ネトゲ女子は社長の求愛を拒む【宮ノ入シリーズ②】

椿蛍

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番外編

祖父と孫 ※社長視点※第四弾終了時点

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最悪だ。
宮ノ入みやのいり会長であるジジイに突然呼ばれた。
仕方がないとはいえ、断れない。
今日は早く帰れると思っていただけに腹が立つ。
有里ゆりに電話しないとな」
きっと、一緒に夕飯が食べれず、がっかりするに違いない。
「有里。ジジイに呼ばれたから、夕飯はいらない。悪いな」
『いいですよ。あ、電話切りますね。今からパーティーあるので』
「パーティー!?なんのパーティーだよ!」
『PT』
「お前っ!最悪だな!」
ブツッと切られた。
な、なんだ。
こいつ。
本当に俺のこと好きなのか!?
もっと別れを惜しめよ!
俺の電話はゲーム以下かよ。
正直、女からこんな態度をとられることがないから、戸惑っていた。
直真なおさだ、どうした?」
宮ノ入の社長である異母弟が顔を出した。
「い、いえ。瑞生たまき様。なんでもありません。会長宅に参りましょうか」
なんとか怒りをこらえた。
覚えてろよ、有里。

◇ ◇ ◇ ◇ ◇


「赤字の扇田おおぎだ工業立て直しの件ですが、まずは早急に使えない役員を解任し、新しい体制を整えるべきかと」
仁礼木にれきは仕事が出来る上、目的を達成するためには手段を選ばない。
そこがジジイの気に入るところとなり、重用ちょうようされている。
「ふむ。雅冬まさと、お前はどうだ?」
「あー、俺はあんまり工業は得意じゃないな」
孫の中では一番若い雅冬にジジイは甘い。
まあ、宮ノ入の跡取りと思ってないのもあるが。
俺がそんな『得意じゃないな』などと、言った日にはジジイは喜んで『なら、行ってこい』そう言うだろう。
「直真にやらせるか」 
「私には瑞生様の秘書の仕事がありますので」
結局、面倒事は俺かよ。
内心、毒づいた。
ジジイは会長になってからも目を光らせ、気になることがあれば、すぐに呼びつける。
本当に面倒な年寄りだ。
年寄りは盆栽でもしてろよ。
「そういえば、直真。お前の嫁から、なかなか面白いものが送られてきてな」
「は?有里からですか?」
あいつ、ジジイの番号消せって言っただろうが。
「ほれ」
自分の寝顔だった。
しかも、シャツのボタンを外して眠っている。
家に仕事を持ち帰り、そのまま眠ってしまった時のものだ。
あいつ!
雅冬は笑い、仁礼木は笑いをこらえていたが、瑞生は表情を変えずに
「直真、無防備過ぎるんじゃないか」
と、コメントした。
ふ、ふざけんなよ!あのバカ!
「嫁のいるところでは可愛らしい顔をしているな。直真」
ジジイは勝ち誇った顔をしていた。
有里っ!
帰ったら覚えておけよ!

◇ ◇ ◇ ◇ ◇

「有里っっ!お前、マジでふざけんなよっ!」
バンッと玄関のドアを開け、イライラしながらリビングに入ると、そこには幸せそうな顔をして眠る有里の姿があった。
「うーん、直真さん」
寝言か。なんだ。
俺の夢か。
なんとなく、気勢きせいがれ、有里の顔を見た。
平和そうな顔しやがって。
「風邪引くだろ」
キスをしようと顔を近づけると―――
「キャラは、消さないで」
バシッとデコを叩いて起こした。
「いっ、痛っっ!?な、なに!?あ、おかえりなさい。寝オチしてました」
黒いゲームパットを片手にむくりと起き上がった。
パソコンの画面の中ではキャラが壁にぶつかったまま、動かない。
そんなことはいい。
「ちょっと優しく起こしてくださいよ」
額をさすりながら、有里は文句を言った。
文句を言いたいのはこっちの方だ。
「有里。今すぐ俺の画像を全部消せっ!」
「え?画像ですか?」
「お前が俺を隠し撮りしたやつだ!」
「あー」
パソコンのキーを叩き、フォルダを開いた。
「見ます?私のマイ直真さんフォルダを」
なぜか、有里はドヤ顔をしていた。
「フォルダがあるのかよ!」
「仕事をしてるとこ、朝の支度中、うたた寝とスーツを脱ぐとことか」
「変態か!」
「え?かっこよくないですか?私の大事なコレクションなんですよ」
「かっこいいって、お前」 
「たまに眺めてうっとりしてるんです」
そんな大事にしてるのか。
「だって、直真さんの取り柄って顔くらいじゃないですか」
こ、こいつ。
さすがに俺をナメすぎだろ。
「お前、俺が顔だけかどうか試すか?」
ネクタイを緩め、シャツのボタンを外した。
「直真さん、私の話を聞いてからっ!」
慌てて有里は言ったが、もう遅い。
噛みつくようなキスをして、泣くまで抱いてやった。
ふん。
ちょっとは思い知れ!

◇ ◇ ◇ ◇ ◇

「直真さん、話も聞かずに酷いですよ!」 
有里は朝一番で抗議してきた。 
「なにがだ」
知らん顔して朝食を食べていた。
「おじいちゃんは孫の様子が知りたいだけなんですよ!直真さんは知らないでしょ!」
「はあ?」
有里はパソコンのキーを叩き、別のフォルダを見せた。
「お、お前!これどこから、手にいれた!」
俺の幼少時から、高校までの写真画像だった。
「おじいちゃんから、もらいました。直真さんの寝顔画像と引き換えに」
引き換えるなよ。
「おじいちゃんは直真さんのこと、知ってたんですよ。時々、見に行ってたらしいです。本当は引き取りたかったみたいですよ。初孫ですから、可愛かったんですよ」
「ジジイが、そんなこと思うか!気持ち悪いこと言うな!」
「はあ、まったく素直じゃないんだから」
有里はため息をつき、ノートパソコンを片付けた。
「直真さんの学生服、ステキですね」
有里ははた、と立ち止まり、振り返りスマホを見せた。
「スマホの待ち受けにするんじゃねえ!」
全然こたえてないだろ!
まったく、あいつは何をするかわからない。
けれど―――
ジジイの骨くらい拾ってやる。
それくらいは思えるようにはなったのは確かだった―――
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