

「そっか。水の精に認められると、水の中で呼吸もできるし、こうやって喋れるようにもなるのね」

水の中に不思議な音が響き、キーナの耳に届いた。

「水棲生物とも話ができるようになって合格? つまりイーダと話せるようになったら合格ってことだね? そんで鱗の所までご案な~いってわけだ!」

あっという間に水底が見えてきた。
そしてキラリと光る楕円形のもの。巨大ウナギ改めイーダが速度を落とす。
フワリとキーナがその背から降り、水底の鱗に近づいた。

「これが、竜の鱗・・・」

鱗を手に取り、にっこりとキーナは笑みを浮かべた。













イライライライライライライライライライライライライライライライライライライライラ
テルディアスのイライラが頂点に達しようとしていた。

(いくらなんでも遅すぎやしないか? 中で何かあったんじゃ・・・。初めて会った時も川で溺れてたし、さっきも溺れかけてたし、水と相性悪いんじゃないのか? だとしたら今頃・・・、まさか・・・)

嫌な映像がテルディアスの頭に浮かぶ。
途中で息ができなくなって溺れて沈んでいくキーナの姿。
考えたくはないが、時が経つほどに嫌な考えが頭に浮かんでくる。
後ろ手に縛られた両腕に力を込めつつ、テルディアスはイライラしながらキーナを待つ。
待つしかできない己が身が恨めしかった。
その時。

ずず・・・

と何かが近づいてくる音。

ずず・・・ず・・・

その音と微かな震動がどんどん近くなり、

バシャア!

突如、クアグーラから白く長いウナギのような生き物が飛び出してきた。
その背にはキーナが乗っていた。
驚き、呆気にとられるテルディアス。
キーナは器用にウナギの背から飛び降りて、一回転して着地した。
見事なものだ。

「ぷう」

と頭を軽く振り、水気を飛ばす。

「ただいま!」

まるで近所にお使いにでも行っていたかのような言い方だった。

「水の巫女でもない・・・」
「ましてや水の一族の者でもない者が・・・」
「竜の鱗を取ってきた・・・!」

その場にいた者達がざわめく。
テルディアスも複雑な心境であった。

(無事だったのはいいが・・・、あれは?)

さっきの長い白いのはなんだ?
しかしキーナはそんな周りの空気も全く気にせず、

「約束だよ! 王様! 水の宝玉を貸してくれるよね?!」

と無邪気に鱗を掲げてみせる。
王はその言葉に顔を手で押さえ、脱力した。

「ふ、フフ・・・。よもや本当にやり遂げてしまうとは・・・」

王はニヤリと笑うと、高らかに宣言した。

「よかろう。約束だ」

キーナ以外の者達がその言葉に凍り付く。
侍女が慌てて声を上げる。

「ナギタ王! 国宝ですよ! それを簡単に-」
「水の試練を乗り越えた。その者には宝玉を操れるだけの力があるという事だ。あとは、宝玉の意思に任せよう」

王の力強い視線に押され、侍女が引き下がった。

「仰せのままに・・・」
「なんかよくわかんないけど、宝玉は借りられるのよね?」
「そうだ」

一応キーナも少しは空気を読んだらしい。

「よかった。んじゃ、これ、返さなきゃね」
「え?」

侍女がなんのことかと振り向くと、キーナが鱗を持って振りかぶる所だった。

「イーダ!」

と鱗をぶん投げる。
するとクアグーラからイーダが飛び出してきて、ナイスタイミングで鱗を口でキャッチした。
そのままクアグーラに飛び込み、水面はしばらく波打っていた。

「ありがとー! また遊ぼうねー!」

満面の笑みで見送るキーナ。
呆けるその他面々。
通常の儀式であれば、儀式の終わりに水巫女の資格を得た者が、静かにクアグーラ内に返すものなのだが・・・。

「テル~、ただいま~」

その少女は楽しそうにテルディアスの元へ駆け寄っていく。
そして何があったかなどをテルディアスに向かってペラペラと話し始めた。

(なんという娘か・・・。水巫女でもない、ましてや水の一族の者でもない者が竜の鱗を取ってきた・・・。その上、あの竜の幼生が己の名を教えるなど・・・)

そう、イーダは竜の幼生だったのである。
昔々のとある契約により、クアグーラには竜の幼生が一匹、棲み着いているのである。
何年かすると交代してはいるようだが、竜よりも寿命の短い人間には分かっていない。
竜は気高き存在。己の名を容易く教えるようなことはしない。
水の王国にさえ、その名を知るものは、片手の指で数えられるくらいしかいないのだ。

(もしや・・・、だいぶ前から感じているあの違和感・・・。それに関係しているのか?)

王が真面目に色々悩んでいる中、テルディアスに水着の事を指摘されたキーナは、その恥ずかしさに今更気づき、急いで侍女の手からタオルをひったくり体に巻き付けていた。
テルのエッチ!などとあかんべえをして、こいつらは平和だった。










城の階段から大勢の人の足音が上がってきた。
宝玉の間に続く廊下にその人影が現われてくる。
鍵を持つ衛士、王、キーナとテルディアス、それに王国でも特に重要な役職にある三大臣達。
ゾロゾロと宝玉の間を目指す。

「良かったね! テル! もうすぐ宝玉手に入るよ!」

無邪気にテルディアスに笑いかけるキーナ。
テルディアスは後ろからの威圧感でハラハラしている。

(空気を読め空気を~・・・)

大臣達は王から説明を受けたのだが、納得しかねているのだ。

「宝玉の意思を確認してから」

という王の言葉に今は従っているだけ。
宝玉の意思というのがテルディアスにはよく分からないが、その最終試練みたいなものに合格できなければ、宝玉を借り受けることは難しいのだろうとは思っている。
キーナのことだから、なんとかなるのではないかとも思っていたりもしないでもないが。

複雑な思いを抱えつつ、宝玉の間の扉の前に立つ。
衛士が扉から離れた所の壁に触れ、現われた鍵穴に鍵を差し込む。
その後、壁に取り付けられた燭台を上下に動かした。

ガション

と音がして、扉の取っ手の部分がパカリと開く。

(変な造り・・・)

キーナが心で呟いた。
開いた取っ手の部分のノブのようなものを押すと、ギイイイイと扉が開いた。
正面雛壇の上、立派な台座の上に宝玉があった。
その後ろに、最初は暗くて見えなかったが、水の女神と思われる肖像画が飾ってあった。

「娘よ」
「うん」

キーナがたたたっと雛壇を駆け上がって行く。
皆その様子を静かに見守っていた。

「よっと」

キーナが最上段に飛び上がり、宝玉の前に立った。
そして宝玉に手をかけようとしたその時。
突然宝玉が光り出した。









キーナは自分がどうなったのかよくわからなかった。
ただ、とても気持ちのいい空間に浮かんでいることは分かった。

(これは・・・? なんだか、懐かしい・・・)

キーナは安心して身を委ねる。
そのままずっと寝ていたい気分だった。













青い光が空間を支配したかのようだった。
キーナを見ていたテルディアスが驚く。
キーナの髪が青くなり、長くたなびき始めた。
その瞳も深い青色に変わり、表情も大人っぽく見える。
そのキーナの後ろに、大きな人影が立った。
後ろの肖像画と同じ人物。水の女神だ。

「な・・・」

あまりのことに言葉を忘れた。
王や大臣達も開いた口が塞がらない。


『我が愛しき水の民こども達。水は留まるものに非ず。流れるものなり。今再び流れる時が訪れた。流れる水は新しき栄えをもたらすであろう』


不思議な声だった。
落ち着くような柔らかい声音。
もっと聞いていたいと思わせる、慈愛に満ちた優しい声だった。

「水の・・・、女神様・・・」

大臣達がおののく。

「これで分かったろう? 大臣達。私の言いたいことが」

王が大臣達を見据える。
大臣達は顔を見合わせていたが、両手を前で交差し、片膝を付き、頭を垂れた。
水の王国の最上位の礼式だ。

「仰せのままに」

王は頷いた。

「水の女神よ。あなたの望むままに」

王も同じように頭を垂れた。
女神は微笑むと、青い光の中に消えていった。
光が消えると同時に、キーナの姿も元に戻る。

「! キーナ!」

テルディアスが呼びかけると、目を瞑っていたキーナが今起きたような顔をする。

「うにゃ?」

と言ってなにやら辺りをキョロキョロ。

(なんだかとっても気持ちのいい所にいた気がしたけど・・・、気のせい?)

キーナはあの空間にもっといたかった。
まあ夢ならしょうがないと、宝玉を手に取り、階段を駆け下りてきた。
王も大臣達も、なにやら晴れ晴れとした顔をしていた。

「大事に、しておくれ」
「うん! 終わったら必ず返しに来るからね!」

そういってにっこり微笑むキーナの笑顔に、最初難しい顔をしていた大臣達も、力が抜けたようだった。
何故か皆感じていたのだ。
この娘ならば、必ず約束通り、宝玉を返しに来てくれるのだろうと。













街の通りを歩く二人。
キーナの足はルンルンだ。

「よかったねぇテル!」
「あん?」
「あと3つ手には入ったら元の姿に戻れるんでしょ?」

キーナが宝玉をかざす。

「・・・ああ」
(だが、他の宝玉もそう易々とは手に入るまい・・・)

などとテルディアスが真面目に考え込んでいると、

「おっと」

宝玉を弄んでいたキーナの手から宝玉が滑り落ちる。

「おっとっと」

と追いかけるキーナが間違えて宝玉を蹴り飛ばし、あらぬ方向へと宝玉が転がっていく。

「ぎゃー! 転がってくー!」

と必死に追いかけるキーナ。

(その前に失くすかもしれない・・・)

と本気で心配になるテルディアスだった。

「大体なんの用があるんだ?」

宝玉をなんとか捕獲して一安心したキーナが答える。

「うん、鍵屋のおじさんと約束したの。道具くれる代わりに宝玉盗ったら見せに行くって」
(何故?)
「あ、ここだ。こんにちは~」

テルディアスは疑問に思いながら店の戸を潜る。
店の奥にいた老人が、読んでいた新聞らしきものを机に畳み置く。

「はいはい」

とこちらを向いて、目をむいた。

「こんにちは」

キーナが片手を上げて明るく挨拶。
テルディアスはなんとなく意味が分かって顔を伏せた。
あの図面をもらった老人だった。

「お嬢ちゃん?!」
「約束通り来たよ~」
「ま、まさか・・・」

テクテクと歩み寄り、その手の中にある宝玉を見せる。

「これが水の宝玉だよ」

神秘的な海の青さを秘めたその玉は、まるで中で水が流れているかのように見える。
その宝玉を見たまま、その老人はしばらく固まっていたが、ふと全身の力が抜けたように座り込んだ。

「フ、フフ・・・。ありがとうよお嬢ちゃん。これでわしも、思い残すことなく、引退できる」

気のせいか、老人の顔が優しく綻んだ気がした。

「この街を出るの?」
「30年前ならそうしてたろうが、少し根を深く張りすぎたようだ・・・」

そう言って、机を優しく撫でた。

「そっか」

キーナは頷いた。

「わしのあげた7つ道具、大事にしてやってくれ・・・」













「なんだったんだ? 一体・・・」

交わされた会話の内容がいまいち理解できず、テルディアスは首を捻る。

「あの老人は一体何者なんだ?」
「あり? 気づいてなかったん? テル。あのおじいさんは・・・」
「嬢ちゃん」

通り道に三人の男が立ち塞がった。
よく見れば屋台の人達である。

「いや~。話は聞いたよ!」
「とうとうやったか! すごいな!」
「嬢ちゃんに持って行かれるとはなぁ~」

口々にキーナを褒め称える。

「で、俺達からの祝いの品・・・」

といって後ろ手に持っていたそれぞれの商品を差し出す。
もちろん食べ物ぞろりんこ。

「そんなに持って行けないよ!」

気持ちは有り難いが先日の食べ過ぎがまだ胃にもたれている。

「俺達嬢ちゃんのために・・・」

とシュンとなる男達。

「あ~、じゃあ、物の代わりに情報を頂戴。特に、宝玉に関してのね」
「なるほど!」
「分かった!」
「じゃあ、皆にもそう言ってくるか」
「みんな?」
「この先で皆嬢ちゃんの為に自慢の一品用意して待ってんだぜ」

キーナの顔が青ざめた。
テルディアスはボソリと呟いたキーナの重く沈んだ声を聞いた。

「また食えと?」












水の都から少し離れた丘の上。
キーナとテルディアスは後ろを振り返る。
海を背にした城が、太陽の光を浴びて輝いている。

「面白かったね~」
「そうか?」

テルディアスにとっては大変だったとしか思えなかった。

「しかし、よくまあ情報の集まる所だな」
「あり? テル気づいてなかったん?」
「え?」
「あの街の露店の人達皆、盗賊《ドロボウさん》だよ」

・・・
・・・
・・・

「はあ?!」

テルディアスの思考回路が追いつけなかった。

「宝玉《おたから》目当てに来たはいいけど、盗み出せなくて仕方なく露天を開いてチャンスを待ってた人達だよ」

宝玉を掲げながら遊ぶキーナの言葉に、唖然となるテルディアス。

「あの、鍵屋のじいさんも・・・?」
「まとめ役やってるって言ってたよ」

テルディアスの中で色々な辻褄が合った。
自分が色々情報を集めていたさいも、何故最終的にあの老人の元に辿り着いたのか納得がいった。




水の都『クアナウォーラ』
しかし、ある種の人々にはこう呼ばれている。
『盗賊の都』と。




「で? 次はどこに向かう?」

相変わらず宝玉を弄びながら歩くキーナ。

「そうだな・・・。西へ行ってみるか」

それらしい情報の撚り合わせから、西の方のどこかに火の一族がいるとかいないとか。
場所的にもその他の宝玉の情報と比べても多分一番近いのではないかと思われた。
宝玉が手に入った。
その現実に、テルディアスは夢を見ているようだった。
国宝と呼ばれる物を、まさか国王直々に借り受けられることができるとは。
なんだかまだ信じられないことだが、実際に目の前でその国宝を弄んでいる奴がいる。

いい加減遊ぶなと思った矢先。
新体操のボールのように、右手から腕、肩、左腕、左手、とコロコロ転がして遊んでいたが、なにぶん素人。宝玉は勢いを増し、キーナの手から勢いよく飛び出していった。

「にゃーーー!!!」
「わーーーー!!!」

地面に落ちる寸前でテルディアスがナイスキャッチ。

「ほ~~~」

と胸をなで下ろす二人。

「遊ぶなー!」
「にゃ~い・・・」

全然反省しとらん。

「俺が預かる!」

なにせ国宝。傷つけたり、ましてや壊したりしたら一大事。

「もうしません! もうしません!」

必死にねだるキーナ。

「ねい~、テルぅ~」

ひっしにすがりつくキーナを無視して早歩きで歩き出す。

(宝玉について何かあった気がしたが・・・)

何か注意しなければならないようなことがあった気がしたが、特に思い出せない。

(まあ、いいか)

思い出せないのであれば大したことではないのだろう。

「ねいテル~、もう遊ばないから~」
「嘘つけ」
「本当だから、もちょっと触らせてよう~」
「駄目だ」

あーだこーだわいわい言いながら、二人は道を歩いて行く。
そんな二人を優しく包むように、青い光が微かに煌めいた気がした。
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