キーナの魔法

小笠原慎二

文字の大きさ
207 / 296
闇の宮編

光は時を、闇は空間を司る

しおりを挟む
「どういうことだ?」

テルディアスがその静寂を打ち破る。
キーナも事の次第を多少理解したのか、目をパチクリさせた。

「本来ならば、50年前に御子様方が現われていらっしゃったはずなのですが、その記録がありません。そして、次に現われるのは、男性だったはずなのですが…」

皆がキーナを見た。

「え…?」

キーナがたじろぐ。

「男…?」

テルディアスも疑問の声を出す。

「キーナちゃんは…」

メリンダもどう言ったらいいのかと先が続かない。

「やっぱり男だったのか…」

サーガの呟きに、メリンダがチョップを食らわす。

「何言ってんのよこのバカ!!」

バカです。
そのやりとりに多少顔を引き攣らせつつ、リーステインが先を続ける。

「実は、私共も驚いております。ルイスから話しを聞いた時も半信半疑でした。それに、その…、闇の御子様らしき女性が現われていたこともあり…」
「!」

テルディアスが固まる。

「闇の御子…、女性…」

キーナの頭にもあの女性の姿が浮かび上がった。
黒髪の黒い瞳。そして、黒いドレスを纏ったあの女性…。

「はい。テルディアス様はお会いしたことがありますわよね? というか、あの御方の力の片鱗を感じますし」
「…、あの、女が…御子?」
「あの人が、御子? 僕の探してる人…?」

テルディアスとキーナの顔が曇る。

「ああ、いいえ。その…、私共も確かなことは分かりかねますが…、その、光と闇の対となる者は必ず男と女になるはずなので…、ええと…」
「どちらかが偽物かもしれない、と?」

サーガの言葉に、全員が固まる。
少し沈黙があった。

「私共には、分かりかねます…」

ようやっとという感じで、リーステインが声を出した。

「なるほど、だから俺が間違われたわけか…」

テルディアスが納得したという感じで溜息を吐く。
光の者に最初に捕まった時、何故かテルディアスが御子として扱われた。
あれは、御子は男であるという思い込みから来たのだろう。

「御子さんの力が発現したすぐ側に男がいりゃ、間違われるわな。俺もキーナちゃんが御子だって確信を持ったのは、力を解放した時だったしな」

ルイスがキーナを見てにこりと笑う。
何故かテルディアスはそれをじろりと睨む。

「そういや、キーナちゃんはどうして光の力を使わないんだ?」
「むにゅ?」
「普通御子なら、どんな奴も相手にならない力を持ってるんだが…」

光の力を使えば、シゲールに捕まっても簡単に抜け出させたはずだ。

「その…、どうやって使うのか、よく分からなくて…」
「は?」

ルイスとリーステインの目が点になる。

「あたしたちも教えてあげられないしね?」
「俺達が使うのは四大精霊だからなぁ」

メリンダとサーガが頷き合う。

「どうって、発現すれば、その、なんとなく分からないか?」
「ルイスさん達はどうやって使ってるの?」

ルイスとリーステインが顔を見合わす。

「どうってその…、四大精霊を扱う時とあまり変わらないと思うが…」
「確かに、四大精霊よりは気配は掴みにくいかもしれませんが…」

ルイスとリーステインも首を傾げる。

「ええと、光は時、闇は空間を司る、と言うことはご存じで…?」
「にゅ?」

ハテナマークを飛ばすキーナを見て、リーステインの口元が引き攣る。

「ああ、それそれ、どういうことなんだ?」

サーガが突っ込んで来た。

「空間を司るって、空間移動するってやつだろ? 闇の奴が使ったりするやつ」
「はい。闇は空間を司る、つまり空間を操る力を持ちます。ただし、下位になるほど、その力の行使は制限が伴います。上位の者になると、容易に空間を移動し、はては空間の間に自分の空間を形成することも可能です」
「空間の形成…?」

サーガが首を傾げる。

「簡単に言ってしまえば、自分だけの、他の人が絶対に立ち入ることの出来ない不可侵領域を作れてしまうということですね」
「うわ…えげつねぇ…」

そんな場所を作れる奴が、もし殺人鬼的な奴だとしたら…。サーガが冷や汗を流す。

「まあ、実際、出来てしまうのですけれど、今の所闇の者の中で一番、あの方を覗いて一番力があるのは私ですので、もし発見できれば、私なればその空間を壊すことも出来ます」
「え、そんなことできんだ」
「はい。上位の者に、下位の者は絶対に敵いません」
「へ~」

サーガとリーステインの会話に、メリンダとテルディアスも心の中で驚いていた。
そんな常識があったとは。
いや、だがしかし、あの方、というのが一番なわけで…。
テルディアスの顔が曇る。

「光は、私も全容は知れませんが、時を操る力を持つと聞いております。上位の者となると、数秒だか数分だか、未来や過去へ行くことも出来るとか」
「「「「!!」」」」

時間移動…。

テルディアス達の背中が寒くなる。
テルディアスは思い出す。最初に光の者達に捕まったあの時。
何故か突然目の前に現われた光の者達。あれは、まさに時間を移動してきたのでは…。

テルディアスがふとキーナを見ると、いつもバカ明るいキーナの顔が、心なしか暗くなっていた。

「そんなことしたら、歴史を操り放題なんじゃ…」

サーガが真剣な目で問いかける。

「詳しいことは分かりませんが、時間を大幅に移動するとかなり力を消耗するらしいですよ。時には命を落とすとか。それと、今は光の宮中心に世界は動いています。何か操りたいことなどあるのですかね?」

リーステインの逆問いかけに、そういえばそうかとサーガの顔が緩んだ。
自分中心に世界が回っているのならば、改めて何かをしようとも思わないだろう。

「光の力はさすがに私も管轄外なので、御子様にお教えできることはありませんわ。それに、もしかしたら何か特別な事情やら制約やらがあるのかもしれません」
「御子だしな」

リーステインの言葉に、ルイスも頷いた。
御子とは、ある種人を超えた力を操る者達だ。普通の者とは違う何かがあってもおかしくない。

「それに、今回はいろいろと特殊ですし」

100年現われなかった御子。そして男のはずが女として現われた。これが意味するところは…。
そんなこと誰にも分かるはずがない。なにせ当の本人がよく分かっていない。

「まあ、せっかく闇の宮へいらっしゃったのですから、ゆっくりしてらっしゃいませ。何もないところではありますが、一応温泉がございますので…」
「「温泉!!」」

女性2人の目が輝いた。もちろんだが、キーナとメリンダだ。断って置くが、キーナは女の子だ。そして日本人だから、余計に風呂は大好きだ。

「おお、そうそう、歓迎するぜ。後で案内してやるよ」

ブンブンと首を縦に素早く振る2人。目が怖いほどに光っている。

「補給したい物、ある」
「ああ、それも用意させて貰うぜ。この後俺が街を案内してやるよ。まあ、本当に何もないところだけどな」

そして、ダンが欲しいものリストを作り、それをリーステインが受け取って、まだ仕事があるからと部屋を出て行った。
キーナ達はルイスについてゾロゾロと街、もとい宮の中を観光へと出かけたのであった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

わたくしがお父様に疎まれている?いいえ、目に入れても痛くない程溺愛されております。

織り子
ファンタジー
王国貴族院の卒業記念パーティーの場で、大公家の令嬢ルクレツィア・アーヴェントは王太子エドワードから突然の婚約破棄を告げられる。 父であるアーヴェント大公に疎まれている―― 噂を知った王太子は、彼女を公衆の面前で侮辱する。

主婦が役立たず? どう思うかは勝手だけど、こっちも勝手にやらせて貰うから

渡里あずま
ファンタジー
安藤舞は、専業主婦である。ちなみに現在、三十二歳だ。 朝、夫と幼稚園児の子供を見送り、さて掃除と洗濯をしようとしたところで――気づけば、石造りの知らない部屋で座り込んでいた。そして映画で見たような古めかしいコスプレをした、外国人集団に囲まれていた。 「我々が召喚したかったのは、そちらの世界での『学者』や『医者』だ。それを『主婦』だと!? そんなごく潰しが、聖女になどなれるものか! 役立たずなどいらんっ」 「いや、理不尽!」 初対面の見た目だけ美青年に暴言を吐かれ、舞はそのまま無一文で追い出されてしまう。腹を立てながらも、舞は何としても元の世界に戻ることを決意する。 「主婦が役立たず? どう思うかは勝手だけど、こっちも勝手にやらせて貰うから」 ※※※ 専業主婦の舞が、主婦力・大人力を駆使して元の世界に戻ろうとする話です(ざまぁあり) ※重複投稿作品※ 表紙の使用画像は、AdobeStockのものです。

『白い結婚だったので、勝手に離婚しました。何か問題あります?』

夢窓(ゆめまど)
恋愛
「――離婚届、受理されました。お疲れさまでした」 教会の事務官がそう言ったとき、私は心の底からこう思った。 ああ、これでようやく三年分の無視に終止符を打てるわ。 王命による“形式結婚”。 夫の顔も知らず、手紙もなし、戦地から帰ってきたという噂すらない。 だから、はい、離婚。勝手に。 白い結婚だったので、勝手に離婚しました。 何か問題あります?

「がっかりです」——その一言で終わる夫婦が、王宮にはある

柴田はつみ
恋愛
妃の席を踏みにじったのは令嬢——けれど妃の心を折ったのは、夫のたった一言だった 王太子妃リディアの唯一の安らぎは、王太子アーヴィンと交わす午後の茶会。だが新しく王宮に出入りする伯爵令嬢ミレーユは、妃の席に先に座り、殿下を私的に呼び、距離感のない振る舞いを重ねる。 リディアは王宮の礼節としてその場で正す——正しいはずだった。けれど夫は「リディア、そこまで言わなくても……」と、妃を止めた。 「わかりました。あなたには、がっかりです」 微笑んで去ったその日から、夫婦の茶会は終わる。沈黙の王宮で、言葉を失った王太子は、初めて“追う”ことを選ぶが——遅すぎた。

【完結】平凡な魔法使いですが、国一番の騎士に溺愛されています

空月
ファンタジー
この世界には『善い魔法使い』と『悪い魔法使い』がいる。 『悪い魔法使い』の根絶を掲げるシュターメイア王国の魔法使いフィオラ・クローチェは、ある日魔法の暴発で幼少時の姿になってしまう。こんな姿では仕事もできない――というわけで有給休暇を得たフィオラだったが、一番の友人を自称するルカ=セト騎士団長に、何故かなにくれとなく世話をされることに。 「……おまえがこんなに子ども好きだとは思わなかった」 「いや、俺は子どもが好きなんじゃないよ。君が好きだから、子どもの君もかわいく思うし好きなだけだ」 そんなことを大真面目に言う国一番の騎士に溺愛される、平々凡々な魔法使いのフィオラが、元の姿に戻るまでと、それから。 ◆三部完結しました。お付き合いありがとうございました。(2024/4/4)

神スキル【絶対育成】で追放令嬢を餌付けしたら国ができた

黒崎隼人
ファンタジー
過労死した植物研究者が転生したのは、貧しい開拓村の少年アランだった。彼に与えられたのは、あらゆる植物を意のままに操る神スキル【絶対育成】だった。 そんな彼の元に、ある日、王都から追放されてきた「悪役令嬢」セラフィーナがやってくる。 「私があなたの知識となり、盾となりましょう。その代わり、この村を豊かにする力を貸してください」 前世の知識とチートスキルを持つ少年と、気高く理知的な元公爵令嬢。 二人が手を取り合った時、飢えた辺境の村は、やがて世界が羨む豊かで平和な楽園へと姿を変えていく。 辺境から始まる、農業革命ファンタジー&国家創成譚が、ここに開幕する。

バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します

namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。 マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。 その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。 「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。 しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。 「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」 公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。 前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。 これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。

タダ働きなので待遇改善を求めて抗議したら、精霊達から『破壊神』と怖れられています。

渡里あずま
ファンタジー
出来損ないの聖女・アガタ。 しかし、精霊の加護を持つ新たな聖女が現れて、王子から婚約破棄された時――彼女は、前世(現代)の記憶を取り戻した。 「それなら、今までの報酬を払って貰えますか?」 ※※※ 虐げられていた子が、モフモフしながらやりたいことを探す旅に出る話です。 ※重複投稿作品※ 表紙の使用画像は、AdobeStockのものです。

処理中です...