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石牢封印
しおりを挟む異変が起こったのは、翌朝。
朝食を終えて、サリナがレオンに餌を用意している最中だった。
どぉん!!!!
とてつもない音がして、石牢が揺れた。
「えっ?なに!?」
「マーガレット様、私の後ろにお下がりください!」
飛び上がる私。
扉の向こうから響いてくる轟音に、包丁を握りしめたサリナが飛び出してくる。
更に私達の前にレオンが飛び出してきて、ワンワン勇ましく吠え始めた。
ごん、どこん、どん!!
どん、どん、どん、ごろごろどん!
ごとん!ごとん!どん!
どん!どん!どごん!!
石牢が壊れるんじゃないかと思うような音が、次々に響いてくる。
けれど、スマホの「フレンドのみ可」の力で、フレンド以外が石牢に影響を与えることは出来ないと見える。
石牢を破ろうとしているのかと思える音だったが、扉はピクリとも動かず、歪む様子すら見せない。
しばらく響き続けていた音がやむと、サリナは私をベッド近くに押し留めて、様子を伺いに扉に耳を当てた。
「…人の話し声は聞こえませんね」
「なんだったのかしら?少しだけ扉を開けて、様子を見てみる?」
「お嬢様はそこから動かないでください。
レオン、敵が居たら噛みつきなさい。」
「ワン!」
ドキドキしながら様子を伺っていたが、扉を慎重に開こうとしたサリナの様子が変わった。
一度首を傾げて体勢を整え、力を込め始める。
さらには、肩を扉に押し当てて体重をかける。
「どうしたの?開かないの?」
「どうやら、そのようです。
先ほどの音から推察すると、大きな岩等で外から封じたのではないでしょうか。」
石牢は細長い階段を降りたところにある。
大きな石を投げ込んだとすれば、それはもう、取り出すことは不可能に近い。
つまり、2度と出入りができなくていい、そのまま死ね ということだった。
私がサリナにズボンなんて履かせていたから、魔女の一味だと思われたのかもしれない。
チート能力を手に入れたことで、現実感を失くして浮かれていた部分に気づく。
この時になって、サリナをとんでもない運命に道連れにしてしまったことに、愕然とした。
私は既に見捨てられていたから、構わない。
けれど、サリナは。
仲間も、父親も…身を案じて迎えにきてくれる人がいたサリナまで、世界から見捨てられた存在にしてしまった。
サリナを巻き込むということは、彼女に周りの人との縁も全て断ち切らせることだった、と改めてつきつけられる。
言葉を失ってへたり込む私に、サリナが駆け寄ってきて抱きしめた。
「大丈夫ですか、マーガレット様!
大きな音だったので、驚きましたよね。
もう大丈夫、奴らはわざわざ道を封じてくれたようですよ」
「さ、サリナ…サリナは平気なの?」
「何がですか?」
キョトンとした顔のサリナに、胃が縮み上がる。
この子は私が「一緒に石牢で暮らさないか」と声をかけた時には、既にその覚悟を決めていたのだ。
声をかけた私の方が、覚悟が決まっていなかった。
生命に切迫した危険がなくなっただけで、危機感がなくなっていたのだ。
前世の記憶と共に、平和ボケまで戻っていたのかもしれない。
このまま此処で、10年、20年…死ぬまで暮らすことになる。
その覚悟なんて、なかった。
なんとなく、前世で読んだ小説のようなハッピーエンドが、どこからかやってくる気がしていたのだ。
みんなが反省して、迎えにきてくれて、スマホの力で活躍して、愛されて…そんな。
そんな可能性は、完全になくなった。
扉の向こうからは、静寂しか聞こえてこない。
この先、未来永劫、私達を案じて階段を降りてくる人は居ない。1人たりとも。
足の底が抜けるような絶望感に、身体の震えが止まらない。
「さ、サリナ…サリナ…」
「はい、マーガレット様。
サリナはここに居ます。」
ギュッと抱きしめられる温もりに、こんな時にも関わらず、この絶望感を1人で耐えなくてよかった。サリナが居てくれてよかった と感じる自分が、憎らしかった。
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