神社の無能次期後継者「翡翠(ひすい)」は、天狼神様にその身を捧げる

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十四 キッチンで蘭に襲われる(未遂)

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  「布を冷やしてきました。これを青あざになった所へ」
 蘭に殴られたアキさんの胸の、青あざになった所へ布を当てるように言った。
 「翡翠様、ありがとう御座います」

 アキさんは、私から受け取った布を胸にできた青あざの所へ当てた。
 痛そうだ。
 「蘭が……。すみません」
 向こうは思っていなくても、蘭は家族だ。義理弟とはいえ殴ったことは駄目だ。
 代わりに謝った。

 「そんな! 謝らないでください。翡翠様は悪くないのですから!」

 アキさんの部屋まで連れて行って、座ってもらっている。
 胸にできた青あざは、この感じだと数日で治りそうだけど痛むはずだ。

 「翡翠様は、もっとご自分を大事にしてください。あなたは悪くない」
 アキさんに言われて、ハッとした。
 そんな事……言われたことがない。

 いつも、私が悪い。
 能力なしの出来損ない。……だから。
 傷ができるような体罰を受けても、私が悪い。
 そう言われてきた。

「あなたは悪くない」
 そんなことを言われたのは、初めてかもしれない。

 でも……。私がここに来たのは、魔のモノを消滅させるための【生贄】の為。
 間違ってはいけない。

 「アキさんは休んでいてください。あとは私がやりますから」
 しばらくは動くたびに、胸の青あざが痛いだろう。私も蘭に殴られたことがあるので、痛みがわかる。
 「そんな! うっ……」
 アキさんは胸を押さえて痛そうにした。

 「痛いでしょう? 痛みが取れるまでは、動かない方がいいです」
 アキさんに動かないように言って、立ち上がった。
 「……申し訳ございませんが、お願いいたします」
 アキさんは私の顔を見て、本当に申し訳ないようにして謝った。
 
 「私の体は、あかつき様やアキさんのおかげで動くようになりました。体を動かしたいのでやらせてくださいね」
 そう言って台所へ向かった。

 「ん? キッチンは、ここかな?」
 引き戸を開けると、そこはキッチンだった。
 広いキッチン。かまどのような名残があるけれど、キッチン用具は最新のものが揃っていた。

 「すごい……!」
 家では昔から使っている壊れそうなキッチン道具ばかりだけど、ここには最新の物が置いてあった。

 どれも新しくて、私はそれらを触ったり見たりした。
 「最新式なものばかり……!」
 欲しくて仕方がなかった。立派な歴史のあるお屋敷に、あるとは思わなかった最新式なものが使えるなんて嬉しい。

 あかつき様はお食事……されるよね?
 「三人分を作ろう」
 冷蔵庫を開けると、たくさんの食材が入っていた。

 作り甲斐がある。
 でも材料を使いすぎないように気をつけよう。
 管理しているのはアキさんだから、勝手に色々使ってはいけない。

 手をきれいに洗って準備する。アキさんのだと思うけれど、エプロンを借りた。
 大体の献立を決めて調理を始めた。

 お魚を焼いて、煮ものとお味噌汁に和え物……。
 日本食でいいかな? 好みに合うといいけれど、まだお二人の好みがわからない。
 いつも家では味の濃いものが好まれて、濃い目に作るように言われているけれど……。
 今日は普通に作ってみよう。
 
 普段は時間に追われて作っているけれど、今はお昼まで時間に余裕がある。
 穏やかな気持ちで、お料理を作れるなんて嬉しい。

 
 「もう少しで、出来上がりそう」
 キッチン中に美味しそうな香りがしている。自画自賛だけど美味しくできそうだ。

 「あとは……、えっ?」

 「美味しそうなもの、作ってるじゃん」
 キッチンの入り口に、帰ったはずの蘭がいた。
 「蘭!? 帰ったはずじゃ……あっ!?」

 キッチンのテーブルに押し倒されてしまった。
 「痛い……」
 テーブルの上で仰向けになって、両腕を掴まれて身動きできない。

 「ムカつく……」
 蘭は私を見下ろして言った。

 「翡翠。お前はボロボロの方が、似合っているんだよ」
 馬鹿にしたような口調で言った。
 「それなのに、小綺麗になって……」
 顔を近づけて、スン……と匂いを嗅いだ。
 
 フイ……と顔を反らした。
 「良い香りがする。もう天狼人様の、になったのかよ?」
 お手付き? 
 「なんて無礼な……」
 蘭を睨むと、ニヤリと笑った。

 「まだなのかよ? ……先に手を付けるっていうのも面白いかもな」
 蘭は私に顔を近づけた。
 「蘭!?」
 ヌル……、という感触がして、耳を舐めたのがわかった。

 「何を……!?」
 そのまま首を舌でなぶり始めた。
 「ああ……、ゾクゾクする……!」
 蘭はさらに覆いかぶさって体を密着させた。

 「蘭、やめ……えっ!?」
 私が頭に巻いていた三角巾を外して、私の両手首を縛った。
 体重をかけられて体を動かせない。

 バッ! 
 蘭が、私の両襟元を持って左右に開いた。胸が、た。
 「……思ったより良い体、してるじゃん」
 するり……と手のひらで体を撫でられた。

 「ら、蘭?」
 なにをする気だろう……。まさか。
 「ガリガリで、痩せているけれど。……エロい」

 「はっ!?」
 蘭が私の胸の突起を摘まんだ。
 抓るようにぐりぐりと、もてあそんでいる。

 「この白い鎖骨から胸、傷つけたい……」
 蘭は舌なめずりをしながら言った。
 「えっ……? 何を言って……あうっ!」
 
 グリッ! と下半身を押し付けられた。
 硬くなったモノがはっきりとわかって、何が目的を知った。

 「ダメだ……蘭。どきなさい」
 冷汗をかいているのを感じた。
 
 「は? こんなになっているのに?」
 ケラケラと笑って、さらに下半身を押し付けた。

 「ん? 何だこのあざと噛み傷は……、うわっ!」
 
 あかつき様につけていただいたが光り輝いて、蘭が天井まで吹き飛んだ。
 

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