キーナの魔法

小笠原慎二

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火の村編

いつものこと

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あてがわれた小屋で、キーナは踊り疲れたのか、お気楽にも腹を出しながら寝ていた。

「いい気なものだ・・・」

他に部屋がないということで、渋々同室を受け入れたテルディアス。
両手を上げて臍丸出しで呑気に眠るキーナに、そっと布団を掛けてやる。
この村の寝間着は、何故か上が、両手を上げると臍が見える程に短い。
火の村というだけあって、なんだか気温が高いせいかもしれない。
テルディアスは努めて無視していた。

(野宿だと思えば良いんだ)

などと自分を納得させる。
野宿の場合、キーナがテルディアスにひっついて寝るので、ある意味ベッドがあるだけ有り難いのかもしれない。
そんな事を考えながら、テルディアスはベッドに座り、瞑想を始めた。

(俺の中に本当に闇に力があるなら・・・)

少し前にあったはぐれ闇の男の言葉を思い出す。

《あのお方に、闇の力を与えられたか?》
(それを自在に操れるようになれれば・・・)

それは貴重な戦力になる。使わない手はない。

『だめだよ』

突然声がした。

「?!」

驚いて目を開けると、白い光をぼんやりと纏い、白い長い髪をなびかせた少女が、起き上がっていた。

『無理に使おうとすれば暴走するかもしれない。眠っているものを無理に引き出してはダメ・・・』

それだけ言うと、光は静かに消え、少女も元のキーナの姿に戻り、パタリとベッドに倒れ込んだ。
そのまままた、大口を開けてすかーと眠り出す。
テルディアスは、しばらく何が起きたのか分からなかった。
頭が回り出し、少女の言葉を反芻する。

(眠っている力を無理矢理引き出せば暴走する・・・か。だが・・・、普通の人間である俺には、他に方法が・・・)

四大精霊の力では、二神精霊の力には対抗できない。
つまり、テルディアスには闇に抵抗できるだけの力はない。
剣技しか持たぬ自分に、魔法の事を深く勉強しなかった自分に、改めて後悔した。




















(気のせいか・・・?)

祭壇に向かって祈りを捧げていた大婆様が、眼を開く。

(今夜は火の精達が、どことなく浮き足立っているような・・・、ざわめかしいような・・・)

何故か火の精達がざわざわと落ち着かない。
大きな異変の前触れというわけでもない。
不思議な夜だった。


















周りを山々に囲まれた村に、朝日が差し込んできた。

「完成!」
「綺麗よ! メリンダ」

メリンダの禊ぎの手伝い、衣装の着付けなどを手伝っていた二人が息をつく。
ほぼ徹夜だった。

「ふ・・・ん」

メリンダがキョロキョロと自分を眺め回す。
巫女というより踊り子に近いその衣装。
メリンダの妖艶な肢体を隠しながらも、その形の良さを浮き彫りにするかのようだった。

「ちょっと露出が足りなくな~い?」

と体をくねらせる。
ずっこけ。

「巫女に色気がいるか――――!!」

二人に同時に突っ込まれ、

「あは」

と笑うしかないメリンダ。
その時。



うぎゃああああああ・・・



誰かの悲鳴が山々に谺した。

「あのメリンダの連れてきた男の子じゃない?」
「何かあったのかしら?」

と心配する二人に、

「あ~、大丈夫よ」

と呆れ顔のメリンダ。

「ちょっと行って見てくるわ」

とそそくさと扉を開けて出て行ってしまった。

「メリンダ?! まだ終わってないのよ!」

仕上げをほっぽり出して、メリンダ、キーナ達の小屋へと急いだ。


















「テルディアスさん! キーナさん! 何かあったんですか?!」

レズリィが小屋の扉をドンドン叩く。
だが中からはなんの反応もない。
そこへ、

「おっはよ~、みんな」

メリンダが来た。

「メリンダ?!」
「メリンダお姉さん?!」
「大丈夫大丈夫、いつものことだから。みんなはちょっと下がっててね」

と人々を少し小屋から遠ざけると、

「テルディアス~。入るわよ~」

息を吸い、気合いを込め、

「せいやっ!」

ドアを蹴破った。
そして中に入り、急いで扉を閉めると、

「あんたはー! 人の村にまで来て騒ぐな―!」

と怒鳴り声がし、

「そ、そんなこと言ったって・・・」

とモゴモゴ弁解する声が聞こえ、

「むにゃ~」

と誰かの寝ぼけた声がした。
それを遠巻きに様子を見ていた村人達は、一体、中で何が行われているのかと、みんな首を傾げたのだった。
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