私はお世話係じゃありません!【時任シリーズ②】

椿蛍

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33 party!!

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「皆で久しぶりに暴れるね」
真辺まなべさんが楽しそうに笑った。
夏向のそばの椅子に座らされ、ずっとフロアの様子を見ていたけれど、私としては何をやろうとしているか、さっぱりわからなかった。
暴れる?
何を始めようというんだろうか。
いつもは一番常識的な倉本くらもとさんまでもが止めない。
時任ときとう社長は目を細めて、口の端をあげた。
「忍び込んで顧客情報を盗み出すとはな」
「そこまで追いつめられちゃったかって思ったよねぇ」
宮北みやきたさんがウキウキとしていた。
それを冷ますように備中びちゅうさんがぽつりと言った。
「女を使うとか、俺達にはできない芸当げいとうだったけどな」
フロアがシーンと静まり返った。
「はい!そういうのやめてー!」
微妙な雰囲気を払拭ふっしょくするかのように真辺さんがパンパンっと手を叩いた。
夏向かなたはまったく気にせず、マイペースになにか作業をしていた。
「準備できたよ。ミツバ電機の時にバックドアを仕掛けておいたから、そこから侵入できる」
ミツバ電機が攻撃された時、逆に攻撃を仕掛けてたってこと?
どれだけ、好戦的なのよ……。
「さすが倉永くらなが先輩ですね。やることが用意周到できたない!」
「ほめられた気がしない」
夏向は不満そうな顔をしたけど、全員が動き始めた。
「はい、監視カメラをゲットー!画面に映すぞー」
宮北さんが笑いながら、監視カメラの映像を転送してくれた。
転送された監視カメラは社内の様子がよく見える―――佐藤君がいる。
これはもしや、諏訪部すわべさんの所の会社!?
やっと私にも理解できた。
つまり、時任の顧客情報を盗んだのが諏訪部さんのところでその仕返しをしているってこと?
夏向を見ると、スイッチが入っている状態らしく、凶悪な顔をし、まるで獲物を狙うかのようにその指は止まらない。
時任社長は別作業らしく、夏向に声をかけた。
「パスワードの解析ができたぞ。意外と簡単だったな」
「セキュリティ会社っていうわりにパスワードが単調だね」
真辺さんはパスワードを全員に見せた。
まるで、断罪する処刑人のような―――時任社長が悪人のように笑った。
「USBを差し込んだか。 残念だったな。それは夏向の自作ウィルスだ」
「自分の所の顧客情報が流出したから、焦ったんでしょうね」
備中さんがため息を吐いた。
「つくづく馬鹿なことをしたもんだ。アクセス権限があるとはいえ、コピーしようとしたらバレるに決まっている」
時任社長も冷ややかに監視カメラの映像を眺めていた。
「大きいデータは持ち出せないようになっているからな」
USBの中身がウィルスだとわかった諏訪部の内部は大混乱に陥っていた。
「サーバを完全に乗っ取ったよ。ビルの管理システムにパスワードいれたから、あとは各自楽しんで」
サーバを乗っとると、全員が好き勝手に暴れ始めた。
監視カメラの映像から、諏訪部さんの所の社員が慌てふためき、混乱しているのが見えた。
備中さんがお、と小さく声をあげた。
「おもしろいの見つけたぞ。これ、後から使えるかもしれないから、とっておくか」
「なにを見つけたんだ?」
時任社長に聞かれた備中さんは得意げに言った。
「アプリゲームのガチャの確率を操作するプログラムだ」
「うわー!そういうの俺、嫌い!」
真辺さんが一番怒っていた。
「それ、掲示板に投下したら、炎上間違いなしだねっ!なにかあったら、それを使おう!ぜったいに!」
「さすが、ガチャで数十万溶かした男は言うことが違う」
倉本さんが苦笑していた。
真辺さん……なにしてるの……。
「なあなあ。ホラー映画みたいにしていい?」
宮北さんがウキウキとして言った。
時任社長が頷いた。
「かっこよくやれよ」
大事なのはそこ!?止めるんじゃなく!?
宮北さんはビルの管理者の権限を手に入れると、電気を消していった。
「いいねーいいねー!」
ガチャの恨みを持つ真辺さんはノリノリだった。
社内を真っ暗にしてしまうと、時任社長が夏向に言った。
「好きにしていいぞ」
「うん」
にっこりと夏向は微笑んだ。
え?なにするの?と思っていると、夏向は電話を一つだけ通話可能にさせると、諏訪部にパソコンから電話をかけた。
「あ、知らない人がでた」
「それは諏訪部だ。夏向」
「そうか。佐藤をだして」
佐藤って佐藤君?
困惑気味の佐藤君が電話を受け取るのが見える。
「やあ」
『あ、あの、なんでしょうか』
怯えた様子の佐藤君の声に夏向は目を細めて、笑って言った。
「人の物に手を出したらどうなるかわかったよね?」
『は…、はい』
人の物?
「桜帆はもう人妻だからね――――」
こんな時に言うことじゃないでしょうがっっっ!!!
まだこだわってたわけ!?
しかも、諏訪部さんの社員全員が揃っているところで言う!?
あまりの恥ずかしさに夏向の頭を叩いた。
「何、バカなことを言ってんのっ!!」
「えー」
「電話を切りなさい!」
夏向は素直に電話を切った。
「怒らなくても」
「怒るわっ!!」
まったく、どこまでしつこいのよ。
「じゃあ。スマホにある佐藤の番号消して」
「わかったわよ。前みたいに消されたら困るし」
「それでもよかったけど、桜帆の手で消してほしかっただけ」
「よくないっ!!」
消すまで夏向は私を見ていた。
番号を消すと、よし!と満足そうにうなずいていた。
まさか、これだけのためにやったんじゃないでしょうね!?
さすがにそれはないわよね。
そう自分に言い聞かせたけれど、確信を持つことはできなかった。
「それでウィルスはどうなるんだ?」
「仕事を終えたら、消えるようになってるよ。後はこっちが侵入した形跡は全て消しておく」
「明日は諏訪部達、全員で記者会見だな」
時任社長は立ち上がり、もう興味を失ったとばかりに帰って行った。
「さて、帰るか」
「お疲れさまでしたー。帰ろうっと」
「はー、帰って新しいパソコン組み立てるかな」
「猫の動画見よう」
夏向だけが自由気ままでいつも迷惑をかけているのかと思っていたけれど――――時任は全員がマイペースで自由な人達だった。

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