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2章 闇の魔力
26 強さの片鱗
しおりを挟むジリ……ッ。地面を踏みしめる音がする。
先輩は様子をうかがっている。俺が向かって来るのを、待っているのだろうか?
やはり気合が違う。ピリピリと肌に威圧感を感じた。
「来い」
先輩に挑発されて前に出た。
ガンッ!
俺が先輩に、横から木刀を殴りつけると先輩は木刀で受けて力で返した。
「うあっ!」
前に父と練習をした時より手にしびれはない。筋トレの成果か分からないけれど、一撃目をしっかりと木刀を握ってられた。
やっぱり先輩との実力に差があるのか……。
だけど向かっていくしかない。
「うりゃ!」
ガンッ! ガシッ! ゴンッ!
上、右、左と木刀を振り下ろした。間に突きも入れて攻撃がパターンにならないようにした。
しかし、ことごとく受け流されてしまった。
「もうそろそろ時間になるな」
先輩がニヤリと笑って俺に言った。
くっそう! こんなに実力の差があるのか!
打ち合いしているうちに俺は苛立って、木刀を振り下ろした。
ボッ……!
「えっ!?」
いきなり木刀に魔法のようなものが、まとわりついた。
先輩がそれを見て、ギョッとして叫んだ。
「ち、ちょっと待て!」
俺は勢いついて止められなかった。
「魔法の盾!」
先輩は腰を低くして、木刀を横に持って構えた。
「危ないっ!」
団長の声が聞こえた。
バンっ!!
俺の振り上げた木刀は先輩めがけて振り下ろされた。魔法の盾によって攻撃は塞がれた。
衝撃は俺に返ってきて、派手に後ろにふっ飛んだ。
「痛っ!」
俺はお尻を地面にぶつけた。痛い。
いたた……と、尻もちをついた俺は木刀を構えた先輩が目に入った。
俺を見ている先輩は『信じられない』といった顔をしていた。
「す、すみません! ケガはないですか!」
自分でも分からないけど、先輩に『魔法の盾』を使うくらい無茶な事をしてしまったのだと悟った。
「ケガはない。それよりもカケル、お前……」
ニック先輩は俺に言いかけた。……が、そこに団長がやってきた。
「試合は終わりだ! 後片付けをしてメシに行け!」
「はいっ!」
団長が指示をすると、騎士達はそれぞれ片づけをして訓練場を後にした。
「ニック、ケガはないな?」
「はい」
ニック先輩は木刀を下ろして返事をした。団長は俺を見て先輩に言った。
「こいつに話がある。ニックは先にメシを食っていろ」
「了解」
そう言い、ニック先輩は行ってしまった。
「お前。あれは出そうと思って出したのか?」
団長は怖い顔で俺に聞いて来た。あれ?
もしかして木刀にいきなりまとわりついたモノの事を言っているのか。
「いや。知らないけど、勝手に……」
そうなんだ。あれは勝手に出た。あれは何だったのだろう?
「そうか。偶然出したのか」
フム……と、団長さんは顎を触った。
「賢者ドクトリングを訪ねるといい。今後に生かせるかもしれん」
なぜ、賢者ドクトリングの話が? 俺が不思議に思っていると、団長さんは話をしてくれた。
「まれにだな。剣に魔法をまとい、強力な攻撃を使える者が現れる。カケル。お前だと良いのだがな」
そう言い、団長は俺から背を向けた。
「飯食ったら、ドクトリングの研究所のある塔へ行け。話をしておく」
「は、い……」
よくわからないけど、ドクトリングの所に行けばいいのか。
団長さんが行った後、俺は食事をしてからドクトリングのいる塔に向かって行った。
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