キーナの魔法

小笠原慎二

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テルディアス変身!

闇と契約し

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誰もいない空間に影が揺らめき、男が姿を現した。
少し離れて赤い髪の女も意識を失ったまま現われた。

「なんだよ。これからお楽しみって時に」

ちょっと不機嫌な口調だ。

「ルイス! なんでこの男がダーディンだって、教えてくれなかったのよ!」

女が喚く。

「だ~から、俺は最初に言ったろ? そいつはやめとけって。少し遊ぶくらいなら遊ばせてやるって言っただろーが」
「だ、だって! ダーディンだって知らなかったのに! 教えてくれたっていいでしょう!」
「だ~か~ら~、そいつはもうあるお方の印がついてるから、ム~リ~だ~つったのに・・・」

は~めんどくせと溜息をつきながら頭をかく。

「いらないわよ! あたしにふさわしくないわ! こんなもの!」
「あ~あ・・・」

ルイスが上を向いた。

パン!

「せ~っかく、苦労して意識を封じ込めたのに・・・」

解除の方法が、いらないと宣言すること、としてあったので、いとも簡単に封印が解かれてしまった。

「お、俺は・・・?」

突然闇に包まれ、そのまま何も分からなくなってしまったテルディアス。
気付けば闇の中、女主人と背の高い黒い男、そして、

「メリンダ?!」

赤い髪の女が闇に捕らわれたまま気を失っていた。

「あ~らら」

ルイスが横目で扉を見た。
すると、

ボッ

と炎が噴き出し、扉に施された封印が一緒に焼け落ちた。

(なんだ?!)

テルディアスが訳も分からず振り向くと、キーナがそこから入って来た。
一瞬で燃え尽きた扉の残骸を、ジャリジャリと踏みながら部屋に押し入る。

(地の力を使って結界を張ってたようなものか。勉強になったなぁ)

と扉があった場所に目をやる。

「キーナ?!」

その声に反応する。

「テル?!」

駆け寄ろうと身構える一瞬のうちに、テルディアスの体は闇に捕らえられてしまった。

「テルッ!!」
「暴れられちゃあ面倒だからな。ちっと大人しくしててくれや」
「ぐ・・・、くそ・・・」

下半身と腕を闇に捕らわれ、ほとんど身動きできなくなってしまうテルディアス。
女主人はルイスの側に寄り、傲慢に言い放つ。

「ルイス、もうこんな者達用はないわ。早くどこかに捨ててきて」

使い捨て用品のような発言。

「あん?」

ルイスが女を、目を細くしてじっと見つめる。

「あいつに似てると思ったけど、やっぱり違うよな」

そう小さく呟いた。

「ルイス?」

いつものように動き出さない男に目をやると、その男はいつもと違う顔をしていた。

「お前はもう、いらねぇな」

その一言に女が目を剥く。

「ル、ルイス? どういうこと?」
「代わりに面白そうなもんもあるし」

そう言ってチラリとキーナを見る。

「お前はもう、用済みだ」
「ルイス? な、何を言って・・・?私の望みを何でも叶えてやるって言ったじゃない!」
「その時が来るまで・・・な」
「え・・・?」

女が必死に、男の言っている意味を理解しようとするが、男の瞳も言葉も、何かの謎かけを含んでいるようには見えなかった。
男が女の顔に優しく手を伸ばす。

「その時が来たんだよ。スレディ。お前の我が儘を聞くのも結構面白かったぜ。そろそろ、夢から覚める時間だ」

男が手を放すと、女の体から闇の力が抜け出ていく。

「嫌―――――――――――――!!」

長く艶やかな髪は、短く、白髪交じりになり、張りのある滑らかな肌は、弾力を失くし、皺の目立ち始めたソバカスだらけの顔になった。
引き締まった体は肉がつき、美しいドレスが、みすぼらしい服に変わった。

「あ・・・、ああ・・・」

そこにいたのは、どこにでもいるような、中年の女だった。

「じゃあな。スレディ」

ルイスが手をかざす。

「ま、待ってルイス! 見捨てない・・・」

最後の一言を言い放つ前に、女の姿は空間に溶けて消えた。

「?!」

キーナもテルディアスも目を見張る。
何故女が消されたのか分からない。

「さって」

ルイスがキーナに振り向いた。

「あの女もいなくなったことだし、俺と面白い事しねぇか? おチビちゃん」
「仲間、じゃなかったの?」

後ずさりしてしまいそうになる足を必死で堪える。

「あの女が? まさか。あの女は貧民街で拾って来ただけさ。ある知り合いに似てたんでね。面白そうだから望みを全て叶えてやってたんだが、いい加減飽きた」

そしてキーナをじっと見つめ、

「おチビちゃんの方が面白そうだからな」

キーナは背筋が寒くなった。
テルディアスが歯を食いしばる。

「ぐ、がああああ!」

全身の力を込めて暴れようとするが、闇の戒めはびくともしない。

「あ~、無駄無駄。やめとけ。眷属でもねぇあんたに、それは取れねぇよ」
「く・・・」
「さあ、どうだい? おチビちゃん。お前の望みは何でも叶えてやるぞ。その時が来るまで・・・・・・・・、俺と遊ばないか?」
「・・・」

その時。
その時が来るまで。
その時が来たら、あの女性のように、簡単に捨てられてしまうのだろう。
それよりも・・・。

「ムリだね」

ルイスがキョトンとした顔をする。

「あなたなんかに僕の望みを叶える事はできないよ」

きっぱりと言い切る。

「ホウ・・・? 金? 権力? そういう物ではなく? 好いた男でも? 人に意思だって思うままだぞ?」

ただし、操り人形のようになって、だが。

「そういう物ではなく、もっととても大きな物。決してあなたには叶えられない物」
「へえ・・・」

ルイスが目を細めた。
面白そうだ。

「そこまで言われたら気になるなぁ、言ってみろよ。叶えてやるから」
「できなかったら?」

キーナがルイスを睨み付ける。

「あん?」
「僕の望みを叶えてくれたなら、いいよ。あなたのオモチャにでも何でもなるよ。でも、できなかったら? どうする?」
「キーナ?!」

オモチャにでもなんでもなる。
ここまで言い切れるとは、どれ程の願いだというのだろう。
テルディアスは青ざめる。
そんなことハッキリと言い切って、本当に大丈夫なのか?

「できなかったら? 面白ぇこと言うなぁ、おチビちゃん。本当に面白ぇ・・・」

ルイスがキーナの瞳を見つめる。
キーナも負けじと睨み返す。

「いいぜ、分かった。もしおチビちゃんの望みを叶えられなかったら、三人とも自由にしてやるよ。そして二度とこんなことはしない。こんな条件でどうだ?」

ルイスの瞳が怪しく光る。
何かを含めていそうな光だったが、キーナは一応その条件を受け入れる事にした。

「いいよ」

承諾の意を示す。
契約は取り交わされた。

「なら、教えてもらおうか。おチビちゃんの望み」
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