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7 エッフェル塔にかかる月
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――なんて幸せな夢を見てるんだろう。
ふわりと体が浮いて、リセに体を抱えられたけれど起き上がれない。
「自由に飲ませすぎたな」
男の人みたいに低い声だけど、リセの声。
ずっと聞いていたから、私にはわかる。
リセの甘い香りが心地よくて、ずっとその腕の中にいたいと思った。
私にとって女神同然の存在となったリセ。
綺麗で優しくて、男の人みたいにかっこいい。
ふふっと笑いながら転がった。
「んー……? 転がった?」
転がれるなんておかしい。
それに、私が宿泊するプチホテルの部屋となんだか違う気がする。
お酒が抜け切っていないせいで、思考が鈍っている。
――ここは天国かも。
ふかふかのベッドの上で、思い切り寝返りを打った。
「ふかふかベッド……最高です……」
――いつ、ホテルに帰ってきたんだっけ?
「私、どこにいるの?」
「やっと起きたか」
低い声に気づき、はっとして目を見開いた。
薄暗い中でもわかる広い部屋。
肌触りのいいシーツと寝心地のいいベッド。
――私が泊っているホテルの部屋じゃない!
それがわかったのは、ライトアップされたエッフェル塔が窓から見え、てっぺんの高い所に、月がかかっているのを目にしたから。
「月が見える……」
私が作った印として、服のタグにつけているロゴと同じ三日月。
憧れのリセと出会てた特別な夜と三日月なんて運命的――って違う!
「どういうこと? なにが起きたの?」
「それはこっちのセリフだ」
リセが不機嫌そうに、バスルームから出てきて、髪を拭いている。
「す、すみませんでした! 部屋を間違えました! い、いえ……。そうじゃなくて、間違えたのはホテル?」
「酒の量だろ」
「そう酒の量ですよねって、同じくらいリセも飲んでいたのに……」
頭の中は大混乱だった。
ベッドの上にいるし、枕を抱きかかえて、ちゃっかり占領してしまってる。
――まさか、リセが泊まってるホテルに来てしまった?
「なかなか重かった」
カフェでの出来事が夢ではなくて、現実のものだったんだとわかり、ホッとした。
でも、それと同時に青ざめた。
つまり、私はリセに自分の重い体を運ばせてしまったってことで……
リセが暗闇の中で、ため息をついたのがわかった。
「本当にすみません……。重かったですよね。リセがここまで私を運んでくれたんですか?」
「誰が運ぶんだよ。他に誰もいなかっただろ?」
バスルームから出てきたリセは、バスローブを羽織り、細身だけど鍛えられた体が見えた。
メイクを落とし、服を脱いで、アクセサリーがなくなると、女性らしいイメージは完全になくなった。
月を背に立つリセは、女性でも男性でもなく、月の化身のようで、人間ではないような気がした。
「まあ、俺はお前の婚約者らしいからな?」
「え? でも、あれは――」
リセが私に近寄り、ベッドに手をつく。
ぎしっとベッドが軋む音がして、息をのんだ。
――私ってば、おかしい。リセは男の人じゃないのに、どうして緊張しているの?
私の体を背後から抱きかかえ、背中のファスナーを歯で噛み、ゆっくりとおろす。
「リ、リセ? なにして……」
ただそれだけなのに、肌が粟立つ。
リセの両手が、私の体を逃さぬようにしている。
最後まで背中のファスナーを下ろすと、リセの唇が耳に触れた。
「あ、あの、唇が耳に……」
「嫌?」
耳に息がかかり、体から力が抜けていく。
「嫌じゃないですけど、でも、こんなの」
「じゃあ、いいね」
リセがくすりと笑う声すら、くすぐったい。
背後から抱き締められていて、気づいたけれど、女性してはがっしりした手と体をしている。
下着が落ち、夜の空気に肌が触れ、アルコールが抜けていなかった頭が、徐々にはっきりとしてきた。
わずかに抵抗しようとした私に、リセは気づいたのか、耳元で囁いた。
「こっち向いて。琉永」
振り返り、後ろを向くと唇を奪われた。
せっかく頭がはっきりしてきたのに、唐突なキスが、私の道徳観を吹き飛ばす。
「ん……、リ、リセ……」
舌で唇をなぞられると、こそばゆくて、なんだかもどかしい。
――女同士なのにキスしちゃってる?
体を押し倒されて、とっさにリセの体を手で押した。
――あれ? 女の人にしたら、なんだか筋肉質すぎない?
体に触れようとした私の手をリセがつかみ、指にキスをした。
熱い唇の感触と丁寧なキスに、恥ずかしくなって慌ててしまった。
「だ、駄目っ……手を離して……!」
「離してほしい? 本当に?」
私の手にキスをしながら、上目づかいで私を誘惑するリセに逆らえなくなる。
リセが綺麗すぎて、この誘惑に勝てる人なんて、きっといない。
涙目になる私の唇を再び奪い、今度は深くまで、キスをする。
「んぅ……」
リセの指がショーツにかかって――さすがに、この先は駄目!
だって、私たちは女同士なのにっ!
「リセ! 待ってください! 女同士でこんなことするなんてっ!」
私の声に、リセの手がピタリと止まった。
「は……? 女?」
「え?」
「なに言ってるんだ」
リセの不思議そうな声に、目を開けた。
細身だけと筋肉質な体が見え、その体つきはがっしりしていて、輪郭からして、女性には見えない。
バスローブがはだけて見えた体は……
「お、男っ!?」
――憧れのモデル、リセ。彼女は女性ではなく、男だった。
ふわりと体が浮いて、リセに体を抱えられたけれど起き上がれない。
「自由に飲ませすぎたな」
男の人みたいに低い声だけど、リセの声。
ずっと聞いていたから、私にはわかる。
リセの甘い香りが心地よくて、ずっとその腕の中にいたいと思った。
私にとって女神同然の存在となったリセ。
綺麗で優しくて、男の人みたいにかっこいい。
ふふっと笑いながら転がった。
「んー……? 転がった?」
転がれるなんておかしい。
それに、私が宿泊するプチホテルの部屋となんだか違う気がする。
お酒が抜け切っていないせいで、思考が鈍っている。
――ここは天国かも。
ふかふかのベッドの上で、思い切り寝返りを打った。
「ふかふかベッド……最高です……」
――いつ、ホテルに帰ってきたんだっけ?
「私、どこにいるの?」
「やっと起きたか」
低い声に気づき、はっとして目を見開いた。
薄暗い中でもわかる広い部屋。
肌触りのいいシーツと寝心地のいいベッド。
――私が泊っているホテルの部屋じゃない!
それがわかったのは、ライトアップされたエッフェル塔が窓から見え、てっぺんの高い所に、月がかかっているのを目にしたから。
「月が見える……」
私が作った印として、服のタグにつけているロゴと同じ三日月。
憧れのリセと出会てた特別な夜と三日月なんて運命的――って違う!
「どういうこと? なにが起きたの?」
「それはこっちのセリフだ」
リセが不機嫌そうに、バスルームから出てきて、髪を拭いている。
「す、すみませんでした! 部屋を間違えました! い、いえ……。そうじゃなくて、間違えたのはホテル?」
「酒の量だろ」
「そう酒の量ですよねって、同じくらいリセも飲んでいたのに……」
頭の中は大混乱だった。
ベッドの上にいるし、枕を抱きかかえて、ちゃっかり占領してしまってる。
――まさか、リセが泊まってるホテルに来てしまった?
「なかなか重かった」
カフェでの出来事が夢ではなくて、現実のものだったんだとわかり、ホッとした。
でも、それと同時に青ざめた。
つまり、私はリセに自分の重い体を運ばせてしまったってことで……
リセが暗闇の中で、ため息をついたのがわかった。
「本当にすみません……。重かったですよね。リセがここまで私を運んでくれたんですか?」
「誰が運ぶんだよ。他に誰もいなかっただろ?」
バスルームから出てきたリセは、バスローブを羽織り、細身だけど鍛えられた体が見えた。
メイクを落とし、服を脱いで、アクセサリーがなくなると、女性らしいイメージは完全になくなった。
月を背に立つリセは、女性でも男性でもなく、月の化身のようで、人間ではないような気がした。
「まあ、俺はお前の婚約者らしいからな?」
「え? でも、あれは――」
リセが私に近寄り、ベッドに手をつく。
ぎしっとベッドが軋む音がして、息をのんだ。
――私ってば、おかしい。リセは男の人じゃないのに、どうして緊張しているの?
私の体を背後から抱きかかえ、背中のファスナーを歯で噛み、ゆっくりとおろす。
「リ、リセ? なにして……」
ただそれだけなのに、肌が粟立つ。
リセの両手が、私の体を逃さぬようにしている。
最後まで背中のファスナーを下ろすと、リセの唇が耳に触れた。
「あ、あの、唇が耳に……」
「嫌?」
耳に息がかかり、体から力が抜けていく。
「嫌じゃないですけど、でも、こんなの」
「じゃあ、いいね」
リセがくすりと笑う声すら、くすぐったい。
背後から抱き締められていて、気づいたけれど、女性してはがっしりした手と体をしている。
下着が落ち、夜の空気に肌が触れ、アルコールが抜けていなかった頭が、徐々にはっきりとしてきた。
わずかに抵抗しようとした私に、リセは気づいたのか、耳元で囁いた。
「こっち向いて。琉永」
振り返り、後ろを向くと唇を奪われた。
せっかく頭がはっきりしてきたのに、唐突なキスが、私の道徳観を吹き飛ばす。
「ん……、リ、リセ……」
舌で唇をなぞられると、こそばゆくて、なんだかもどかしい。
――女同士なのにキスしちゃってる?
体を押し倒されて、とっさにリセの体を手で押した。
――あれ? 女の人にしたら、なんだか筋肉質すぎない?
体に触れようとした私の手をリセがつかみ、指にキスをした。
熱い唇の感触と丁寧なキスに、恥ずかしくなって慌ててしまった。
「だ、駄目っ……手を離して……!」
「離してほしい? 本当に?」
私の手にキスをしながら、上目づかいで私を誘惑するリセに逆らえなくなる。
リセが綺麗すぎて、この誘惑に勝てる人なんて、きっといない。
涙目になる私の唇を再び奪い、今度は深くまで、キスをする。
「んぅ……」
リセの指がショーツにかかって――さすがに、この先は駄目!
だって、私たちは女同士なのにっ!
「リセ! 待ってください! 女同士でこんなことするなんてっ!」
私の声に、リセの手がピタリと止まった。
「は……? 女?」
「え?」
「なに言ってるんだ」
リセの不思議そうな声に、目を開けた。
細身だけと筋肉質な体が見え、その体つきはがっしりしていて、輪郭からして、女性には見えない。
バスローブがはだけて見えた体は……
「お、男っ!?」
――憧れのモデル、リセ。彼女は女性ではなく、男だった。
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