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13 帰省
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前期テストの結果が出たけど、それは生徒達の想像通りだったらしく、結果を見て騒ぐ生徒はいなかった。
獣人クラス上位六名は全員一年生。
結果を見なくてもわかる。
その中に泉地もいた。
それにしても、珍しい年だった。
キング以下メンバーが誰もカヴァリエを持たずに前期を終えるなんて―――大抵、六名いれば誰か一人くらいはカヴァリエがいるものなんだけど。
モテないわけじゃない。
近寄りがたい雰囲気はあるけど、人気はある。
どうしてなのかな―――って、私はなにを考えているのよ!
私には関係ないですからっ!
明日から夏休みだから、しばらく泉地とも会わない。
大人としての冷静さと常識を取り戻さなくては。
気合いを入れて、ごしごしとテーブルを磨いた。
煩悩と雑念よ!
消えなさい!
「美知。仕事、終わった?」
テーブルにゴンッと額を打ち付けてしまった。
泉地が学食に来るのは食事をする以外では初めてだったから、動揺してしまった。
大人の冷静さよ!
私に来たれ!
すうっと息を吸って吐く。
それから、顔をあげた。
「今、終わるところだけど、帰省の準備は終わったの?」
「特に荷物はないから。いつものところに来て」
「わかったわ」
明日から楽しい夏休みのはずが、泉地は元気がないように見えた。
だから、つい素直にうなずいてしまった。
「どうしたのかしら」
制服を着替えて外に出ると、いつものベンチに泉地は座っていた。
気だるげで憂鬱そうに目を伏せている。
そんな泉地に冷たいミルクティーのボトルをこつんと額にあてると、私を見上げて微笑んだ。
「出会った時みたいだ」
さっきの表情とは違う笑顔に胸がなぜか苦しかった。
隣に座って、一緒に甘くて冷たいミルクティーを飲んだ。
やっぱりおかしい。
口数が少ないし、表情も暗い。
「泉地? 体調でも悪いの?」
「大丈夫。帰るのが面倒臭いだけだから」
「実家に帰るのが面倒なの?」
「実家に戻るわけじゃない」
「え?」
「俺が今から行くのは獅央家だよ。俺は高也の護衛だから」
ボディガードで給料をもらっているというのは嘘ではなかったらしい。
「獅央家って、キングの実家よね? 実家に帰るのにボディガードをするってどういうこと?」
泉地は黙り混んだ。
聞いてはいけないことだったのかもしれない。
「ごめんなさい。興味本意で聞かれたくないこともあるわよね」
「嫌われたくないから言えない。今はまだ」
いつもは余裕のある泉地が苦しそうに言った。
そんな顔しないでほしい。
「なんなのかわからないけれど、私は泉地のこと嫌いになんてならない―――」
自分の口から自然に零れた言葉に驚き、慌てて言い訳をした。
「これは友人としてね!?」
泉地はこっちを見て笑っていた。
「いい加減、素直になればいいのに」
「十分、素直です!」
「そうか。よかった」
指が頬に触れたのに拒めずにミルクティーと同じ色の目を見つめた。
とろりと溶ける甘い色。
「お願いがあるんだけど」
「なに?」
「美知に頑張れって言ってほしい」
「どうしたの?」
「いいから」
腕を掴んだ泉地の手が震えていた。
思わず、その冷たい手を握った。
緊張なのか、不安からなのか、わからないけど、普段、私をからかっている泉地ではなかった。
「がんばって。泉地」
あんなに強いのになにに対して、そんな不安になっているというの?
「泉地なら大丈夫よ」
「ありがとう。美知。すぐに帰ってくるから、待っていて」
止めるべきだったのか、それとも理由を無理にでも聞くべきだったのか、別れた後もずっと気になっていた。
けれど、私にも聞いて欲しくないことはあった。
自分から話してくれるまで、私は聞くべきではないと自分を納得させて泉地を待とうと決めた。
夏休み初日。
泉地はその日の夜、キングと共に獅央家へ行ってしまった―――
獣人クラス上位六名は全員一年生。
結果を見なくてもわかる。
その中に泉地もいた。
それにしても、珍しい年だった。
キング以下メンバーが誰もカヴァリエを持たずに前期を終えるなんて―――大抵、六名いれば誰か一人くらいはカヴァリエがいるものなんだけど。
モテないわけじゃない。
近寄りがたい雰囲気はあるけど、人気はある。
どうしてなのかな―――って、私はなにを考えているのよ!
私には関係ないですからっ!
明日から夏休みだから、しばらく泉地とも会わない。
大人としての冷静さと常識を取り戻さなくては。
気合いを入れて、ごしごしとテーブルを磨いた。
煩悩と雑念よ!
消えなさい!
「美知。仕事、終わった?」
テーブルにゴンッと額を打ち付けてしまった。
泉地が学食に来るのは食事をする以外では初めてだったから、動揺してしまった。
大人の冷静さよ!
私に来たれ!
すうっと息を吸って吐く。
それから、顔をあげた。
「今、終わるところだけど、帰省の準備は終わったの?」
「特に荷物はないから。いつものところに来て」
「わかったわ」
明日から楽しい夏休みのはずが、泉地は元気がないように見えた。
だから、つい素直にうなずいてしまった。
「どうしたのかしら」
制服を着替えて外に出ると、いつものベンチに泉地は座っていた。
気だるげで憂鬱そうに目を伏せている。
そんな泉地に冷たいミルクティーのボトルをこつんと額にあてると、私を見上げて微笑んだ。
「出会った時みたいだ」
さっきの表情とは違う笑顔に胸がなぜか苦しかった。
隣に座って、一緒に甘くて冷たいミルクティーを飲んだ。
やっぱりおかしい。
口数が少ないし、表情も暗い。
「泉地? 体調でも悪いの?」
「大丈夫。帰るのが面倒臭いだけだから」
「実家に帰るのが面倒なの?」
「実家に戻るわけじゃない」
「え?」
「俺が今から行くのは獅央家だよ。俺は高也の護衛だから」
ボディガードで給料をもらっているというのは嘘ではなかったらしい。
「獅央家って、キングの実家よね? 実家に帰るのにボディガードをするってどういうこと?」
泉地は黙り混んだ。
聞いてはいけないことだったのかもしれない。
「ごめんなさい。興味本意で聞かれたくないこともあるわよね」
「嫌われたくないから言えない。今はまだ」
いつもは余裕のある泉地が苦しそうに言った。
そんな顔しないでほしい。
「なんなのかわからないけれど、私は泉地のこと嫌いになんてならない―――」
自分の口から自然に零れた言葉に驚き、慌てて言い訳をした。
「これは友人としてね!?」
泉地はこっちを見て笑っていた。
「いい加減、素直になればいいのに」
「十分、素直です!」
「そうか。よかった」
指が頬に触れたのに拒めずにミルクティーと同じ色の目を見つめた。
とろりと溶ける甘い色。
「お願いがあるんだけど」
「なに?」
「美知に頑張れって言ってほしい」
「どうしたの?」
「いいから」
腕を掴んだ泉地の手が震えていた。
思わず、その冷たい手を握った。
緊張なのか、不安からなのか、わからないけど、普段、私をからかっている泉地ではなかった。
「がんばって。泉地」
あんなに強いのになにに対して、そんな不安になっているというの?
「泉地なら大丈夫よ」
「ありがとう。美知。すぐに帰ってくるから、待っていて」
止めるべきだったのか、それとも理由を無理にでも聞くべきだったのか、別れた後もずっと気になっていた。
けれど、私にも聞いて欲しくないことはあった。
自分から話してくれるまで、私は聞くべきではないと自分を納得させて泉地を待とうと決めた。
夏休み初日。
泉地はその日の夜、キングと共に獅央家へ行ってしまった―――
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