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2章 再会

13.アラン様からお茶会のお誘い

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 招待状を受け取ってその場で開封する。
ニールさんが返事を待っているからだ。

  ~~ ルカへ ~~

 昨日は楽しかった。ありがとう。
私とルカだけの、気楽なお茶会を開きたい。いつもの服装で構わない。
 都合の良い日を教えてくれ。

     ~~ アラン•バレンシア ~~

 どうしよう! 嬉しすぎる!

「いつ頃、空いてますでしょうか?」
いけない。嬉しすぎて、ニールさんのことを忘れていた。
「あ、はい! 今度の、国民の休息日はお休みします。バレンシア公爵様の都合はいかがでしょうか?」

「あ、大丈夫ですよ。あの方は働きすぎなので、ルカ様に合わせて休んでもらいます。何なら一週間……いや、1年分位の有給の休みが溜まってます」
 そ、そんなに……? いくらなんでも働きすぎなのじゃあ……。
「なので。ルカ様はバレンシア様と気兼ねなく、むしろバレンシア様を誘い出して頂きたいのです」

「……わかりました、ニールさん」
僕はニールさんに、しっかりと頷き返した。
「頼みましたよ」
 ニールさんもにっこりと笑って頷いた。

「では今度の国民の休息日の、朝10時頃にお迎えに参りますね」
「はい」
それでは。と言って去って行った。
 ニールさんも貴族なのに、僕みたいな平民に話をして大丈夫なのかな? つい僕も普通に、さん付けしていたけど。気をつけなければ。

 とにかく次のお休みの日を楽しみに、頑張ろうと思った。

 午前中はお店の掃除をしたり、お客さんとお話したりしながら過ごしていた。
 
 カランカランとお店の扉が開いた。 
「ねえ、ルカ! 獣人の子供がよその国から来た男達に見つかって、噴水広場で騒ぎになっていたの知ってる?」
 近所のお肉屋さんの奥さまが、話しながらお店に入ってきた。あれだけ騒ぎになったから、噂も広がるだろうと思ったけれど早いな。
 
「よその国から来た男達が、ですか?」
 僕は驚いた。あの男達はよその国から来たのか……。
「そう! しかも獣人の子供が迷い込んだみたいよ」

 獣人の子供が迷い込んだのは合っている。
「その獣人の子供は、どうしたのですか?」
 僕は、噂がどんな風に広がっているか聞いてみた。
「それがねぇ……。いなくなっちゃったみたい。逃げたみたいよ? でも捕まるより良かったわ!」
 奥さまは、獣人の子供を心配したようだ。良かった。

「そうなのですね。男達はまだ、この街にいるのでしょうか……」
 それがねぇ! と言って奥さまは話を続けた。
「何でも、獣人を捕まえて売る悪人だったみたい。裏の、人が通らない道に倒れていたらしいわ。かなり殴られて、ですって! 倒れた男達を見つけた人が騎士団に通報して分かったらしいわよ?」

 奥さまは、僕が知りたかった情報を全部教えてくれたので助かった。お肉屋さんの奥さまだけど、街の情報屋としてやっていけるのではないかと思う。

「あ、そうそう! これ! ルカにあげようと思って来たの忘れてたわ」
 お肉屋さんの奥さまは、カウンターにドサリと美味しそうな自家製ベーコンの塊を置いた。

「一つ、注文がキャンセルされちゃったの。高級品だから売れないし、お惣菜にするのは高すぎるし、私達は売るほどあるし。ルカ、食べてくれる?」
 見ると、美味しそうだし高そうだった。
「良いのですか?」

「量は多いけれど、保存できるし。遠慮なく、もらって食べてもらったほうが嬉しいわ」
 奥さまはニコッと笑って言った。
「ありがとう御座います! 遠慮なく、いただきます!」
 僕が言うと、奥さまは「良かった!」と言ってお店を出て帰って行った。
 こういう近所付き合いは嬉しい。

 でも。騒いだ男達は殴られて裏の道に倒れていたのと、男達を雇った身なりの良い男の人が気になる……。アラン様と僕は、あの日偶然見かけた。
 何かよくないことが起こらなければ、良いけれど。

「……このベーコン。美味しそうだけど、僕一人じゃ食べ切れないな」

 
 ■■■■

 
 毎日忙しくしているうちに、お休みの日がやって来た。
 お天気が良い朝。
僕のお店の前に、立派な馬車が停まった。
「ルカ、迎えにきた」
アラン様が直々に迎えに来てくれた。

 僕はびっくりして、ポカンと口を開けたままお店のドアに掴まっていた。
 場違いな立派な馬車が停まっているので、商店街のご近所さんがお店から出て見ていた。

 立派な馬車から降りてきたのは、ラフなシャツに簡易なマントを着た英雄騎士様。
 商店街の皆さんは驚き、突然現れた国を救った英雄騎士様に喜んだ。

「ルカ、後で話を聞かせろよ!」
偶然通りかかった酒屋の親父さんが、ウインクしていい笑顔で通り過ぎて行った。
 商店の奥さまも手を振っている。
お肉屋さんの奥さまは、なぜか握りこぶしを高く上げていた。

「……迷惑、だっただろうか」
「い、いえ! そんなことはないです!」
あからさまに落ち込んだ顔をしたので、僕は慌てて否定した。
 ただ、商店街の皆さんは防犯意識が高いだけです。助け合いのご近所付き合いなのです。

「行けるか?」
「はい」
 僕はお店に鍵をかけて、分からないように家に結界の魔法を張った。
 普段の服で良いと言われて、いつものローブを羽織ってきたけど大丈夫かな……。

 アラン様は商店街の皆さんに、軽く手を振って呼びかけに応えていた。
 
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