キーナの魔法

小笠原慎二

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最終章~光の御子と闇の御子~

あの時と同じ

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ロウニーの顔が悲しそうに歪む。

「ち、がう…! ロウニーじゃない! お前なんか、ロウニーじゃない!」
「オルト!」

オルトがロウニーに向かって力を放つ。
しかしオルトの力をロウニーは相殺した。

「そんな…」
「私にはあなたの力は通じないわよ! オルト! 説明して!」

十代半ばの姿を保ったままのオルトの元へ、恐がりもせずロウニーはずかずかと近づく。ロウニーの姿は二十代も後半に差し掛かろうというもの。幼馴染みで1歳違いなのに、何故オルトは少年のままの姿なのか。

「来るな! 来ないでロウニー! 僕は…僕は!」

突然怯え始めたオルト。その姿を見てロウニーはオルトを抱きしめた。

「オルト、ごめんなさい。あなたが自分を見失ってしまったのは、私のせいでもあるのだから。でも大丈夫。これからは一緒にいられるわ」
「一緒…?」
「そうよ。いろいろあって宮は変わったの。これからはずっと一緒にいられるわ」

抱きしめた手を緩めると、オルトが怯えた目でロウニーを見上げる。

「ずっと、一緒に、いられるの?」
「ええ。一緒よ」

ポロポロとオルトが涙を流し始めた。

「駄目だ。無理だよ。僕、酷いこといっぱいしたんだ。僕達の村を壊滅させたのも僕だ。名前も知らない村を襲ったこともある。いろんな人を殺した。僕は、もう、戻れない…」
「オルト…。私も一緒に罪を償うわ。許されなくとも謝りに行こう。もう側を離れないから。ずっと一緒にいるから」
「ロウニー…」

オルトが泣きじゃくる。ロウニーはそっと胸に抱き寄せた。
一連のことを眺めていたサーガが剣をしまう。

「終わったみてえだな」
「そうね」

側に寄ってきたメリンダが頷いた。宮の者達が来てからはあっという間だった。

「無事に終わったようでなによりですわ」

いつの間にか側に来ていたシアも頷く。その後ろでダンも頷いている。

「そうね」

メリンダがもう一度オルトの方へ目を向けると、不思議な事が起きていた。オルトの体が光に包まれる。そしてどんどんと成長して行く。

「え、何あれ?」

ぽかんと眺めていると、オルトはあっという間に青年の姿になった。ロウニーよりも低かった背が、見上げるほど高くなっている。

「彼は光を憎むあまり、時を拒絶していたのだと思います」

静かな女性の声がして振り向けば、そこにはキーナを攫った光の者と並ぶリーステインの姿。

「今その呪縛が解けて、いっきに成長したのかと」
「いや、その前に、あんたらいつの間に手を組んだの?」

サーガがツッコむ。光の宮と闇の宮は仲が悪かったはずだが…。

「はい。ちょっといろいろあって、手を取り合うようになりました」

片手を頬に当て恥ずかしそうに嬉しそうにするリーステイン。もう一方は光の者と繋いでいる。とても仲が良さそうに見える。

「はぐれ闇の問題もどうにかしようと動いておりましたら、あのお方が帰ってきてしまい手をこまねいていたところだったのです。そうしたらあなた方が入って行くのが見えたと連絡がありまして」

闇の宮の者達が見張っていたところ、キーナ達が入って行くのを見たらしい。それで良い機会だとお礼やお詫びも兼ねて助勢に来たのだと言う。

「いろいろとあなた達には申し訳ないことをした。ここで謝らせて貰えないだろうか」

光の男が頭を下げた。

「この人はアドバン。今の光の者の中で最上位の大神官をしている人よ」

めっちゃ偉い人じゃん…。心の中で呟く。

「私達も正気を失っていたようだ。光の御子を捕らえる事しか考えられなくなっていた。真に申し訳ない」

頭を下げたままアドバンは言う。

「ああまったく、ひでーめにあった」
「ちょ、ちょっとサーガ」

とてつもなく偉い人に頭を下げられていることに居心地の悪いメリンダ。そんなこと気にしないサーガ。シアもどちらかというと頭を下げられる立場なので動じない。ダンは少しオロオロしている。

「で、幾ら出す?」
「結局金かい!」

メリンダチョップ炸裂。サーガが頭を抑える。

「なんだよぅ。一番いい落としどころだろうに」
「あんたちょっと黙ってなさい」

そんなやりとりをリーステインはクスクスと笑いながら見つめている。

「お金で解決出来るなら安いものだと思いますけど。本当にお金でいいんですか?」
「「・・・・・・」」

そう言われると迷ってしまう。

「そうですわね。今後私達の頼み事は優先的に受け付けてもらう、ということでいかがでしょう?」

シアの発言にダンがオロオロする。いや、さっきからオロオロしているか。

「そんな簡単な…」

サーガが不平をもらすが、

「あら、光の宮に頼み事をすると下手をすれば何年という時がかかるのですわよ? それを優先的に受け付けてもらえるなんてとても有り難いと思いませんこと?」

サーガが言葉に詰まる。それは確かに魅力的かもしれない。さすがシア、一応一国の姫なのでその辺り事情に詳しい。

「そんなことでよければ…」

アドバンとしてもどうやって償ったらいいのかと頭を抱えていたところだ。それで許して貰えるならば有り難い事だが、なんとも安すぎる気もする。しかし他に手が浮かばない。

「まあ、それでいいか」

サーガも一応納得する。

「ええ、いいんじゃない?」

よく分かっていないが納得するメリンダ。
ダンは頷いている。

「さて、ここは粗方落ち着いたようですが、御子様達はどうなっているのでしょう…」

リーステインが魔女達が消えた辺りを見つめる。

「のぞき穴とか開けられないの?」

サーガが聞くが、リーステインは首を横に振る。

「あのお方の力は私よりも強いので…」
「そか」

決着がつくまでキーナ達の様子を知る方法はないようだ。















「な…?」
「テル?! 着いて来ちゃったの?!」

キーナと接触していたせいか、テルディアスもキーナと共に穴の中へと入ってきてしまっていた。

「は!」

キーナ急いで結界を張る。すぐに闇の力が降り注いだ。

「下手にじくじくやってるよりはこの方が早いわね」

少し上空に位置する所に魔女は浮かんでいた。

「やるしかないの?」

キーナが少し悲しそうに呟く。

「テル! 僕から離れないでね!」
「あ、ああ」

闇の力を光の結界で防ぎつつ、キーナも光の力で応戦する。しかしその力は拮抗しているのか、全く勝負がつく様子は見えなかった。
しばらくの応戦の後、魔女もそのことに気付いたのか攻撃がやんだ。

「そうよね。対成す者であれば力は拮抗するものだもの」

そう呟いて、テルディアスを見てにいっと笑う。
キーナは警戒を続け、テルディアスも油断なく魔女を睨む。

『テルディアス』

名を呼ばれた途端、テルディアスの体が金縛りにあったかのように動けなくなる。

「! テル!」

魔女が何をしたのかを察し、キーナがテルディアスに振り返る。しかし固まったように動かない。

『その娘を殺しなさい』

キーナが驚きに目を開く。1度悔しそうに魔女を睨み付け、テルディアスを見る。

「ぐ…う…」

テルディアスがその力に抗うように、ゆっくりと辿々しく体を動かす。しかしその手を止める事が出来ない。

「て、テル…」

キーナもその力を上書きして主導権を握ろうかと考えたが、ここは魔女の空間。彼女の力の方が若干強い。たとえ奪い返すことが出来てもすぐに取り返されてしまうかもしれない。
テルディアスがゆっくりと剣を抜き放つ。

「やめて! お願いやめて!」

魔女に向かってそう叫ぶも、魔女は面白そうに眺めているだけ。
どうすることも出来ずキーナが後退る。

(あの時と…)

同じだ。テルディアスはキーナと出会ったばかりの頃のことを思い出す。あの時も操られるがままにキーナの首を絞めた。あの時は締め方が甘かったのか、それとも御子の力だったのかキーナは生き返った。しかし今回も同じとは思えない。
自由のきかなくなった体が剣をキーナに向かって構える。このままでは魔女の思うままにキーナを殺すまで止まれない。

(思い通りになど…)

渾身の力を込め、テルディアスは力に抗う。

「させるかあ!!!」

構えていた剣を逆手に持ち、自分の腹へと突き立てた。

「テルゥ!!!」

キーナの悲痛な叫び声が聞こえた。
テルディアスは足の力が抜け、床に倒れ込んだ。そして意識が闇へと落ちて行った。
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