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サーガの村編
オーガの夢
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この後、村の全員が集まり、話し合いが行われた。キーナ達は流石に話しには入れないので、同じように訳が分からず話しには入れない子供達の世話を買って出た。しかし、元気な子供達である。まさにサーガを幼くしたような悪戯小僧ばかり…。いや、良い子もいたけどね。
話し合いは長く続いた。
「あんたはいいの?」
キーナ達と共に子供達の相手をしていたサーガに、メリンダが声を掛ける。
「俺はまあ、今はあまり関係ないし」
完全に関係ないとも言えないと思うのだが、特に言及はしなかった。
夕飯の時間になるとポツポツ解散し始めた。話し合いは決着が付いたのだろうか。
なんとなしにクラウダーの元にキーナ達は集まった。関係ないとは言え、渦中にいれば動向は気になる。
「いやあ、見事に分かれたよ」
クラウダーは楽しそうに笑った。元より皆が同じ方向を向くとは思っていなかったようだ。
女性陣の大半は賛成。男性陣は半々だった。男性陣は剣を置くことに忌避感を抱いたらしい。もともと戦うことが好きな人種達。完全に剣を置くのは躊躇われたのだろう。
芝居の中でも剣戟は出てくるので、その経験は活かされるが、あくまでも芝居であり戦場ではない。物足りない者もいるだろう。
「だからな。分かれることにしたよ」
最初からそうすることを見越していたようだった。
今までのように傭兵稼業を続けていく者。新しく歌劇の道を歩んでいく者。
カカルという夫婦制度のある風の村。その夫婦が同じ道を向いているならば話は早い。しかしそれぞれに違う道を見ていれば衝突が起きる。
「私はもちろんだが剣を置く歌劇集団を率いることにした。となればあちらにも代表はいるしな。それに、やはり傭兵を続けるならカカルは必要だ」
その辺りで衝突があったらしい。女性陣は安定を求め、男性陣は冒険を求める。なにせ女性の大半が歌劇を指示。カカルがいなければ後々大変と知る男性陣が共に行って欲しいと譲らない。お互いにお互いを説き伏せようと頑張っていたらしい。
傭兵の方に決まった夫婦も、今度は代表を決めなければとまた話し合い。まだ残っているのはそういう話し合いが決着を付いていない者達らしい。まあ傭兵集団は多分一番強い者がメッカになるのであろうが。
「強い者が交渉も上手いとは限らないんだけどな」
クラウダーがぽつりと呟いた。
「それよりも歌劇の方なんだが、本当にあれで良いのかな?」
芝居に関しては全くの無学のクラウダーがシアに聞いてくる。
「まだまだ! 全然駄目ですわ!」
シアから強烈なダメ出し。
「そもお芝居というものはきちんとした舞台や幕があり、こんな野外でやるものではありませんわ!」
「いやいや、大道芝居というものがあるからね」
一応それなりの知識のあるキーナが突っ込む。シアの言う通りにしていたら、何処かに劇場でも建てなければならなくなってしまうかもしれない。
「大道芝居?」
クラウダーがキーナに問いかける。
「はい。こういう野外で色々な人に見て貰う流れのお芝居というか…。そう言う物です。ただ流石に観客に見やすいように少し高い舞台と、幕はあった方が場転とかもっと綺麗に出来ると思います」
漫画で見た知識と、中学の文化祭で舞台を踏んだ知識が役に立つ。
「何を言うんですの? 舞台とはこんな野外でやるものでは…ムグ」
ダンが口を塞いだ。
「紙芝居みたいに区切られた空間があった方が人もその世界に入りやすいからやっぱり舞台は必要だと思います。でも移動式の舞台となると車輪とかも諸々付けなきゃ行けないから、う~ん」
チラリとダンを見る。ダンが任せとけとばかりに親指を立てた。なんと頼りになる男か。
「他にも背景とかそれらしく見せる為に、大道具と呼ばれる物を揃えた方が良いです。出来れば必要な小道具とかもあった方が色々分かりやすくなったりするし。あ、小道具とはあの劇中で使ってたバラの花とかの事です」
実はあれもキーナ発案の造花だったりする。遠目から見て花らしく見えればいいと、紙で作ったのだ。ちなみに簡単に剥がれ落ちるようになっていて、支えていたのは裏方の風の人である。なんと便利。
テルディアス達はキーナが存外に舞台に関して知識を持っていることに驚きつつ、キーナの話しを聞いた。
「なるほど。不完全な芝居と言ったのは過言じゃなかったな」
とクラウダー。最低限必要と思われる物をキーナに言われ驚いている。ついでにキーナの言う必要な物を、テルディアスが書き出している。すっかりキーナ専属の書記になっている。
背景等の大道具、細々とした小道具、そしてそれぞれに必要な衣装。全て揃えるのは中々に大変だが、大道具に関してはダンがいる。小道具に関しては、作れる物はキーナの知識をフル活用。作れない物は買って揃えるしかない。衣装に関しては生地さえあれば、あとは女達やメリンダがなんとか出来るだろう。メリンダは娼館で働いていたので派手な衣装なども得意だ。
「すまない。もうしばらくだが、我々に手を貸してはくれないか?」
クラウダーがキーナ達の頭を下げた。
「もちろんですよ!」
キーナが速攻で返事を返す。
テルディアスとメリンダは苦笑い。シアは口を塞がれ、ダンは無表情だったがその顔付きはどこか嬉しそうであった。サーガも呆れたような顔をしていたのだった。
その後、クラウダーに呼ばれたサーガが、クラウダーと2人で晩酌をしていた時のこと。
「お前には言ってなかったがな、オーガはずっと探していたんだよ」
「何を?」
突然振られた父親の話。父親はとても強くていい男だったといことは耳がタコになるほど聞いた事がある。
「オーガはな、剣を置く方法を探してたんだ。ずっとな」
「へ?」
この村の連中に剣を置けというのは、今回のように騒動が巻き起こる可能性があることだ。いきなり剣を置けと言っても皆納得しないだろう。
「オーガはな、そりゃあお前の母親、つまりはサラのことを愛しててなぁ」
それも耳タコである。
「強い割に戦場に出ることを実は嫌がってたんだ。その割に戦いを楽しんでもいたけどな」
戦うことは楽しい。しかしいつかサラの元へ帰れないのではないか。そんなことを考えていたらしい。
「だからな、暮らしに困らない、剣を置く方法を探していたんだ」
男達が剣を置いたとして、それで他に何ができるか。オーガはその答えを探していたのだ。
「まさか、お前が見付けてくるとはなぁ」
「別に、俺が見付けたわけじゃねーし」
本当にたまたまだ。たまたまキーナと出会い、たまたま共に旅をすることになり、そしてダンに出会うことになった。それがそもそも始まりな気がする。
ダンが笛を差し出したのは風の一族が音、音楽について右に出る者はいないほどの腕前だということを知っていたからだ。特に黄色い髪、黄色い瞳と風の特徴が強く出ているサーガはきっと音楽に精通しているに違いないと考えたからだろう。サーガ本人にその自覚はなくとも。
押しつけられた形で笛を吹いてみれば、サーガも実は楽しくてしょうがなくなるほど性に合っていた。今では剣と笛のどちらを取るかと言われれば悩んでしまうほどだ。
「だが、これでオーガの夢も叶った。俺も剣を置く方法を探していたし、お前には感謝しかないな」
とぐりぐりサーガの頭を撫でくる。
「やめい! 子供じゃねーんだよ!」
背丈…モゴモゴ…親にとって子供は幾つになっても子供のままである。背丈は関係ないと一応言っておこう。
「サーガも、なんだか一人前の顔付きになったわねぇ」
つまみを作って持って来たマリアーヌが、サーガを見てしみじみと呟いた。
「俺は元々一人前ですぅ」
そういう所が子供っぽいと思うのだが。
「カカルを決める時はどうなるかと思ったけど、ほんと、あんたスターシャには感謝しなさいよ。スターシャがいなければ戦場に出られずに村でコソコソしてたんだから」
「え? なにそれ?」
「なんだ、やっぱり知らなかったのか?」
「え? なんのこと?」
サーガが目をパチクリさせる。
「あんたねえ、村ではカカルがいない男は戦場に出られないって、知ってたでしょ?」
「え? 戦場に出たらカカルが付くんじゃないの?」
クラウダーとマリアーヌが揃って溜息を吐く。
「違うわよ。カカルが決まらないと戦場に出られないのよ」
「え? え? マジ?」
マジです。
サーガの顔が若干青くなった。
戦場に出られないと言うことは村の中でそれこそ無駄飯食らいになるしか道はない。そんな惨めな姿にはなりたくないと、サーガも昔から思っていた。
「じゃあ、あいつらが小さい頃から女達口説いてたのって…」
「一人前に戦場で稼ぐ為に決まってるでしょ。全く本当にあんたは馬鹿だねぇ」
今更知った真実に、サーガの顔が先程より青くなった。
同世代くらいの男達が必死に女達の気を引こうとしていた訳が、今分かった。
「あんたのカカルを決める時は、だ~~~れも手を上げなくてね。これは無理かなと思ったら、スターシャが手を上げてくれたのよ。本当にスターシャには感謝なさいな!」
「う、うん…」
幼い頃の所業を思い出す。女に親切にするどころか悪戯の対象としてしか見ていなかった。
そうなると、何故スターシャが自分を選んでくれたのか、とてつもない疑問が沸き起こる。もう聞くことは出来ないが。
「オーガの時は反対に引く手数多で決められなかったと聞いたな」
「そうそう。オーガの時はほぼ全員が手を上げちゃってね。もう笑うしかなかったわ」
父親がいい男だったと言うのは本当らしい。
ちなみに候補が何人も出た場合、男の方が選ぶことが出来るのである。オーガはずっと前からサラと決めていたらしい。まあ、サラと決まった後も少しゴタゴタあったらしいが。
「オーガの息子なのになぁ。顔は似ててもそこは似なかったんだなぁ」
クラウダーが残念そうにサーガを見る。
「本当に、顔だけしか似なかったわねぇ」
マリアーヌも残念そうにサーガを見る。
「悪かったな!」
サーガが手に持っていた杯を一気に呷った。
話し合いは長く続いた。
「あんたはいいの?」
キーナ達と共に子供達の相手をしていたサーガに、メリンダが声を掛ける。
「俺はまあ、今はあまり関係ないし」
完全に関係ないとも言えないと思うのだが、特に言及はしなかった。
夕飯の時間になるとポツポツ解散し始めた。話し合いは決着が付いたのだろうか。
なんとなしにクラウダーの元にキーナ達は集まった。関係ないとは言え、渦中にいれば動向は気になる。
「いやあ、見事に分かれたよ」
クラウダーは楽しそうに笑った。元より皆が同じ方向を向くとは思っていなかったようだ。
女性陣の大半は賛成。男性陣は半々だった。男性陣は剣を置くことに忌避感を抱いたらしい。もともと戦うことが好きな人種達。完全に剣を置くのは躊躇われたのだろう。
芝居の中でも剣戟は出てくるので、その経験は活かされるが、あくまでも芝居であり戦場ではない。物足りない者もいるだろう。
「だからな。分かれることにしたよ」
最初からそうすることを見越していたようだった。
今までのように傭兵稼業を続けていく者。新しく歌劇の道を歩んでいく者。
カカルという夫婦制度のある風の村。その夫婦が同じ道を向いているならば話は早い。しかしそれぞれに違う道を見ていれば衝突が起きる。
「私はもちろんだが剣を置く歌劇集団を率いることにした。となればあちらにも代表はいるしな。それに、やはり傭兵を続けるならカカルは必要だ」
その辺りで衝突があったらしい。女性陣は安定を求め、男性陣は冒険を求める。なにせ女性の大半が歌劇を指示。カカルがいなければ後々大変と知る男性陣が共に行って欲しいと譲らない。お互いにお互いを説き伏せようと頑張っていたらしい。
傭兵の方に決まった夫婦も、今度は代表を決めなければとまた話し合い。まだ残っているのはそういう話し合いが決着を付いていない者達らしい。まあ傭兵集団は多分一番強い者がメッカになるのであろうが。
「強い者が交渉も上手いとは限らないんだけどな」
クラウダーがぽつりと呟いた。
「それよりも歌劇の方なんだが、本当にあれで良いのかな?」
芝居に関しては全くの無学のクラウダーがシアに聞いてくる。
「まだまだ! 全然駄目ですわ!」
シアから強烈なダメ出し。
「そもお芝居というものはきちんとした舞台や幕があり、こんな野外でやるものではありませんわ!」
「いやいや、大道芝居というものがあるからね」
一応それなりの知識のあるキーナが突っ込む。シアの言う通りにしていたら、何処かに劇場でも建てなければならなくなってしまうかもしれない。
「大道芝居?」
クラウダーがキーナに問いかける。
「はい。こういう野外で色々な人に見て貰う流れのお芝居というか…。そう言う物です。ただ流石に観客に見やすいように少し高い舞台と、幕はあった方が場転とかもっと綺麗に出来ると思います」
漫画で見た知識と、中学の文化祭で舞台を踏んだ知識が役に立つ。
「何を言うんですの? 舞台とはこんな野外でやるものでは…ムグ」
ダンが口を塞いだ。
「紙芝居みたいに区切られた空間があった方が人もその世界に入りやすいからやっぱり舞台は必要だと思います。でも移動式の舞台となると車輪とかも諸々付けなきゃ行けないから、う~ん」
チラリとダンを見る。ダンが任せとけとばかりに親指を立てた。なんと頼りになる男か。
「他にも背景とかそれらしく見せる為に、大道具と呼ばれる物を揃えた方が良いです。出来れば必要な小道具とかもあった方が色々分かりやすくなったりするし。あ、小道具とはあの劇中で使ってたバラの花とかの事です」
実はあれもキーナ発案の造花だったりする。遠目から見て花らしく見えればいいと、紙で作ったのだ。ちなみに簡単に剥がれ落ちるようになっていて、支えていたのは裏方の風の人である。なんと便利。
テルディアス達はキーナが存外に舞台に関して知識を持っていることに驚きつつ、キーナの話しを聞いた。
「なるほど。不完全な芝居と言ったのは過言じゃなかったな」
とクラウダー。最低限必要と思われる物をキーナに言われ驚いている。ついでにキーナの言う必要な物を、テルディアスが書き出している。すっかりキーナ専属の書記になっている。
背景等の大道具、細々とした小道具、そしてそれぞれに必要な衣装。全て揃えるのは中々に大変だが、大道具に関してはダンがいる。小道具に関しては、作れる物はキーナの知識をフル活用。作れない物は買って揃えるしかない。衣装に関しては生地さえあれば、あとは女達やメリンダがなんとか出来るだろう。メリンダは娼館で働いていたので派手な衣装なども得意だ。
「すまない。もうしばらくだが、我々に手を貸してはくれないか?」
クラウダーがキーナ達の頭を下げた。
「もちろんですよ!」
キーナが速攻で返事を返す。
テルディアスとメリンダは苦笑い。シアは口を塞がれ、ダンは無表情だったがその顔付きはどこか嬉しそうであった。サーガも呆れたような顔をしていたのだった。
その後、クラウダーに呼ばれたサーガが、クラウダーと2人で晩酌をしていた時のこと。
「お前には言ってなかったがな、オーガはずっと探していたんだよ」
「何を?」
突然振られた父親の話。父親はとても強くていい男だったといことは耳がタコになるほど聞いた事がある。
「オーガはな、剣を置く方法を探してたんだ。ずっとな」
「へ?」
この村の連中に剣を置けというのは、今回のように騒動が巻き起こる可能性があることだ。いきなり剣を置けと言っても皆納得しないだろう。
「オーガはな、そりゃあお前の母親、つまりはサラのことを愛しててなぁ」
それも耳タコである。
「強い割に戦場に出ることを実は嫌がってたんだ。その割に戦いを楽しんでもいたけどな」
戦うことは楽しい。しかしいつかサラの元へ帰れないのではないか。そんなことを考えていたらしい。
「だからな、暮らしに困らない、剣を置く方法を探していたんだ」
男達が剣を置いたとして、それで他に何ができるか。オーガはその答えを探していたのだ。
「まさか、お前が見付けてくるとはなぁ」
「別に、俺が見付けたわけじゃねーし」
本当にたまたまだ。たまたまキーナと出会い、たまたま共に旅をすることになり、そしてダンに出会うことになった。それがそもそも始まりな気がする。
ダンが笛を差し出したのは風の一族が音、音楽について右に出る者はいないほどの腕前だということを知っていたからだ。特に黄色い髪、黄色い瞳と風の特徴が強く出ているサーガはきっと音楽に精通しているに違いないと考えたからだろう。サーガ本人にその自覚はなくとも。
押しつけられた形で笛を吹いてみれば、サーガも実は楽しくてしょうがなくなるほど性に合っていた。今では剣と笛のどちらを取るかと言われれば悩んでしまうほどだ。
「だが、これでオーガの夢も叶った。俺も剣を置く方法を探していたし、お前には感謝しかないな」
とぐりぐりサーガの頭を撫でくる。
「やめい! 子供じゃねーんだよ!」
背丈…モゴモゴ…親にとって子供は幾つになっても子供のままである。背丈は関係ないと一応言っておこう。
「サーガも、なんだか一人前の顔付きになったわねぇ」
つまみを作って持って来たマリアーヌが、サーガを見てしみじみと呟いた。
「俺は元々一人前ですぅ」
そういう所が子供っぽいと思うのだが。
「カカルを決める時はどうなるかと思ったけど、ほんと、あんたスターシャには感謝しなさいよ。スターシャがいなければ戦場に出られずに村でコソコソしてたんだから」
「え? なにそれ?」
「なんだ、やっぱり知らなかったのか?」
「え? なんのこと?」
サーガが目をパチクリさせる。
「あんたねえ、村ではカカルがいない男は戦場に出られないって、知ってたでしょ?」
「え? 戦場に出たらカカルが付くんじゃないの?」
クラウダーとマリアーヌが揃って溜息を吐く。
「違うわよ。カカルが決まらないと戦場に出られないのよ」
「え? え? マジ?」
マジです。
サーガの顔が若干青くなった。
戦場に出られないと言うことは村の中でそれこそ無駄飯食らいになるしか道はない。そんな惨めな姿にはなりたくないと、サーガも昔から思っていた。
「じゃあ、あいつらが小さい頃から女達口説いてたのって…」
「一人前に戦場で稼ぐ為に決まってるでしょ。全く本当にあんたは馬鹿だねぇ」
今更知った真実に、サーガの顔が先程より青くなった。
同世代くらいの男達が必死に女達の気を引こうとしていた訳が、今分かった。
「あんたのカカルを決める時は、だ~~~れも手を上げなくてね。これは無理かなと思ったら、スターシャが手を上げてくれたのよ。本当にスターシャには感謝なさいな!」
「う、うん…」
幼い頃の所業を思い出す。女に親切にするどころか悪戯の対象としてしか見ていなかった。
そうなると、何故スターシャが自分を選んでくれたのか、とてつもない疑問が沸き起こる。もう聞くことは出来ないが。
「オーガの時は反対に引く手数多で決められなかったと聞いたな」
「そうそう。オーガの時はほぼ全員が手を上げちゃってね。もう笑うしかなかったわ」
父親がいい男だったと言うのは本当らしい。
ちなみに候補が何人も出た場合、男の方が選ぶことが出来るのである。オーガはずっと前からサラと決めていたらしい。まあ、サラと決まった後も少しゴタゴタあったらしいが。
「オーガの息子なのになぁ。顔は似ててもそこは似なかったんだなぁ」
クラウダーが残念そうにサーガを見る。
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