キーナの魔法

小笠原慎二

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光の宮編

光の者

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タンタカタンッ

と飛び跳ねて、

ストン

と着地。
ついでにブイッとVサイン。

「何してるんだ」

テル君のツッコミが入りました。

「や~っと元の格好に戻れたから嬉しくって! 動きの制限されるスカートともやっとおさらばだ~い」

旅装束に戻っただけなのだけど。
少し前までいた街で二人で服を改めて、上から下まで新品です。
お財布は寂しくなったけど、水の都で稼いだ(?)分があったので、なんとかなりました。
キーナは飛び跳ねる度にヒラヒラするスカートが余程嫌だったと見えて、ズボンに戻った今はルンルンで飛び跳ねておりました。

女としてそれでいいのか?とか、スカートの方が大人しかったかもとかテルディアスは思いながら、元気に動き回るキーナの後ろから歩いて行く。
あまりはしゃぐと次の街まで保たないよ?

「テル早く~」

などと元気に手を振るキーナ。
きっと途中でへばるに違いないでしょう。














そんな二人を眺める人がいた。
水で作った球で、二人の映像を映している。
水の精の力を借り、遠くの景色を映すという、かなり高位な技。

「なるほど。これが光の御子」

青みがかった長い黒髪の青年は微笑んだ。

「随分と可愛らしいこと」
「本当に」

その部屋にはその青年以外誰も居ないというのに、どこからか女性の声がする。
青年の目の前で、とある植物の蔓に一輪の花が咲き、その横でなぜか小さなつむじ風が渦巻いている。
それよりも上空に、小さな火の玉が揺れていた。
その火の玉は不思議なことに、宙に浮いている。
特に火種があるわけでもないのに、その火の玉は宙空で燃え続けていた。

「と言うわけで、光の御子が青の領域に入りそうなんじゃ」

火の玉から声が聞こえてきた。

「で、私にどうしろというのですか?」

青年が火の玉に向かって答える。

「あの子が完全に覚醒するまでは、光の宮の者達に渡すわけにはいかん」
「でももう手遅れみたいですよ」

青年が水の球を指さす。
その球の中には、同じ服を着て、同じフードを被った人物が三人。

「すぐ後ろまで彼らが」
「ぎゃ!」

火の玉が驚きの声を上げた。

「だからこそお前の出番なんだー!」

火の玉が焦りを表すかのように踊る。

「え~、でも私は光の者を追い払うなんて事できませんよ~」
「青の賢者と呼ばれているお前が、できないわけがないじゃろう!」

火の玉が怒りを表すかのように踊る。

「やだなぁ。買いかぶりですよ」

青年がその深い青紫色の瞳で火の玉を見つめる。

「ま、言われるまでもなく、手助けはするつもりでしたからご安心を。我らにとっても御子は重要人物ですからね。・・・で、赤の御方はまた例の巡礼へ行かれるのですか?」

なぜか火の玉がギクリと一瞬小さくなる。

「そ、そうじゃが、決して遊んでいるわけではない!」
「分かっていますよ。若い頃の夢の続きを未だに追いかけているなんて、凄いと思います。一応あなたの動向も把握しておかないと、連絡が取れないと困るでしょう?」
「確かに」

と、花とつむじ風から声がした。

「ま、いざって時は、あたし達が探してあげるわよ!」

とつむじ風。

「そうですわ」

と花。

「すまんのう。頼んだ」

と火の玉。

なんだこの状況。

「あ、近くまで来たら声をかけてください。私も久々に楽しみたいので」

とさらっと青年が言い放った。
花とつむじ風と火の玉がずっこける。

「わしゃあ時々あいつが分からん・・・」
「あたしも・・・」
「私もです・・・」

花とつむじ風と火の玉がひそひそと声を交わした。
その後も何事か話し合った後、その部屋には花もつむじ風も火の玉も消え、青年は一人になった。
水の球には、相変わらず連れ立って歩く、二人の姿が映し出されている。














「ホウ?」
「火の力を持った者の村がどこかにあるらしい」
「そこに火の宝玉があるのね?!」
「あるかもだ」

ウッヒョホイとはしゃぎながら歩くキーナ、それを冷静に見つめるテルディアス。
なんでこいつはこんなに元気なのだろうと不思議に思いながら。
背後から人の気配が数人。
それに気づいたテルディアス。

「おい、外れるぞ」
「ういっさ」

外れるとは、結界の張られた街道を外れて、森の中などを行くことである。
そうやって今までもできるだけ人と接触しないようにしてきた。
フードを被っていれば一応大丈夫なのではあるが、色々な所でダーディンの噂が細々と流れていることからして、用心に越したことはない。

「僕こっちの方が好き~」

などと、歩きにくい森の中をガサガサと草や低木を掻き分けながら歩いて行く。
未開の地の冒険みたいな感覚なのだろうか。このお気楽小僧。いや、お気楽娘?
二人が木立の間に隠れ見えなくなった頃、同じフードを被った三人の人達が歩いてきた。

「間違いない」

先頭を歩いていた人物が呟く。声からして男だろう。

「御子様の気配だ」

そう言って森の中に視線を向ける。
そこは二人が消えていった場所だった。

「行くぞ」

その三人も結界を越え、森の中に入っていった。
















後ろから人の気配が近づいてくる。
テルディアスが察する。
嫌な予感がする。

「どしたの? テル?」

キーナが立ち止まったテルディアスに声をかける。

「おかしい。街道から外れてくる者達がいる」
「へ? 物好きな人もいるもんだねぇ」
「ただの者好きじゃないだろう」
「どゆこと?」
「急ごう」

キーナの肩を押しながら、早歩きで歩き出す。

「早い早い早い」

スッタスッタ歩くテルディアスの歩調は早歩きと言うよりキーナにとっては小走りに近かった。
それでもなんとか足を動かすキーナ。
スッタスッタと少し行った所で、テルディアスが足を止めた。

「? テル?」

キーナがテルディアスを見上げる。
テルディアスの顔に緊張が走っている。

(なんだ・・・? この感じ)

よく分からないが、空気に異様な物を感じる。
その時だった。
突如、二人を取り囲むように、同じフードを被った三人の人物が現われた。
まさに突然だった。
二人は驚き、息をのむ。
そのうちの一人が話し出した。

「御子様。お迎えに上がりました」
「御子様?」

キーナは訳が分からずキョトン顔。
テルディアスは瞬時に悟る。

光の者。

とうとうキーナを見つけられて追いつかれてしまったのだ。
連れ去られれば最早会うことは叶わない。

「く・・・」
「さあ、我らと共に」

手を取るかのように手を差し出す。

「風巻(カウギリ)!」

テルディアスが目眩ましに風の魔法を唱えた。
しかし、

「無駄な抵抗はお止めください」

その手をすっと払うと、巻いた風はピタリと止まってしまった。

「な、何故・・・」
「風止んだ・・・」

術者が止めるか、あるいはそれを越える力が働かないと止まらない風が、腕の一振りで止まってしまった。

「光は全ての精霊の頂点に立つ存在。全ての精霊を従える。その意を操ることなど容易いこと。あなた様ならばすぐにお分かりになられることでしょう」

テルディアスが睨み付ける。
腕の中のキーナの肩を強く抱いた。

「さあ、我らと共に」

テルディアスがキーナの手を掴み、三人の中で一番力が弱そうな者目指し、走り出す。
剣を抜き、その者に剣を叩きつけようとするが、

バチイッ!

見えない壁に阻まれた。
地の力ではない。
呪文さえも唱えていない。

「やはり抵抗なさるか、#御子様_・・・_#」

テルディアスは違和感を覚えた。
目の前のフードの人物の手に力が集中しているのを瞬間的に悟り、キーナの手を放す。

バリッ

「ガ・・・」

全身に痺れるような痛みを感じ、そのままテルディアスは地に倒れた。

「テルっ!」

キーナが駆け寄る。

「テルゥ!」

揺さぶるが、テルディアスの意識は戻らない。

「そこをどけ。娘よ」

キーナが三人のフードの人物達を見上げる。

「なんなんだよう。あんたたち一体なんなのさ!」
「我らは光の者。御子様を迎えに参ったのだ」
「御子様? それとテルとどういう関係ガ・・・」

キーナも全身に痺れるような痛みを感じ、意識を失った。
倒れ伏した二人を見下ろしながら、三人は相談する。

「おかしな邪魔が入ったな」
「この娘どうする?」
「一応連れて行こう。御子様を足止めするいい餌になるやもしれん」
「さあ、早く宮殿へお連れして、我らが御子様の呪いを解いて差し上げるのだ」

そして三人はキーナとテルディアスを担いで、空の彼方へと飛んで行ってしまった。
その様子を木の陰から、水で形作られた人物が静かに見ていた。
















「で?」

宙に浮いた火の玉から声が漏れる。

「二人は宮殿に連れ去られました。ちゃんちゃん」
「ちゃんちゃんじゃない!」

軽~く言う青年に向かって火の玉が叫ぶ。

「いいじゃないですか。彼らはテルディアス君を御子と勘違いしているし、彼の呪いは光の高位の神官達がきっと解いてくれますよ。あのお嬢ちゃんが本当の御子だと気付かれなければ、間違いだったって宮殿から放り出されますよ」

確かに、テルディアスの呪いを解くいい機会かもしれない。

「嬢ちゃんが御子だと気付かれたら?」

火の玉が心配を口(?)に出す。

「彼女が力を解放しない限り、彼らは気付きませんよ。自らの力を過信し過ぎている、彼らではね」
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