キーナの魔法

小笠原慎二

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サーガの村編

サーガの村へ

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サーガとメリンダが動けるようになると、一行はすぐに出発した。なんやかんやで大分遅くなってしまった。
遅れを取り戻すべく、一行は足を動かす。サーガ情報によると、戦はもう終わりを迎える局面らしい。サーガの村は役目が終わったとみるや移動を開始し始める事もあるとのことなので急がなければならない。
その途中で幾度か街に立ち寄り、宿に泊まることがあったが、キーナはもうテルディアスのベッドに忍び込む事はなかった。成長したんやね。ホロリ。
微妙なギクシャク感はあるものの、なんとか普段通りを装っていた。頑張れ。
ただ、な~んとなく、びみょ~うな距離が空いていることは、メリンダもサーガも気付きつつも突っ込まなかった。ダンも気付いてはいたが、お口にチャック。もとよりこやつの口は錆止め塗って潤滑油でも塗らねば動かないのではないかというくらいには固いしね。5○6の出番だね。
シア?こやつはそんなこと気にしたこともないので放っておこう。
そしてサクサク足を動かし、時折開けたちょっと小高い場所に出ると足を止めた。

「ちょっと待っててくんろ」

こんなふざけた口調をするのはサーガと決まっています。
高くなっている場所に立ち、サーガが集中するとその周りを風が巻いた。一行は少し離れた所からそれを眺める。サーガが周辺の情報を探っているのだ。
サーガの村はそのまま村が移動しているので、普通の傭兵のように街に泊まったりなどはしない。戦場から少し離れた所に陣を張る感じで、簡易村を作る。なので近づくことが感じられた時から、時折サーガがこうして周辺の情報を探り、村を探しているのだ。

「うん、こっちかな?」

サーガの顔が少し南の方に向いた。

「見つかったの?」

メリンダが問いかける。

「う~ん、それらしき臭いがする気がする」

一行に近づきつつ、鼻の頭をポリポリ掻くサーガ。此奴の嗅覚は犬並である。

「とりあえずこっちの方を気にしながら行って見ようか」

と少し左の方を気にしながら言った。
再び足を進め、また開けた場所でサーガが探る。それを繰り返し、また野宿をして一行は進んで行く。
そして、

「! いた!」

何度目かの探索で、サーガの眼が輝いた。

「見つかったの?!」
「ああ! いたぜ!」

メリンダの問いににっかり笑うサーガ。サーガもおよそ2年振りに村に帰れる事が嬉しいのかも知れない。
サーガを先頭に街道を外れ、少し森の中へと入っていく。下草が伸び、歩きにくい。

「何故こんな森の中に…」

テルディアスが疑問を口にした。
森の中では妖魔が出る。もっと街に近い場所にすれば、結界の効力で妖魔も近づいては来ないだろうに。

「どこから来たもわけ分からん奴を受け入れてくれるような親切な人々なんて珍しいものだぜ」

サーガが答えを口にする。
確かに、元々傭兵は粗暴なイメージもあり、色んな街でもあまりいい顔はされなかったりする。金は落としてくれてもそれ以上に喧嘩などが増えればいい顔はされない。それが村ともなればひとしおである。
なので街からは然程離れてもいないが近くもない場所に陣取るのである。最悪、風なので空を飛んで街に向かうこともあるので遠くても平気だったりする。なんと便利。

「大丈夫か、キーナ」

テルディアスがなんとなしに手を差し出すが、

「だ、大丈夫!」

キーナはその手を取らなかった。近頃あれほど自然に出来るようになっていた手繋ぎもしていない。ちょっと寂しい(拳が見えた)…そんなことはないテルディアス。

「ありがとうございますわ、テルディアス様」

シアがすかさずその手を取ろうとするが、寸前で引っ込められた。コントだろうか。

「ぬ、こっちだな」

サーガが草を掻き分け進んでいたが、何故か進路を少し変えた。するとすぐに歩きやすくなった。

「歩きやすいわね」

誰かが手入れしたように草が刈り取られている。

「道を作らんとお客さんが来ないだろ? んだから一応ちゃんと人が通れるように作るのよ」

お客さんとは…。メリンダは思い当たる節があり、口を閉ざした。
サカサカと草を踏みしめ歩いて行くと、ゲルのような移動式住居が建ち並んでいるのが見えて来た。

「サーガじゃねえか!」

声がした方を見れば、サーガよりは若干くすんだ感じの黄色い髪に黄色い瞳の男の人が3人。

「おう! 変わってねえなてめえら」
「お前も、その背丈、変わってねーな」
「んだとこの野郎!!」

ここでも弄られていたのか…。

「サーガ?」
「サーガだって?」

その声を皮切りに、ワラワラと人が集まってきた。

「ヤダ! 本当にサーガだわ! まだくたばってなかったのね!」

と嫌そうな顔の若い女性達。

「元気そうね。相変わらず」

とクスリと笑うちょっと年配の女性達。

「お前マジ変わんねーな」

と頭を見る男性陣。

「うん、ちょっと顔貸せや」

帰って来て早々こめかみに怒りマークを貼り付けるサーガ。どうどう。

「で? このお姉さん達は?」

とサーガの後ろの面々を気にする。

「ああ、今の俺の旅の仲間よ。ちょっと色々あって俺の村に立ち寄る用が出来てな」
「な、仲間…」
「仲間とか!」

ゲラゲラ笑い合う村の人達。

「なんで笑うんだよ!」
「お、おま、いつも一人で突っ走って、仲間とか置いてくような奴だったじゃん」
「そうそう、遊んでても一人でいなくなることもしょっちゅだし、戦場でも一人で勝手に突っ走ってくような奴だし」
「なんかやっててもいきなり「飽きた」とか言って放り出すこともしょっちゅうだったし」
「それが仲間とか」
「や~、こいつ、迷惑かけてない? かなり自由すぎる奴だから、大変でしょう」
「「大変だ(わ)」」

メリンダとテルディアスが揃って頷いた。

「え~…、俺そんな迷惑かけてねーだろ…」

どっちかってーと貢献してた気がするけど…。

「何事も気が向かねーとやんねーし」
「自分が面白けりゃ他人を犠牲にすることもあるし」
「人を嵌めて遊ぶこともしょっちゅうあったし」
「やめ! もうやめい!」

サーガの顔が赤らんでいる。自覚があったのだろうか。

「サーガが帰って来たって?」

落ち着いた声が響いた。
過去の暴露話をされていたサーガが、少し救われたような顔をして声の方を振り見た。

「親父!」
「おお、本当にサーガだな」

緑がかった髪の男の人が、サーガを抱きしめた。

「良く無事で帰ってきた。心配してたんだぞ」
「おい! ガキじゃねーんだから! 離せよ!」
「いや~、丁度いい大きさでなぁ」

とぐりぐり抱きしめる。

「大きさ言うなぁ!!」

やはり弄られるらしい。

















サーガの育ての親で、今のこの村を纏めているメッカだというクラウダーの住処まで案内された。メッカとは村長の意味らしい。

「まあメッカなんてただの雑用みたいなものだがね」

とクラウダーが苦笑いする。
喧嘩の仲裁、意見のとりまとめ、外涉など多岐に渡る。しかもここは風の村。皆が皆好き勝手にするものだから纏めるのも大変なのだとか。

「良く帰って来たわねサーガ。元気そうで安心したわ」

クラウダーの奥さんのマリアーヌさんが、茶と茶菓子を出して来た。

「そんな無理して出さなくてもいいぜ?」
「あんた、何恥ずかし事言ってんのよ!」

マリアーヌさんが遠慮無しにサーガの頭をべしりと叩く。これも日常茶飯事か。

「ええと、一応今の旅の仲間の、メリンダ、キーナ、テルディアス、ダン、シアだ」
「初めまして」
「よろしくです」
「・・・・・・」無言で頭をぺこり。
「・・・・・・」無言で頭をぺこり。
「初めましてですわ」

男共の挨拶書く必要あっただろうか…。

「んで、クラウダー、風の一族って話し、聞いたことあるか?」
「さっきは親父って呼んでくれてたよな?」
「ク・ラ・ウ・ダー、風の一族の話聞いたことあるか?」
「素直じゃないな。小さい頃は可愛かったのに」
「風の一族のは・な・し!!」

話が進まない。

「風の一族? う~ん、う~ん」

悩んでいる。

「ん? そういえば、そういえば…」

何かを思い出している。

「そういえば…オーガがそんな話しをしていた気がするなぁ」
「オーガ? 親父が?」

サーガが目を見張る。

「そうそう、お前が生まれる前に会った赤い服の男とそんな話しをしていたな」

クラウダーがポンと手を叩く。

「どんな? どんな話しだ?」
「確か、赤服の男がレオさんとか言って、オーガに「風の一族だろう」とか言ってたな」

赤服のレオさん…。テルディアスの脳裏にとある人物が浮かんで来た。それはとても有名な女にだらしない高名な魔導師。いや、一応魔導師という職業柄、博識で頼りになることはなるのだが…。いや、今は置いておこう。

「それで?」

サーガがたたみかける。

「いや、それで終わってたな」

ずっこけた。

「ちょちょちょい待てや! それで終わりかよ!」
「終わったな。オーガもよく知らないようだったし」

サーガが半目になった。キーナ達も微妙な顔で会話を聞いている。
火の一族も地の一族も水の一族も、皆自分の一族のことを知っていたのに、何故風の一族だけ自分達のことを知らないのか…。風だからかも知れない。

「いや、ちょ待て、そうなると…、宝玉、とかって、知らない?」
「宝玉? なんだそれは?」

皆が肩を落とす。恐れていた事態が…。

「さすが風…」
「う~ん、そう来たかぁ~」
「だから風は…」
「・・・・・・」
「信じられませんわ…」

それぞれに呟いている。

「いや、なんか、すまん…」

なんとなく、代表してサーガが謝った。これで風の宝玉については振り出しに戻ったわけだ。

「いや待てよ、なんか、なんかさ、この村に代々受け継がれてるなんか宝の話しとか、ない?!」

当のサーガが聞いたこともないが、そんな話しはないかと聞いてはみる。

「ないな」

ハッキリサックリキッパリ。言い切りました。
皆が絶望的な顔になった。
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