僕の幼馴染がドラゴンだった件

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Prologue

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ーーこの村に伝わる話がある。この村の近くのどこかに、伝説のドラゴンがいるらしい。そのドラゴンを見た人は、恐怖のあまり死んでしまうと言う。
 昔、僕はドラゴンに会った。暗く深い森の中で、大きな赤いドラゴンを見た。いや、実際には『ドラゴンに助けてもらった』だと思う。森の中で迷子になっていた僕は、ドラゴンの指差す方向に歩いていった。そうしたら、村に戻れたんだ。
 だけどそれを村の人たちに言っても「ドラゴンを見たのなら生きてはいないはずだ。だからそれはドラゴンじゃなかったんだよ」って言われていた。だから僕は、ドラゴンに会ったことを、それ以降、誰にも言わなかったーー。


「おはよーう!」
 羊の餌を用意していた僕の後ろから陽気な声が聞こえた。幼馴染のロゼだ。振り向くと赤い髪の毛をサイドテールにした僕の幼馴染がいた。愛嬌のある笑顔で、僕に駆け寄ってくる。
「ねぇねぇ聞いた? 村に引っ越してくるお家があるんだって」
「へぇ、そうなの」
 僕達と同じくらいの年齢の子がいると聞いて、ロゼは嬉しそうに「仲良く出来たら良いな」なんてニコニコしている。僕はそんなロゼを見て、今日もいつもと変わらない日だな、と平和を謳歌していた。
「もう。そんな事してないでこれからの事を考えようよ」
 なんてロゼは言ってくる。何を考えるのさ。
「もちろん新しく来る仲間のことだよっ」
 僕の考えはお見通しだと言わんばかりに胸をーーぺったんこの胸を張る。
「何でそんなに楽しそうなの、ロゼは」
「だって何もないこんな農村に転居してくるんだよ? 一大イベントじゃない! それとも何? そのくらいじゃ驚かないよ、ってやつなの?」
「そりゃあ、それくらいで大喜びしていたら毎日喜びの連続で喜び死ぬよ」
「喜び死ぬって何よ」
「さぁ。僕も知らない」
 そう言って羊に餌を与える。ロゼは僕の横でそれを見ている。昔からそうだった。ロゼは僕の後をついてきて、懐いてきて……そしてーー。
「あっ、あれ!」
 僕の思考はロゼの声に遮られた。
 指差す先には一つの馬車。荷台には荷物が沢山積んである。
「もう来たのか。早いね」
「どんな人達なんだろうね?」
 淡々と話す僕とは正反対に本当に楽しそうにそんな事を言うロゼ。
「かっこいい人だといいなぁ。あっもちろん好きなのは一人だけだよ」
 そんな事を言いながら僕を見る。ーーそう、昔からロゼは僕の事を好きだと言う。最初は友人として好きなのかと思っていた。でも僕達はもう十四だ。それでも好きって言ってくれるのは、正直、恥ずかしいけれど嬉しい。
「僕の事を気に入るなんて、ロゼは本当に不思議だね」
 なんて、何年も繰り返した返事をする。照れ隠しだけじゃない。僕はいたって平々凡々な村人Aだ。特にかっこよくもいい人でもない、名前の無い村人Aだ。それなのにロゼはいつも、好きだよって言ってくれる。
「あ。そう言えば」
 ふと思い出したようにロゼは僕を見た。
「言い忘れてた事があるの」
 なんて、意味深に僕に近づいてーー。
「私、ドラゴンなんだ」
 と、非現実的な事を言いだした。
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