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2章 再会
14.二人きりのお茶会へ
しおりを挟む僕は立派な馬車に乗って、バレンシア公爵様の屋敷に向かった。商店街の皆さんに見送られて、ちょっと恥ずかしかった。
「ルカをよろしくお願いします!」など、アラン様に話しかけていた。
気を悪くされていないと良いけれど……。
「ルカは、商店街の皆さんに可愛がられているのだな」
アラン様は僕の頭を撫でた。
可愛がられている、のかな? 心配はされていると思うけど。フード越しに、アラン様の大きな手を感じて嬉しくなる。
「皆、ルカの父や母のように見守っている」
ん? 父や母? もしかしてアラン様は、僕の年齢を低くみてるのかな……?
一応、この国ではもう成人済だけど。
「あの、「着いたぞ」」
アラン様に、僕の年齢を知っているのか聞こうとしたら屋敷に着いたようで聞けなかった。
「は、はい」
御者が馬車の扉を開けてくれて、アラン様が先に降りた。
「お手をどうぞ」
馬車は、地面から足が届く所まで少し高さがある。ステップはあるけどちょっと怖い。でもアラン様はスッと手を、差し出してくれた。
「ありがとう御座います」
良かった。転んだらどうしようと、心配していた。さすがアラン様。紳士的だ。
大きな手に自分の手を乗せて馬車を降りる。アラン様のおかげで僕は、転ばず無事に降りられた。
「わぁ……!」
正面に入口があって、左右にお部屋が広がった白い壁のお屋敷だ。お庭は、植物が植えられていて緑豊かで白いお屋敷に映えて綺麗だった。
「素敵なお屋敷とお庭ですね!」
平民だと一生、中に入れないだろう立派なお屋敷に僕は招待されていた。僕はキョロキョロとお庭を見てた。
「中に入ろう」
背中に軽く手で触れて僕を促してくれた。珍しい草花に、目を奪われていたから良かった。
重厚な扉を開けると、お屋敷で働いている人々が並んで待っていた。
「お帰りなさいませ」
一人の年配の男性が声をかけると、一斉に他のお屋敷で働いている人達が頭を下げた。
「お帰りなさいませ」
男性達はビシッと黒の制服を着て、女性達は紺色のメイド服を着ていた。
何人いるのだろう。キチンとした背筋を見て、さすが公爵家で働く人達だと思った。
「アラン様、ご用意は出来ております。緊急の連絡等は特に御座いませんので、ごゆっくりどうぞ」
「……うむ。ありがとう」
アラン様はマントを、話していた男性に渡した。
「ルカ、こちらが執事のセバスチャンだ。こちらがメイド長のネネだ」
ちょっと頑固そうな執事さんと、優しそうなメイド長さんを紹介してくれた。
「初めまして。ルカ、と申します。よろしくお願いします」
僕は平民なのに、執事さんとメイド長さんを紹介してくれたのが嬉しくて、にっこりと微笑んで挨拶した。
「まあまあ! いつもは厳つい顔しかしてない旦那様が、にこやかなお顔をなさって! ルカ様、ゆっくりなさって下さいね」
メイド長のネネさんが、この屋敷の主人のアラン様の顔が厳ついって言った……。いいのかな?
「コホン! ネネ、お客様の前では……」
「何をおっしゃるのですか! その厳つい顔のせいで結婚相手がみつからないのですから、頑張って欲しいと屋敷の者は願ってます!」
ネネさんは胸を張ってキッパリと言った。
「ネネ。いくらお前が、アラン様を赤ん坊の時からお世話したとしても言い過ぎだ」
執事のセバスチャンさんが、ネネさんをたしなめた。
「……はい」
ネネさんは、アラン様が赤ん坊の時からお世話した方。だから砕けた話し方なんだ。
「いや、確かにその通りだから。気にしないように」
ネネさんとセバスチャンさんに優しく言った。
「アラン様……」
ネネさん始め、セバスチャンさんメイドさんたちはアラン様の優しさに感激していた。
「ルカを案内したい。いいか?」
「「はい」」
貴族の中には、下働きの者を見下す貴族もいる。
アラン様は公爵の地位があるのに、威張った感じは全然ない。だから皆、アラン様を慕う。小さな子供は怖がるけど。
入口から入って歩くと、中庭に出た。
「わぁ……」
バレンシア公爵家は、壁の白色と植物の緑色が調和していて綺麗だ。
少し歩くと、大きな木の下にテーブルと椅子が置いてあった。
「ここで、お茶を楽しもう」
椅子の上にはクッションが置いてあって座り心地が良さそうだ。
テーブルには、甘いお菓子と軽食が可愛らしく並べてある。
お皿にあったクッキーは猫の形。猫の顔の形ではなかったけれど嬉しい。
アップルパイや苺のミニタルトなど、美味しそう!
「座って。君と俺だけのお茶会だけど、始めよう」
「はい。どれも美味しそうです!」
甘いもの好きな僕は、どれから頂こうか悩んだ。
大きな木を背に、庭を眺められる椅子とテーブルの配置になっていて青々とした木々を眺めながらティータイム。何て素敵なんだろう。
「……食べたいのはどれだ? 取り分けてやるぞ」
アラン様はお菓子を掴む用のトングを持って、僕に聞いてくれた。
「えっ……と。どれも美味しそうで悩みますが、猫の形のクッキーと苺のタルトをお願いします」
「お腹がいっぱいになったら、食べたいものを包んで持ち帰るといい」
「え! 嬉しいです!」
ご馳走になるだけじゃなくて、持ち帰って良いなんて!
僕は嬉しくて、ニコニコしながらアラン様に笑いかけた。
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