一目惚れ婚~美人すぎる御曹司に溺愛されてます~

椿蛍

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21 私、結婚しました

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 冷たいと罵られ、戸惑う私を啓雅さんは追い詰めていく。
 すかさず、スマホを取り出し、啓雅さんは『清中繊維』の番号を見せた。

「今頃、INUIグループから契約を切られ、冷たい娘を持ったと、恨んでいることだろう。親子の縁を切られたくなかったら、俺に謝罪したほうがいいぞ。今までの非礼を詫びて、これからは俺の言う通りに生きるというなら、赦してやる」

 啓雅さんがそう言った瞬間、事務所のドアが開いた。
 入口に立っていた啓雅さんの背中にドアがぶつかり、前のめりになった。

「おい。入口をふさぐな……って、なんだ。乾井のバカ息子が来てたのか。こんなところに立って、なにをしてるんだ?」
「誰がバカ息子だ!」

 抗議した啓雅さんを無視して、事務所内に入ってきたのは理世だった。
 理世が現れたことで、ギスギスしていた空気が和らいだ。

理世りせ……」
琉永るな、どうした? なにがあった?」

 泣きそうな私の顔に気づいて、理世は啓雅さんをにらんだ。

「なにを言ったのか、だいたい想像がつく。早朝なら、俺が現れないと思って、ここへ来たか」
「そ、それは……」

 正解だったらしく、啓雅さんから、さっきまでの余裕がなくなった。
 理世はスーツ姿で、リセの時とは違う迫力がある。
 笑っただけで相手を圧倒するのは、理世だからこそできることだ。

「琉永、おはよう」
「お、おはよう?」

 ――さわやかな挨拶を交わしている場合じゃないと思うけど。
 
 その笑顔は、朝に相応しいさわやかな笑顔だった。
 さわやかな理世に『Fillフィル』のみんながざわめいた。

「いやいや、さすがに差別がすぎるだろ」
「二人の世界で、俺たちまで眼中にない。乾井さんが気の毒になっちゃうよ」

 私のそばに立った理世は、額に軽いキスを落とす。
 映画のワンシーンみたいに、さりげなくて、かっこいい。

「朝の挨拶」

 理世に見惚れている人たちと違って、啓雅さんは怒りだした。

「ふ、不貞か! 婚約者の不貞だぞ! 慰謝料を要求してやる!」
「なにを言ってるんだ? 琉永は俺の妻だ。朝のキスくらい当たり前だろ?」
「妻!?」
「私、理世と結婚しました」

 そういえば、父に連絡していなかったことを思い出した。
 引っ越しが済まないと、父と継母がアパートに怒鳴り込んでくるかもしれないと危惧したためだ。

「結婚したとは、どういうことだ?」
「籍をいれたので、私はもう清中じゃないんです。麻王琉永になりました」
「は?まさかお前が麻王グループの専務の妻ってことか?」
「え、ええ……まあ」

 ちゃんと婚姻届けを見ていなかったのと、理世が専務だと知らなかった私は、ちょっと気まずい。

「そんなおかしいことがあってたまるか!」
「おかしい? なにが?」

 怒りで顔を真っ赤にした啓雅さんに対して、理世は冷静だった。

「お見合いしただけで結婚? それも金をチラつかせ、脅迫まがいに結婚を要求していたところを俺は目撃している。レストランのスタッフが証人になってくれるだろう」
麻王あさおめ……」
「呼び捨て? ああ、もしかして、麻王グループにINUIグループが宣戦布告とか?」
「いや、それはっ……」

 さっきまで強気だった啓雅さんは、麻王グループの名前を聞いて勢いがなくなった。
 青い顔をして、動きも挙動不審になり、理世から視線を逸らし、私を見て言った。

「覚えてろ。俺に恥をかかせたこと、後悔させてやるからな!」

 啓雅さんはバッと背を向けて、逃げるようにして出ていった。

「うっわ、執念深そう」
「あの手の男はめんどうよ」

 紡生さんと恩未さんは、やれやれとため息をついた。

「琉永ちゃん。心配しなくていいと思うよ。大魔王がいるし」
「そうそう。味方でいる限りは、心強くて頼りになる旦那(大魔王)がね!」
「え? は、はあ……」

 ――なんだろう。この空気。

 みんなに『頑張って』というように、ぽんっと肩を叩かれたけど……?

「なんか腹立つな。まあ、いい。デザイン画はできているんだろうな?」

 啓雅さんのこともあったけど、理世はデザイン画を見るために、出勤前に寄ってくれたのだと思う。
 本気で理世は『Fillフィル』を『Loreleiローレライ』と並ぶブランドにしようとしている。
 それが伝わってきて、全員の顔つきが変わる。

「これです」

 恩未さんが集めたデザイン画を理世に手渡す。

「ここから数点、すぐに商品化する。INUIグループが既存の商品を模倣して大量生産してくるだろうから、こっちはそれより前に、新しい服を出す」
「けど、そんなお金はまだ……」

 恩未さんが言うと、理世が契約書を取り出した。

「麻王グループ傘下に入れば、麻王の力を使える」
「でも、理世。先輩たちは……」

 ぽんっと私の肩を紡生さんが叩いた。

「気にしないでいいよ。琉永ちゃん。今、『Fillフィル』は分岐点にいる。『Loreleiローレライ』のように世界的なブランドになるか、ファストファッションのINUIグループに負け、潰れるか」

 いつもはふざけている紡生さんが真面目な顔をしていた。
 順調に見えた『Fillフィル』だけど、トップに立つ紡生さんは、この先を考え、ずっと迷っていたのだと知った。
 目指す場所があっても、今の『Fillフィル』では難しいと悟って――

「『Fillフィル』らしい服を作り続けたいというのなら、道はたった一つ。世界に出るしかない」
「選ぶまでもないよ。私たちはもっと上にいく。このまま、おとなしく潰される気はないからね!」

 誰一人として、INUIグループに加わる気はなく、『Fillフィル』を守りたいと思う気持ちは、全員同じ。
 今、『Fillフィル』は今後を左右する大きな分岐点に立っている。
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