キーナの魔法

小笠原慎二

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地底宮の冒険

地底宮へ!

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「フ…ン」

他より少し高い木の天辺に、サーガが立って、何やら手元の地図を覗き込み、周りを見渡している。

「う~ん」

額に手を当て、何かを探しているようだ。
しかし鬱蒼と茂る森の中。
目視で見つけるのはほぼ不可能であろう。














「こーゆー時あいつは便利ね~」
「だね~」

木の下ではメリンダとキーナが仲良くサーガが戻ってくるのを待ちながら、上を見上げていた。
葉や梢に隠れてサーガの姿は見えないけれども。

「あいつの持って来た情報なんて信用できるのか?」

不満そうにテルディアスが言う。

「一応調べてみるしかないでしょ」

メリンダが諭すようにテルディアスに言った。
サーガが持って来た・・・・・・・・・というだけで気にくわないらしい。
ところがキーナはやる気満々。

「古代の遺跡にお宝が眠ってるんでしょ!」
「まあ…」

お宝、つまり宝玉がということであるが…。

「僕、○ンディージョー○ズ大好きなのよね!」

と何やら鼻息を荒くしている。

「イ○ディージョー○ズって何?」
「さあ?」

メリンダとテルディアスが首を傾げた。
時々キーナはよく分からないことを言う…。

「う~~~~ん」

サーガが悩みながら、フワリと木の上から降りてきた。

「どうだった?」

メリンダが難しい顔をしたサーガに問いかけるも、

「地図と…臭いからして…、こっち…」

歯切れが悪い。

「あやふやね」

いつもならば地図を見ながらこっちだと、自信満々に答えるのだが。

「しゃーねーだろ。性質上地下にあるものを探すのは苦手なんだよ」

と頭をかく。

「てことは本当に地底宮!」

キーナの顔が輝く。

「みてーだな」

サーガの顔が曇る。
サーガは地系のものはなんでも苦手。
特に空気の通りのない場所、地下は苦手であった。
ま、風なので。
とりあえず目星をつけた方へと歩き出す。
今は地図を信じるしかない。

「臭いって何の臭い?」

メリンダがサーガに問いかけた。

「ん? だからさ、風が通らないと空気が淀むだろ?するとすえた・・・臭いになってくるだろ?」
「ああ、その臭いね」
「その空気がこっちの方から臭ってくるんだよ」

ただ、地面からほんの僅かに漂って来ているだけなので、サーガといえど、その場所を特定するのは難しい事なのであった。
しばらく行くと、木々が少ない、ちょっとした広場になっている所に出た。
何故か大きな石がゴロゴロ転がっている。
この近くであることは間違いないだろうと、テルディアス、メリンダ、サーガが思うが、キーナは広場に出たことにより、さらにハイテンションに。
子供だ。

「どお?」

メリンダがサーガに確認するが、

「う~ん、この辺りから臭ってきてる気がする…」

地図にもそこまで正確に遺跡の場所は書かれていない。
となるとこの辺りを虱潰しに探すしかない。
どうにかサーガの力でその場所を特定できれば有り難いのだが…。
そんなことを知ってか知らずか、キーナは石、というか岩によじ登り、楽しそうに周りを見渡している。
テルディアスはそのお守りをしている。
いつもの光景だ。
メリンダとサーガは地図を見て、どうにかならんかと首を傾げている。
その時、

「ほよ?」

キーナが森の奥に、何やら大きな影を見つけた。

「あっちにおっきな岩発見!!」

と叫ぶや、岩から飛び降り、そちらに向かってシュバタタタタタと駆け出す。

「キーナ!!」

突然の素早い行動に反応できない三人。
溜息。

「ほろ?」

岩の前に着いたキーナ、それを見上げ、首を傾げる。
そしてとりあえず三人を呼ぶことにする。

「テルー、メリンダさーん、サーガー」

呼ばれた三人は、キーナが目につく所にいることに安堵しながら、森の中を進む。

「首に鈴でもつけるか?」
「う~ん」

割と真剣にサーガとメリンダが話していた。
首に縄の方がいいかもしれない…。

「こんなんありました」

三人がやってくると、キーナが両手でそれを指し示す。
それは5メートルはありそうな程の高さの岩の像。
正面から見ると、四角い人の形をしたものが、座っているように見える。

「遺跡…」

テルディアスが呟いた。
うん、これぞまさしく、探していた遺跡の手掛かりであろう。

「なあ、姐さん」
「ん?」
「俺、いるよね?」
「…、正直に言って欲しい?」
「ヤダ」

サーガが苦労して探していた物を、キーナは野生の勘であっさりと見つけてしまった…。
サーガの存在意義が…。
とまあ、そんなどうでもいいことは置いといて、さて遺跡の手掛かりを見つけたものの、地底宮の入り口とやらが何処にあるかは分からない。
とりあえずこの像の周りを探してみようという話が纏まる前に、キーナすでにチョロチョロと遺跡の周りを探検し始める。
落ち着きのない奴である。

「また…」

テルディアス、キーナを追う。
うん、いつもの光景だ。
像の裏手に回った所で、

「にゅ?」

キーナそれを発見。
地面の一部に草が生えておらず、石が埋め込んであるようになっている。
そしてそこには何かの文字が。

(読めない…)

この世界の文字にも少し慣れてきたキーナではあったが、まだ完全にしっかり読める程ではなかった。
というか、キーナがこの世界に来てからも見たことのない文字。
古代文字だろうか?

「キーナ…」

語尾に怒りマークをつけたテルディアスがキーナの後ろに立つ。
ところがキーナそれに気付かず、

「テル、これ読める?」
「あ?」

さすがニブチン。
テルディアス、キーナが指し示すものを見て、それに気付いた。

「コルト文字か…」
「コロポックル?」
「…なんでだ?」

コしか合ってないぞ。
テルディアスが石版の前に座り込み、その文字を解読し始める。

「昔、師匠の元で少しだけ習ったことがある」

その様子に気付いたメリンダとサーガもやってきた。

「と…、ナン…ジ…、汝、我に、従うべし…。我…、汝を、従わせん…」

その言葉を聞いていたキーナの目つきが変わっていく。

「待って…」
「え?」
「今の所、“我ら汝を従えり”で」
「は?」

何故と問いたいテルディアスであったが、

「もう一度…」

キーナの異様な雰囲気に、その言葉は飲み込んだ。
訳は分からないが、こういう時のキーナに間違いは無い。
多分。
テルディアスはもう一度言葉を繰り返す。

「汝、我に従うべし。我ら、汝を従えり」

唱え終えた直後、

ズズ・・・ン

大きな地響きがして、地面が揺れた。
と、石版がゴトリと動き出す。
ゆっくりゆっくりと、どういう仕掛けか石版が動くと、そこから地下へと続く階段が現われた。

「ふおおおおおおおおおおおおおおお」

興奮して顔を輝かせるキーナ。

「キーナ…」
「何?!」

テルディアスの方へ振り向いたその顔は、先程の異様な雰囲気は全くない、いつものふやけたキーナの顔だった。

「何デモナイ…」
「?」

メリンダとサーガには、テルディアスの気持ちが痛いほど分かった。
聞きたいけど、聞けない。
そのジレンマ。
まあ、光の御子のなんちゃら能力かもしれないと勝手に納得。するしかない。
と三人が物思いに耽っていると、

「ワーイ! 冒険冒険!」

とキーナがヒラリと階段内部に飛び降りる。
すんでの所でテルディアスの手がキーナのマントを捕らえた。

「クエ」

キーナの首が軽く絞まったようだ。














テルディアスを先頭に、キーナ、メリンダ、サーガの順に階段を降りていく。
狭い階段内に、四人の足音が響いた。
薄暗く、長い階段を降りていくと、ようやっと明るい、出口、いや入り口が見えてきた。
慎重に部屋に足を踏み入れる。
四角い、それ程広くはない部屋。
正面の壁には、像と同じ、四角い人が座っているような絵が描かれている。
床には不均等なギザギザの模様。
壁や天井が仄かに光を放っており、暗くはない。
他に通路らしきものもなく、物も置いてない。

「何にもねぇな」
「ホント…」

正面に像が描かれている以外、何もない。
この部屋だけではあるまいが、この先どうしたら良いのかも分からない。

「隠し部屋とか分からない?」

メリンダがサーガに探すように問いかける。

「う~ん」

サーガも風を操り、壁に隙間でもないかと探し出す。
それでなくても地下は、風の通りが悪いので操りにくい。
キーナは警戒もせずに正面の像に近寄っていく。
テルディアスはそれを見守る。
いつもの光景だ。

「イセキ…、ステキ…」

とキーナが感動しながら像を眺め回していると、

チカ

像の両目が光った。

「!」

キーナがその現象に興奮した途端、

バン!

キーナの足元の床が消えた。
あっという間にキーナが穴に吸い込まれ消える。

「キ…」

驚いてそれを追いかけようとしたテルディアスの、

バン!

やはり足元の床が消え、テルディアスも穴に落ちていった。

「テ…」

慌てたメリンダだったが、

バン!

やはり足元の床が消え、メリンダも穴に落ちていく。

「姐さ…、!」

すんでの所でサーガは床を蹴った。

バン!

サーガが立っていた所の床が抜けた。
暗い穴が見えた。
サーガ咄嗟に風を繰り、宙に浮こうとするが、

「ん?」

魔法が正常に発動しなかった。

「おおおおおおおお?!」

跳んだ先には、メリンダが落ちて行った穴が空いており、サーガは頭からその穴に落ちていった。
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