一目惚れ婚~美人すぎる御曹司に溺愛されてます~

椿蛍

文字の大きさ
8 / 34

8 今だけは ※微R-18

しおりを挟む
 夢から覚めた。

「私……」
「男だったから、これでおしまいにしておく?」

 リセから、『それは虫がよすぎるよ』と言われている気がした。
 
「男でがっかりした?」
「そんなことないです。性別に関係なく、私はリセのことが好きです」

 押し倒された体勢で、こんなことを言ったら、まるで私が誘ってるみたいだ。
 リセが微笑んだのがわかった。

「そうか。よかった」

 ホッとしたように見えたのは、私の願望だったかもしれない。
 暗い部屋に目が慣れてきて、リセは男の人だと、今ならはっきりわかる。
 むしろ、どこかで会ったことがあるような気がする――

「やめるなら、今のうちだけど? どうする? 琉永るなちゃん?」

 私を怖がらせないためか、リセは女性っぽい声で言った。
 子供扱いされている気がして、なんだか嫌だった。
 さっきは女性として、私にキスしてくれたのに、今は子供扱いされている。

「や、やめません。私、女でも男でも、リセを好きだと言った言葉に嘘はありませんから!」
「いい度胸だ」
 
 それは完全に、男の人の声だった。
 覆い被さったリセから、深いキスを与えられる。
 リセのキスは癖になる。
 容姿だけじゃなくて、リセという存在は、人を惹きつけるための甘い蜜をまとっているに違いない。

 ――なんだろう。花。花を思い出す。

 一瞬だけ思い出した記憶は、柔らかな唇の感触とともに、闇の中に沈んだ。

「あ……リセ……」

 唇を舌がなぞり、口を開けろと命じる。
 この先を知ってしまったら、きっと私はリセ以外、誰も好きになれない――そんな気がして、肩を軽く押すと、リセはキスを止めた。

「リセ、私でいいの? 平凡だし、普通すぎて嫌じゃない?」
「普通は逆だろ? 俺のことが嫌なのかと思ったら、そっちか」

 リセは耳元で笑い、小さな声で『途中で止められる人間がいたんだな』と言っていた。
 今まで、どれだけの人を誘惑し、誘惑されてきたのか。
 リセだからこそ、許される言葉だ。

「俺を目の前にして堕ちないのは、普通じゃないから安心しろ」

 リセは笑うと、深いキスを止め、軽いキスを髪と頬に落とす。

「まるで恋人同士みたい」

 優しいキスがくすぐったくて、ふふっと笑うとリセが耳元で囁いた。

「恋人じゃない。琉永るなは俺を婚約者にするんだろ?」
「だって、あれはじょうだ――」

 リセは私の言葉をキスで埋めて消した。
 その優しさに涙がこぼれた。
 好きじゃない相手と結婚するって言ったから、きっとリセは私に同情した。

 ――リセが婚約者だったらよかったのに。

 そんなこと絶対ありえないけど、今だけは夢を見ていたい。
 
 ――私はリセに恋をしている。

 短いどころか、これは一瞬の恋。
 夢になるだけの恋。
 私から、リセの体に触れた。

 ――これが現実にあったことだと、忘れないよう覚えておきたい、
 
 リセのこと、一生忘れないように。
 触れた私の指に、リセは応え、私の涙を唇ですくった。

「琉永。泣くな」
「ごめんなさい……」

 私はリセに謝っていた。
 この夜を思い出にして生きていく。
 
 ――だから、神様。夜明けはもう少しだけ待って。

 キスをした私に、リセはさっきよりも激しいキスを返した。
 舌が唇をなぞり、『開けろ』と命じる。
 命じられるがまま、口を開けると、舌が口内へ滑り込み、舌を引き出す。

「ん……あ……」

 食べられてるみたいなキスに、リセの隠れた激しさを感じる。
 
 ――リセは炎みたい。熱くて、眩しくて、近寄ったら魂を焼かれてしまう。

 そして、魂に焼きついたリセを簡単に忘れられなくなるのだ。

「おい、琉永。大丈夫か?」

 舌を絡めたキスに、ぐったりしている私に気づき、リセは気遣ってくれた。
 
 ――私が恋愛経験が少ない初心者だって、バレてしまう!

「だ、大丈夫です」

 強がってそんなことを言ったけど、頭がくらくらして、あんまり大丈夫じゃない。
 これが、大人のキスなんだと初めて知った。
 
「私からキスします」
「琉永から? いいけど」

 ここで、私もちゃんとキスができる大人の女性であるところを見せておきたい。
 リセに顔を近づけたけど、その顔があまりに綺麗で、しばらく見惚れてしまった。

「待たせすぎ」
「ご、ごめんなさい!」
 
 顎をつかまれ、リセがキスをする。
 角度を変え、何度も繰り返されるキスに、頭がぼうっとなる。
 大きな手のひらが体じゅうをなでていく。
 まるで、大切な物の形を確認するみたいに。

「琉永は小さくて柔らかくて可愛いな」
「私って、小動物的な可愛さですか?」
「そう。ウサギかハムスター。俺の周りにはいないタイプ」

 悪い意味なのか、いい意味なのかわからないけど、ウサギもハムスターも癒し系。
 つまり、私はうっかりナデナデしたくなるタイプってこと?

 ――だから、この愛でられ方?

 私はこんなにドキドキしてるのに、リセはウサギかハムスターに触れてるかんじ?

「なんだ。その不満そうな顔」
「だって、私を小動物扱いするから」
「じゃあ、キス。俺の唇にしてみろよ」

 わかりやすい挑発だけど、私はすぐに乗った。
 目を閉じて、勢いよくキスをする。

「少し大人になれたか。けど、俺が言うキスはこれ」

 リセが求めるのは、浅いキスじゃなくて、舌を絡める深く繋がるキス。

「リセ……、くるし……い」
「わざとだ。琉永に大人のキスを教えるために」
「あ……んぅ……」
 
 自分の声とは思えない甘い声がこぼれ、リセの肩を強くつかんだ。

「あと一回だけ」
「リ……セ……んんっ……」
 
 最後のキスが終わった後は、なにも考えられなくなり、放心状態だった。
 ぼうっと天井を眺め、呼吸を整える。

「さて、寝るか」
「えっ?」
「お子様には、この続きはまだ早い」

 大きく息を吸い込み、くたりとベッドに沈んだ私を眺めて、リセは余裕の笑みを浮かべている、

「がっかりした顔をするな。続きをしたくなるだろ?」

 私の頭をなで、体を離す。
 リセは冗談なのか、本気なのかわからないことを言った。

「これで、終わりじゃない。俺はお前の婚約者なんだろ?」
「でもあれは、冗談で……んっ!」

 リセが私の唇を指でなぞり、黙らせる。
 さっきまでキスをされていた唇に、その指は反則で、体がびくりと跳ねた。
 指一本で翻弄されてしまう。

「お前が、俺を婚約者に選んだんだからな。後悔するなよ?」 

 ――本気?

 そう言いたかったのに、私はこの夢の続きを期待して、なにも言えなかった。

 ――私はこの夢の続きを見たい。あなたと。

 私を抱き締め、眠るまで背中をなでてくれる手は優しく、幸せで涙が止まらなかった。 
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

苦手な冷徹専務が義兄になったかと思ったら極あま顔で迫ってくるんですが、なんででしょう?~偽家族恋愛~

霧内杳/眼鏡のさきっぽ
恋愛
「こちら、再婚相手の息子の仁さん」 母に紹介され、なにかの間違いだと思った。 だってそこにいたのは、私が敵視している専務だったから。 それだけでもかなりな不安案件なのに。 私の住んでいるマンションに下着泥が出た話題から、さらに。 「そうだ、仁のマンションに引っ越せばいい」 なーんて義父になる人が言い出して。 結局、反対できないまま専務と同居する羽目に。 前途多難な同居生活。 相変わらず専務はなに考えているかわからない。 ……かと思えば。 「兄妹ならするだろ、これくらい」 当たり前のように落とされる、額へのキス。 いったい、どうなってんのー!? 三ツ森涼夏  24歳 大手菓子メーカー『おろち製菓』営業戦略部勤務 背が低く、振り返ったら忘れられるくらい、特徴のない顔がコンプレックス。 小1の時に両親が離婚して以来、母親を支えてきた頑張り屋さん。 たまにその頑張りが空回りすることも? 恋愛、苦手というより、嫌い。 淋しい、をちゃんと言えずにきた人。 × 八雲仁 30歳 大手菓子メーカー『おろち製菓』専務 背が高く、眼鏡のイケメン。 ただし、いつも無表情。 集中すると周りが見えなくなる。 そのことで周囲には誤解を与えがちだが、弁明する気はない。 小さい頃に母親が他界し、それ以来、ひとりで淋しさを抱えてきた人。 ふたりはちゃんと義兄妹になれるのか、それとも……!? ***** 千里専務のその後→『絶対零度の、ハーフ御曹司の愛ブルーの瞳をゲーヲタの私に溶かせとか言っています?……』 ***** 表紙画像 湯弐様 pixiv ID3989101

黒瀬部長は部下を溺愛したい

桐生桜
恋愛
イケメン上司の黒瀬部長は営業部のエース。 人にも自分にも厳しくちょっぴり怖い……けど! 好きな人にはとことん尽くして甘やかしたい、愛でたい……の溺愛体質。 部下である白石莉央はその溺愛を一心に受け、とことん愛される。 スパダリ鬼上司×新人OLのイチャラブストーリーを一話ショートに。

ハイスペックでヤバい同期

衣更月
恋愛
イケメン御曹司が子会社に入社してきた。

辣腕同期が終業後に淫獣になって襲ってきます

鳴宮鶉子
恋愛
辣腕同期が終業後に淫獣になって襲ってきます

初色に囲われた秘書は、蜜色の秘処を暴かれる

ささゆき細雪
恋愛
樹理にはかつてひとまわり年上の婚約者がいた。けれど樹理は彼ではなく彼についてくる母親違いの弟の方に恋をしていた。 だが、高校一年生のときにとつぜん幼い頃からの婚約を破棄され、兄弟と逢うこともなくなってしまう。 あれから十年、中小企業の社長をしている父親の秘書として結婚から逃げるように働いていた樹理のもとにあらわれたのは…… 幼馴染で初恋の彼が新社長になって、専属秘書にご指名ですか!? これは、両片想いでゆるふわオフィスラブなひしょひしょばなし。 ※ムーンライトノベルズで開催された「昼と夜の勝負服企画」参加作品です。他サイトにも掲載中。 「Grand Duo * グラン・デュオ ―シューベルトは初恋花嫁を諦めない―」で当て馬だった紡の弟が今回のヒーローです(未読でもぜんぜん問題ないです)。

ワンナイトLOVEからの交際0日結婚❤︎

鳴宮鶉子
恋愛
ワンナイLOVEからの交際0日結婚。社長が相手で溺愛に翻弄されてます。

冷淡だった義兄に溺愛されて結婚するまでのお話

水瀬 立乃
恋愛
陽和(ひより)が16歳の時、シングルマザーの母親が玉の輿結婚をした。 相手の男性には陽和よりも6歳年上の兄・慶一(けいいち)と、3歳年下の妹・礼奈(れいな)がいた。 義理の兄妹との関係は良好だったが、事故で母親が他界すると2人に冷たく当たられるようになってしまう。 陽和は秘かに恋心を抱いていた慶一と関係を持つことになるが、彼は陽和に愛情がない様子で、彼女は叶わない初恋だと諦めていた。 しかしある日を境に素っ気なかった慶一の態度に変化が現れ始める。

ハイスぺ幼馴染の執着過剰愛~30までに相手がいなかったら、結婚しようと言ったから~

cheeery
恋愛
パイロットのエリート幼馴染とワケあって同棲することになった私。 同棲はかれこれもう7年目。 お互いにいい人がいたら解消しようと約束しているのだけど……。 合コンは撃沈。連絡さえ来ない始末。 焦るものの、幼なじみ隼人との生活は、なんの不満もなく……っというよりも、至極の生活だった。 何かあったら話も聞いてくれるし、なぐさめてくれる。 美味しい料理に、髪を乾かしてくれたり、買い物に連れ出してくれたり……しかも家賃はいらないと受け取ってもくれない。 私……こんなに甘えっぱなしでいいのかな? そしてわたしの30歳の誕生日。 「美羽、お誕生日おめでとう。結婚しようか」 「なに言ってるの?」 優しかったはずの隼人が豹変。 「30になってお互いに相手がいなかったら、結婚しようって美羽が言ったんだよね?」 彼の秘密を知ったら、もう逃げることは出来ない。 「絶対に逃がさないよ?」

処理中です...