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29 何もなくとも【壱都】
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俺と朱加里が婚約したと広まるのはあっという間だった。
「ご婚約おめでとうございます」
最近、どこに行っても言われる言葉だったが、煩わしいとは思わなかった。
むしろ、何度でもお祝いの言葉を聞いてもいいくらいだ。
「来年にはご結婚なさるとか。亡き井垣会長もさぞかし、お喜びでしょう」
「そうだといいのですが。まだまだ頼りないと思われているかもしれませんね」
「ご冗談を。壱都さんが井垣グループの社長になられて、これで井垣も安泰だと皆さんおっしゃってますよ」
「奥様となられる井垣のお嬢様にもぜひお会いしたかったですね」
「次回は必ず」
にっこり微笑み、シャンパングラスを軽くあげた。
取引先のパーティーに招待され、朱加里も一緒にと誘ったのだが、先に予定が入っていた。
井垣会長と親しくしていた方々との会食らしい。
名前を聞くと料亭の女将やお茶の先生など、その業界では名前が知られた有名な方々ばかりだった。
朱加里が大学生の頃から交流をしているそうだが、井垣会長は横の繋がりも少しずつ作ってきたのだ。
朱加里の助けとなるように。
「……気づいていないんだろうな」
朱加里は肩書で付き合うようなタイプではない。
だから、こっちも白河家の三男としては見られてなかったように思える。
むしろ第一印象は悪かったような気がする。
俺に対して冷たかった。
それが、今では心を開いてくれている。
信頼されるのが、こんな嬉しいことだと思わなかった。
「それで、壱都さん。井垣のお嬢様はご存知なのですか?井垣家が売りに出されていることを」
「知らないでしょうね」
遺産相続争いをしていることは知られており、会長を貶めたことも白河家を通して広まっていた。
おかげであの三人は誰からも相手にされない。
新しい仕事探しどころではないだろう。
友人達も離れていったと聞いている。
「とんでもないですね。井垣会長の遺言を曲げて」
「妻、いえ、まだ妻ではありませんが、朱加里も心を痛めています。お金より、井垣会長の名誉を傷つけられたことに対してですが」
「そうでしょうね。たしかに会長が体調を崩していたとは聞いてましたが、認知症だったとは誰も聞いてませんでしたよ」
朱加里に対するネガティブな噂も消してやった。
向こうはどう出てくるか見物だな―――そう思った瞬間、ざわっとパーティー会場にひときわ大きなざわめきが起きた。
紗耶香さんが主催者の社長令嬢に詰め寄っているのが見えた。
「私に招待状を送らないってどういうことよ!」
「お願い。紗耶香。騒がないでよ」
よくこれたなと思ったが、どうやら主催者である社長の娘と友人らしい。
友人は迷惑そうな顔をしていた。
「壱都さん。申し訳ありません。気を悪くされたでしょう」
社長が謝罪に来たが、俺はむしろ大歓迎だ。
自分から評判を落としに来ているんだからな。
「せっかくの祝いの席で雰囲気が悪くなってお困りでしょう。俺がいてはまた騒ぐかもしれない。これで失礼させていただきます」
「いえいえ!少々、お待ちください!」
「まったく、面の皮が厚いことだ!」
「よく顔が出せるな」
周りの声に気づいたのか、紗耶香さんは顔を赤くして泣き出した。
泣けば、皆が自分に同情すると思っているのだろう。
だが、すでに悪評が知れ渡った状況では誰も味方をする者はいない。
それなのに―――
「壱都さん!」
何を勘違いしたのか、俺を見つけると駆け寄ってきた。
警備員が止めようとしたのにも関わらず、それを乱暴に振り切った。
「壱都さんにお会いしたくて、きたんです。朱加里と婚約したって聞いて。私が婚約者だったのにひどいわ!」
遠くに見える紗耶香さんの友人は顔を青くさせて震えていた。
可哀想に―――と口の端をあげた。
「俺の婚約者は初めから朱加里です。喪があければ、すぐにでも入籍しますよ」
「朱加里と結婚なんて、ありえないわ!壱都さんに似合わない!」
「どちらが相応しいか、周りの皆さんのほうが、よほどご存知のようだ」
紗耶香さんはハッとして、周囲を見回した。
冷たい視線が注がれていることに気付き、苛立ちからか、周囲を睨み付けた。
もう沙耶香さんは自分をうまく取り繕えていない。
「今日は紗耶香さんが主役のパーティーではありません。場を壊すような真似はしたくはない」
「壱都さんは井垣の財産が欲しくないの?こっちは朱加里に財産を渡すつもりはないのよ!白河家の人間なら、なんのメリットもない、なにも持っていない人間なんていらないでしょ!」
明け透けなものの言い方に周囲にいた人々が眉をひそめたことに気づきもしない。
「目に見えるものがすべてじゃない。朱加里は目に見えないものを持っている」
紗耶香さんの顔が醜く歪んだ。
「たとえ、井垣の財産が手に入らなくても俺は彼女を愛している」
「そう、わかったわ」
紗耶香さんはバッグに手を入れると、血走った目をして笑った。
「なら、朱加里に渡さないようにするだけよ」
銀色の刃が閃いたのを目の端で捉え、体を横にそらした。
そばで控えていた樫村が紗耶香さんの腕を絡めとり、体を床に叩きつける。
「壱都さん!お怪我は?」
「腕をかすっただけだ」
会場が騒然とし、床に押し付けられた紗耶香さんは悔しそうに唸っていた。
「警察を呼べ!」
警察と聞こえると紗耶香さんは身をびくりと震わせた。
「大変なことになりましたね」
俺は冷静だった。
わずかににじんだ血をハンカチで押さえ、紗耶香さんのそばにしゃがんだ。
そして、誰にも聞こえないように声をかけた。
「さようなら。紗耶香さん。しっかり罪を償ってください。そして二度と朱加里の前に現れないように。二度目はこんなものではすませませんよ」
やっと俺の罠だと気づいたらしい。
友人のパーティーがあることを紗耶香さんが知るように仕向けたのは俺だ。
自分だけが招待されてないことを知れば、紗耶香さんは冷静ではいられないだろうということもわかっていた。
なにか仕掛けてくる。
それさえ、わかっていれば、なんとでもなる。
紗耶香さんの瞳は恐怖の色を浮かべていた。
「あなたは悪魔なの?」
その言葉を最後に紗耶香さんは警備員に連行されていった。
「失礼な。たまたま紗耶香さんのバッグに手頃なナイフが入っていただけだというのに」
使うか、使わないかは本人次第。
「思った通りでしたね」
樫村が呆れたように紗耶香さんが去ったほうを眺めていた。
「ごくろうだったな」
「そうでもないですよ。感情的になっている人間の隙をつくくらいなんでもありません」
紗耶香さんのせいで、パーティーは静まり返り、お祝いムードではなくなってしまった。
気まずい空気が流れていた。
だが―――遅れてやってきた二人が場の雰囲気を一変させた。
「まあ!白河様っ!」
「克麻さんと直将さんよ」
「白河家三兄弟がそろうなんて、素晴らしい眺めね」
「お話したいわ」
「声をかけてもいいのかしら」
主に女性達が一斉に色めき立った。
俺の兄二人は揃いも揃って、遅刻してきたわけだ。
それもタイミングよく。
俺はにっこりと微笑んだ。
兄二人は俺を見つけると、近寄ってきた。
「壱都。パーティーの開始時間をわざと遅らせて伝えたな?」
「俺達を利用するなんてとんでもない奴だ。これだから、末っ子は要領がよくて嫌なんだよ」
「いやだな。誤解ですよ」
「一度、刺された方がお前のためだったかもな」
「お前、絶対にいい死に方はできないタイプだぞ」
目の前に怪我をした(かすり傷だが)弟がいるというのに労りの言葉もない兄達。
ナイフを持った紗耶香さんより、白河家の人間の方がよっぽど悪人なんだよなと、思って俺は満足げに微笑んだのだった。
「ご婚約おめでとうございます」
最近、どこに行っても言われる言葉だったが、煩わしいとは思わなかった。
むしろ、何度でもお祝いの言葉を聞いてもいいくらいだ。
「来年にはご結婚なさるとか。亡き井垣会長もさぞかし、お喜びでしょう」
「そうだといいのですが。まだまだ頼りないと思われているかもしれませんね」
「ご冗談を。壱都さんが井垣グループの社長になられて、これで井垣も安泰だと皆さんおっしゃってますよ」
「奥様となられる井垣のお嬢様にもぜひお会いしたかったですね」
「次回は必ず」
にっこり微笑み、シャンパングラスを軽くあげた。
取引先のパーティーに招待され、朱加里も一緒にと誘ったのだが、先に予定が入っていた。
井垣会長と親しくしていた方々との会食らしい。
名前を聞くと料亭の女将やお茶の先生など、その業界では名前が知られた有名な方々ばかりだった。
朱加里が大学生の頃から交流をしているそうだが、井垣会長は横の繋がりも少しずつ作ってきたのだ。
朱加里の助けとなるように。
「……気づいていないんだろうな」
朱加里は肩書で付き合うようなタイプではない。
だから、こっちも白河家の三男としては見られてなかったように思える。
むしろ第一印象は悪かったような気がする。
俺に対して冷たかった。
それが、今では心を開いてくれている。
信頼されるのが、こんな嬉しいことだと思わなかった。
「それで、壱都さん。井垣のお嬢様はご存知なのですか?井垣家が売りに出されていることを」
「知らないでしょうね」
遺産相続争いをしていることは知られており、会長を貶めたことも白河家を通して広まっていた。
おかげであの三人は誰からも相手にされない。
新しい仕事探しどころではないだろう。
友人達も離れていったと聞いている。
「とんでもないですね。井垣会長の遺言を曲げて」
「妻、いえ、まだ妻ではありませんが、朱加里も心を痛めています。お金より、井垣会長の名誉を傷つけられたことに対してですが」
「そうでしょうね。たしかに会長が体調を崩していたとは聞いてましたが、認知症だったとは誰も聞いてませんでしたよ」
朱加里に対するネガティブな噂も消してやった。
向こうはどう出てくるか見物だな―――そう思った瞬間、ざわっとパーティー会場にひときわ大きなざわめきが起きた。
紗耶香さんが主催者の社長令嬢に詰め寄っているのが見えた。
「私に招待状を送らないってどういうことよ!」
「お願い。紗耶香。騒がないでよ」
よくこれたなと思ったが、どうやら主催者である社長の娘と友人らしい。
友人は迷惑そうな顔をしていた。
「壱都さん。申し訳ありません。気を悪くされたでしょう」
社長が謝罪に来たが、俺はむしろ大歓迎だ。
自分から評判を落としに来ているんだからな。
「せっかくの祝いの席で雰囲気が悪くなってお困りでしょう。俺がいてはまた騒ぐかもしれない。これで失礼させていただきます」
「いえいえ!少々、お待ちください!」
「まったく、面の皮が厚いことだ!」
「よく顔が出せるな」
周りの声に気づいたのか、紗耶香さんは顔を赤くして泣き出した。
泣けば、皆が自分に同情すると思っているのだろう。
だが、すでに悪評が知れ渡った状況では誰も味方をする者はいない。
それなのに―――
「壱都さん!」
何を勘違いしたのか、俺を見つけると駆け寄ってきた。
警備員が止めようとしたのにも関わらず、それを乱暴に振り切った。
「壱都さんにお会いしたくて、きたんです。朱加里と婚約したって聞いて。私が婚約者だったのにひどいわ!」
遠くに見える紗耶香さんの友人は顔を青くさせて震えていた。
可哀想に―――と口の端をあげた。
「俺の婚約者は初めから朱加里です。喪があければ、すぐにでも入籍しますよ」
「朱加里と結婚なんて、ありえないわ!壱都さんに似合わない!」
「どちらが相応しいか、周りの皆さんのほうが、よほどご存知のようだ」
紗耶香さんはハッとして、周囲を見回した。
冷たい視線が注がれていることに気付き、苛立ちからか、周囲を睨み付けた。
もう沙耶香さんは自分をうまく取り繕えていない。
「今日は紗耶香さんが主役のパーティーではありません。場を壊すような真似はしたくはない」
「壱都さんは井垣の財産が欲しくないの?こっちは朱加里に財産を渡すつもりはないのよ!白河家の人間なら、なんのメリットもない、なにも持っていない人間なんていらないでしょ!」
明け透けなものの言い方に周囲にいた人々が眉をひそめたことに気づきもしない。
「目に見えるものがすべてじゃない。朱加里は目に見えないものを持っている」
紗耶香さんの顔が醜く歪んだ。
「たとえ、井垣の財産が手に入らなくても俺は彼女を愛している」
「そう、わかったわ」
紗耶香さんはバッグに手を入れると、血走った目をして笑った。
「なら、朱加里に渡さないようにするだけよ」
銀色の刃が閃いたのを目の端で捉え、体を横にそらした。
そばで控えていた樫村が紗耶香さんの腕を絡めとり、体を床に叩きつける。
「壱都さん!お怪我は?」
「腕をかすっただけだ」
会場が騒然とし、床に押し付けられた紗耶香さんは悔しそうに唸っていた。
「警察を呼べ!」
警察と聞こえると紗耶香さんは身をびくりと震わせた。
「大変なことになりましたね」
俺は冷静だった。
わずかににじんだ血をハンカチで押さえ、紗耶香さんのそばにしゃがんだ。
そして、誰にも聞こえないように声をかけた。
「さようなら。紗耶香さん。しっかり罪を償ってください。そして二度と朱加里の前に現れないように。二度目はこんなものではすませませんよ」
やっと俺の罠だと気づいたらしい。
友人のパーティーがあることを紗耶香さんが知るように仕向けたのは俺だ。
自分だけが招待されてないことを知れば、紗耶香さんは冷静ではいられないだろうということもわかっていた。
なにか仕掛けてくる。
それさえ、わかっていれば、なんとでもなる。
紗耶香さんの瞳は恐怖の色を浮かべていた。
「あなたは悪魔なの?」
その言葉を最後に紗耶香さんは警備員に連行されていった。
「失礼な。たまたま紗耶香さんのバッグに手頃なナイフが入っていただけだというのに」
使うか、使わないかは本人次第。
「思った通りでしたね」
樫村が呆れたように紗耶香さんが去ったほうを眺めていた。
「ごくろうだったな」
「そうでもないですよ。感情的になっている人間の隙をつくくらいなんでもありません」
紗耶香さんのせいで、パーティーは静まり返り、お祝いムードではなくなってしまった。
気まずい空気が流れていた。
だが―――遅れてやってきた二人が場の雰囲気を一変させた。
「まあ!白河様っ!」
「克麻さんと直将さんよ」
「白河家三兄弟がそろうなんて、素晴らしい眺めね」
「お話したいわ」
「声をかけてもいいのかしら」
主に女性達が一斉に色めき立った。
俺の兄二人は揃いも揃って、遅刻してきたわけだ。
それもタイミングよく。
俺はにっこりと微笑んだ。
兄二人は俺を見つけると、近寄ってきた。
「壱都。パーティーの開始時間をわざと遅らせて伝えたな?」
「俺達を利用するなんてとんでもない奴だ。これだから、末っ子は要領がよくて嫌なんだよ」
「いやだな。誤解ですよ」
「一度、刺された方がお前のためだったかもな」
「お前、絶対にいい死に方はできないタイプだぞ」
目の前に怪我をした(かすり傷だが)弟がいるというのに労りの言葉もない兄達。
ナイフを持った紗耶香さんより、白河家の人間の方がよっぽど悪人なんだよなと、思って俺は満足げに微笑んだのだった。
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