転生覚醒が遅すぎたので全力ヒキニートします!

カカオ70

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瀉血の跡

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寝室に行って、でかいダブルベッドが並んでいることに、がっくり膝をつきそうになるのをこらえる。
今までの流れから、もしかしてそうかなーとは思っていた。
けれど、1つしか設置されないと思っていたから、頑張ってダブルベッドまでお金を突っ込んだのに!と嘆きたい気持ちにはなる。
お陰で寝室はやたらに広い。
それぞれのベッドを決めて潜り込むと、フワッフワの羽毛布団につつまれて、ぬくぬくだ。
疲れたし、お腹いっぱいだし、あったかいし。
すぐに眠くなるかと思ったけど、今朝のこととか今までサリナと引っ付いて寝ていたこともあって、なんとなく1人で寝るのが心細い。
枕元の明るさを調整するツマミを操作しているサリナに、そっと声をかけてみた。

「ねえサリナ、やっぱりそっちに行ってもいい?」
「もちろんです。」
「ありがとう」

もそもそとサリナの隣に移動すると、安心感でホッとため息が漏れた。

「あら。上着を着たままですと、寝づらくはありませんか。
お預かりします。」
「ありがとう」

部屋の温度はちょうどいいし、羽毛布団もふわふわで温かい。
ショート丈の格好で暖かく寝られるなんて、最高だ。喜んでカーディガンを脱ぐ。
が、サリナにカーディガンを渡すために伸ばした自分の腕に残る、沢山の醜い傷跡…。
ハッとして、今更恥ずかしくなり、慌てて引っ込める。
サリナはそれに気づいて、眉根を寄せた。
カーディガンを枕元のハンガーラックにかけたサリナは、一緒にベッドに潜り込んで私の傷跡を優しく撫でた。

「瀉血のあとが、すっかり残ってしまいましたね。」
「…仕方ないわ、繰り返し倒れたから」

小さい頃からコルセットをしめていた私は、頻繁に気を失って倒れていた。
医者にはそれが、悪い血が溜まっているのだと説明されて、瀉血を行っていたのだ。
今考えれば、頻繁に血を抜いていたせいで貧血を起こし、余計に具合が悪くなっていたのかもしれない。
気づけばマーガレットは、15歳なのにまだ生理もきていない。
思った以上に私の体は、具合がよくないかもしれない。
ぞわ と背中に走る恐怖に、身震いした。
そして今更ながら、とっくに初潮を迎えているであろうサリナに対しては、この中でどれだけのことをしてあげられるだろうと、不安になった。

「ちゃんと準備をしておりますので、ご安心ください」
「そうなの?」
「マーガレット様に月のものがきた時にお教えしようと思っていただけで、何も考えていないわけではありませんよ」

私は何も考えていませんでしたよ。えらいね、サリナ。

「地下で洗濯物が乾くのかは心配しておりましたが、魔法の洗濯カゴがありますし……マーガレット様」
「ん、なあに?」
「瀉血の跡が、消えております」
「えっ?」

ずっと私の腕の傷跡を撫でていた手が止まり、サリナが目を見開いた。
刃物で切り裂いた痕が、醜く盛り上がっていたはずの肌。
そこが、跡形もなくツルリとしている。
思わず飛び起きて、スベスベになった腕をマジマジ見つめた。
指で擦っても引っかかりの1つもない。

「えっ?えっ?なんで?」
「………」
「なに、その表情は。何か心当たりがあるんでしょ」

サリナも揃ってベッドの上に座り込み、戸惑った顔で自分の手を見ている。

「私はただ…おいたわしいと思って、さすっていただけ、なのです。」
「サリナ、責めているわけじゃないわよ」
「そうする内に、ふっと「回復」という言葉が浮かんで、手が温かくなったのです。」
「あ」

マジか。
今日、ゲームでサリナに取得させたスキルだ。
魔法のないこの世界に、私が魔法を生み出してしまったのか。
現実に反映するって、本当にどこまでなのかわからない。どこまで?どこまでもなの?
ということは、もしかしてステータスも反映されているんだろうか。
考えたら、久しぶりに身体を動かしたはずなのに、ラジオ体操をきっちりやった後で半日トランポリンで遊んでも、ああ楽しかった!で済んでいる。
もっと疲れても…というか、そんなに遊ぶ前にダウンしていてもおかしくない。
思い返せば、モフルの死体を見て気絶したサリナを、ベッドに寝かせてあげる時にも苦労した覚えがない。
モフルの巨大な体を、アイテムボックスに収納する時も。

じゃあ、サリナの父達がサリナを連れ去ろうとした時、あまりにあっさりと突き飛ばせたのは…相手が油断していたからではなくて、私のステータスが上がっていたから…だったのか。
しょせん非力な女の力だと思って、全力で突き飛ばしたけれど、そういえば3人とも壁に激突した後、うずくまったまま力なく呻いていた。

男装した娘。
まともな物資もないのに、いつまでも元気そうな地下牢の囚人。
突如現れて、怪力を見せる私。

スマホの力は隠していたつもりだが、充分に人外の力を感じられたに違いない。

「そりゃ…封印しなきゃってなるわけね」

今更に、石牢が封印された理由がわかった気がして、私は乾いた笑いを浮かべたのだった。

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