セクシャルマイノリティを異世界召喚するなんて正気か⁉

村上かおり

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CASE1 広瀬 海翔

1-6 

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 いきなりドカンと物凄い音が響いた。

「何事ですか⁉」

 さっきまでの表情とは打って変わって、眉間に皺を寄せ不機嫌そうな声を上げた男は、扉の方を見る。

「メーア・アーベントロート!! なぜ召喚の儀式を行った! あれほどやめろと言っただろうが!!」

 そこには、がっちりとした身体の男が1人、怒りの表情を湛えて立っていた。

 青銀色とでも言えばいいのか、キラキラと光る青い髪は長く、けれど暴れでもしたのかばさばさしていて、でも、その乱雑さが見事な体躯に纏う黒い軍服のような服にやたらとマッチしている。

 怒りに染まったその顔も、さっきまで俺にのしかかろうとしていた男のような優男風ではなく、くっきりとした目鼻立ちはやたらと男くさい。

「アスール・ドラコ・カエルレウム! 何故ここに居る」
「私が呼びました。兄上、こんな事はしてはならないと、長老会で決定したではありませんか」

 そんな偉丈夫の後ろから、メーアによく似た少年が現れた。

 その瞳には、男のように怒りは浮かんではおらず、どちらかというと悲しげな色が浮かんでいるような気がする。

「シューレン、なぜ女神様の慈悲を否定するのか。異世界からオメガを呼べと女神様が言うのであれば、それを成すのは当然だろう」
「そんなバカなことを女神様が言うはずがありません。そもそもオメガは人族です。それを羨んで奪っただけではなく、奪うために戦争を起こしたのは我々の咎。女神様はそれを憂いただけです。決して異世界からオメガを攫ってくるなど!」
「ではなぜ、魔法陣がここにあるというのだ! 女神様の意志だからこそ魔法陣は刻まれているのではないか。私はそれを起動しただけだ。そしてオメガがあんなにも大勢現れた! 召喚を数度行えば、オメガで争う事はなくなる。それに攫うなどと野蛮な事を言うな、これは女神様の意志、幸甚だろう」

 いきなり始まった舌戦に、俺は呆然と見つめるしかない。

 たぶんメーアという男は、興奮しているせいで、俺の身体から離れ、同じ顔をしている(ように見える)少年へと食ってかかっていった。

 けれど、俺はそんな事よりも、さっきまで酷く怒っていた偉丈夫の方が気になってしまう。

 だって、俺を見つけた金色の瞳が、なぜか悲し気に揺れ、何かを堪えるように唇を引き結んだのだ。よほど力を込めてしまったのか、その唇の端に赤いものが滲む。

 けれど、そんな様子が分かってしまうくらいには、俺も男から目を逸らせなかった。何故だろう。

 疑問が頭を掠めるけれど、どんどん疼きを増していく身体が辛かった。けれど、このくらいならまだ耐える事は出来る。

 これでも、もう30歳を過ぎて、それなりに経験してきたからね。

 でも、相手がいないとクスリが抜けるまでが辛いんだよなぁ、なんてことを考えて、男から意識を逸らそうと頑張ってみた。

 だって、まさかこの人にセックスの相手をしてなんて言えるわけがない。

 メーアってやつに、さっきまで怒気をぶつけていたくらいだし、この召喚ってやつに反対もしていたみたいだし。

 いまいち自分の置かれている状況もよく分からないけれど、取り合えず彼らが召喚を否定している事は確かみたいだし、男である自分を抱きたいなんて思う人でもないように見える。

 けれど眼力あるなぁ。

 わきでギャンギャンと似たような二人が騒いでいるのに、彼の視線は俺から外れない。そして俺も身体をもぞもぞさせつつも逸らせないんだから。

 しかし、そろそろ身体が辛くなってきた、な。

「……取り合えずさぁ……あんたら全員、部屋から、でていけ、よ」

 ここで、はっきりと出て行けと言い放てたら良かったんだけど、どうにも息が上がってしょうがないんだ。まあ、原因は無理やり身体の熱があげられてる、からだけどね。

「そんな、これから初夜なんですよ?!」

 けれどメーアってやつから返って来たのは、きしょい言葉だった。

 初夜って。

 身体が熱いのに、サブイボが立った。自分で自分の身体を抱きしめるように腕を回して、両腕を擦る。

 あー、きしょい、きしょい、きしょい。

「……ふ、ざけるな! 貴様にそんな権利はない! それに彼は……」

 偉丈夫が声を荒げ、けれど最後の方はしりすぼみになった。彼のような男であれば、はっきり、きっぱり、言いたい事は言う気がするけれど、今の俺はそんな事を悠長に考えている時間はない。

 できれば、サッサと彼らを追い出して、あの大きなベッドに潜り込んで、中途半端に勃起しているアレを、窮屈なズボンから引っ張り出したかった。そして思い切り擦りあげ放出したい。

 頭の中がどんどん、そんな考えに囚われていく。

「はや、く、出て、いけ、よ」

 ソファに凭れながら、はあ、はあ、と荒い息をつく俺は、きっと最悪に気持ち悪いだろう。

 けれど、聞こえたのは、ごくりと誰かが喉を鳴らす音だった。

「き、さま! シューレン!」

 偉丈夫が何かを堪えるように唸り、むんずとメーアの首根っこを掴む。そして間髪入れずにシューレンと呼ばれた少年へと投げつけた。

「ふわっ」

 まさか、そんな事をするとは思わず、ピンク色の靄に飲み込まれそうだった俺は、目を見開いて凝視する。

 しかしメーアを投げつけられた少年の方は、最初から分かっていたとでも言うかのように、なんなくメーアを受け止め、暴れようとする彼の腕を取り捻りあげ、ぼそぼそと何事かを呟いた。

「こら離せ! シューレン!! 私は花嫁と」
「あなたに権利はありません、帰って長老たちからの罰を受けなさい」

 それだけ言うと、どういう訳か彼らの姿はその場から消えてしまった。

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