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記憶喪失編
記憶喪失
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とある山道で、黒い影が集まっていた。
「火矢《イラロア》!」
火で作られた複数の矢が飛ぶ。
「ギャア!」
「グウ!」
射貫かれた黒い影達が悲鳴を上げる。
「火斬《イラザ》!」
火の気を纏わせた剣が一閃する。
真っ二つになった黒い影が霧散した。
白と灰色の影が背中合わせになる。
離れすぎたらば、危ないと知っている為だ。
上から黒い影が白い方へ襲いかかる。
はっと顔を上げるが、遅い。
ズバ!
寸前で剣が一閃し、黒い影が霧散した。
別の一体が灰色の方へ襲いかかる。
そのまま受け流し、一閃。だが浅い。
「火槍《イラリヤ》!」
灰色を援護する矢を放つが、
「アホ! よそ見するな!」
「え?」
背後から現われた大きな黒い影が、白い方を殴り飛ばす。
「キーナ!」
必死になって手を伸ばす。
その頭を大きな影が掴み、地面に叩きつける。
宙を飛んだ白い影は、そのまま山道から落ちて行った。
「キ・・・ナ・・・」
叩きつけた頭を再び持ち上げ、今度は壁にめり込ませる。
再び持ち上げようとしたその時、低い唸り声が聞こえ始めた。
ズドオ!!!
山道で何かが爆発したかのような粉塵が舞い上がった。
三日月が夜空に心細そうに煌めいている。
深い森の一角に、人影が倒れていた。
不思議なことにその周りだけ荒れ地のようになっていた。
「う・・・」
その人物、テルディアスが目を覚ます。
周りに広がる荒れ地。
(また・・・、やったのか・・・)
薄汚れた手で顔を覆った。
痛む体を引き摺りながら、テルディアスは森を進む。
あの山道からこの森へ落ちてきたらしい。きっとキーナも森のどこかにいるはずだ。
双子石の音の示す方へ足を進める。
(キーナを・・・、早く見つけないと・・・)
また一人にしておいたら、泣いているかもしれない。
(俺が、傍に・・・、いてやらないと・・・)
反応が近くなってくる。
もうすぐ。あの茂みの向こうだ。
「キーナ・・・」
茂みを掻き分け、見ると、そこにあったのは双子石だけだった。
「!」
いそいで拾う。
テルディアスの双子石と共鳴する。
(間違いない、キーナの・・・。何故これだけここに?! まさか・・・、誰かに連れ去られた?!)
全身の血が凍るような感覚に襲われた。
ザザザザザザザザ
森の中をテルディアスはひた走る。
(血痕はなかった。服の切れ端も見つからなかった。イヤリングは手で取らなければ取れる物じゃない。つまり、誰かが意図的に外して連れ去った? まさか、人攫いに?! くそっ、キーナ!!)
森の中を手掛かりを求めて、テルディアスは走り続けた。
時間は止まることなく流れ続ける。
森の中、疲れ切ったテルディアスが木の陰に背を預け、座り込んでいた。
その顔は焦燥しきっており、目に光もない。
(あれから三日・・・、闇雲に探したって見つかるわけがない・・・。ああ、魔法をもっと深く習っておくべきだった。風には探索系の魔法もあったのに・・・。キーナ・・・!)
最早見つけることは敵わないかもしれない。
そんな絶望的な考えに打ちひしがれていると、すぐそばの茂みがわさわさと動いた。
(! しまった、人?!)
慌てて姿を隠そうと身構えたその前に、一人の少女が現われた。
テルディアスは思わず固まる。
着ているものが少女らしい物に変わっているが、その顔は紛れもなくキーナ。
その少女がテルディアスに気づく。
「うわおう! びっくりした! 人がいたの?!」
大げさに驚くポーズをしながら、少女が声を上げる。
「ん? どしたのこれ! ヒドイ血! 怪我してんの?!」
少女が掴みかかってくる。
「い、いや、返り血だ・・・」
「なあんだあ。良かったぁ」
少女がほっと胸を撫で下ろす。
というか、
「キーナ? お前・・・」
「へ?」
少女が不思議な顔をする。
「キーナ? 僕はフロウだよ」
「え?」
フロウ?別人なのか?それにしては似すぎている。
どこからどう見てもキーナにしか見えない。
オーバーリアクションな所とか、女のくせに「僕」と言う所とか。
しかし一応本人は気にしているのか、
「また僕って言っちゃった」
と慌てて口を押さえている。
もう一つ不可思議な点がある。
「お前、俺が怖くないのか?」
普通の人間ならば、姿を見た途端に悲鳴を上げて逃げ出すものなのだが。
フロウと名乗った少女は数秒、テルディアスを見て固まっていた。
そしてポンと手を打つと、
「お肌の色!」
間違い探しではない。
(このボケっぷり、キーナにそっくりじゃないか)
テルディアスが頭を抱える。
「分かった! 髪の色!」
テルディアスが何も言わなければこのまま間違い探しが続くのだろうか。
「ダーディンを知らんのか?」
「ダーディン? 知らない。何それ?」
キーナと出会った時と全く同じ事言いやがった。
「知ってたかもしれないけど・・・」
フロウと名乗った少女がう~んと考え込む。
「僕ね。記憶喪失なの」
テルディアスの瞳が煌めく。
「三日前に崖から落ちて頭打ったらしいの。な~んも覚えてないんだけどね」
「やっぱり。お前みたいな奴そうそういるもんじゃない」
「にゃ?」
目の前の少女の肩を抱き、目を真っ直ぐ見て語りかける。
「お前はフロウじゃない。キーナだ。俺と一緒に旅をしていて、ダーストの群れに襲われて崖から落ちたんだ」
「うにゃ~??? 僕がそのキーナだっての?」
「お前以外に誰がいる」
そうそう変な奴がいてたまるかというテルディアスの独り言は聞こえなかったようだ。
「でも、でも、僕はフロウだってお姉ちゃんは・・・」
「それはお前が逃げないようにする罠だろう。油断させておいて後で人買いに売りさばくつもりかもしれん」
キーナの顔が渋くなる。
「それは~、違うと思う~」
はっきり断言したくとも、自分には記憶がないのでなんとも言えない。
だがしかし、だがしかし・・・。
「とにかく無事で良かった」
テルディアスもほっと一安心。
「記憶はゆっくり戻すとして、行くぞキーナ」
「ええ?! い、行くってどこへ?」
「次の街のスタッドロスに行く途中だったんだ。・・・着替えもどこかで調達しないとな・・・」
返り血やら泥やらで汚れ、さらにズタボロになってしまったマントをつまむ。
「さあ行くぞ、キーナ」
そう言って歩き始めようとするが、キーナは動こうとしない。
「どうした?」
「僕・・・、分かんない」
「キーナ?」
不安そうな顔をして動こうとしないキーナ。
「どうした・・・」
「分かんない分かんない分かんない分かんない分かんない!」
キーナが頭を抱えて叫び出す。
「僕はフロウだって! たった二人きりの姉妹だって! お姉ちゃん言ってたもん! いきなりそんなこと言われたって、分かんない!」
「キーナ・・・?」
テルディアスには分からなかった。
何故キーナが怖がるのか。
「落ち着け、キーナ! どうした・・・?」
「そうだ・・・お姉ちゃん・・・、お姉ちゃんが帰ってくるまでに戻らなきゃ・・・」
そう呟くと、キーナがふらりと立ち上がり、来た道を戻ろうとする。
「キーナ?!」
慌ててその手を掴み、行かせまいとする。
「まて! お前はもう戻らなくていいんだ! 俺と一緒に行くんだ!」
「そんな・・・、そんな急に言われたって・・・」
キーナがテルディアスの手を振り払う。
驚いてテルディアスがキーナを見上げると、その目に涙が滲んでいた。
「キ・・・」
「わかんないよ」
キーナが走り出した。
風のように森の木々の間を縫って行く。
「ナ・・・」
その後ろ姿を眺めながら、テルディアスは動くことができなかった。
キーナの姿は木や草の影に隠れて、すぐに見えなくなった。
呆然と、キーナの手を掴んだ右手を見る。
(キーナが・・・、俺の手を振り払って・・・)
暗闇で怖いと泣いていた。
一人は怖いと泣いていた。
(俺の手を・・・、振り払って・・・)
「わかんないよ」
その言葉を残して去って行った。
テルディアスの手を振り払って。
ふらりとテルディアスは立ち上がる。
「キ、キーナを・・・、お、追わないと・・・。一人に・・・、したら・・・また」
キーナが去って行った方向へ、テルディアスは走り出した。
「火矢《イラロア》!」
火で作られた複数の矢が飛ぶ。
「ギャア!」
「グウ!」
射貫かれた黒い影達が悲鳴を上げる。
「火斬《イラザ》!」
火の気を纏わせた剣が一閃する。
真っ二つになった黒い影が霧散した。
白と灰色の影が背中合わせになる。
離れすぎたらば、危ないと知っている為だ。
上から黒い影が白い方へ襲いかかる。
はっと顔を上げるが、遅い。
ズバ!
寸前で剣が一閃し、黒い影が霧散した。
別の一体が灰色の方へ襲いかかる。
そのまま受け流し、一閃。だが浅い。
「火槍《イラリヤ》!」
灰色を援護する矢を放つが、
「アホ! よそ見するな!」
「え?」
背後から現われた大きな黒い影が、白い方を殴り飛ばす。
「キーナ!」
必死になって手を伸ばす。
その頭を大きな影が掴み、地面に叩きつける。
宙を飛んだ白い影は、そのまま山道から落ちて行った。
「キ・・・ナ・・・」
叩きつけた頭を再び持ち上げ、今度は壁にめり込ませる。
再び持ち上げようとしたその時、低い唸り声が聞こえ始めた。
ズドオ!!!
山道で何かが爆発したかのような粉塵が舞い上がった。
三日月が夜空に心細そうに煌めいている。
深い森の一角に、人影が倒れていた。
不思議なことにその周りだけ荒れ地のようになっていた。
「う・・・」
その人物、テルディアスが目を覚ます。
周りに広がる荒れ地。
(また・・・、やったのか・・・)
薄汚れた手で顔を覆った。
痛む体を引き摺りながら、テルディアスは森を進む。
あの山道からこの森へ落ちてきたらしい。きっとキーナも森のどこかにいるはずだ。
双子石の音の示す方へ足を進める。
(キーナを・・・、早く見つけないと・・・)
また一人にしておいたら、泣いているかもしれない。
(俺が、傍に・・・、いてやらないと・・・)
反応が近くなってくる。
もうすぐ。あの茂みの向こうだ。
「キーナ・・・」
茂みを掻き分け、見ると、そこにあったのは双子石だけだった。
「!」
いそいで拾う。
テルディアスの双子石と共鳴する。
(間違いない、キーナの・・・。何故これだけここに?! まさか・・・、誰かに連れ去られた?!)
全身の血が凍るような感覚に襲われた。
ザザザザザザザザ
森の中をテルディアスはひた走る。
(血痕はなかった。服の切れ端も見つからなかった。イヤリングは手で取らなければ取れる物じゃない。つまり、誰かが意図的に外して連れ去った? まさか、人攫いに?! くそっ、キーナ!!)
森の中を手掛かりを求めて、テルディアスは走り続けた。
時間は止まることなく流れ続ける。
森の中、疲れ切ったテルディアスが木の陰に背を預け、座り込んでいた。
その顔は焦燥しきっており、目に光もない。
(あれから三日・・・、闇雲に探したって見つかるわけがない・・・。ああ、魔法をもっと深く習っておくべきだった。風には探索系の魔法もあったのに・・・。キーナ・・・!)
最早見つけることは敵わないかもしれない。
そんな絶望的な考えに打ちひしがれていると、すぐそばの茂みがわさわさと動いた。
(! しまった、人?!)
慌てて姿を隠そうと身構えたその前に、一人の少女が現われた。
テルディアスは思わず固まる。
着ているものが少女らしい物に変わっているが、その顔は紛れもなくキーナ。
その少女がテルディアスに気づく。
「うわおう! びっくりした! 人がいたの?!」
大げさに驚くポーズをしながら、少女が声を上げる。
「ん? どしたのこれ! ヒドイ血! 怪我してんの?!」
少女が掴みかかってくる。
「い、いや、返り血だ・・・」
「なあんだあ。良かったぁ」
少女がほっと胸を撫で下ろす。
というか、
「キーナ? お前・・・」
「へ?」
少女が不思議な顔をする。
「キーナ? 僕はフロウだよ」
「え?」
フロウ?別人なのか?それにしては似すぎている。
どこからどう見てもキーナにしか見えない。
オーバーリアクションな所とか、女のくせに「僕」と言う所とか。
しかし一応本人は気にしているのか、
「また僕って言っちゃった」
と慌てて口を押さえている。
もう一つ不可思議な点がある。
「お前、俺が怖くないのか?」
普通の人間ならば、姿を見た途端に悲鳴を上げて逃げ出すものなのだが。
フロウと名乗った少女は数秒、テルディアスを見て固まっていた。
そしてポンと手を打つと、
「お肌の色!」
間違い探しではない。
(このボケっぷり、キーナにそっくりじゃないか)
テルディアスが頭を抱える。
「分かった! 髪の色!」
テルディアスが何も言わなければこのまま間違い探しが続くのだろうか。
「ダーディンを知らんのか?」
「ダーディン? 知らない。何それ?」
キーナと出会った時と全く同じ事言いやがった。
「知ってたかもしれないけど・・・」
フロウと名乗った少女がう~んと考え込む。
「僕ね。記憶喪失なの」
テルディアスの瞳が煌めく。
「三日前に崖から落ちて頭打ったらしいの。な~んも覚えてないんだけどね」
「やっぱり。お前みたいな奴そうそういるもんじゃない」
「にゃ?」
目の前の少女の肩を抱き、目を真っ直ぐ見て語りかける。
「お前はフロウじゃない。キーナだ。俺と一緒に旅をしていて、ダーストの群れに襲われて崖から落ちたんだ」
「うにゃ~??? 僕がそのキーナだっての?」
「お前以外に誰がいる」
そうそう変な奴がいてたまるかというテルディアスの独り言は聞こえなかったようだ。
「でも、でも、僕はフロウだってお姉ちゃんは・・・」
「それはお前が逃げないようにする罠だろう。油断させておいて後で人買いに売りさばくつもりかもしれん」
キーナの顔が渋くなる。
「それは~、違うと思う~」
はっきり断言したくとも、自分には記憶がないのでなんとも言えない。
だがしかし、だがしかし・・・。
「とにかく無事で良かった」
テルディアスもほっと一安心。
「記憶はゆっくり戻すとして、行くぞキーナ」
「ええ?! い、行くってどこへ?」
「次の街のスタッドロスに行く途中だったんだ。・・・着替えもどこかで調達しないとな・・・」
返り血やら泥やらで汚れ、さらにズタボロになってしまったマントをつまむ。
「さあ行くぞ、キーナ」
そう言って歩き始めようとするが、キーナは動こうとしない。
「どうした?」
「僕・・・、分かんない」
「キーナ?」
不安そうな顔をして動こうとしないキーナ。
「どうした・・・」
「分かんない分かんない分かんない分かんない分かんない!」
キーナが頭を抱えて叫び出す。
「僕はフロウだって! たった二人きりの姉妹だって! お姉ちゃん言ってたもん! いきなりそんなこと言われたって、分かんない!」
「キーナ・・・?」
テルディアスには分からなかった。
何故キーナが怖がるのか。
「落ち着け、キーナ! どうした・・・?」
「そうだ・・・お姉ちゃん・・・、お姉ちゃんが帰ってくるまでに戻らなきゃ・・・」
そう呟くと、キーナがふらりと立ち上がり、来た道を戻ろうとする。
「キーナ?!」
慌ててその手を掴み、行かせまいとする。
「まて! お前はもう戻らなくていいんだ! 俺と一緒に行くんだ!」
「そんな・・・、そんな急に言われたって・・・」
キーナがテルディアスの手を振り払う。
驚いてテルディアスがキーナを見上げると、その目に涙が滲んでいた。
「キ・・・」
「わかんないよ」
キーナが走り出した。
風のように森の木々の間を縫って行く。
「ナ・・・」
その後ろ姿を眺めながら、テルディアスは動くことができなかった。
キーナの姿は木や草の影に隠れて、すぐに見えなくなった。
呆然と、キーナの手を掴んだ右手を見る。
(キーナが・・・、俺の手を振り払って・・・)
暗闇で怖いと泣いていた。
一人は怖いと泣いていた。
(俺の手を・・・、振り払って・・・)
「わかんないよ」
その言葉を残して去って行った。
テルディアスの手を振り払って。
ふらりとテルディアスは立ち上がる。
「キ、キーナを・・・、お、追わないと・・・。一人に・・・、したら・・・また」
キーナが去って行った方向へ、テルディアスは走り出した。
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