転生覚醒が遅すぎたので全力ヒキニートします!

カカオ70

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健康に必要なもの

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フレンドではない父達には扉を開けることはできないとわかっていても、目立たないようにしておきたい心理があったから、なるべく増設した部屋の扉は閉め切っていた。
けれど、もう気にすることはない!
真っ暗な石牢の中、たいして明るくもないランタンで生活するのは、辛かった。

「脱衣所のドアは、開けっぱなしにしよう!」

オイルランタンに油を足しているサリナに、そう提案する。
サリナも、ぱっと表情を明るくして、

「そうですね、ここはとても明るいですから!」

と早速ドアを開け放してくれた。
洗面所から眩しい程の灯りが、牢内を照らしてくれる。
油は無限に使えるけれど、出入り口を塞がれた状態で物を燃やし続けるのも怖い。
今後はなるべくランタンは控えておきたいところだ。
トイレのドアを開ければ、もっと明るいのかもしれないけれど、流石にご飯を食べるところとトイレが、ドアを開きっぱなしで繋がっているのは抵抗がある。
ここはプライドをもって、我慢することにした。

「うーん。心理的健康には、もっと広さと灯りが欲しいわね。なんとかならないかしら…」

そういえば、お風呂の項目の中に、露天風呂があった。
ということは、スマホの力でこの部屋を、外に繋ぐことも出来るということだ。

でも、どこに出来るんだろう。
屋敷の一角に突然そんなものが出来たら、それこそ襲撃されてしまいそうだ。
外に繋げるなら、外で暮らせる目処が立ってから、脱出する手段として使用するべきだと思う。

「うーん…他に何か…何か…」

悩みながら、色々と確認した結果。
可能性のありそうなものは、以下のものだった。

冒険の方で設立出来る「クラン」。
クランを設立すると、クランハウスが手に入るらしい。任意の場所に。
見覚えがあると思ったこのマップ、王都から領土までの土地を、物凄く簡略化したものだったのだ。
この世界とスマホの世界は連動している。
ということは、自国から離れた場所にクランハウスを建てることで、何か亡命なりの打開策がとれる可能性がある。
とはいえ、これも脱出する時の手段の一つだろうか。
次にファッションのルーム選択の中の「運動室」。
名前の通り、身体を動かせるのは心身によさそうだ。運動できるなら、広さもそこそこあるだろう。
更に、新しく増設した部屋は、どこも灯りに満ちている。
明るい部屋で身体をのびのびと動かす事ができれば、精神衛生によさそうだ。
現状、冒険とお庭のデイリークエストだけで、毎日300,000Gくらいのお金が入ってくる。
これを活用すれば、あれこれと増設できそうだった。

「じゃあ取り敢えず、デイリークエストを片付けてくるわね」
「はい!マーガレット様、いつもお仕事ありがとうございます!」
「う、うん…」

…やるのはゲームなんだけどね。

本日の冒険のログインボーナスは、クリスタル200個だった。
クリスタルは、モフル狩猟の時にも入手した、モンスターを倒すと時々手に入る便利アイテムだ。
猟師だったら「矢作成」で使う。
スキルを使用した時、1個のクリスタルから50本の「魔力の矢」が作成出来る。
様々なものから矢が作成出来るが、1番汎用性が高い素材のようだ。
聖職者は、戦闘不能になった仲間を復活させる際に、このクリスタルが必要になる。

そうだ。
デイリークエストだけでも、みんなのレベルが地道に上がっていて、スキルポイントが溜まってきていたのだ。
そろそろスキルの取得もしてしまおう。

サリナには、回復・解毒・祝福の祈りをそれぞれ1ずつ取得させた。
祝福の祈りは、味方にバフをかけるスキルだった。
全てのステータスが一時的に上昇するらしい。
私は矢作成・気配探知・鷹の目・那須与一・連写を取得する。
気配探知も鷹の目も、狩猟できるモンスターを発見できる率があがる。
那須与一は、射程範囲が広くなった。
レオンは俊足・威嚇・やる気の3つしかない。
しかし、なぜかスキルレベルが上がっておらず、ポイントを振ることはできなかった。

庭のログインボーナスは、光る虹看板。
ウェルカムと書かれた白い看板の足元に可愛い花が咲いていて、その上にキラキラ光る虹がかかっている。
お庭のデコレーションアイテムだった。
この状況でウェルカム看板とは、なかなかに皮肉が効いている。

「待てよ、これ牢の中でも光るかな」

ふと思いついて、アイテムボックスから取り出してみることにした。
なんの気なしに、先ほどもらったクリスタルも一緒に取り出す。

「わあ…これは綺麗だねえ!」

虹の光が、適当にバラバラと出したクリスタルに反射して、牢内が幻想的に照らされた。
台所仕事などは、手元が明るい方がいい。
キッチン周りに設置しよう。
そう思って立ちあがろうとしたが、興奮したレオンが飛びついてきた。

「わっ、どうしたのレオン」

尻尾を千切れんばかりに振って、一生懸命顔を舐めてくるレオンは、顔を押しのけても止まらない。
なんだなんだと思っていたら、クリスタルを嗅いで、ねだるような目で私を見上げてきた。

「ん?クリスタルが欲しいの?なんで?」
「く~ん…」
「オモチャにしたいのかな?一個だけだよ。」

可愛らしい顔に押し負けて、クリスタルを一個摘んで、レオンの顔の前に差し出してやる。
途端にパッと顔を輝かせたレオンは、クリスタルをパクッと咥え…

ガリ ガリガリ ガリ

食べてしまった。

「あ…あーっ!サリナ!レオンが石を食べちゃった!」
「まあ、悪食な犬ですね。マーガレット様の持ち物を、勝手に食べてしまったのですか?」
「いえ、違うの。私があげちゃったのだけど」

今にもレオンを叱りそうなサリナに、犯人は自分だと白状する。

「どうしよう、変な物をあげちゃって…お腹を壊さないかしら」
「…実は、ご報告しようと思っていたことがあるのですが」

サリナはそう言って、レオンに用意したトイレを見せてきた。

「レオンは、不思議な犬なのです。
あの朝から一度も、用を足す気配がございません。
どこかで粗相しているのではないかと、よく観察していましたが、室内ではいたしませんでした。
魔法の犬なので、当たり前の犬と違って用を足す必要がないのかもしれません。
はじめに出てきた小部屋に時々戻るので、そこで済ませている可能性も、あるのですが…。」
「ちょっと、覗いてみようか。レオン、いい?」
「ワン!」

断りを入れられたレオンは、むしろ嬉しそうに胸を張る。
膝の高さくらいの小さな扉。
そこをそっと押してみる。
すると…

「これはまあ…」

暗くてジメジメしてカビ臭い牢内とは裏腹な光景が広がっている。

牢内の数十倍の広々とした空間。
その広さが、端から端まで目が眩むように明るかった。
ふっかふかの敷き詰められた絨毯。
レオンの部屋から流れてくる暖かい空気は、深呼吸したくなるような清浄さがある。
天井・柱付きの丸いベッドの上には、カラフルなクッションが敷き詰められていて。
走り回って遊ぶスペースと思しき場所には、傾斜や穴、トンネルに障害物があって遊び回れるようになっている。
床に散らばっている、ボール。
高い天井から吊り下がっている、ゆらゆらするオモチャ。
けれどその中に、トイレは見当たらないようだった。

「随分と贅沢な暮らしをしていたようです。」
「そう、ね」
「やはりレオンは魔法の犬です。
石を食べたことは、気にする必要はないかと。」

妥当な判断だとは思ったが、この部屋を見た後では、嫉妬の響きに聞こえてしまうのだった。





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