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4.滑車を使って水を汲みましょう
親方の工房に参りますと、裏庭に案内されました。するとそこには井戸を囲むように四本の柱が立ち、その上にはかなり厚みのある板が置かれ、その板には件の滑車がついておりました。
少々井戸の囲いがごついような気も致しますが、試作品でしょうから仕方ありません。まずは滑車を使って水が汲めるかどうかですものね。それに今回は木材で滑車を作ったようですわ。どうやらご近所さんの木工職人の親方さんも巻き込んだみたいです。
工房のお弟子さんたちや木工職人の親方さんとお弟子さんたちも勢揃いしておりました。あまりにも人が多くて、わたくし少々可笑しくなってしまったくらいです。
わたくしはまだ小さいのでお父様に抱っこしていただきました。大きな手としっかりと筋肉が付いたがっしりとした腕は、安心感がありました。なるほど、だから子供たちはお父さんに良く抱っこをせがんでいましたのね、とわたくしは前世の子供たちのことを思い出しました。
そしてお父様に抱かれて井戸に近づけば、結構大きな滑車です。もっと小さくても大丈夫だと思うのですが。
「おう、工房は水を多く使うんでな、どうせなら桶も大きくしてみようかと思ってな。そうしたら滑車もでかくなっちまった。まあ、普通の家の井戸なら、もう二回り位小さくできるからよ、安心してくれい」
わたくしが滑車をじいっと眺めていたからでしょうか、親方さんが、そんな事を言いながらがははと笑います。もう、仕方がないですね、とは思いましたが、鍛冶職人ですものね、確かに水は大量に使うでしょう。でも、どうせ桶の水は水瓶とかに入れるんですから、別に大きくなくてもいいとは思うのですが。
そうは思いましたが、親方さんもお弟子さんたちも、何だか楽しそうなのでいいかしら、と。それに皆さん筋肉ムキムキですものね。きっと多少、桶が大きくなっても気にならないのでしょう。
「さあ、じゃあ、ご領主様に試運転してもらいましょうか!」
親方さんがそう言います。もちろんお父様もやる気満々です。私を抱っこしていたので地面に下ろすと、徐にロープに手を掛けようとしました。でもわたくしはちゃんと気づいてましてよ。
「お父様、こちらにロープを巻き取るハンドルがありますわよ」
「お、おう、それがハンドルか」
お父様もハンドルがあることには気が付いていたようですが、これがハンドルだと言う認識がなかったようです。
「お父様、この大きな桶にロープが繋がってますでしょう? そのロープはこのハンドルにも繋がっているのです。ですから」
わたくしはハンドルを巻き取る方向とは反対に回しました。するとくんっと桶が下がります。
「おおっ」
なぜ、それだけで歓声が上がるのでしょう。でも、それを指摘しても仕方がありませんので、わたくしはくるくると桶を井戸の中にどんどん下ろしていきました。
ぱちゃん、と着水音が聞こえましたのでハンドルを止めます。そしてお父様を見ました。
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滑車ってこうだったよなぁ、というふんわりとした感じで書いてますので、突っ込みはご遠慮ください。
軽いコメディのつもりでもありますので。
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