私はお世話係じゃありません!【時任シリーズ②】

椿蛍

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41 丘の上から

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また春がきて、桜の季節になった。
カモメの家の大きな桜の木には薄くピンク色になった白い花が満開となり、風が吹くたびに揺れていた。
桜の色とウエディングドレスがよく合っていて、木の下でみんなで集合写真を撮った。
桜帆さほちゃん、きれーい!」
「素敵だねぇー!」
小さい子達もおめかしをして、髪に白いリボンをつけていた。
女の子達が持つ木のつるで編んだ手提げカゴにはピンクや赤、白の花びらが入っている。
立食式のパーティーにするために芝生の部分には広いテーブルを置いて、ケータリングサービスに頼んだ飲み物や食事が用意され、風船や花でカモメの家が飾られていた。
カモメの家の飾りは子供達がしてくれた。
土地を手に入れた私達はカモメの家の古い部分をリフォームした。
外壁も塗り直し、白と水色の明るい色の建物が坂の下からでもはっきり見えた。
そして、リフォームがすべて終わった頃、私と夏向かなたはカモメの家で式を挙げることにした。
夏向もそれを了承してくれたけど―――
「桜帆、綺麗だね」
嬉しそうな夏向に周りの子達が夏向の背中や肩をぽんっと叩いて言った。
「夏向はいつもよりマシだね」
「ほんとだね」
「桜帆ちゃん、夏向でよかったの?」
「そうだよー」
夏向はちゃんとした白のタキシードなのにそんなことを言われて、イラッとしていた。
「ムカつく」
倉永くらなが先輩、大人げないですよ!子供につかみかかろうとしないでくださいよ」
カメラを持った真辺まなべさんが止めてくれたけど、他の人達は苦笑してみていた。
子供達にからかわれて、ずっとこの調子だった。
すごく大きなウエディングケーキが運ばれてきて、驚いていると、時任ときとう社長がドヤ顔をしてケーキ屋さんと一緒にトラックから降りてくるのが見えた。
広いテーブルの上に一段ずつ並べだし、大食い選手権でも始めるかのような勢いに子供達だけじゃなく先生達までその巨大なケーキを食い入るように見ていた。
「早く食べたーい!」
「ケーキカットの後だよ」
「皆、並んで」
先生が呼ぶと子供達は走って行って、一列に並んだ。
フラワーシャワーに包まれ、青い空には風船が一斉に放たれた。
「おおー!」
「計算は完璧だね」
夏向は風船係をしていた宮北みやきたさんを褒めた。
いや、見るとこ風船じゃなくてそこなの?と思いながら、青い空に色とりどりの風船があがっていくのを眺めた。
「チューしないの?」
子供達に聞かれて、夏向はふっと悪い笑みを浮かべて言った。
「いつもしてるから」
「夏向!!」
「…怒らなくても」
「子供になんてことを言うのよ!」
は、恥ずかしすぎる。
そう思っていると、夏向の手がベールをどかして唇を奪った。
「おおっー!!」
拍手が起こると、夏向はにっこりほほ笑んだ。
「桜帆は恥ずかしがり屋で困るよね」
「み、みんなの前で」
「大丈夫。今日は結婚式だから」
そうかなぁ。
「桜帆、ほら、ケーキカットしよう」
「うん」
「早くケーキ食べたい」
巨大ケーキを前にやる気満タンの夏向にどれだけ食べるの!?と思わずにいられなかったのだった。


◇ ◇ ◇ ◇ ◇


結婚式も終わり、さっきまでの喧噪が嘘のようだった。
子供達は午後のお昼寝を初め、時任の人達は後片付けをしてくれて、帰って行った。
私がカモメの家で結婚式をしたいと言ったら、みんなが協力してくれて、本当にありがたかった。
もちろん、業者の人もいたけれど、こんなたくさんの人にお祝いしてもらえるとは思いも寄らなかったから、嬉しくて楽しかった。
そして、私は誰もいなくなった桜の木の下に一人立っていた。
私が捨てられていた場所、そして夏向と結婚式をあげた場所。
そこから、海を眺めると白い船が見えた。
「桜帆」
夏向が私の名前を呼ぶ。
「家に帰ろう」
私にはもう家族がいる。
夏向と―――それから
「夏向、私ね―――」
また桜の木の下から私は新しい一歩を踏み出す。
今度は私の家族と一緒に。
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