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テルディアス変身!
縮こまる姿
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星々の煌めきも見えなくなり、月もその姿を薄くし始める。
夜の気配を一掃するかのように、その輝かしい姿を山の端に現し始める。
夜の影は建物の隅に身を隠し、全ての物がその光を受けて輝き出す。
朝を告げる鳥の声が、静かに、時に騒がしく人々の耳に届いていく。
今日も空は青く高く澄み渡り、白い雲がゆったりと動いて、その影を地面に映し出した。
早起きの人々はすでに活動し始め、街がゆっくりと目覚め始めた頃。
「うわああああああああ!」
絶叫が響き渡った。
その日の朝、街中の人々は、ほぼその絶叫によって叩き起こされたのだった。
「何?! 何事?!」
メリンダもその一人。
すぐ近くから聞こえた絶叫によって、夢の中から強制送還されて来た。
ガバリと身を起こし、すぐにキョロキョロ辺りを見回す。
いつもの見慣れた部屋でないことに一瞬頭が混乱するが、可愛いあの子の事をすぐに思い出し、隣のベッドに目を移した。
「キーナちゃ・・・」
もぬけの殻。
「キーナちゃん?!」
ベッドの向こう側にでも落ちたのかと慌ててベッドを出るが、いない。
「キーナちゃん!」
ベッドの下にも、念のため自分のベッドの下なども覗き込むがその姿はない。
「キーナちゃん?! どこ!」
メリンダの頭に最悪な事が浮かぶ。
自分がやったように、誰かがキーナの寝ている間に攫って行ってしまったとか・・・。
メリンダは青ざめる。
あんなに可愛い子なのだもの、それも当然かもしれない・・・。
自分も最初少年だと間違えた事を忘れたか?
慌てて部屋を飛び出て、隣のテルディアスの部屋を少し乱暴にノックする。
「テルディアス! テルディアス大変よ! キーナちゃんがいないの!」
ドカドカとノック(?)するが返事がない。
開けられる様子もない。
ノブを回すが鍵がかかっている。
(この一大事になにスヤスヤ寝こけとるんじゃ、あの○○○○野郎!!)
などと放送禁止用語を頭の中で毒づいて、メリンダは気合いを入れた。
「いい加減開けんか―――!」
と鋭い蹴りをぶちかまし、強引にドアを蹴り開ける。
そして、固まった。
テルディアスが寝ているはずのベッドの上に、探していた少女の姿。
「あ、おはよう、メリンダさん」
寝ぼけ眼をこすりながら、にっこりと挨拶をする少女。
そして、メリンダが視線をベッドの足元の方へ動かすと、そこには小さくなって震えている青緑の肌の青年の姿。
「えっと・・・」
メリンダが静かに扉を閉め、着衣の乱れを整えた。
「とりあえず、どういう状況?」
「ん?」
震える青年、何も分かっていない少女、状況がよく分からない女性、が一つの部屋に集まった。
窓からは爽やかな朝の光が差し込んでいた。
「でね、テルの所に来たの」
「なぁ~んだ。そうだったのぉ」
ベッドに並んで座りながら、キーナから一通りの説明を受けたメリンダ。
ベッドの端で一応落ち着きを取り戻したテルディアスが服を着ていた。
寝る時はいつも上半身裸になっているので。
そんなテルディアスにずずいっとメリンダが近寄ると、
「テルディアス、あんたそれでも男なの?」
と小声で囁く。
「どういう意味だ」
テルディアスもつられて小声で返す。
「だって、こんな可愛い子が忍び込んで来てくれてるのに、手も出さないどころか、部屋の隅で縮こまってガタガタ震えてるなんて・・・」
情けない。
「余計なお世話だっ!!」
思わずテル君大声で返す。
「何話してるの?」
当然、キーナが聞いてきた。
何故テルが怒鳴ったのだろう?と首を傾げて。
「あらん、なんでもないわ」
メリンダさんにっこりキーナに返す。
「さ、向こうに戻って支度しましょ」
と上手く話題を変換した。
「うん」
キーナは素直にメリンダと共に部屋を出て行く。
それを青い顔・・・、元々青緑だけども、渋い顔で見送るテルディアス。
メリンダが部屋を出る時、チラリとテルディアスに振り向いた。
睨み付けるような何か観察するような目つきではあったが、すぐに視線を外し、部屋から出て行った。
(? 見つめられてた?)
メリンダの謎の視線に首を傾げるテルディアスだった。
漫画であったならお着替え読者サービスシーンでありますが、ここは文字だけで想像して下さい。
寝間着を脱いで服を着る二人。
鼻歌を歌いながらもさっさと着替えるキーナを、メリンダはゆっくりと寝間着を脱ぎながら見つめていた。
(テルディアスはキーナちゃんを必要としているわけだけど、キーナちゃんもテルディアスを必要としているのよね・・・)
胸当てに手を伸ばし、それを胸に押し当てる。
背中に回し、髪を掻き上げながら留め金を止める。
(テルディアスがキーナちゃんをってことならとことん邪魔するところだけど、キーナちゃんがテルディアスをっていうことなら・・・)
スカートを手に取り、足を上げ、足を通して腰の位置まで上げる。
(絶対にくっつけてやるわ・・・)
ふふふふふ・・・
とキーナに気付かない程の小さな声でメリンダは怪しく笑った。
キーナは何故か背中に悪寒を感じて、風邪かしら?と首を捻っていた。
次の街へと向かう街道を、相変わらずルンルンと楽しそうに進んで行くキーナ。
その後ろから並んでテルディアスとメリンダは歩いていた。
「それで? テルディアス」
メリンダが唐突に話しかける。
「ん?」
宝玉の話か?と思いテルディアスが返事するが、
「キーナちゃんとキスくらいしたんでしょ?」
ずべしゃっ
あまりにも見当外れな言葉にずっこけるテルディアス。
「な、な、何を突然・・・」
まったくだ。
「ん~? ちょっとあんた、表情が見えにくいからフード取りなさいよ」
赤くなってるのか青くなってるのか、困った顔をしているのか見たかったのだが。
「取れるか!」
こんな道の往来でフードを外せるわけがない。
「そういえばそうね・・・」
(元は人間て話が嘘かもしれないとは疑ってたけど・・・、あの情けない姿を見ちゃったらね~)
今朝見た、ベッドの足元で小さくなってガタガタ震えている姿を思い出す。
これがダーディンの本当の姿だ!などと世間に広めたら、どれだけの人が目を点にするだろう。
今までに話に聞いていたダーディンの姿とは、あまりにもかけ離れすぎている。
(肌の色と耳さえなければ、結構いい男だし・・・)
ん?
そこでメリンダ何かが閃いた。
肌の色・・・、耳・・・。
髪はそのままでも大丈夫として・・・。
「どうしたの? 何かあった?」
キーナがてててっと駆け寄ってきた。
「あらん、大丈夫よ」
メリンダにっこり笑って答える。
「テルディアスにキーナちゃんに欲情したことがあるか聞いてただけよ」
「何を言っとるか!!」
テルディアスの鋭い突っ込みが入った。
メリンダの言葉がストレート過ぎるのだ。
「よ・・・、ヨクジョウ・・・?」
ほれ、キーナの顔が赤くなってきている。
そういうことに耐性がないのだ。
「あん、簡単に言うとね、キスしたかって聞いてたの」
「やめんか!!!!」
ストレート過ぎた。
「ほら見ろ、キーナが石になった」
「あら?」
純情少女キーナ、恋だの愛だのまだまだお子ちゃま。
キスなんて、「大人になったらするのだろう」くらいにしか考えていない。
そんなことをするなんて考えるだけでも照れくさいというお年頃だった。
(14歳でこの純情さ・・・。か・わ・い・い・・・)
と石になったキーナをメリンダがきゅっと抱きしめる。
「俺達は一緒に旅してるだけなんだと言ったろう。そ、そんなこと、するわけがないだろう」
一カ所どもった。
メリンダはそれを聞き逃さなかった。
「心当たりはあるわけね?」
とニヤニヤしながらテルディアスに迫る。
テル君恐れをなして後退る。
「だ、だから・・・その、じ、人工呼吸をしたことがあるということで・・・」
「ホ~? 人工呼吸~?」
迫るメリンダ。
後退るテルディアス。
「キーナと初めて会った時に川で溺れているのを助けて・・・、息をしてなかったから・・・」
キーナは思い出した。
そういえば、意識が戻る直前に、顔の前に温かくて柔らかいものを感じていたような・・・。
顔が赤くなる。
(そ、それじゃあ・・・、僕のファーストキスって・・・、サーガじゃなくて、テル?!)
テルディアスと別れた後に出会った黄色い髪、黄色い瞳の傭兵サーガ。
人買いに攫われて、薬を飲まされて動けなくなっていた所に、解毒薬っぽい物を口移しで飲まされた。
あの時はいきなりで、怖さとか恥ずかしさとか、とにかくショックで涙がしばらく止まらなかった。
初めてだったのに・・・。
キーナだって一応女の子。ファーストキスに憧れもある。
それがあんな形になってしまったことに、しばらくもやもやしていた。
だけれども、あれが初めてではない?
でも、テルとの時はほぼ意識がなかったわけだけど・・・。
けれども、サーガが初めての相手というよりは、テルが初めての相手だと思うと、なんだか少し救われたような気がするのは何故だろう?
(そもそも、人工呼吸や口移しを、キスのカウントに入れるもん?)
唇と唇が合わさったということではあるけれども・・・。
「キーナちゃん!」
「にゃ!」
考え込んでいたキーナはメリンダに声を掛けられ驚いた。
「何を考え込んでるの?」
「あ・・・、その・・・」
キーナは勇気を出して、目の前の経験豊富そうなお姉さんに聞いてみる事にした。
「メリンダさん、人工呼吸って、キスに入るの?」
メリンダの目が点になる。
「い、入れるものなんじゃない?」
メリンダにも分からない。
作者にも分からない。
「そっかぁ、だよねぃ」
お姉さんが言うのだから間違いないだろうと信じ込むキーナ。
「だとしたら僕・・・、もう3回もテルとしてることになるなぁ・・・」
とぼそりと呟いた。
初めて出会った時と、さて、あと2回はどこでしょう?
気になる方は、ここまで読み返してみてね!(←鬼畜)
3回?
メリンダここに引っかかった。
テルディアスにつかつかと歩み寄り、その肩に手を掛ける。
「今度はなんだ?」
と迷惑そうにテルディアスが振り返ると、
「テ~ル~ディ~ア~ス~」
と睨め上げるメリンダの顔。
またしても後退るテルディアス。
メリンダが腰に装着していた鞭を引っ張り出した。
「洗いざらい白状してもらうわよ」
ピシリ!
鞭が地面を打つ。
「な、なんのことだ!」
「人工呼吸、3回ですって?」
ビシッと鞭を握りしめるメリンダ。
その姿に、掴まったら命はない、と何故か直感したテルディアス。
脱兎のごとく、逃げ出した。
「逃げるな―!」
と追いかけるメリンダ。
「二人共待って~!」
と追いかけるキーナ。
騒がしい一行が、森の中を走って行った。
夜の気配を一掃するかのように、その輝かしい姿を山の端に現し始める。
夜の影は建物の隅に身を隠し、全ての物がその光を受けて輝き出す。
朝を告げる鳥の声が、静かに、時に騒がしく人々の耳に届いていく。
今日も空は青く高く澄み渡り、白い雲がゆったりと動いて、その影を地面に映し出した。
早起きの人々はすでに活動し始め、街がゆっくりと目覚め始めた頃。
「うわああああああああ!」
絶叫が響き渡った。
その日の朝、街中の人々は、ほぼその絶叫によって叩き起こされたのだった。
「何?! 何事?!」
メリンダもその一人。
すぐ近くから聞こえた絶叫によって、夢の中から強制送還されて来た。
ガバリと身を起こし、すぐにキョロキョロ辺りを見回す。
いつもの見慣れた部屋でないことに一瞬頭が混乱するが、可愛いあの子の事をすぐに思い出し、隣のベッドに目を移した。
「キーナちゃ・・・」
もぬけの殻。
「キーナちゃん?!」
ベッドの向こう側にでも落ちたのかと慌ててベッドを出るが、いない。
「キーナちゃん!」
ベッドの下にも、念のため自分のベッドの下なども覗き込むがその姿はない。
「キーナちゃん?! どこ!」
メリンダの頭に最悪な事が浮かぶ。
自分がやったように、誰かがキーナの寝ている間に攫って行ってしまったとか・・・。
メリンダは青ざめる。
あんなに可愛い子なのだもの、それも当然かもしれない・・・。
自分も最初少年だと間違えた事を忘れたか?
慌てて部屋を飛び出て、隣のテルディアスの部屋を少し乱暴にノックする。
「テルディアス! テルディアス大変よ! キーナちゃんがいないの!」
ドカドカとノック(?)するが返事がない。
開けられる様子もない。
ノブを回すが鍵がかかっている。
(この一大事になにスヤスヤ寝こけとるんじゃ、あの○○○○野郎!!)
などと放送禁止用語を頭の中で毒づいて、メリンダは気合いを入れた。
「いい加減開けんか―――!」
と鋭い蹴りをぶちかまし、強引にドアを蹴り開ける。
そして、固まった。
テルディアスが寝ているはずのベッドの上に、探していた少女の姿。
「あ、おはよう、メリンダさん」
寝ぼけ眼をこすりながら、にっこりと挨拶をする少女。
そして、メリンダが視線をベッドの足元の方へ動かすと、そこには小さくなって震えている青緑の肌の青年の姿。
「えっと・・・」
メリンダが静かに扉を閉め、着衣の乱れを整えた。
「とりあえず、どういう状況?」
「ん?」
震える青年、何も分かっていない少女、状況がよく分からない女性、が一つの部屋に集まった。
窓からは爽やかな朝の光が差し込んでいた。
「でね、テルの所に来たの」
「なぁ~んだ。そうだったのぉ」
ベッドに並んで座りながら、キーナから一通りの説明を受けたメリンダ。
ベッドの端で一応落ち着きを取り戻したテルディアスが服を着ていた。
寝る時はいつも上半身裸になっているので。
そんなテルディアスにずずいっとメリンダが近寄ると、
「テルディアス、あんたそれでも男なの?」
と小声で囁く。
「どういう意味だ」
テルディアスもつられて小声で返す。
「だって、こんな可愛い子が忍び込んで来てくれてるのに、手も出さないどころか、部屋の隅で縮こまってガタガタ震えてるなんて・・・」
情けない。
「余計なお世話だっ!!」
思わずテル君大声で返す。
「何話してるの?」
当然、キーナが聞いてきた。
何故テルが怒鳴ったのだろう?と首を傾げて。
「あらん、なんでもないわ」
メリンダさんにっこりキーナに返す。
「さ、向こうに戻って支度しましょ」
と上手く話題を変換した。
「うん」
キーナは素直にメリンダと共に部屋を出て行く。
それを青い顔・・・、元々青緑だけども、渋い顔で見送るテルディアス。
メリンダが部屋を出る時、チラリとテルディアスに振り向いた。
睨み付けるような何か観察するような目つきではあったが、すぐに視線を外し、部屋から出て行った。
(? 見つめられてた?)
メリンダの謎の視線に首を傾げるテルディアスだった。
漫画であったならお着替え読者サービスシーンでありますが、ここは文字だけで想像して下さい。
寝間着を脱いで服を着る二人。
鼻歌を歌いながらもさっさと着替えるキーナを、メリンダはゆっくりと寝間着を脱ぎながら見つめていた。
(テルディアスはキーナちゃんを必要としているわけだけど、キーナちゃんもテルディアスを必要としているのよね・・・)
胸当てに手を伸ばし、それを胸に押し当てる。
背中に回し、髪を掻き上げながら留め金を止める。
(テルディアスがキーナちゃんをってことならとことん邪魔するところだけど、キーナちゃんがテルディアスをっていうことなら・・・)
スカートを手に取り、足を上げ、足を通して腰の位置まで上げる。
(絶対にくっつけてやるわ・・・)
ふふふふふ・・・
とキーナに気付かない程の小さな声でメリンダは怪しく笑った。
キーナは何故か背中に悪寒を感じて、風邪かしら?と首を捻っていた。
次の街へと向かう街道を、相変わらずルンルンと楽しそうに進んで行くキーナ。
その後ろから並んでテルディアスとメリンダは歩いていた。
「それで? テルディアス」
メリンダが唐突に話しかける。
「ん?」
宝玉の話か?と思いテルディアスが返事するが、
「キーナちゃんとキスくらいしたんでしょ?」
ずべしゃっ
あまりにも見当外れな言葉にずっこけるテルディアス。
「な、な、何を突然・・・」
まったくだ。
「ん~? ちょっとあんた、表情が見えにくいからフード取りなさいよ」
赤くなってるのか青くなってるのか、困った顔をしているのか見たかったのだが。
「取れるか!」
こんな道の往来でフードを外せるわけがない。
「そういえばそうね・・・」
(元は人間て話が嘘かもしれないとは疑ってたけど・・・、あの情けない姿を見ちゃったらね~)
今朝見た、ベッドの足元で小さくなってガタガタ震えている姿を思い出す。
これがダーディンの本当の姿だ!などと世間に広めたら、どれだけの人が目を点にするだろう。
今までに話に聞いていたダーディンの姿とは、あまりにもかけ離れすぎている。
(肌の色と耳さえなければ、結構いい男だし・・・)
ん?
そこでメリンダ何かが閃いた。
肌の色・・・、耳・・・。
髪はそのままでも大丈夫として・・・。
「どうしたの? 何かあった?」
キーナがてててっと駆け寄ってきた。
「あらん、大丈夫よ」
メリンダにっこり笑って答える。
「テルディアスにキーナちゃんに欲情したことがあるか聞いてただけよ」
「何を言っとるか!!」
テルディアスの鋭い突っ込みが入った。
メリンダの言葉がストレート過ぎるのだ。
「よ・・・、ヨクジョウ・・・?」
ほれ、キーナの顔が赤くなってきている。
そういうことに耐性がないのだ。
「あん、簡単に言うとね、キスしたかって聞いてたの」
「やめんか!!!!」
ストレート過ぎた。
「ほら見ろ、キーナが石になった」
「あら?」
純情少女キーナ、恋だの愛だのまだまだお子ちゃま。
キスなんて、「大人になったらするのだろう」くらいにしか考えていない。
そんなことをするなんて考えるだけでも照れくさいというお年頃だった。
(14歳でこの純情さ・・・。か・わ・い・い・・・)
と石になったキーナをメリンダがきゅっと抱きしめる。
「俺達は一緒に旅してるだけなんだと言ったろう。そ、そんなこと、するわけがないだろう」
一カ所どもった。
メリンダはそれを聞き逃さなかった。
「心当たりはあるわけね?」
とニヤニヤしながらテルディアスに迫る。
テル君恐れをなして後退る。
「だ、だから・・・その、じ、人工呼吸をしたことがあるということで・・・」
「ホ~? 人工呼吸~?」
迫るメリンダ。
後退るテルディアス。
「キーナと初めて会った時に川で溺れているのを助けて・・・、息をしてなかったから・・・」
キーナは思い出した。
そういえば、意識が戻る直前に、顔の前に温かくて柔らかいものを感じていたような・・・。
顔が赤くなる。
(そ、それじゃあ・・・、僕のファーストキスって・・・、サーガじゃなくて、テル?!)
テルディアスと別れた後に出会った黄色い髪、黄色い瞳の傭兵サーガ。
人買いに攫われて、薬を飲まされて動けなくなっていた所に、解毒薬っぽい物を口移しで飲まされた。
あの時はいきなりで、怖さとか恥ずかしさとか、とにかくショックで涙がしばらく止まらなかった。
初めてだったのに・・・。
キーナだって一応女の子。ファーストキスに憧れもある。
それがあんな形になってしまったことに、しばらくもやもやしていた。
だけれども、あれが初めてではない?
でも、テルとの時はほぼ意識がなかったわけだけど・・・。
けれども、サーガが初めての相手というよりは、テルが初めての相手だと思うと、なんだか少し救われたような気がするのは何故だろう?
(そもそも、人工呼吸や口移しを、キスのカウントに入れるもん?)
唇と唇が合わさったということではあるけれども・・・。
「キーナちゃん!」
「にゃ!」
考え込んでいたキーナはメリンダに声を掛けられ驚いた。
「何を考え込んでるの?」
「あ・・・、その・・・」
キーナは勇気を出して、目の前の経験豊富そうなお姉さんに聞いてみる事にした。
「メリンダさん、人工呼吸って、キスに入るの?」
メリンダの目が点になる。
「い、入れるものなんじゃない?」
メリンダにも分からない。
作者にも分からない。
「そっかぁ、だよねぃ」
お姉さんが言うのだから間違いないだろうと信じ込むキーナ。
「だとしたら僕・・・、もう3回もテルとしてることになるなぁ・・・」
とぼそりと呟いた。
初めて出会った時と、さて、あと2回はどこでしょう?
気になる方は、ここまで読み返してみてね!(←鬼畜)
3回?
メリンダここに引っかかった。
テルディアスにつかつかと歩み寄り、その肩に手を掛ける。
「今度はなんだ?」
と迷惑そうにテルディアスが振り返ると、
「テ~ル~ディ~ア~ス~」
と睨め上げるメリンダの顔。
またしても後退るテルディアス。
メリンダが腰に装着していた鞭を引っ張り出した。
「洗いざらい白状してもらうわよ」
ピシリ!
鞭が地面を打つ。
「な、なんのことだ!」
「人工呼吸、3回ですって?」
ビシッと鞭を握りしめるメリンダ。
その姿に、掴まったら命はない、と何故か直感したテルディアス。
脱兎のごとく、逃げ出した。
「逃げるな―!」
と追いかけるメリンダ。
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