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第一章
1 『二番目の姫』
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――私、転生しちゃったみたい。
なんと!
小説の中のヒロインに!
でも、全然嬉しくない……
なぜなら、両親に冷たくされ、周囲は姉を褒め称える姉妹格差バリバリの虐げものだからだ。
その虐げヒロインに私は転生してしまった。
小説のタイトルは『二番目の姫』――タイトル通りヒロインは二番目に生まれた姫である。
一番目の姫、セレステは光の巫女。
二番目の姫、ルナリアは闇の巫女。
私が転生したのは二番目の姫ルナリア。
ルナリアがヒロインのお話なんだけど、ヒロインがハッピーエンドにならない可哀想なお話である。
生まれた時から、常に姉のセレステが優先され、冷遇されるルナリアは姉に嫉妬する。
ルナリアの婚約者はセレステを好きになってしまい、『君のことは二番目に愛してるよ』なんて言われる。
仕返しにセレステの婚約者を奪おうとするも失敗し、暗殺の疑いをかけられ牢屋へ放り込まれるのだ。
「不幸すぎる……」
でも、不幸はさらに続く。
周囲から嘲笑される日々――暗い牢屋の中で、ルナリアはますますセレステへの恨みを募らせていく。
そして、とうとうルナリアは感情を爆発させ、闇の力が目覚めて暴走。
闇の中にセレステを閉じ込めてしまう。
しかし、セレステは光の力によって、ルナリアの闇を打ち消し、『お姉様……。闇から私を救ってくれてありがとう』ガクッ……で終わるお話だ。
闇から救われる姫っていうオチにしたかったんだろうけど、あんまりひどいストーリーだったから、しっかり覚えてる。
はっきり言って、まったく救われてないし……
『セレステは本物の光の巫女。嫉妬という心の闇さえも打ち消したのだ』
――なーんて小説の中では書いてあるけど、本当の闇は、いつだって二番目にされてしまうルナリアですから!
そして、現在の私は五歳。
この記憶を思い出したのは、自分で本を読もうと、よくある童話を手に取り、ページを開いた時のこと。
雷に打たれたかのように、転生前の記憶を思い出したのだ。
「う、うわぁーんっ!」
気づけば、王子と王女の幸せハッピーエンドな童話を見ながら泣いていた。
――どうせ転生するなら、イケメン王子とラブラブハッピーエンドになるこっちの童話がよかったよー! こんな転生、あんまりだー!
ルナリア(私)には悪いけど、人生イージーモードを望んでしまうのは許してほしい。
たしかに親は私を放置気味だったとは思うけど、三食昼寝付き。
だらだらした王女生活を楽しんでいた私。(まあ、五歳だしね)
でも、未来に待つのが嫌われ王女で、闇の力を暴走させて……死。
死である!
恐怖で体が震えた。
「ルナリア様? どうなさいましたか?」
乳母は心配したけど、たった今、前世を思い出して、ここが小説『二番目の姫』の世界なんですとは言えなかった。
言ったところで誰が信じる?
信じてもらえないどころか、医師を呼ばれるか、『闇の巫女だと? 死ね! ザクッ!』で死亡エンドを早めるだけである。
――前世ゲーマーとしては、この物語にマルチエンディングが存在し、複数のハッピーエンドルートがあると信じたい(バッドエンドもあるってことになるけど……)。
なお、私の前世は普通の会社員二十六歳女性。
ただし、それは表の顔で裏の顔はゲーマー。
亡くなった経緯は覚えてないけど、健康そのもので病気ではなかったみたいだから、突然ポックリ逝ったんじゃないだろうか。
それとも、廃人プレイからの過労死とか……あり得る。
――ごちゃごちゃ考えてる場合じゃない! 転生してしまった以上、前職より今の職(姫)よ!
今回は楽にポックリなんて逝かせてくれそうにない。
だって、『二番目の姫』のラストは力が暴走して、セレステによって殺され……いやいや、力を打ち消されて死ぬ運命。
嫉妬が死を招くとわかったら、つい言い直してしまう私。
「泣いたり、考え込んだり、忙しいですね」
「セレステ様はいつも穏やかに微笑んでいるっていうのに、ルナリア様は感情の起伏が激しいわ」
さすが一番ポジションのセレステ。
幼い頃から周囲を困らせず、高評価のようだ。
乳母や侍女たちは目に見えて、『セレステ様がよかったわ。どうして、ルナリア様担当に配属されちゃったのかしら?』なんて顔をしている。
――や、やばい。好感度をあげなきゃ!
ゲーマーの血が騒ぎだす。
封印していた力(ゲーマー)を解放する。
「あ、あのね、ルナリア、大丈夫なの。本を読んでて、悲しくなっただけ」
今となっては中身二十六歳の寒々しい五歳児プレイ。
「驚かせちゃって、ごめんなさい」
だらしない顔を引き締め、キラキラオーラを放ち、みんなに謝った。
「あ、あら? いいのですよ」
「珍しいわねぇ。いつものルナリア様なら、大暴れして床に転がってるのに」
「そうそう。手足をバタバタさせて怒るわよね」
それは、両親がセレステばかりにかまうから、こっちを見てほしかった私(五歳)は寂しくて癇癪を起こしていただけなのだ。
でも、死につながるとわかったら、これからは、ワガママは控えて乳母と侍女のご機嫌を取り、うまく味方につけなければならない。
両親から放置されていたことも周りが冷たかったのも、『二番目の姫』の話を思い出し、ようやく合点がいった。
読もうと思っていた童話の本を閉じた。
――王子と王女のハッピーエンドは私にはこない。
婚約者から婚約破棄され、セレステに悪者としてトドメを刺される運命にあるのに、こんな夢を見てもしかたない。
両親と婚約者捨てられたルナリアが一人で生きていけるように、私がこれから読むのは別の本だ。
「ルナリア様。それは経済の本ですよ? 難しくありませんか?」
「そっちは農業分野です。まだ早いのでは?」
乳母と侍女が止めるけど、私は時間が惜しかった。
生き延びるための知識と力を手に入れなければならないのだから真剣だ。
「ううん。ルナリア、こういう本、好き。みんなはお休みしてて? お仕事、おつかれさま」
「ルナリア様!?」
「私たちをねぎらった?」
「お熱があるのではありませんか?」
もう私は五歳のルナリアではない。
二十六歳ゲーマー、会社員の記憶を持つ転生者である。
「乳母。あのね、ルナリアに家庭教師をつけてほしいの」
「家庭教師!? まだルナリア様には早いと思いますが……」
「まずは、セレステ様の家庭教師を雇ってからでないと、ルナリア様の家庭教師を雇えません」
――やっぱり二番。小説『二番目の姫』の力が、私を二番目にしようと邪魔をする。
両親に交渉を考えたけれど、両親の口癖は『セレステから』『姉のセレステがまだだから』――こうだろう。
今思えば、両親は常にセレステを優先させて、私の話を聞いてくれなかった。
なぜなら、私は二番目の姫。
――まずは地道に環境づくりよね。わがままな王女というイメージはよくないわ。
こうなると、演技力が必要になってくる。
私の演技……五歳児を演じるのは、ちょっと恥ずかしいけど、生きるためである。
覚悟を決め、『ルナリア五歳』を演じることにした。
大きな目をうるうるさせ、乳母のエプロンを小さな手でぎゅっとつかむ。
「わがまま言ってごめんなさい……。ルナリア、もうわがまま言わないから、ゆるして」
「えっ!? わがまま? そんなことございません!」
乳母は慌てて否定し、考え込む。
「そうですね……。ルナリア様のお世話が私の役目です。私でわからないことがあれば、陛下に進言し、家庭教師を雇いましょう」
乳母は私の教育係も兼ねてるから、乳母の知識量を上回れば、家庭教師をゲットできるようだ。
――時は金なり!
こっちは命がかかってる。
せっかく王宮の図書館にいるのだから、片っ端から読んでいくことにした。
五歳の子供には難しい本を山積みにしていく私を見て、乳母と侍女は戸惑っていた。
「おかしいわ。いつもなら、この時間になったら、ケーキをねだるのに」
「お人形遊びをするのに、人を集めないなんて」
昨日までの無邪気な私よ、さようなら。
コホンと咳ばらいをし、キラキラ笑顔を向けた。
「ルナリア、一人で平気。みんな、疲れてるよね? お休みしてて?」
乳母と侍女は驚いていたけど、称賛の声が聞こえてくる。
「なんてご立派なの。五歳とは思えないわ」
「優秀なセレステ様の妹ですものね。普通の子供より、しっかりされてるのも当たり前よ」
「そうよねぇ」
――え? 結局、セレステなの?
私が褒められたはずが、最後はセレステが褒められる。
二番目になるのはわかっていても、なんだかショックだった。
――ダメダメ! これくらいで傷ついてどうするの! しっかりして私!
不幸はまだまだやってくる。
私がこの世界で生き延びるためには、それを打ち砕いていかなくてはならないのだ。
これしきのことで、いちいちヘコんでいる場合ではない。
気を取り直し、本棚へ向かう。
「王女というからには、外交も大切よね」
ついでに言語の本も加えた。
少数部族の言語を話せる人間は少なく、また難解である。
けれど、これを使えるようになれば重宝されるはずだ。
――五歳にしてスキルアップを考えることになろうとは。
昨日まで、能天気にクリームたっぷりのケーキをほおばってグータラしていた自分が懐かしい。
本を積み重ねて席につく。
この知識はゲームを攻略するための攻略本だと思えばいいだけのこと。
私には今まで高難度クエストを攻略するために学んだ力がある。
そう、私は『二番目の姫』の人生を攻略する。
――簡単に死んでたまるものですか! 私はこの世界で楽しい老後を送るんだから!
そう決意した私は、せっせと本を読み、この世界の知識を蓄えていく。
乳母と侍女たちが『熱でもあるのかしら?』『新しい遊びかも……?』という囁く声を無視して。
本を数冊読み終わったところで、図書館の重い扉が開いた。
「あれ? ルナリア。勉強中?」
「珍しいな」
図書館へ入ってきたのは、私を捨てる予定の婚約者フリアン(まだ婚約してないけど)。
そして、セレステの婚約者となる隣国の王子レジェスだった。
やがて、ルナリアと婚約を破棄するフリアンと牢屋へ放り込んで嘲笑うレジェスが、私に親しげな笑みを向けていた――
なんと!
小説の中のヒロインに!
でも、全然嬉しくない……
なぜなら、両親に冷たくされ、周囲は姉を褒め称える姉妹格差バリバリの虐げものだからだ。
その虐げヒロインに私は転生してしまった。
小説のタイトルは『二番目の姫』――タイトル通りヒロインは二番目に生まれた姫である。
一番目の姫、セレステは光の巫女。
二番目の姫、ルナリアは闇の巫女。
私が転生したのは二番目の姫ルナリア。
ルナリアがヒロインのお話なんだけど、ヒロインがハッピーエンドにならない可哀想なお話である。
生まれた時から、常に姉のセレステが優先され、冷遇されるルナリアは姉に嫉妬する。
ルナリアの婚約者はセレステを好きになってしまい、『君のことは二番目に愛してるよ』なんて言われる。
仕返しにセレステの婚約者を奪おうとするも失敗し、暗殺の疑いをかけられ牢屋へ放り込まれるのだ。
「不幸すぎる……」
でも、不幸はさらに続く。
周囲から嘲笑される日々――暗い牢屋の中で、ルナリアはますますセレステへの恨みを募らせていく。
そして、とうとうルナリアは感情を爆発させ、闇の力が目覚めて暴走。
闇の中にセレステを閉じ込めてしまう。
しかし、セレステは光の力によって、ルナリアの闇を打ち消し、『お姉様……。闇から私を救ってくれてありがとう』ガクッ……で終わるお話だ。
闇から救われる姫っていうオチにしたかったんだろうけど、あんまりひどいストーリーだったから、しっかり覚えてる。
はっきり言って、まったく救われてないし……
『セレステは本物の光の巫女。嫉妬という心の闇さえも打ち消したのだ』
――なーんて小説の中では書いてあるけど、本当の闇は、いつだって二番目にされてしまうルナリアですから!
そして、現在の私は五歳。
この記憶を思い出したのは、自分で本を読もうと、よくある童話を手に取り、ページを開いた時のこと。
雷に打たれたかのように、転生前の記憶を思い出したのだ。
「う、うわぁーんっ!」
気づけば、王子と王女の幸せハッピーエンドな童話を見ながら泣いていた。
――どうせ転生するなら、イケメン王子とラブラブハッピーエンドになるこっちの童話がよかったよー! こんな転生、あんまりだー!
ルナリア(私)には悪いけど、人生イージーモードを望んでしまうのは許してほしい。
たしかに親は私を放置気味だったとは思うけど、三食昼寝付き。
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でも、未来に待つのが嫌われ王女で、闇の力を暴走させて……死。
死である!
恐怖で体が震えた。
「ルナリア様? どうなさいましたか?」
乳母は心配したけど、たった今、前世を思い出して、ここが小説『二番目の姫』の世界なんですとは言えなかった。
言ったところで誰が信じる?
信じてもらえないどころか、医師を呼ばれるか、『闇の巫女だと? 死ね! ザクッ!』で死亡エンドを早めるだけである。
――前世ゲーマーとしては、この物語にマルチエンディングが存在し、複数のハッピーエンドルートがあると信じたい(バッドエンドもあるってことになるけど……)。
なお、私の前世は普通の会社員二十六歳女性。
ただし、それは表の顔で裏の顔はゲーマー。
亡くなった経緯は覚えてないけど、健康そのもので病気ではなかったみたいだから、突然ポックリ逝ったんじゃないだろうか。
それとも、廃人プレイからの過労死とか……あり得る。
――ごちゃごちゃ考えてる場合じゃない! 転生してしまった以上、前職より今の職(姫)よ!
今回は楽にポックリなんて逝かせてくれそうにない。
だって、『二番目の姫』のラストは力が暴走して、セレステによって殺され……いやいや、力を打ち消されて死ぬ運命。
嫉妬が死を招くとわかったら、つい言い直してしまう私。
「泣いたり、考え込んだり、忙しいですね」
「セレステ様はいつも穏やかに微笑んでいるっていうのに、ルナリア様は感情の起伏が激しいわ」
さすが一番ポジションのセレステ。
幼い頃から周囲を困らせず、高評価のようだ。
乳母や侍女たちは目に見えて、『セレステ様がよかったわ。どうして、ルナリア様担当に配属されちゃったのかしら?』なんて顔をしている。
――や、やばい。好感度をあげなきゃ!
ゲーマーの血が騒ぎだす。
封印していた力(ゲーマー)を解放する。
「あ、あのね、ルナリア、大丈夫なの。本を読んでて、悲しくなっただけ」
今となっては中身二十六歳の寒々しい五歳児プレイ。
「驚かせちゃって、ごめんなさい」
だらしない顔を引き締め、キラキラオーラを放ち、みんなに謝った。
「あ、あら? いいのですよ」
「珍しいわねぇ。いつものルナリア様なら、大暴れして床に転がってるのに」
「そうそう。手足をバタバタさせて怒るわよね」
それは、両親がセレステばかりにかまうから、こっちを見てほしかった私(五歳)は寂しくて癇癪を起こしていただけなのだ。
でも、死につながるとわかったら、これからは、ワガママは控えて乳母と侍女のご機嫌を取り、うまく味方につけなければならない。
両親から放置されていたことも周りが冷たかったのも、『二番目の姫』の話を思い出し、ようやく合点がいった。
読もうと思っていた童話の本を閉じた。
――王子と王女のハッピーエンドは私にはこない。
婚約者から婚約破棄され、セレステに悪者としてトドメを刺される運命にあるのに、こんな夢を見てもしかたない。
両親と婚約者捨てられたルナリアが一人で生きていけるように、私がこれから読むのは別の本だ。
「ルナリア様。それは経済の本ですよ? 難しくありませんか?」
「そっちは農業分野です。まだ早いのでは?」
乳母と侍女が止めるけど、私は時間が惜しかった。
生き延びるための知識と力を手に入れなければならないのだから真剣だ。
「ううん。ルナリア、こういう本、好き。みんなはお休みしてて? お仕事、おつかれさま」
「ルナリア様!?」
「私たちをねぎらった?」
「お熱があるのではありませんか?」
もう私は五歳のルナリアではない。
二十六歳ゲーマー、会社員の記憶を持つ転生者である。
「乳母。あのね、ルナリアに家庭教師をつけてほしいの」
「家庭教師!? まだルナリア様には早いと思いますが……」
「まずは、セレステ様の家庭教師を雇ってからでないと、ルナリア様の家庭教師を雇えません」
――やっぱり二番。小説『二番目の姫』の力が、私を二番目にしようと邪魔をする。
両親に交渉を考えたけれど、両親の口癖は『セレステから』『姉のセレステがまだだから』――こうだろう。
今思えば、両親は常にセレステを優先させて、私の話を聞いてくれなかった。
なぜなら、私は二番目の姫。
――まずは地道に環境づくりよね。わがままな王女というイメージはよくないわ。
こうなると、演技力が必要になってくる。
私の演技……五歳児を演じるのは、ちょっと恥ずかしいけど、生きるためである。
覚悟を決め、『ルナリア五歳』を演じることにした。
大きな目をうるうるさせ、乳母のエプロンを小さな手でぎゅっとつかむ。
「わがまま言ってごめんなさい……。ルナリア、もうわがまま言わないから、ゆるして」
「えっ!? わがまま? そんなことございません!」
乳母は慌てて否定し、考え込む。
「そうですね……。ルナリア様のお世話が私の役目です。私でわからないことがあれば、陛下に進言し、家庭教師を雇いましょう」
乳母は私の教育係も兼ねてるから、乳母の知識量を上回れば、家庭教師をゲットできるようだ。
――時は金なり!
こっちは命がかかってる。
せっかく王宮の図書館にいるのだから、片っ端から読んでいくことにした。
五歳の子供には難しい本を山積みにしていく私を見て、乳母と侍女は戸惑っていた。
「おかしいわ。いつもなら、この時間になったら、ケーキをねだるのに」
「お人形遊びをするのに、人を集めないなんて」
昨日までの無邪気な私よ、さようなら。
コホンと咳ばらいをし、キラキラ笑顔を向けた。
「ルナリア、一人で平気。みんな、疲れてるよね? お休みしてて?」
乳母と侍女は驚いていたけど、称賛の声が聞こえてくる。
「なんてご立派なの。五歳とは思えないわ」
「優秀なセレステ様の妹ですものね。普通の子供より、しっかりされてるのも当たり前よ」
「そうよねぇ」
――え? 結局、セレステなの?
私が褒められたはずが、最後はセレステが褒められる。
二番目になるのはわかっていても、なんだかショックだった。
――ダメダメ! これくらいで傷ついてどうするの! しっかりして私!
不幸はまだまだやってくる。
私がこの世界で生き延びるためには、それを打ち砕いていかなくてはならないのだ。
これしきのことで、いちいちヘコんでいる場合ではない。
気を取り直し、本棚へ向かう。
「王女というからには、外交も大切よね」
ついでに言語の本も加えた。
少数部族の言語を話せる人間は少なく、また難解である。
けれど、これを使えるようになれば重宝されるはずだ。
――五歳にしてスキルアップを考えることになろうとは。
昨日まで、能天気にクリームたっぷりのケーキをほおばってグータラしていた自分が懐かしい。
本を積み重ねて席につく。
この知識はゲームを攻略するための攻略本だと思えばいいだけのこと。
私には今まで高難度クエストを攻略するために学んだ力がある。
そう、私は『二番目の姫』の人生を攻略する。
――簡単に死んでたまるものですか! 私はこの世界で楽しい老後を送るんだから!
そう決意した私は、せっせと本を読み、この世界の知識を蓄えていく。
乳母と侍女たちが『熱でもあるのかしら?』『新しい遊びかも……?』という囁く声を無視して。
本を数冊読み終わったところで、図書館の重い扉が開いた。
「あれ? ルナリア。勉強中?」
「珍しいな」
図書館へ入ってきたのは、私を捨てる予定の婚約者フリアン(まだ婚約してないけど)。
そして、セレステの婚約者となる隣国の王子レジェスだった。
やがて、ルナリアと婚約を破棄するフリアンと牢屋へ放り込んで嘲笑うレジェスが、私に親しげな笑みを向けていた――
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