BLR15【完結】ある日指輪を拾ったら、国を救った英雄の強面騎士団長と一緒に暮らすことになりました

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4章 二つの指輪

43.休日の二人

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 「やはり……。出ていってしまうのだな」

 バサッ……と、布についた葉っぱを振り払った。

 え? いつまでもお世話になるのは駄目だし、お店をもっと広くして、僕のこの加護の力をみんなの役にたてたい。
そのためには頑張らないといけない。

「雨が降りそうだ。帰ろう」
「そうですね。……雨雲が近づいてきてますね」
 さっきまで晴れていたのに、雨雲が近づいていた。せっかくのお出かけだけど雨に降られる前に帰った方が良さそうだ。
 風も強くなってきて気温も下がってきた。

「ちょっと予定変更がありましたけれど、楽しかったです。アラン様」
 一緒にお出かけできたし。
「そうか。それなら良かった」
馬車に乗り、お屋敷に向かった。少し肌寒くて腕をさすっていた。

 「ルカ、寒いのか?」
 そう言って真向いに座っていたアラン様が、立ち上がって僕の隣に座った。
 馬車の中に置いてあったひざ掛けを、僕の肩にかけてくれた。そして後ろに腕をまわして、アラン様の方に抱き寄せた。

 アラン様がとても近い。嬉しい。
「暖かいです。とても」
 僕はアラン様に寄りかかって目をつぶった。

「眠るといい」
うとうと、と眠気が。
「でも、起きられないかも……」
 まぶたが重い……。
「起きなかったなら、運んでやるから大丈夫だ」
安心感……。こんな甘えられる人はいない。僕は返事が出来ないまま、まどろむ。

 あれ……? アラン様の作ったお菓子を、僕のお店に置くという話。できなかったな……。早く言いたいな。
 でも断られたら、どうしよう? 
メイドのアリーさんからも、アラン様のお菓子を必要としている人がいるという事を、話してもらうのもいいな。

 できたらきっと楽しいだろうな。怖がられているアラン様のイメージが変わるかもしれないし。……変えたいな。

 僕はアラン様の香りに包まれながら眠ってしまった。

 ふ……、とまぶたを開けると周りが真っ黒だった。
僕はぐっすりと眠ってしまったらしくて、夜になっていた。知らぬ間にベッドで寝ていた。運んでもらってしまったらしい。
 「今日は、アラン様のお休みなのに……」
 急いでベッドから起きて部屋を飛び出した。

 パタパタと行儀が悪いけれど、走ってアラン様が居るだろう応接間に行く。 
「アラン様! すみません!」
 バタンと扉を開けて部屋の中を見ると、アラン様がソファに座ってくつろいでいた。
 「ルカ。ゆっくり休めたか?」
 こちらを向いて優しく話しかけてくれた。

 「ぐっすり寝てしまって……。せっかくのお休みなのに、ごめんなさい」
 扉の所でアラン様に謝った。ぐっすり寝ちゃうなんて。
「いや、休めたならそれでいい。こちらに」
 手招きしてポンポンとアラン様の隣を示した。僕はアラン様に呼ばれるままに、隣に座った。

 ふわっとおでこにアラン様の手のひらが。
「熱は無いようだな」
 「はい……」
 不意打ちで……! ドキドキしてしまう。

「温かい飲み物を飲むと良い」
メイドさんが、温かいホットミルクを持ってきてくれた。
「ありがとう御座います」
 マグカップに入ったホットミルクは、温かくて少し甘くて美味しかった。

 「前髪が跳ねてる」 
 寝てたから前髪にくせがついてしまったらしい。アラン様が手で直してくれた。
 「あ、ありがとう御座います」
 なんだか照れてしまう。

 隣にアラン様がいて、ホットミルクを飲んで安心している自分がいる。
 居心地が良いな……。

「体調が良かったら、明日はキャンプをしないか?」
え? キャンプ?
「キャンプといっても、しっかりとした作りのコテージで宿泊のキャンプだが……」
「体調は大丈夫ですけど、遠いのでしょうか?」

 またそっと、ひざ掛けを肩にかけてくれた。
「遠くはない。バレンシア家の領地にある、湖畔のコテージだ」
「コテージですか?」
 アラン様は頷いた。
「食料を持ち込んで俺が調理する。外で作って食べられるぞ」

 外でご飯が食べられる? 楽しそう。
「楽しそうですね! やったことがないので、行ってやってみたいです」
「決まりだな。明日は早く出発しよう」


 早朝、僕とアラン様はバレンシア家の領地にある湖畔のコテージに出かけた。
「……実は明日から、隣国に行くことになった」
「隣国へ?」
 馬車の中。僕はまだ眠気が覚めてないのに、アラン様はいつもの早朝鍛錬を終えて、元気にキャンプの荷物を積んでいた。

「昨日、ルカが休んでいるときに知らせがきて急に決まってしまった」
 今日は少し冷えるので、アラン様と僕はコートを着ていた。似合っていてかっこいい。

「だから今日、ルカと楽しみたいと思って」
「はい。楽しみましょう」
明日から隣国へ行ってしまうのは寂しいけれど、アラン様とキャンプを楽しみたい。

 しばらく馬車を走らせて、湖畔の側に建つコテージが見えてきた。
「素敵ですね」
「子供の頃から、たまに来ている場所なんだ」

 アラン様が子供の頃から来ている場所に、連れてきてもらって嬉しい。
僕も自然の多い所が好きだけど、アラン様も好きなのかな?

 丸太で作られたコテージ。思ってたより広いかな。
「さあ、入ろう」
両手にいっぱい荷物を持っているアラン様。僕も手伝って荷物をコテージの中に運んだ。

 暖炉があったり、湖を眺められる大きな窓が素敵だ。
「窓を開けていいですか?」
「どうぞ」

 足元から僕の頭上まである窓を開けると、テラスになっていた。
「湖を一望できますね、アラン様」

「そうだな、ルカ」
 テラスに出て、手すりに手をかけて湖を見ていた。アラン様が僕を包むように、手すりに両手を僕の左右に置いた。
 
 「寒くないか?」
「大丈夫、です」
 顔のすぐ側で、アラン様の声が聞こえた。

 
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