キーナの魔法

小笠原慎二

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テルディアス変身!

そしてまだ終わらない

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いつものように太陽が昇り、爽やかな朝。

「まったくもう!」

一人なんだか機嫌の悪いメリンダ。

「目が覚めたら全部終わってたなんて!」

あのまま眠り続けて、気付いたら朝だった。
一応テルディアスがベッドに運んでくれたようで、その辺りは感謝している。
屋敷は魔法で建てられてました。というオチではなかったらしく、そのまま鎮座している。
屋敷で働いていた者達も、夢から覚めたような顔をしていた。
意識を封じ込めて、半分無理矢理働かされていたようで、主人がいなくなったと知ると、さっさと帰り支度を始めていた。

一応好意で、朝食をご馳走になった。
特に用もないし、先を急ぐので、キーナ達は支度でき次第、さっさと出発した。
後の事は勝手にどうにかなるだろう。

「その方がいいだろう」

テルディアスが相も変わらずぶっきらぼうに言い切る。

「どうせ闇の者には手も足も出ない。ギャーギャー喚かれるより、気絶していた方が静かでいい・・・」

パコン

メリンダがテルディアスの頭を小突いた。

「あんたって男は~~~~」
「?!」

メリンダにすんごい形相で迫られ、タジタジのテルディアス。
その様子を見ながら、

(雉も鳴かずば打たれまい・・・)

という諺を思い出したキーナ。
ま、しゃーない。
振り向くと、屋敷が小さく見えた。
テルディアスと初めて会った時、自分の名を名乗ろうとしたが、何故か言えなかった事を思い出す。
言ってはいけないのだ。この世界では。
本当の名を、知られるわけにはいかないのだ。
その名を知られたら、自分は闇に呑み込まれるのだろう。
ルイスの名を縛った時に気付いた。
そのことに。

キーナという名前が、今の自分を守る盾でもあることに。

「キーナちゃ~ん」

ぼーっとしていて、先に行ったメリンダ達に気付かなかった。
メリンダが手を振り、キーナを呼んでいる。
テルディアスとメリンダ。
二人の存在が、今のキーナの支えだ。

「待って~」
(僕は今、キーナ)

二人の後を追って、キーナは駆けだした。
















星々が煌めき、人々が眠りの淵へと誘われる頃、とある街の宿屋の屋根の上に、人影があった。
その影の名はテルディアス。
闇の魔女によって、ダーディンという異形の者に姿を変えられた青年。
今は人目がないせいか、フードを取って、夜空をぼんやり見上げていた。
卵のような月が頭上で輝いている。
屋敷でのキーナの言葉を思い出す。

“「僕の望みは、ある人を探し出して、することを成して、元の世界の僕の家へ帰る事」“

“「家へ帰る事・・・・・」“

キーナの望みは家に帰る事。
テルディアスが己の手を見る。
かつて独りきりで森を彷徨っていた。
街を歩く事さえ恐ろしくてたまらなかった。
誰とも関わる事ができず、ただうろつき回っていた日々。

そこに現われたあの不思議な少女。
自分の言葉を素直に受け入れ、自分の事を信じると言ってくれた。
ダーディンではなく、人として受け入れてくれた。
いつの間にか、何よりも大切な存在になっていた。

(失う事が怖い・・・。手放したくない・・・)

両手を握りしめる。
光の御子だからというわけではない。
キーナという存在そのものが、テルディアスにとってかけがえのないものになっていた。

(だが・・・)

“「家へ帰る事・・・・・」“

(それがお前の望みなら・・・、俺も、そのために全力を尽くす!)

テルディアスは立ち上がり、拳を痛いほど握りしめた。
これから先、宝玉を探すにも、運命の相手を探すにも、今回のように闇の者が関わってくる事があるだろう。
はっきり言って、今回は手も足も出なかった。
キーナを守れなかった。
それどころか、肝心な所ではいつもキーナに助けられてばかりだ。
情けない。

仮にも男であり、剣士であるのに。
自分はただ父を見返す為に、強くなる為だけに剣を振るってきた。
それが今回このざまだ。
自惚れていた。
妖魔を倒す事ができるというだけで。
普通の人間よりも少し強いというだけで。
自分よりも強い存在など、この世の中に腐るほどいるというのに。

(強くなりたい・・・)

大切な者を守る為に。

(あいつを、キーナを守る為に、無事に家へ帰す為に)

あの笑顔を失わない為に。

(俺は、強くなりたい!)

月明かりに照らされて、薄い影が屋根の上に長く伸びていた。
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