34 / 59
第一章
34 祭りのあと
しおりを挟む
波乱と混乱の体育祭が終わったけれど、新聞や週刊誌はいまだマリアステラ学園のスキャンダルを取り上げていて、騒ぎが収まるどころか豹路家と一乗寺財閥にマスコミが押し寄せていて、今回の虐めの真相を追及されているらしい。
『マリアステラ学園内部で虐めか!?』
『一乗寺財閥の隠された闇の手口』
『コネで一部女子生徒を優遇!』
『名門豹路家の権威失墜!』
―――など激しく叩かれることとなった。
綾子さん達は退学をなんとか免れたものの在学中はBクラス扱いの処罰を受けた。
「これで一乗寺財閥も豹路家もしばらくはおとなしくなるわね」
希和はふんっと鼻先で笑った。
そして、眼鏡をかけ直す。
視力がいい希和の眼鏡は度が入っていない。
眼鏡をかけているのはフレーム部分に隠しカメラを仕込んであるためだ。
「おとなしくなればいいけど」
「珍しいわね。佳穂が不安になるなんて」
「私がBクラスになった時はもう失うものはないって思ったんだよね……。だから、同じように綾子さん達がそう考えないかなって」
「そうね。用心するに越したことはないわ」
「うん」
「一応、今回の体育祭のことも報告書を作成して外部に報告してあるわ」
希和は仕事が早い。
コンビニ行った時に連絡をとれただけの私と大違い。
SSクラスになった希和は両親とメールで連絡をとることを許可してもらった。
それにより、外部へ自由にデータを送れるようになったのだ。
今までの全ての映像データはすでに外部に持ちだされている。
外では一乗寺、豹路を初めとする獅央家に従属する者達の不正を暴き始めていた。
獅央家も心穏やかではいられないはずだ。
「希和。そろそろ大ボスが出てくるかもね」
獅央家の総裁である高也のお父さん。
女子高校生相手にここまでやられて黙っているタイプとは思えない。
「佳穂。わかっていると思うけど、生半可な相手じゃないわよ」
「うん」
「なんの話だ?」
「大ボスってゲーム?」
高也と鷹我さんが一緒に現れ、夕食のステーキをぼとっと皿の上に落としてしまった。
「佳穂。肉ばかり食ってないで野菜もちゃんと食えよ」
「わ、わかってるよ!」
「ゲームしたりマンガばかり読んでゴロゴロしているんじゃないだろうな?」
「違うよっ! 小学生の頃の私と一緒にしないでよねー! もー、高也って口うるさいお父さんみたい」
「誰がお父さんだ!」
なんとか誤魔化せたけど、高也はお父さん呼びが気に入らなかったらしく、軽くにらんできた。
ふ、ふーん!
怖くないし!
「キングがお父さんになっちゃうのは佳穂ちゃんに色気がないせいだよね」
「えっ!? 私に色気がない!?」
鷹我さんの聞き捨てならないセリフにステーキを食べていた手を止めた。
「佳穂。なに驚いてるのよ」
「希和は俺が虜だけあって、色気があるよ」
古柴君が夕食の注文を終えて希和の隣に座った。
あの体育祭以来、古柴君は周りから一目置かれるようになった。
クイーンに一撃を与え、(ただしくは二か所)無傷で生還したのは獣人達の中では初めてだったらしい。
高也達がどれだけ強いかわかるエピソードなんだけど、古柴君という小さな存在が奮闘したのが勇気を与えたとかなんとか―――古柴君はいい。
私の色気ゼロ問題だよ。
「高也。ちょっと座って」
「ああ」
素直に高也が座った。
「なんだ。佳穂からキスでもしてくれるのか」
「す、す、するわけないでしょ!」
顔を赤くして怒る私にふっと高也が笑った。
「佳穂のことを好きになるのは俺だけでいい」
「……うん」
その一言で私の色気ゼロ問題はどうでもよくなった。
安心したところでステーキをもぐもぐと食べ始めると高也が私に言った。
「おい。それでなんだったんだ」
「あっ!? そうだった。来週から高也は修学旅行だよね?」
「行くつもりはないけどな」
「駄目だよ。学校の行事なんだし、学生時代のいい思い出だよ。枕投げとか恋バナとかしちゃうでしょ?」
高也が注文した夕食が運ばれてきて、私がなにも言わないのに自分の皿から私の皿にデザートのイチゴをころんと入れてくれた。
なんでわかるんだろう。
イチゴが好きだって……って違う!
そうじゃない!
「修学旅行といえば、友達との思い出作りだよっ!」
「友達ねぇ……」
希和が鷹我さんを見る。
そして、ここにはいない豹路さんを思い浮かべた。
殺伐とした空気で同じ部屋で安眠は難しそうな気がする。
「俺がいなくなると学内の秩序が乱れる。特に今は佳穂になにか危険が及ぶかもしれないからな」
「大丈夫だって! 古柴君もいるし、希和もいるし。部屋だってSクラスのセキュリティ万全な場所にあるんだから心配しないで行ってきて」
やっぱりそうだった。
高也が修学旅行に行かないって言い出すのは私が原因じゃないかって疑っていた。
「わかった。けど、行く前にマーキングはするからな」
「えっ……!」
「色気がないと思ってるのは俺以外の男だけだ」
高也が悪い顔をして私に微笑んだ。
誰に言われなくても高也がそう言ってくれるだけでいい。
鷹我さんに勝ち誇った顔をすると笑われてしまった。
もしかして、こうなることは想定済み!?
修学旅行前に高也が私といたいと思っていることを鷹我さんが察していたのかもしれない。
鷹我さんは何も言わずに少し離れた席に移動して夕食を注文していた。
羽竜さんや大熊さん、狼谷さんもカフェテリアにやってきたけれど、体育祭からずっと豹路さんだけカフェテリアに姿を見せず、そのことを気にかけていたものの何も聞かずにいたことは失敗だったと後から思ったのだった―――
『マリアステラ学園内部で虐めか!?』
『一乗寺財閥の隠された闇の手口』
『コネで一部女子生徒を優遇!』
『名門豹路家の権威失墜!』
―――など激しく叩かれることとなった。
綾子さん達は退学をなんとか免れたものの在学中はBクラス扱いの処罰を受けた。
「これで一乗寺財閥も豹路家もしばらくはおとなしくなるわね」
希和はふんっと鼻先で笑った。
そして、眼鏡をかけ直す。
視力がいい希和の眼鏡は度が入っていない。
眼鏡をかけているのはフレーム部分に隠しカメラを仕込んであるためだ。
「おとなしくなればいいけど」
「珍しいわね。佳穂が不安になるなんて」
「私がBクラスになった時はもう失うものはないって思ったんだよね……。だから、同じように綾子さん達がそう考えないかなって」
「そうね。用心するに越したことはないわ」
「うん」
「一応、今回の体育祭のことも報告書を作成して外部に報告してあるわ」
希和は仕事が早い。
コンビニ行った時に連絡をとれただけの私と大違い。
SSクラスになった希和は両親とメールで連絡をとることを許可してもらった。
それにより、外部へ自由にデータを送れるようになったのだ。
今までの全ての映像データはすでに外部に持ちだされている。
外では一乗寺、豹路を初めとする獅央家に従属する者達の不正を暴き始めていた。
獅央家も心穏やかではいられないはずだ。
「希和。そろそろ大ボスが出てくるかもね」
獅央家の総裁である高也のお父さん。
女子高校生相手にここまでやられて黙っているタイプとは思えない。
「佳穂。わかっていると思うけど、生半可な相手じゃないわよ」
「うん」
「なんの話だ?」
「大ボスってゲーム?」
高也と鷹我さんが一緒に現れ、夕食のステーキをぼとっと皿の上に落としてしまった。
「佳穂。肉ばかり食ってないで野菜もちゃんと食えよ」
「わ、わかってるよ!」
「ゲームしたりマンガばかり読んでゴロゴロしているんじゃないだろうな?」
「違うよっ! 小学生の頃の私と一緒にしないでよねー! もー、高也って口うるさいお父さんみたい」
「誰がお父さんだ!」
なんとか誤魔化せたけど、高也はお父さん呼びが気に入らなかったらしく、軽くにらんできた。
ふ、ふーん!
怖くないし!
「キングがお父さんになっちゃうのは佳穂ちゃんに色気がないせいだよね」
「えっ!? 私に色気がない!?」
鷹我さんの聞き捨てならないセリフにステーキを食べていた手を止めた。
「佳穂。なに驚いてるのよ」
「希和は俺が虜だけあって、色気があるよ」
古柴君が夕食の注文を終えて希和の隣に座った。
あの体育祭以来、古柴君は周りから一目置かれるようになった。
クイーンに一撃を与え、(ただしくは二か所)無傷で生還したのは獣人達の中では初めてだったらしい。
高也達がどれだけ強いかわかるエピソードなんだけど、古柴君という小さな存在が奮闘したのが勇気を与えたとかなんとか―――古柴君はいい。
私の色気ゼロ問題だよ。
「高也。ちょっと座って」
「ああ」
素直に高也が座った。
「なんだ。佳穂からキスでもしてくれるのか」
「す、す、するわけないでしょ!」
顔を赤くして怒る私にふっと高也が笑った。
「佳穂のことを好きになるのは俺だけでいい」
「……うん」
その一言で私の色気ゼロ問題はどうでもよくなった。
安心したところでステーキをもぐもぐと食べ始めると高也が私に言った。
「おい。それでなんだったんだ」
「あっ!? そうだった。来週から高也は修学旅行だよね?」
「行くつもりはないけどな」
「駄目だよ。学校の行事なんだし、学生時代のいい思い出だよ。枕投げとか恋バナとかしちゃうでしょ?」
高也が注文した夕食が運ばれてきて、私がなにも言わないのに自分の皿から私の皿にデザートのイチゴをころんと入れてくれた。
なんでわかるんだろう。
イチゴが好きだって……って違う!
そうじゃない!
「修学旅行といえば、友達との思い出作りだよっ!」
「友達ねぇ……」
希和が鷹我さんを見る。
そして、ここにはいない豹路さんを思い浮かべた。
殺伐とした空気で同じ部屋で安眠は難しそうな気がする。
「俺がいなくなると学内の秩序が乱れる。特に今は佳穂になにか危険が及ぶかもしれないからな」
「大丈夫だって! 古柴君もいるし、希和もいるし。部屋だってSクラスのセキュリティ万全な場所にあるんだから心配しないで行ってきて」
やっぱりそうだった。
高也が修学旅行に行かないって言い出すのは私が原因じゃないかって疑っていた。
「わかった。けど、行く前にマーキングはするからな」
「えっ……!」
「色気がないと思ってるのは俺以外の男だけだ」
高也が悪い顔をして私に微笑んだ。
誰に言われなくても高也がそう言ってくれるだけでいい。
鷹我さんに勝ち誇った顔をすると笑われてしまった。
もしかして、こうなることは想定済み!?
修学旅行前に高也が私といたいと思っていることを鷹我さんが察していたのかもしれない。
鷹我さんは何も言わずに少し離れた席に移動して夕食を注文していた。
羽竜さんや大熊さん、狼谷さんもカフェテリアにやってきたけれど、体育祭からずっと豹路さんだけカフェテリアに姿を見せず、そのことを気にかけていたものの何も聞かずにいたことは失敗だったと後から思ったのだった―――
25
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。
MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。
JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――
のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」
高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。
そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。
でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。
昼間は生徒会長、夜は…ご主人様?
しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。
「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」
手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。
なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。
怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。
だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって――
「…ほんとは、ずっと前から、私…」
ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。
恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。
俺を振ったはずの腐れ縁幼馴染が、俺に告白してきました。
true177
恋愛
一年前、伊藤 健介(いとう けんすけ)は幼馴染の多田 悠奈(ただ ゆうな)に振られた。それも、心無い手紙を下駄箱に入れられて。
それ以来悠奈を避けるようになっていた健介だが、二年生に進級した春になって悠奈がいきなり告白を仕掛けてきた。
これはハニートラップか、一年前の出来事を忘れてしまっているのか……。ともかく、健介は断った。
日常が一変したのは、それからである。やたらと悠奈が絡んでくるようになったのだ。
彼女の狙いは、いったい何なのだろうか……。
※小説家になろう、ハーメルンにも同一作品を投稿しています。
※内部進行完結済みです。毎日連載です。
娼館で元夫と再会しました
無味無臭(不定期更新)
恋愛
公爵家に嫁いですぐ、寡黙な夫と厳格な義父母との関係に悩みホームシックにもなった私は、ついに耐えきれず離縁状を机に置いて嫁ぎ先から逃げ出した。
しかし実家に帰っても、そこに私の居場所はない。
連れ戻されてしまうと危惧した私は、自らの体を売って生計を立てることにした。
「シーク様…」
どうして貴方がここに?
元夫と娼館で再会してしまうなんて、なんという不運なの!
【R18】幼馴染がイケメン過ぎる
ケセラセラ
恋愛
双子の兄弟、陽介と宗介は一卵性の双子でイケメンのお隣さん一つ上。真斗もお隣さんの同級生でイケメン。
幼稚園の頃からずっと仲良しで4人で遊んでいたけど、大学生にもなり他にもお友達や彼氏が欲しいと思うようになった主人公の吉本 華。
幼馴染の関係は壊したくないのに、3人はそうは思ってないようで。
関係が変わる時、歯車が大きく動き出す。
愛された側妃と、愛されなかった正妃
編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。
夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。
連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。
正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。
※カクヨムさんにも掲載中
※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります
※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる