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シゲール襲来編
攫われたメリンダ
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長い長い獣道のような道を抜け、ようやっと街道に出た一行。
辿り着いた小さな村で食事を取っていた。
「ダンの料理に慣れると…だね」
「そうね、キーナちゃん」
小さな村の小さな食堂。味は悪くないはずなのに、なんだか物足りない気がしてしまう不思議。
キーナ達は黙々と食事を口に運ぶ。
その中でもサーガだけは席を離れ、店の女将さんやら親父さん、果ては常連のお爺さん達まで巻き込んで談笑している。羨ましいほどのコミュニケーション能力。作者にも分けてくれ。
キーナ達が終わるのを頃合いに戻って来るのも流石である。
「で、この村に泊まるか?」
何故か聞いてくる。
まだ陽は高い。しかし次の村、または街まで行くとなると微妙な時間だ。普通ならばここで一泊するところであろう。
しかし、今のキーナ達にはダンがいる。
「ちなみに仕入れた情報によると、ここの宿屋のベッドは少しお粗末で固いらしい」
「先を急ぎましょう」
メリンダが速攻で答えた。
「お風呂はもちろん…」
「ないな」
キーナの質問に速攻で返すサーガ。
こんな小さな村で、風呂などあるほうが珍しい。
もちろんであるがお風呂はそこそこ高級な部類のものである。自家専用の風呂を持っているのはやはりお金持ちや貴族連中。平民は良くて大衆風呂、悪くて川で水浴びだ。
良い宿屋ならばタライ風呂、という選択も出来るが、あるだけ良い方なのである。
しかしダンの風呂付きトイレ付き快適ふんわりベッド野宿生活を知ってしまったキーナとメリンダは、もう後戻り出来ない体になってしまっていた。
なんじゃそりゃ。
ということで、女性陣達の希望により、飯だけ食ってさっさと立ち去ることとなったのだった。
節約もできるしね!
そこそこ人目もない広い場所を今夜の塒と決めた一行は、早速野宿の準備に入る。
サーガとテルは芝刈りに、メリンダ達は洗濯に、ではなく、サーガとテルディアスは狩り&周辺の警護。キーナとメリンダはダンの料理の手伝いである。
このお手伝いのおかげで、キーナも多少調理のスキルが上がったとかなんとか。
良かったね。
そんないつも通りの風景。何の変哲もない風景だった。
「キーナちゃん、これもいい?」
「はーい」
水はキーナが用意し、火はもちろんメリンダが。材料はダンが用意して、簡単な下拵えなどは手分けしてやる。キーナも果物ナイフのような包丁ではあったが、大分手つきが慣れてきていた。
メリンダは元々火の村で料理の手伝いなどもしていたので手慣れている。ダンも言わずもがな。上手くすればサーガが小動物などを捕まえて来てくれるだろう。そうしたら食卓が少し豪勢になる。
テルディアスは、狩りはサーガほど上手く見付けられないので、妖魔などがいないか見回り、いたら退治しているはずである。
そんなありふれた、いつもの風景だった。
しかし、そこに亀裂が入る。
文字通り、空間に亀裂が入った。それもキーナの真後ろに。
「そうだわ、キーナ…」
メリンダがキーナに声を掛けようとして、その亀裂に気付いた。
「キーナちゃん?!」
「何? メリンダさん…」
亀裂から腕が出て来て、キーナに向かって伸ばされる。
メリンダは咄嗟にキーナを突き飛ばした。
「うわ!」
キーナが地面に転がる。
「メリンダさん…?」
キーナがどうしたのかと顔を上げると、亀裂から伸びた手がメリンダを捕らえていた。
「く…この!」
メリンダがその手を離そうと藻掻き、火の力を発現させようとしたが、空間から伸びた手は軽々とメリンダを引き摺り込んでいった。
「メリンダさん!!」
「キーナちゃん!」
キーナの目の前から、メリンダが消えた。
「メリンダさん!!」
キーナが叫んで辺りを見回すが、その姿はない。
ダンは突然の成り行きに反応できず、固まっている。
と、キーナの目の前の空間が裂けた。
「おおいたいた。今度こそ…」
目つきの悪い男がその空間の裂け目からキーナを見つめ、手を伸ばして来た。
「!」
突然の事でキーナも反応できず、男の手に捕らわれそうになる。
そこへ。
キン!
甲高い金属音が響き渡ると、キーナの目の前を銀色の光が横切った。
「っ! あっぶね!」
咄嗟に手を引いた男は、腕を切り落とされることを免れた。
キーナを後ろに庇うように前に立つテルディアス。剣先は空間の中にいる目つきの悪い男に向けられている。
「ちぇ、お守りが戻って来ちまったか。まあいいや。この女で遊ぶか」
男の後ろに赤い影が見えた。
「メリンダさん!!」
空間が閉じていく。男が背を向ける。その時。
ドゴ!
閉じていく空間に、太い木の枝が勢いよく差し込まれた。
「何?!」
「聞いた事あんぜ。こうすると閉じられないんだろ?」
その木の枝の上にサーガが降り立つ。
「姐さんを返しな」
臆することなく、サーガが亀裂に入って行こうとする。
「ち、邪魔だ!」
闇の力が空間に入ろうとするサーガを木の枝もろとも吹っ飛ばす。
サーガは宙空で器用に態勢を整えると、閉じようとする空間に頭から突っ込む。
「返せ!」
「しつこい野郎だな!」
闇の力が再びサーガを吹っ飛ばそうと迫るが、サーガは器用にそれを避け、空間にその身をねじ込んだ。
「男がここに入ってくるんじゃねえ!」
目つきの悪い男が激怒し、闇の力をサーガに向ける。流石のサーガも通常空間とは異質なその空間では自由に動けず、闇の力に捕まってしまう。
「くそ!」
「消えろ!」
「お前がな」
「!」
男の隙をついて空間に入り込んだテルディアスが襲いかかる。
しかしそこはその目つきの悪い男の空間。テルディアスも捕まり、空間の外に投げ出された。
サーガは体勢を整え、なおも突入の姿勢を見せる。テルディアスも上手く着地し、隙を伺う。
「メリンダさんを返して!!」
ダンの背に庇われたキーナが目つきの悪い男を睨み付け怒鳴る。
サーガが再度突入しようとするが、闇の力に阻まれた。
「くそ!」
「しつこい奴等だな…」
再び吹っ飛ばされるサーガ。しかしまたすぐに体勢を整える。
「そうか、こうしたら大人しくなるか?」
闇の力で動けなくしたメリンダを亀裂の所まで引っ張り出し、その喉元に闇色に光る刃物を押し当てた。
「く…」
「…」
サーガとテルディアスの動きが止まった。
「安心しろ、殺しゃしない。十分に遊んだら返してやるよ。そして次は、お前、光の御子。いっぱい遊んでやるからな」
下卑た笑みを貼り付け、空間の亀裂が塞がっていった。
「メリンダさん!!」
メリンダの瞳が、キーナを見つめた。
その瞳は力強く輝き、まるで「大丈夫だ」とでも言っているようだった。
辿り着いた小さな村で食事を取っていた。
「ダンの料理に慣れると…だね」
「そうね、キーナちゃん」
小さな村の小さな食堂。味は悪くないはずなのに、なんだか物足りない気がしてしまう不思議。
キーナ達は黙々と食事を口に運ぶ。
その中でもサーガだけは席を離れ、店の女将さんやら親父さん、果ては常連のお爺さん達まで巻き込んで談笑している。羨ましいほどのコミュニケーション能力。作者にも分けてくれ。
キーナ達が終わるのを頃合いに戻って来るのも流石である。
「で、この村に泊まるか?」
何故か聞いてくる。
まだ陽は高い。しかし次の村、または街まで行くとなると微妙な時間だ。普通ならばここで一泊するところであろう。
しかし、今のキーナ達にはダンがいる。
「ちなみに仕入れた情報によると、ここの宿屋のベッドは少しお粗末で固いらしい」
「先を急ぎましょう」
メリンダが速攻で答えた。
「お風呂はもちろん…」
「ないな」
キーナの質問に速攻で返すサーガ。
こんな小さな村で、風呂などあるほうが珍しい。
もちろんであるがお風呂はそこそこ高級な部類のものである。自家専用の風呂を持っているのはやはりお金持ちや貴族連中。平民は良くて大衆風呂、悪くて川で水浴びだ。
良い宿屋ならばタライ風呂、という選択も出来るが、あるだけ良い方なのである。
しかしダンの風呂付きトイレ付き快適ふんわりベッド野宿生活を知ってしまったキーナとメリンダは、もう後戻り出来ない体になってしまっていた。
なんじゃそりゃ。
ということで、女性陣達の希望により、飯だけ食ってさっさと立ち去ることとなったのだった。
節約もできるしね!
そこそこ人目もない広い場所を今夜の塒と決めた一行は、早速野宿の準備に入る。
サーガとテルは芝刈りに、メリンダ達は洗濯に、ではなく、サーガとテルディアスは狩り&周辺の警護。キーナとメリンダはダンの料理の手伝いである。
このお手伝いのおかげで、キーナも多少調理のスキルが上がったとかなんとか。
良かったね。
そんないつも通りの風景。何の変哲もない風景だった。
「キーナちゃん、これもいい?」
「はーい」
水はキーナが用意し、火はもちろんメリンダが。材料はダンが用意して、簡単な下拵えなどは手分けしてやる。キーナも果物ナイフのような包丁ではあったが、大分手つきが慣れてきていた。
メリンダは元々火の村で料理の手伝いなどもしていたので手慣れている。ダンも言わずもがな。上手くすればサーガが小動物などを捕まえて来てくれるだろう。そうしたら食卓が少し豪勢になる。
テルディアスは、狩りはサーガほど上手く見付けられないので、妖魔などがいないか見回り、いたら退治しているはずである。
そんなありふれた、いつもの風景だった。
しかし、そこに亀裂が入る。
文字通り、空間に亀裂が入った。それもキーナの真後ろに。
「そうだわ、キーナ…」
メリンダがキーナに声を掛けようとして、その亀裂に気付いた。
「キーナちゃん?!」
「何? メリンダさん…」
亀裂から腕が出て来て、キーナに向かって伸ばされる。
メリンダは咄嗟にキーナを突き飛ばした。
「うわ!」
キーナが地面に転がる。
「メリンダさん…?」
キーナがどうしたのかと顔を上げると、亀裂から伸びた手がメリンダを捕らえていた。
「く…この!」
メリンダがその手を離そうと藻掻き、火の力を発現させようとしたが、空間から伸びた手は軽々とメリンダを引き摺り込んでいった。
「メリンダさん!!」
「キーナちゃん!」
キーナの目の前から、メリンダが消えた。
「メリンダさん!!」
キーナが叫んで辺りを見回すが、その姿はない。
ダンは突然の成り行きに反応できず、固まっている。
と、キーナの目の前の空間が裂けた。
「おおいたいた。今度こそ…」
目つきの悪い男がその空間の裂け目からキーナを見つめ、手を伸ばして来た。
「!」
突然の事でキーナも反応できず、男の手に捕らわれそうになる。
そこへ。
キン!
甲高い金属音が響き渡ると、キーナの目の前を銀色の光が横切った。
「っ! あっぶね!」
咄嗟に手を引いた男は、腕を切り落とされることを免れた。
キーナを後ろに庇うように前に立つテルディアス。剣先は空間の中にいる目つきの悪い男に向けられている。
「ちぇ、お守りが戻って来ちまったか。まあいいや。この女で遊ぶか」
男の後ろに赤い影が見えた。
「メリンダさん!!」
空間が閉じていく。男が背を向ける。その時。
ドゴ!
閉じていく空間に、太い木の枝が勢いよく差し込まれた。
「何?!」
「聞いた事あんぜ。こうすると閉じられないんだろ?」
その木の枝の上にサーガが降り立つ。
「姐さんを返しな」
臆することなく、サーガが亀裂に入って行こうとする。
「ち、邪魔だ!」
闇の力が空間に入ろうとするサーガを木の枝もろとも吹っ飛ばす。
サーガは宙空で器用に態勢を整えると、閉じようとする空間に頭から突っ込む。
「返せ!」
「しつこい野郎だな!」
闇の力が再びサーガを吹っ飛ばそうと迫るが、サーガは器用にそれを避け、空間にその身をねじ込んだ。
「男がここに入ってくるんじゃねえ!」
目つきの悪い男が激怒し、闇の力をサーガに向ける。流石のサーガも通常空間とは異質なその空間では自由に動けず、闇の力に捕まってしまう。
「くそ!」
「消えろ!」
「お前がな」
「!」
男の隙をついて空間に入り込んだテルディアスが襲いかかる。
しかしそこはその目つきの悪い男の空間。テルディアスも捕まり、空間の外に投げ出された。
サーガは体勢を整え、なおも突入の姿勢を見せる。テルディアスも上手く着地し、隙を伺う。
「メリンダさんを返して!!」
ダンの背に庇われたキーナが目つきの悪い男を睨み付け怒鳴る。
サーガが再度突入しようとするが、闇の力に阻まれた。
「くそ!」
「しつこい奴等だな…」
再び吹っ飛ばされるサーガ。しかしまたすぐに体勢を整える。
「そうか、こうしたら大人しくなるか?」
闇の力で動けなくしたメリンダを亀裂の所まで引っ張り出し、その喉元に闇色に光る刃物を押し当てた。
「く…」
「…」
サーガとテルディアスの動きが止まった。
「安心しろ、殺しゃしない。十分に遊んだら返してやるよ。そして次は、お前、光の御子。いっぱい遊んでやるからな」
下卑た笑みを貼り付け、空間の亀裂が塞がっていった。
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