180 / 296
風の女
森の中の家
しおりを挟む
「く、くく…、くぅ…、く…く…く…」
黄色い斑点のある、毒々しいキノコを手に、メリンダが唸っている。
「く…く…くぅ…う…」
「やめとけ姐さん。キノコはやばい」
メリンダの腹が唸り声をあげた。
いつまでもキノコを放しそうにないメリンダを宥めつつ、サーガは先を進むキーナ達の後を追う。
キーナとテルディアスも、キョロキョロと周りを見渡しながら歩いている。
キーナのお腹も声を上げる。
「森の中なのに食べられる物が見つからないとは…」
野草の勉強でもしておけば良かったなと思うキーナ。
実が成っている木が見つかれば言うこともないが、何故か森にいるだろう獣にも出会うこともできず、キーナ達は既に丸一日程森を彷徨っていた。
「携帯食料も尽きたしな…」
もしもの為にと用意しておいた食料も、底をついてしまっている。
森に入る前に立ち寄った街で、あんなことがなければ、今頃食料に悩むこともなく、道に迷って森の中を彷徨うこともなかったはず。などと考えてもどうしようもないので、とにかくこの際食料を最優先で見つけなければと、4人は森の中を目を凝らしながら歩いていた。
「せめて魚のいる川でも見つかりゃぁ…」
臭いに敏感なサーガ。川や湖なども臭いで見つける優れモノ。水に関してはどうにか魔法で召喚したり、サーガが見つけたりとなんとかなってはいる。
「さっきのは小川だったわね…」
「うん、ちっちゃ過ぎる小川だったね…」
メリンダのがっかりした声に、キーナも答える。
サーガが水の臭いがすると向かった先に、確かに水は流れていた。
流れてはいたが、岩の影から染み出した水がちょろちょろと流れているだけの小川と呼ぶのも怪しい小川だった。もちろん魚などいる気配もない。
「お?」
サーガが鼻をくんくんと動かす。
「なんか美味そうな臭いがする!」
そう叫ぶと走り出す。
「ほんと?!」
「食べ物?!」
「ぬ」
3人もサーガの後を追って走り出した。
サーガは風を司るが故、臭いに関しては3人共信頼している。臭いに関しては。
木立の間を走り、草を掻き分け、低木を飛び越え走っていくと、突然開けた場所に出た。
その真ん中に、天を衝くような、周りにある木とは比べ物にならないほどの大きな木が立っていた。
「おお?」
よく見れば、その木には、扉や窓や煙突などがついているではないか。
「木の家? 家の木?」
キーナが首を傾げる。
木で作った家なのか、家の為に作った木なのか。
「不思議ねぇ」
メリンダもその木を眺めて目をぱちくりさせる。
「面白ぇな」
サーガも感心したようにその家を眺めた。
「とにかく、人もいるみたいだし、食料を恵んでもらいに行こう!」
脇のほうにある煙突からは、薄く煙が吐き出されている。
つまり誰かがいるということだ。
「賛成!」
「ラジャー!」
(異議なし)
サーガの言葉に三者三様頷いて、4人はその家に向かった。
玄関に続いている小道を辿り、扉の前に立つと、余計に木の大きさに圧倒される。
玄関の扉にぶら下げられている札に、サーガが目を向ける。
「『実験中。邪魔する者は容赦なく叩っ殺す。覚悟せよ』なんじゃこりゃ?」
何やら物騒な文面に、冷や汗を垂らす。
「実験中だから静かにしてください。ってことかな?」
「きっとそうだわよね」
キーナの柔らかく訳した言葉に、メリンダが頷いた。
「ま、呼び鈴鳴らしてみるべ」
実験中かどうかは分からないが、こちらとしてもお腹が空いて溜まらないので、ダメならダメでその時は謝ろうと、横にぶら下がっていた紐を、サーガが強く2、3度引っ張った。
家の中から、カラリンカラリンと少し重そうなベルの音が鳴り響いてきた。
すぐに揺れも収まり、ベルの音もカランと鳴って、それきり黙った。
これで誰か出てくるはず、と身構えていた4人であったが、家の中は静まり返り、誰かが出てくる気配もない。
その後もサーガが何度か紐を引っ張り、ベルを鳴らすが、やはり反応はない。
「実験に集中しすぎて気づいてない?」
「聞こえてないんだね」
メリンダとキーナが話し合う。
煙突から煙が出ているのだから、家の中にいるはず。まさか火を起こしながら出かけるなんてこともしないだろう、とは思うが。
それに実験中の札。もし出かけているなら、外出中の札をかけるのでは?と思う。
変えるのを忘れていなければ、だが。
「まいったなぁ」
何度鳴らしても出てくる気配がなく、サーガがポリポリと頭をかく。
「お腹空いて倒れそう」
また抗議の声を上げたお腹を押さえ、メリンダが悲しそうにつぶやく。
それを見て、サーガが余計な一言を口に出す。
「姐さん見かけによらずよく食うよな。そのうち腹が胸みたくなるんじゃね?」
メリンダの足が素早く動き、サーガの顔面を襲った。
めり・・・
そんな音が聞こえてきそうな蹴りだった。
顔面に靴の後をくっきりとつけたサーガの襟首をつかみ上げ、激しく揺らしだす。
「気にしてないわよ気にしてないわよ近頃お腹がちょっとプニプニになってきたなんて…」
「メリンダさぁん」
呪いの言葉を吐くかのようにつぶやき続けるメリンダを、キーナが止めようとする。
ところがメリンダは止まらない。
テルディアスに至っては、触らぬ神に祟りなしとばかりにそっぽを向いている。
そのままギャーギャーと騒ぎ立てていると、家の中からドスドスとちょっと重い音が近づいて来て、
バン!
「ぃやっかましい!! この看板の文字が読めんのか!!」
空色の髪に黄色い瞳の女性が飛び出してきた。
黄色い斑点のある、毒々しいキノコを手に、メリンダが唸っている。
「く…く…くぅ…う…」
「やめとけ姐さん。キノコはやばい」
メリンダの腹が唸り声をあげた。
いつまでもキノコを放しそうにないメリンダを宥めつつ、サーガは先を進むキーナ達の後を追う。
キーナとテルディアスも、キョロキョロと周りを見渡しながら歩いている。
キーナのお腹も声を上げる。
「森の中なのに食べられる物が見つからないとは…」
野草の勉強でもしておけば良かったなと思うキーナ。
実が成っている木が見つかれば言うこともないが、何故か森にいるだろう獣にも出会うこともできず、キーナ達は既に丸一日程森を彷徨っていた。
「携帯食料も尽きたしな…」
もしもの為にと用意しておいた食料も、底をついてしまっている。
森に入る前に立ち寄った街で、あんなことがなければ、今頃食料に悩むこともなく、道に迷って森の中を彷徨うこともなかったはず。などと考えてもどうしようもないので、とにかくこの際食料を最優先で見つけなければと、4人は森の中を目を凝らしながら歩いていた。
「せめて魚のいる川でも見つかりゃぁ…」
臭いに敏感なサーガ。川や湖なども臭いで見つける優れモノ。水に関してはどうにか魔法で召喚したり、サーガが見つけたりとなんとかなってはいる。
「さっきのは小川だったわね…」
「うん、ちっちゃ過ぎる小川だったね…」
メリンダのがっかりした声に、キーナも答える。
サーガが水の臭いがすると向かった先に、確かに水は流れていた。
流れてはいたが、岩の影から染み出した水がちょろちょろと流れているだけの小川と呼ぶのも怪しい小川だった。もちろん魚などいる気配もない。
「お?」
サーガが鼻をくんくんと動かす。
「なんか美味そうな臭いがする!」
そう叫ぶと走り出す。
「ほんと?!」
「食べ物?!」
「ぬ」
3人もサーガの後を追って走り出した。
サーガは風を司るが故、臭いに関しては3人共信頼している。臭いに関しては。
木立の間を走り、草を掻き分け、低木を飛び越え走っていくと、突然開けた場所に出た。
その真ん中に、天を衝くような、周りにある木とは比べ物にならないほどの大きな木が立っていた。
「おお?」
よく見れば、その木には、扉や窓や煙突などがついているではないか。
「木の家? 家の木?」
キーナが首を傾げる。
木で作った家なのか、家の為に作った木なのか。
「不思議ねぇ」
メリンダもその木を眺めて目をぱちくりさせる。
「面白ぇな」
サーガも感心したようにその家を眺めた。
「とにかく、人もいるみたいだし、食料を恵んでもらいに行こう!」
脇のほうにある煙突からは、薄く煙が吐き出されている。
つまり誰かがいるということだ。
「賛成!」
「ラジャー!」
(異議なし)
サーガの言葉に三者三様頷いて、4人はその家に向かった。
玄関に続いている小道を辿り、扉の前に立つと、余計に木の大きさに圧倒される。
玄関の扉にぶら下げられている札に、サーガが目を向ける。
「『実験中。邪魔する者は容赦なく叩っ殺す。覚悟せよ』なんじゃこりゃ?」
何やら物騒な文面に、冷や汗を垂らす。
「実験中だから静かにしてください。ってことかな?」
「きっとそうだわよね」
キーナの柔らかく訳した言葉に、メリンダが頷いた。
「ま、呼び鈴鳴らしてみるべ」
実験中かどうかは分からないが、こちらとしてもお腹が空いて溜まらないので、ダメならダメでその時は謝ろうと、横にぶら下がっていた紐を、サーガが強く2、3度引っ張った。
家の中から、カラリンカラリンと少し重そうなベルの音が鳴り響いてきた。
すぐに揺れも収まり、ベルの音もカランと鳴って、それきり黙った。
これで誰か出てくるはず、と身構えていた4人であったが、家の中は静まり返り、誰かが出てくる気配もない。
その後もサーガが何度か紐を引っ張り、ベルを鳴らすが、やはり反応はない。
「実験に集中しすぎて気づいてない?」
「聞こえてないんだね」
メリンダとキーナが話し合う。
煙突から煙が出ているのだから、家の中にいるはず。まさか火を起こしながら出かけるなんてこともしないだろう、とは思うが。
それに実験中の札。もし出かけているなら、外出中の札をかけるのでは?と思う。
変えるのを忘れていなければ、だが。
「まいったなぁ」
何度鳴らしても出てくる気配がなく、サーガがポリポリと頭をかく。
「お腹空いて倒れそう」
また抗議の声を上げたお腹を押さえ、メリンダが悲しそうにつぶやく。
それを見て、サーガが余計な一言を口に出す。
「姐さん見かけによらずよく食うよな。そのうち腹が胸みたくなるんじゃね?」
メリンダの足が素早く動き、サーガの顔面を襲った。
めり・・・
そんな音が聞こえてきそうな蹴りだった。
顔面に靴の後をくっきりとつけたサーガの襟首をつかみ上げ、激しく揺らしだす。
「気にしてないわよ気にしてないわよ近頃お腹がちょっとプニプニになってきたなんて…」
「メリンダさぁん」
呪いの言葉を吐くかのようにつぶやき続けるメリンダを、キーナが止めようとする。
ところがメリンダは止まらない。
テルディアスに至っては、触らぬ神に祟りなしとばかりにそっぽを向いている。
そのままギャーギャーと騒ぎ立てていると、家の中からドスドスとちょっと重い音が近づいて来て、
バン!
「ぃやっかましい!! この看板の文字が読めんのか!!」
空色の髪に黄色い瞳の女性が飛び出してきた。
0
あなたにおすすめの小説
わたくしがお父様に疎まれている?いいえ、目に入れても痛くない程溺愛されております。
織り子
ファンタジー
王国貴族院の卒業記念パーティーの場で、大公家の令嬢ルクレツィア・アーヴェントは王太子エドワードから突然の婚約破棄を告げられる。
父であるアーヴェント大公に疎まれている――
噂を知った王太子は、彼女を公衆の面前で侮辱する。
主婦が役立たず? どう思うかは勝手だけど、こっちも勝手にやらせて貰うから
渡里あずま
ファンタジー
安藤舞は、専業主婦である。ちなみに現在、三十二歳だ。
朝、夫と幼稚園児の子供を見送り、さて掃除と洗濯をしようとしたところで――気づけば、石造りの知らない部屋で座り込んでいた。そして映画で見たような古めかしいコスプレをした、外国人集団に囲まれていた。
「我々が召喚したかったのは、そちらの世界での『学者』や『医者』だ。それを『主婦』だと!? そんなごく潰しが、聖女になどなれるものか! 役立たずなどいらんっ」
「いや、理不尽!」
初対面の見た目だけ美青年に暴言を吐かれ、舞はそのまま無一文で追い出されてしまう。腹を立てながらも、舞は何としても元の世界に戻ることを決意する。
「主婦が役立たず? どう思うかは勝手だけど、こっちも勝手にやらせて貰うから」
※※※
専業主婦の舞が、主婦力・大人力を駆使して元の世界に戻ろうとする話です(ざまぁあり)
※重複投稿作品※
表紙の使用画像は、AdobeStockのものです。
『白い結婚だったので、勝手に離婚しました。何か問題あります?』
夢窓(ゆめまど)
恋愛
「――離婚届、受理されました。お疲れさまでした」
教会の事務官がそう言ったとき、私は心の底からこう思った。
ああ、これでようやく三年分の無視に終止符を打てるわ。
王命による“形式結婚”。
夫の顔も知らず、手紙もなし、戦地から帰ってきたという噂すらない。
だから、はい、離婚。勝手に。
白い結婚だったので、勝手に離婚しました。
何か問題あります?
「がっかりです」——その一言で終わる夫婦が、王宮にはある
柴田はつみ
恋愛
妃の席を踏みにじったのは令嬢——けれど妃の心を折ったのは、夫のたった一言だった
王太子妃リディアの唯一の安らぎは、王太子アーヴィンと交わす午後の茶会。だが新しく王宮に出入りする伯爵令嬢ミレーユは、妃の席に先に座り、殿下を私的に呼び、距離感のない振る舞いを重ねる。
リディアは王宮の礼節としてその場で正す——正しいはずだった。けれど夫は「リディア、そこまで言わなくても……」と、妃を止めた。
「わかりました。あなたには、がっかりです」
微笑んで去ったその日から、夫婦の茶会は終わる。沈黙の王宮で、言葉を失った王太子は、初めて“追う”ことを選ぶが——遅すぎた。
【完結】平凡な魔法使いですが、国一番の騎士に溺愛されています
空月
ファンタジー
この世界には『善い魔法使い』と『悪い魔法使い』がいる。
『悪い魔法使い』の根絶を掲げるシュターメイア王国の魔法使いフィオラ・クローチェは、ある日魔法の暴発で幼少時の姿になってしまう。こんな姿では仕事もできない――というわけで有給休暇を得たフィオラだったが、一番の友人を自称するルカ=セト騎士団長に、何故かなにくれとなく世話をされることに。
「……おまえがこんなに子ども好きだとは思わなかった」
「いや、俺は子どもが好きなんじゃないよ。君が好きだから、子どもの君もかわいく思うし好きなだけだ」
そんなことを大真面目に言う国一番の騎士に溺愛される、平々凡々な魔法使いのフィオラが、元の姿に戻るまでと、それから。
◆三部完結しました。お付き合いありがとうございました。(2024/4/4)
バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します
namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。
マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。
その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。
「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。
しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。
「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」
公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。
前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。
これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。
神スキル【絶対育成】で追放令嬢を餌付けしたら国ができた
黒崎隼人
ファンタジー
過労死した植物研究者が転生したのは、貧しい開拓村の少年アランだった。彼に与えられたのは、あらゆる植物を意のままに操る神スキル【絶対育成】だった。
そんな彼の元に、ある日、王都から追放されてきた「悪役令嬢」セラフィーナがやってくる。
「私があなたの知識となり、盾となりましょう。その代わり、この村を豊かにする力を貸してください」
前世の知識とチートスキルを持つ少年と、気高く理知的な元公爵令嬢。
二人が手を取り合った時、飢えた辺境の村は、やがて世界が羨む豊かで平和な楽園へと姿を変えていく。
辺境から始まる、農業革命ファンタジー&国家創成譚が、ここに開幕する。
タダ働きなので待遇改善を求めて抗議したら、精霊達から『破壊神』と怖れられています。
渡里あずま
ファンタジー
出来損ないの聖女・アガタ。
しかし、精霊の加護を持つ新たな聖女が現れて、王子から婚約破棄された時――彼女は、前世(現代)の記憶を取り戻した。
「それなら、今までの報酬を払って貰えますか?」
※※※
虐げられていた子が、モフモフしながらやりたいことを探す旅に出る話です。
※重複投稿作品※
表紙の使用画像は、AdobeStockのものです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる