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UNISON (DEEPENING THE MIND)
極東決戦編その22
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「『ユニゾン』?何それ?」
「簡単に言うと、ウチと風翔の魔法を重ね合わせる。ウチも詳しいことは知らないのだけど、ウチを信じてくれない?」
「俺は魔法使いではないけど?」
「魔力演算子とかウチの記憶を見たなら分かるよね。」
「いや。いまいち、分からないけど魔法を発動させるためには頭を使わないとダメってことかな?」
「う~ん。ようは全部、数学だと思っていいから。マナ素粒子の流れを読んだり、操作する量を決めたり。大丈夫。ウチを信じて呪文(スペル)を一緒に唱えて。」
俺と金さんは左手と右手を握り合い呪文(スペル)を唱えた。
「「記憶の石(Stein der Erinnerung)!」」
金さんが俺に流れ込んできた。正確には記憶、思考回路、魔力演算子などすべてである。きっと金さんも同じなのだろう。二人の力を重ね合わせて実態のある一人を創造する。その姿は金髪のショートヘア、左右で異なる色をした大きな鋭い瞳、高い鼻、とても頑丈な体つきの凜々しい人である。服装はファンタジーに登場する襟付きの黒いチョッキに白い鎧をまとっている。両手には輝く太刀と小太刀が握られている。
「バカな。記憶操作の魔法使いがユニゾンをするなどありえない。しかも、魔法使いではない相手とユニゾンなどあってはならない。コタン副宮長、こいつらをさっさと始末しろ!」
「ワシは初めて見たぞ。ユニゾン・・・。本当に強いのか確かめずにはいられん!」
コタン副宮長が虎杖丸で斬りかかってくるのを小太刀で受け止めた。すごい剣圧の持ち主のはずなのだが軽く感じた。俺と金さんの魔法がコタン副宮長に効いている。今度はコタン副宮長が素早く背後に回り込んだ。しかし、それと同時に後ろを振り返り右足でコタン副宮長の虎杖丸を蹴り飛ばした。体が自然とコタン副宮長のスピードについてきている。風のように軽いのだ。
「ああ、スゲー楽しいぞ!戦場に居るときの気分だよ!クソガキども!」
コタン副宮長は満面の笑みを浮かべている。若干、口も悪くなってきている。戦場に居るコタン副宮長は見たことないが、きっとこんな感じにアドレナリンを出して戦っているのだろう。強い敵ほど強くなるのだ。
「「コタン副宮長、落ち着いてください。病み上がりなのに・・・」」
「ワシの体の心配をするほど余裕があるのか?級の木(ニペシニ)!こいつの四肢を奪え!」
大きな地鳴りがすると床が割れて太い蔓が俺を包み込んだ。地面からだいぶ離れている塔の上にいるのに次々と真下から蔓が伸びてくる。オーディンを倒した技であるが、ユニゾンをしている俺と金さんには植物が絡む速度が遅く感じる。絡みつこうとする蔓をかたっぱしから斬りきざんでいく。
「はは、本当にユニゾンは強いのじゃな。ワシがぶった斬ってやるぞ!大樹木の神(シランパカムイ)、」
虎杖丸の剣先に魔力が集まり塊となっていく。どうやら周囲の風のマナ素粒子を集めてエネルギーの弾としている。あんなものを放たれたらこっちもそれなりの応戦をしなくてはいけない。魔力演算子をフル稼働してコタン副宮長のマナ素粒子の波長を計算する。威力が同じ波長のマナ素粒子をぶつけて帳消しにする。いや、それよりも手っ取り早くこの場を収める方法がある。金さんの意思からその考えが流れ込んできた。
「くらえ!ウィンド・ブレイク!」
とても強大なマナ素粒子が俺に目がけて放たれた。振動数と周期と波長を計算してこの電波塔が壊れる位置を特定した。こちらのマナ素粒子とコタン副宮長のマナ素粒子が重ね合わせて波が強くなるようにエネルギーの弾を放った。
「「ウィンド・ブレイク返し!」」
二つの魔力が衝突した途端、電波塔は大きな地響きを立てて崩れる。俺とコタン副宮長は風の魔法で塔から離れていく。水戸部シモンはいつのまにか居なくなっていた。
「「逃がしたかな?」」
「仕方ないのう。」
コタン副宮長が静かな声で俺に話しかけてきた。どうやら最初からこういうことにするつもりで演技をしていたようだ。木の魔法ではなく風の魔法を放ったのも納得した。今思い出してもアドレナリンが全開のコタン副宮長は怖い。
「「コタン副宮長、魔法の真実って何ですか?その・・・」」
「貴様達はいつか知ることになるだろう。上のクラスにあがれればな。今は話せん。」
そういうものなのだろうか。『マナ素粒子を操るもの』が魔法使いと言うものではないようだ。そもそも、なぜ魔法を使える人と使えない人がいるのだろうか?遺伝ならば風の民の末裔である俺はなぜ使えないのだろうか?両親が魔法使いではなかった金さんが魔法使いに産まれたのはなぜだろうか?俺と金さんが知らない何かがあるのだ。
「再起動。現在の座標日時を報告します。」
E-ウォッチが久しぶりに起動した。金さんの魔法が解けて世界は元の状態に戻ったようである。よく見ると俺は右手と左手の両方にしている。ユニゾンの魔法がまだ解けていない。俺の頭の中で金さんがささやいた。
「風翔、ウチは双子宮も魔法学部も続けるけど・・・」
「それは金さんが決めたことならば、構わない。」
「・・・ありがとう。何か照れるな。この気持ち分かる?」
「分かるよ。ユニゾン状態なのだから・・・。」
「・・・風翔のエッチ!」
「ちょ、そういうことでも考えちゃうとダメなの?」
「当たり前でしょ!ウチは世界一のアイドルを目指すのだから。」
頭の中で金さんとやりとりするのは初めてで、人の心が分かるという金さんの魔法の大変なところもわかった。崩壊した棟の近くから三人のE-ウォッチの反応があった。地上をよく見るとハヤテ、水無瀬水鳥、光星明が手を振っている。荷馬車に乗るKとKの肩に乗っているククルの姿も確認できた。
「コタン副宮長、行きましょう。」
「承知した。イデアルの領域から早く出るのじゃ。」
地上に降りたときだった。
「緊急事態です!」
突然、E-ウォッチから聞き覚えのある大声が聞こえた。双葉テンのメイドであるサティアさんからの連絡だ。
「皆さん、聞いてください。私達は金城さんの魔法で記憶を一週間ほどなくしていたようです。」
「サティア殿、それは承知しているぞ。何か困ったことでもあったかのう?」
「インフラは元に戻りつつあります。しかし、宇宙にある人工衛星です!」
「人工衛星は、今は使っておらん。」
「ですが、大昔使っていたものは地球に落下しないように宝瓶宮理学部の研究施設で管理されているのです。それが一週間も放置していました。巨大な元人工衛星が自由落下を始めています!」
「サティア殿、その大きさは?」
「直径1000[m]の元巨大宇宙ステーションです!このままでは私たちが絶滅してしまいます!」
東京に向かう途中で干からびた大地に人工衛星がぽつんとあったのを思い出した。あれは人工衛星の落下で一面が干からびてしまったものだったのか。あの大きさで一面が砂漠になるならば巨大な元宇宙ステーションが落下したらこのパンドラ大陸全体が無くなってしまうかもしれない。
「どうしますかコタン副宮長?」
水無瀬水鳥が真剣な表情でコタン副宮長に迫る。光星明はまだ実感がないようだ。ハヤテが落下した場合の話をしている。コタン副宮長が重い口を開いた。
「ユニゾンは宇宙空間でも通用するのか?」
「「大丈夫です。」」
「では三江とハンナで落下物を斬ってもらおうかのう。ワシとハヤテと水無瀬副宮長は大気圏で燃え尽きる大きさまで細かくしよう。」
「「え!コタン副宮長の虎杖丸の方が斬れるのでは?」」
「ワシでも1000[m]は無理じゃ。ユニゾンをしているそちらならば可能性はあるだろう。サティア殿、座標をククルに連絡してもらえぬか?」
「分かりました。ククルに落下情報を転送いたします。」
俺が情報を読み取り魔力演算子で素早く計算した。
「「行けます。」」
「光星明とKはここに残っておれ。ククルは借りていくぞ。それでは三江とハンナはワシらに指示を出してくれ。」
俺はためらいなくハヤテ、水無瀬水鳥、コタン副宮長に使用するべき魔法と座標を教えた。
「よし。今一度、十二宮学園の誇りにかけて自分が出来ることを精一杯するのじゃ。ワシらは学園の入試をパスした選ばれた存在なのだ。連邦でもイデアルでも宗協連でもない十二宮学園の学生としての誇りと使命感を持て!目標は宇宙じゃ!」
そう言ってコタン副宮長は虎杖丸の剣先を元巨大宇宙ステーションの方角に向けた。俺たちはその方向に向かって飛び出した。最初に水無瀬水鳥と別れた。
「ハンナさん、疑ってごめんなさい。それと、三江くん、これが終わったらお話があります。では。」
「「話?何だろうか?」」
おれも金さんも興味津々だが先を急ぐ。次にコタン副宮長と別れる地点に来た。
「お前ら、ちゃんと戻ってくるのじゃ。」
「「はい・・・。」」
「今の『十二宮学園』に、ってことだろうか?それとも・・・。」
「「ハヤテ、どういうことだ?」」
「ユニゾンをしているのだから自分たちの魔力演算子で考えろよ。じゃあな。」
そう言うとハヤテも別れていった。しばらく行くと成層圏を抜けた。太陽光線から守るために水中結界を発動させた。魔法使いではない俺が水の魔法を使えるのは新鮮味があって嬉しい。これも金さんのおかげだ。
「んあ~、風翔はウチにあまり頼らないでよ。」
「分かっているけど、魔法って凄いな。」
外気圏を抜けると目標の巨大な元巨大宇宙ステーションが目視できた。あまりの大きさに驚愕してしまった。しかし、こいつを斬らなくてはいけないのだ。魔力演算子をフル稼働してマナ素粒子を集める。どうやら斬り刻んだ後は魔力がなくユニゾンを保っていられないようだ。しかし、金さんがそばにいるので安心だ。集中して左手の小太刀と右手の太刀にマナ素粒子を注ぎ込むとまぶしく金色に輝き始めた。斬るに必要な強度と破片の行方を計算する。
「「ファイナルレリース!ウィンド・ブレイク!」」
二刀で元巨大宇宙ステーションを真二つにした。さらに残っている魔力を集中して剣圧で半分になった機体もなるべく細かくした。予定通りにハヤテ、水無瀬水鳥、コタン副宮長のいる三方向に別れていった。その途端、ユニゾンの魔法が解けて全身の力が抜けた。気が付いたら金さんに抱えられていた。
「風翔、少し休んで。ユニゾンの反動がきているから。」
全身が熱くなっている。目、鼻、耳から出血しているようだ。これがユニゾンの代償なのだろうか。全身筋肉痛より痛い。金さんはいつもの笑顔と違う顔で俺に満面の笑みを向けてくれる。金さんはつらくないのだろうか?そのまま俺は気を失ってしまった。
「簡単に言うと、ウチと風翔の魔法を重ね合わせる。ウチも詳しいことは知らないのだけど、ウチを信じてくれない?」
「俺は魔法使いではないけど?」
「魔力演算子とかウチの記憶を見たなら分かるよね。」
「いや。いまいち、分からないけど魔法を発動させるためには頭を使わないとダメってことかな?」
「う~ん。ようは全部、数学だと思っていいから。マナ素粒子の流れを読んだり、操作する量を決めたり。大丈夫。ウチを信じて呪文(スペル)を一緒に唱えて。」
俺と金さんは左手と右手を握り合い呪文(スペル)を唱えた。
「「記憶の石(Stein der Erinnerung)!」」
金さんが俺に流れ込んできた。正確には記憶、思考回路、魔力演算子などすべてである。きっと金さんも同じなのだろう。二人の力を重ね合わせて実態のある一人を創造する。その姿は金髪のショートヘア、左右で異なる色をした大きな鋭い瞳、高い鼻、とても頑丈な体つきの凜々しい人である。服装はファンタジーに登場する襟付きの黒いチョッキに白い鎧をまとっている。両手には輝く太刀と小太刀が握られている。
「バカな。記憶操作の魔法使いがユニゾンをするなどありえない。しかも、魔法使いではない相手とユニゾンなどあってはならない。コタン副宮長、こいつらをさっさと始末しろ!」
「ワシは初めて見たぞ。ユニゾン・・・。本当に強いのか確かめずにはいられん!」
コタン副宮長が虎杖丸で斬りかかってくるのを小太刀で受け止めた。すごい剣圧の持ち主のはずなのだが軽く感じた。俺と金さんの魔法がコタン副宮長に効いている。今度はコタン副宮長が素早く背後に回り込んだ。しかし、それと同時に後ろを振り返り右足でコタン副宮長の虎杖丸を蹴り飛ばした。体が自然とコタン副宮長のスピードについてきている。風のように軽いのだ。
「ああ、スゲー楽しいぞ!戦場に居るときの気分だよ!クソガキども!」
コタン副宮長は満面の笑みを浮かべている。若干、口も悪くなってきている。戦場に居るコタン副宮長は見たことないが、きっとこんな感じにアドレナリンを出して戦っているのだろう。強い敵ほど強くなるのだ。
「「コタン副宮長、落ち着いてください。病み上がりなのに・・・」」
「ワシの体の心配をするほど余裕があるのか?級の木(ニペシニ)!こいつの四肢を奪え!」
大きな地鳴りがすると床が割れて太い蔓が俺を包み込んだ。地面からだいぶ離れている塔の上にいるのに次々と真下から蔓が伸びてくる。オーディンを倒した技であるが、ユニゾンをしている俺と金さんには植物が絡む速度が遅く感じる。絡みつこうとする蔓をかたっぱしから斬りきざんでいく。
「はは、本当にユニゾンは強いのじゃな。ワシがぶった斬ってやるぞ!大樹木の神(シランパカムイ)、」
虎杖丸の剣先に魔力が集まり塊となっていく。どうやら周囲の風のマナ素粒子を集めてエネルギーの弾としている。あんなものを放たれたらこっちもそれなりの応戦をしなくてはいけない。魔力演算子をフル稼働してコタン副宮長のマナ素粒子の波長を計算する。威力が同じ波長のマナ素粒子をぶつけて帳消しにする。いや、それよりも手っ取り早くこの場を収める方法がある。金さんの意思からその考えが流れ込んできた。
「くらえ!ウィンド・ブレイク!」
とても強大なマナ素粒子が俺に目がけて放たれた。振動数と周期と波長を計算してこの電波塔が壊れる位置を特定した。こちらのマナ素粒子とコタン副宮長のマナ素粒子が重ね合わせて波が強くなるようにエネルギーの弾を放った。
「「ウィンド・ブレイク返し!」」
二つの魔力が衝突した途端、電波塔は大きな地響きを立てて崩れる。俺とコタン副宮長は風の魔法で塔から離れていく。水戸部シモンはいつのまにか居なくなっていた。
「「逃がしたかな?」」
「仕方ないのう。」
コタン副宮長が静かな声で俺に話しかけてきた。どうやら最初からこういうことにするつもりで演技をしていたようだ。木の魔法ではなく風の魔法を放ったのも納得した。今思い出してもアドレナリンが全開のコタン副宮長は怖い。
「「コタン副宮長、魔法の真実って何ですか?その・・・」」
「貴様達はいつか知ることになるだろう。上のクラスにあがれればな。今は話せん。」
そういうものなのだろうか。『マナ素粒子を操るもの』が魔法使いと言うものではないようだ。そもそも、なぜ魔法を使える人と使えない人がいるのだろうか?遺伝ならば風の民の末裔である俺はなぜ使えないのだろうか?両親が魔法使いではなかった金さんが魔法使いに産まれたのはなぜだろうか?俺と金さんが知らない何かがあるのだ。
「再起動。現在の座標日時を報告します。」
E-ウォッチが久しぶりに起動した。金さんの魔法が解けて世界は元の状態に戻ったようである。よく見ると俺は右手と左手の両方にしている。ユニゾンの魔法がまだ解けていない。俺の頭の中で金さんがささやいた。
「風翔、ウチは双子宮も魔法学部も続けるけど・・・」
「それは金さんが決めたことならば、構わない。」
「・・・ありがとう。何か照れるな。この気持ち分かる?」
「分かるよ。ユニゾン状態なのだから・・・。」
「・・・風翔のエッチ!」
「ちょ、そういうことでも考えちゃうとダメなの?」
「当たり前でしょ!ウチは世界一のアイドルを目指すのだから。」
頭の中で金さんとやりとりするのは初めてで、人の心が分かるという金さんの魔法の大変なところもわかった。崩壊した棟の近くから三人のE-ウォッチの反応があった。地上をよく見るとハヤテ、水無瀬水鳥、光星明が手を振っている。荷馬車に乗るKとKの肩に乗っているククルの姿も確認できた。
「コタン副宮長、行きましょう。」
「承知した。イデアルの領域から早く出るのじゃ。」
地上に降りたときだった。
「緊急事態です!」
突然、E-ウォッチから聞き覚えのある大声が聞こえた。双葉テンのメイドであるサティアさんからの連絡だ。
「皆さん、聞いてください。私達は金城さんの魔法で記憶を一週間ほどなくしていたようです。」
「サティア殿、それは承知しているぞ。何か困ったことでもあったかのう?」
「インフラは元に戻りつつあります。しかし、宇宙にある人工衛星です!」
「人工衛星は、今は使っておらん。」
「ですが、大昔使っていたものは地球に落下しないように宝瓶宮理学部の研究施設で管理されているのです。それが一週間も放置していました。巨大な元人工衛星が自由落下を始めています!」
「サティア殿、その大きさは?」
「直径1000[m]の元巨大宇宙ステーションです!このままでは私たちが絶滅してしまいます!」
東京に向かう途中で干からびた大地に人工衛星がぽつんとあったのを思い出した。あれは人工衛星の落下で一面が干からびてしまったものだったのか。あの大きさで一面が砂漠になるならば巨大な元宇宙ステーションが落下したらこのパンドラ大陸全体が無くなってしまうかもしれない。
「どうしますかコタン副宮長?」
水無瀬水鳥が真剣な表情でコタン副宮長に迫る。光星明はまだ実感がないようだ。ハヤテが落下した場合の話をしている。コタン副宮長が重い口を開いた。
「ユニゾンは宇宙空間でも通用するのか?」
「「大丈夫です。」」
「では三江とハンナで落下物を斬ってもらおうかのう。ワシとハヤテと水無瀬副宮長は大気圏で燃え尽きる大きさまで細かくしよう。」
「「え!コタン副宮長の虎杖丸の方が斬れるのでは?」」
「ワシでも1000[m]は無理じゃ。ユニゾンをしているそちらならば可能性はあるだろう。サティア殿、座標をククルに連絡してもらえぬか?」
「分かりました。ククルに落下情報を転送いたします。」
俺が情報を読み取り魔力演算子で素早く計算した。
「「行けます。」」
「光星明とKはここに残っておれ。ククルは借りていくぞ。それでは三江とハンナはワシらに指示を出してくれ。」
俺はためらいなくハヤテ、水無瀬水鳥、コタン副宮長に使用するべき魔法と座標を教えた。
「よし。今一度、十二宮学園の誇りにかけて自分が出来ることを精一杯するのじゃ。ワシらは学園の入試をパスした選ばれた存在なのだ。連邦でもイデアルでも宗協連でもない十二宮学園の学生としての誇りと使命感を持て!目標は宇宙じゃ!」
そう言ってコタン副宮長は虎杖丸の剣先を元巨大宇宙ステーションの方角に向けた。俺たちはその方向に向かって飛び出した。最初に水無瀬水鳥と別れた。
「ハンナさん、疑ってごめんなさい。それと、三江くん、これが終わったらお話があります。では。」
「「話?何だろうか?」」
おれも金さんも興味津々だが先を急ぐ。次にコタン副宮長と別れる地点に来た。
「お前ら、ちゃんと戻ってくるのじゃ。」
「「はい・・・。」」
「今の『十二宮学園』に、ってことだろうか?それとも・・・。」
「「ハヤテ、どういうことだ?」」
「ユニゾンをしているのだから自分たちの魔力演算子で考えろよ。じゃあな。」
そう言うとハヤテも別れていった。しばらく行くと成層圏を抜けた。太陽光線から守るために水中結界を発動させた。魔法使いではない俺が水の魔法を使えるのは新鮮味があって嬉しい。これも金さんのおかげだ。
「んあ~、風翔はウチにあまり頼らないでよ。」
「分かっているけど、魔法って凄いな。」
外気圏を抜けると目標の巨大な元巨大宇宙ステーションが目視できた。あまりの大きさに驚愕してしまった。しかし、こいつを斬らなくてはいけないのだ。魔力演算子をフル稼働してマナ素粒子を集める。どうやら斬り刻んだ後は魔力がなくユニゾンを保っていられないようだ。しかし、金さんがそばにいるので安心だ。集中して左手の小太刀と右手の太刀にマナ素粒子を注ぎ込むとまぶしく金色に輝き始めた。斬るに必要な強度と破片の行方を計算する。
「「ファイナルレリース!ウィンド・ブレイク!」」
二刀で元巨大宇宙ステーションを真二つにした。さらに残っている魔力を集中して剣圧で半分になった機体もなるべく細かくした。予定通りにハヤテ、水無瀬水鳥、コタン副宮長のいる三方向に別れていった。その途端、ユニゾンの魔法が解けて全身の力が抜けた。気が付いたら金さんに抱えられていた。
「風翔、少し休んで。ユニゾンの反動がきているから。」
全身が熱くなっている。目、鼻、耳から出血しているようだ。これがユニゾンの代償なのだろうか。全身筋肉痛より痛い。金さんはいつもの笑顔と違う顔で俺に満面の笑みを向けてくれる。金さんはつらくないのだろうか?そのまま俺は気を失ってしまった。
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(2022.04.04)
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