妹はわたくしのものなんでも欲しがります

村上かおり

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4.同年代の子供たちが一同に集まる学園の入学式

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 そんな思いで迎えた学園の入学式。

 ぞろぞろと集まってくるのは同年代の男女たちだ。一応、制服はある。男性はシャツにスラックス、ベストに紺色のフロックコート。中にはドレスシャツを着ていたり、クラバットをつけているものもいるな。

 学年を示すバッジはフロックコートの左側に留める場所がある。

 ちなみに、1学年はトパーズ、2学年はルビー、3学年はラピズラズリがバッジにはめ込まれている。学年が持ち上がると各学年の色がそのまま持ち上がりになるため、来年の新入生はラピズラズリがはめ込まれたバッジを渡される事になるだろう。

 それほど大きな石を使っている訳ではないが、紛失した場合は再度購入しなければならず、高価な訳でもないが安い訳でもない。貴族の子弟であれば、たぶん気にならない金額だろう。

 だが、小さめとは言え宝石のついた学園の紋章入りのバッジを紛失したとなると、それ自体が恥になるため、このバッジになってからの紛失件数は、ほぼゼロになっているらしい。

 これは何代か前の生徒会の発案だという。それまではバッジの紛失が割と多く、いくら購入制だとしても、地味に金がかかっていたらしい。経費削減というやつだな。

 ご令嬢の方はというと、基本はシンプルな紺色のワンピースだ。丈は膝下かくるぶしまでの2パターン。白い襟と肩が少し膨らんだ袖、袖口の部分だけ襟と合わせた白い生地が使われている。だが、襟やスカートの裾には金糸銀糸で刺繍が入っていたり、レースがついていたり、襟自体が総レースになっていたりと中々に賑やかだ。

 前もって学園側から注意事項が配られていたからか、派手な装飾品をつけている女性陣はいない。せいぜいシンプルなピアスや細い鎖のブレスレットくらい。まあ、あれぐらいならお目こぼしの範囲なんだろう。その点男性は、と目を向ければ、カフスボタンやクラバット留めに宝石がついたものを使用しているものが多かった。これらも許容範囲だろう。

 他人をジロジロと見るのは失礼に当たるので、さり気なく周囲を観察していたが、これも俺の仕事の一環だ。何せ王族というだけで既に生徒会役員に指名されている。まあ、王族専用サロンがあったり執務ができるよう別室も用意されている事を考えれば、これも義務だと割り切るしかない。

 そう言えば、他国からの留学生という扱いの男がいるはずだが、彼はどこにいるのだろうか。派手な銀髪に紫色の目をした男を見逃すはずはない、と思えば既に女子生徒に囲まれていた。

 彼は隣国の王太子だし、今回の留学も側妃候補を探しに来た事になっている。実情は全く違うがな。それでもうちの公爵家の令嬢に婚約を申し込めるんだから、羨ましい限りだ。

 俺との格差が酷いな。涙は出ないが泣けてくる。


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