キーナの魔法

小笠原慎二

文字の大きさ
215 / 296
シゲール襲来編

絶叫

しおりを挟む
闇の中、着ていたものを全て剥ぎ取られたメリンダが転がっていた。体中のあちこちに傷や汚れが目立つ。どんな扱いをされたのかは明白だ。
特に手枷足枷はないものの、メリンダはここから逃げられないことは察していた。
故に、今は休むしかない。

(本当に、キーナちゃんじゃなくて良かった…)

あの時キーナに思い切りぶつかってしまって、その時に怪我でもしていないかとメリンダは心配していた。仮に怪我をしていたとしても、テルディアスが放っておかないだろうが。
その点だけはテルディアスには信頼が置ける。その点だけ。
代わりに自分が捕まってしまった。キーナは心配しているだろう。

(ごめんね、キーナちゃん)

心の中で謝る。あの純粋で優しいキーナはきっと自分の心配をしている。もしかしたら泣いているかもしれない。

(あたしは大丈夫だから…)

男から「物」扱いされることは慣れている。だからといって傷ついていないわけではない。もしこれがキーナであったら、今頃心を壊されてしまっていたかもしれない。
それほどにあの目つきに悪い男は、メリンダの扱いが乱暴だった。

(まるで壊すのを楽しんでる風に…)


「これでも壊れないか?」

あの男が笑いながら言った言葉が耳に張り付いている。
あの言いようから、今までにも何人かの女の子が犠牲になっているだろう事は分かった。

(ゲス野郎…)

力任せの技なし。心を、体を壊すためだけの行為。只の拷問だ。
メリンダはなんとか早めに事を終わらせようと、あらゆる手を尽くした。しかし何故か男は果てても果てても回復が早い。
訝しんだメリンダに気付いたのか、男がニヤニヤと種明かしして来た。

「これだよ。この宝玉。とあるテラモトに置いて、女達の情欲を散々吸い取ってきたんだ」

それに見覚えがあった。あのキーナが壊そうとした宝玉だ。

「これがあれば何回でもできるぜ。しかも、俺だけじゃない」

そう言って男が宝玉の力をメリンダにも注ぎ込んできた。
メリンダも経験上媚薬の類いは使ったことがある。しかし、宝玉はそれを上回るもので、しかも何故か気持ち悪い。気持ち悪いのに体が反応する。

「どうだ? 凄いだろう?」

そう言って男はまた事に及ぶ。
変な気持ち悪さとその逆の体の反応に、さすがのメリンダも根を上げそうになった。必死に唇を噛みしめてそれに耐えた。
そんな行為をその後も何度か繰り返し、男は流石に疲れたのか、「ちと休憩するか」と呟いてメリンダを置いてどこかに去って行った。

さすがのメリンダもこんなに長時間連続でさせられることは初めてだったので、男が去った直後は気絶するように眠ってしまった。今は目が覚めてはいるが、ぐったりと体を横たえている。
出来ることなら水浴びをして、この気持ち悪さを洗い流したかった。しかしここに水があるわけでもないし、何より疲れすぎて動けない。

(キーナちゃん…)

瞳を閉じれば、あのとても可愛い女の子の笑顔が浮かぶ。
キーナの身代わりになれたのならば本望だ。
そして、もう一人黄色い髪のあの男のアホ面も浮かんでくる。

(サーガ…。あいつとするのは、気持ちよくて楽しいのに…)

ついついどうしても比べてしまう。特に下手すぎると。

(あいつは、女の子の扱いが丁寧よね…)

傭兵というものは大概が女の扱いが雑だ。しかしサーガは何故か違う。
壊れ物を扱うかのような手つき。そしてツボを探し当てるのが上手い。触れ方も強弱の付け方も絶品。そして何よりメリンダと体の相性がすこぶる良い。

(いや、何考えてんのよあたし…)

何故かちょっと顔を赤くするメリンダ。本当に何を考えているのやら。

「よう、少しは休んだ?」

男が戻ってきた。
また始める気なのか。メリンダが少し体を固くする。

「いいねいいねその目。まだ諦めてないんだぁ? 気が済んだら解放されるって思ってる? まあその通りなんだけど。でもお姉さん結構頑張るじゃない?」

闇の触手が伸びてきて、メリンダの手足を拘束する。先程もそうだった。

「どうしたら壊れるかなって考えたんだぁ。でね、良い方法思いついたわけさぁ」

ニヤニヤと笑いながら男がメリンダの顔を覗き込む。

「これで上手く行ったらさ、光の御子にも試してみようと思うんだ。お姉さん頑張ってね?」

光の御子。キーナの事だ。メリンダが男を射殺すかのように睨み付ける。

「おお怖。そんなにあれが大事なの? いいねいいね。じゃあさ、もしこれに耐えられたら、お姉さん解放して御子にも手を出さないって約束するよぉ。どお?」
「本当に? 本当にキーナちゃんには手を出さないのね?」

口約束かもしれない。しかしメリンダはそれに縋った。キーナを酷い目に遭わせたくはなかった。

「いいよいいよ。耐えられたら、だけどねぇ」

男が前戯も無しにいきなり挿れて来た。

「うぐっ」

その痛みに顔を歪めるメリンダ。

「あっはぁ、大丈夫大丈夫。これがあるからさぁ」

そう言って宝玉を翳す。
メリンダの中にまたあの気持ちの悪い感覚が流れ込んでくる。そして体は反応しだす。

「…!」

その気持ち悪さにますます顔を顰める。
男が腰を動かし始める。

(これくらいなら…)

先程までと何が違うのかよく分からないが、これくらいなら耐えられる。メリンダがそう思った時。

「で、ここからが違うんだぁ」

男がニヤリと笑った。
何かが始まるのか?とメリンダは警戒する。しかし男は腰を動かし続けるだけで特に何もない。
下手な技でも入れて来たのだろうか。そう思った時、それに気付いた。

男が腰を動かす度に、体の中に何かが侵入してくる。
射精ではない。それとは違う異質な物。
それがどんどん下腹から胸の方へと浸食してくる。メリンダの背筋が震えた。

(何? なんなの?!)

自分の中の大切な何かを失うような絶望感。自分ではない何かに変えられていく恐怖。

「いや、いやあ!!」
「おお、叫んだ」

男は楽しむように余計に腰を動かす。
そしてそれがどんどん浸食してくる。

「やめて、やめてぇぇぇ!! いやあああああ!!」

意識が、心が闇に呑まれていく。

「助けて、助けて! サーガ!!」

メリンダは絶叫した。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

わたくしがお父様に疎まれている?いいえ、目に入れても痛くない程溺愛されております。

織り子
ファンタジー
王国貴族院の卒業記念パーティーの場で、大公家の令嬢ルクレツィア・アーヴェントは王太子エドワードから突然の婚約破棄を告げられる。 父であるアーヴェント大公に疎まれている―― 噂を知った王太子は、彼女を公衆の面前で侮辱する。

主婦が役立たず? どう思うかは勝手だけど、こっちも勝手にやらせて貰うから

渡里あずま
ファンタジー
安藤舞は、専業主婦である。ちなみに現在、三十二歳だ。 朝、夫と幼稚園児の子供を見送り、さて掃除と洗濯をしようとしたところで――気づけば、石造りの知らない部屋で座り込んでいた。そして映画で見たような古めかしいコスプレをした、外国人集団に囲まれていた。 「我々が召喚したかったのは、そちらの世界での『学者』や『医者』だ。それを『主婦』だと!? そんなごく潰しが、聖女になどなれるものか! 役立たずなどいらんっ」 「いや、理不尽!」 初対面の見た目だけ美青年に暴言を吐かれ、舞はそのまま無一文で追い出されてしまう。腹を立てながらも、舞は何としても元の世界に戻ることを決意する。 「主婦が役立たず? どう思うかは勝手だけど、こっちも勝手にやらせて貰うから」 ※※※ 専業主婦の舞が、主婦力・大人力を駆使して元の世界に戻ろうとする話です(ざまぁあり) ※重複投稿作品※ 表紙の使用画像は、AdobeStockのものです。

『白い結婚だったので、勝手に離婚しました。何か問題あります?』

夢窓(ゆめまど)
恋愛
「――離婚届、受理されました。お疲れさまでした」 教会の事務官がそう言ったとき、私は心の底からこう思った。 ああ、これでようやく三年分の無視に終止符を打てるわ。 王命による“形式結婚”。 夫の顔も知らず、手紙もなし、戦地から帰ってきたという噂すらない。 だから、はい、離婚。勝手に。 白い結婚だったので、勝手に離婚しました。 何か問題あります?

「がっかりです」——その一言で終わる夫婦が、王宮にはある

柴田はつみ
恋愛
妃の席を踏みにじったのは令嬢——けれど妃の心を折ったのは、夫のたった一言だった 王太子妃リディアの唯一の安らぎは、王太子アーヴィンと交わす午後の茶会。だが新しく王宮に出入りする伯爵令嬢ミレーユは、妃の席に先に座り、殿下を私的に呼び、距離感のない振る舞いを重ねる。 リディアは王宮の礼節としてその場で正す——正しいはずだった。けれど夫は「リディア、そこまで言わなくても……」と、妃を止めた。 「わかりました。あなたには、がっかりです」 微笑んで去ったその日から、夫婦の茶会は終わる。沈黙の王宮で、言葉を失った王太子は、初めて“追う”ことを選ぶが——遅すぎた。

【完結】平凡な魔法使いですが、国一番の騎士に溺愛されています

空月
ファンタジー
この世界には『善い魔法使い』と『悪い魔法使い』がいる。 『悪い魔法使い』の根絶を掲げるシュターメイア王国の魔法使いフィオラ・クローチェは、ある日魔法の暴発で幼少時の姿になってしまう。こんな姿では仕事もできない――というわけで有給休暇を得たフィオラだったが、一番の友人を自称するルカ=セト騎士団長に、何故かなにくれとなく世話をされることに。 「……おまえがこんなに子ども好きだとは思わなかった」 「いや、俺は子どもが好きなんじゃないよ。君が好きだから、子どもの君もかわいく思うし好きなだけだ」 そんなことを大真面目に言う国一番の騎士に溺愛される、平々凡々な魔法使いのフィオラが、元の姿に戻るまでと、それから。 ◆三部完結しました。お付き合いありがとうございました。(2024/4/4)

神スキル【絶対育成】で追放令嬢を餌付けしたら国ができた

黒崎隼人
ファンタジー
過労死した植物研究者が転生したのは、貧しい開拓村の少年アランだった。彼に与えられたのは、あらゆる植物を意のままに操る神スキル【絶対育成】だった。 そんな彼の元に、ある日、王都から追放されてきた「悪役令嬢」セラフィーナがやってくる。 「私があなたの知識となり、盾となりましょう。その代わり、この村を豊かにする力を貸してください」 前世の知識とチートスキルを持つ少年と、気高く理知的な元公爵令嬢。 二人が手を取り合った時、飢えた辺境の村は、やがて世界が羨む豊かで平和な楽園へと姿を変えていく。 辺境から始まる、農業革命ファンタジー&国家創成譚が、ここに開幕する。

バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します

namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。 マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。 その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。 「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。 しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。 「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」 公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。 前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。 これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。

タダ働きなので待遇改善を求めて抗議したら、精霊達から『破壊神』と怖れられています。

渡里あずま
ファンタジー
出来損ないの聖女・アガタ。 しかし、精霊の加護を持つ新たな聖女が現れて、王子から婚約破棄された時――彼女は、前世(現代)の記憶を取り戻した。 「それなら、今までの報酬を払って貰えますか?」 ※※※ 虐げられていた子が、モフモフしながらやりたいことを探す旅に出る話です。 ※重複投稿作品※ 表紙の使用画像は、AdobeStockのものです。

処理中です...