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曝
ー舌は全てを晒すー
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頭の中を誰かが爪で引っかき回すような痛みが続いている。
体中が焼かれて、溶けて、擦りむけて、骨の芯まで激痛が響いてくる。
息を吸っても吐いても、肺の中を蟲が這い回り、
神経の一本一本を内側から引っ掻きむしる。
私は、どこに声帯があるのかさえ分からない。
喉が潰れ、舌の裏側が熱く膨れ、
呼吸をするたびに血の味と肉の臭いが口いっぱいに広がる。
気付けば身体のあらゆる“穴”が引き裂かれ始める。
鼻、口、耳、目、臍、膣、肛門、尿道……
粘膜も毛穴も、すべてが内側から蠢くものに割り開かれていく。
唇の端に浮かぶ裂け目から、ぬるりと赤黒い液体が流れ落ちる。
舌の裏には白く細長い脚が何本も這い出してきて、
喉の奥から唾液と血と嘔吐と一緒に蟲が蠢きながら零れ落ちる。
最初に、舌の裏から蜘蛛のような蟲が這い出してくる。
毛穴が一つひとつ開き、額や頬、胸や背中、腕や脚――
全身から蠢くものがぞろぞろと湧き上がる。
鼻孔からも、
耳の奥からも、
目の裏からも、
赤く腫れた穴の奥で脚がにゅるりと揺れ、
次々と「ぞくり」の成虫が這い出してくる。
肛門からも膣からも、会陰部からも、
温かいものがどろどろと流れ出す。
私はもがき、のたうち、全身を必死に丸めて何かを守ろうとする。
でも、もう守るものなんて残っていない。
私の身体の内側はぞくりの成虫で埋め尽くされ、
骨の周りも、筋肉も、臓器も全部、内側から食い破られていく。
肺が裂け、気管が塞がり、咳き込んでも咳き込んでも、
気道から血混じりの蟲が溢れ出す。
胃が熱く膨れ、腸が引きつるたびに、
内側から「ぞくり」が這い出していく。
肝臓、膵臓、胆嚢、脾臓、腎臓、心臓――
臓器の一つ一つが蟲に食い破られていくのが分かる。
私は内臓の中身を全て“外”に押し出されている。
痛い。かゆい。苦しい。
私は必死に全身を掻き毟るが、
皮膚の下を流れる蟲の流れには全く歯が立たない。
羞恥も、理性も、体面も、何もかも全部崩れていく。
全身の開口部は次々に裏返され、粘膜が引き裂かれ、
血と膿と涙と汗が混じり合う。
指先の毛穴からもぞくりが湧き出し、体液が床に滴り落ちる。
私はもはや「肉の袋」と化している。
視界が真っ赤に染まり、光も音も痛みと混じって、
ただ「叫びたい」「止めてほしい」「助けて」
と心の中で泣き叫ぶしかない。
けれど、声にならない。
声帯は「ぞくり」に食われ、喉も潰れ、
口からはただ泡混じりの血が漏れるだけだ。
全身の感覚が痛みと痒みと痺れで飽和し、
身体が膨らんで破裂しそうになる。
私は、何もかも晒されていく。
「見られたくなかったものまで全部――」
心の奥で何度も何度も叫ぶ。
脱ぎ専の矜持も恥も、とっくに砕け散り、
内臓の隅々まで外から見られている。
「舌で稼ぎ、舌で死ぬ」その皮肉が、舌の裏で苦く甘く木霊する。
死にたくない。
消えたくない。
でも、もう何もかも遅すぎる。
最後の意識で、私は手鏡を口の中に差し込み、
腫れた舌の裏側を見る。
そこには、「ぞくり」の成虫が卵を産み付けている。
粘膜にびっしり産みつけられた卵の粒。
成虫たちは産卵を終えると、
どろどろに溶けて、肉の袋と一体化していく。
激痛と絶望の最中、舌の裏だけが微かに痺れ、
最期の「ぞくり」の甘みがふっと蘇る。
「こんな終わり方、あんまりだ」と心のどこかで泣きながら、
私は絶命の一歩手前で全てを諦める。
どこからともなく、あの老婆の気配が近づく。
動かない身体の横で、老婆が静かに屈み込み、
口を開いた私に手を伸ばす。
そして両手を口に入れ、バキバキと広げていく。
老婆は真っ赤に腫れ上がった私の長い舌を根元から掴み、
ゆっくりと引き抜く。
グチュグチュグチュ…ブチブチという肉の引きちぎれる音。
舌の肉袋を目の前に持ち上げ、老婆は満足そうに嗤う。
その舌の中で、何かが、ぞわぞわと、また蠢いている――。
私の意識が消えるその一瞬、
「もう一度、『ぞくり』を味わいたい」と願いながら、
肉袋の残骸と化した奥底に沈み込んでいった。
体中が焼かれて、溶けて、擦りむけて、骨の芯まで激痛が響いてくる。
息を吸っても吐いても、肺の中を蟲が這い回り、
神経の一本一本を内側から引っ掻きむしる。
私は、どこに声帯があるのかさえ分からない。
喉が潰れ、舌の裏側が熱く膨れ、
呼吸をするたびに血の味と肉の臭いが口いっぱいに広がる。
気付けば身体のあらゆる“穴”が引き裂かれ始める。
鼻、口、耳、目、臍、膣、肛門、尿道……
粘膜も毛穴も、すべてが内側から蠢くものに割り開かれていく。
唇の端に浮かぶ裂け目から、ぬるりと赤黒い液体が流れ落ちる。
舌の裏には白く細長い脚が何本も這い出してきて、
喉の奥から唾液と血と嘔吐と一緒に蟲が蠢きながら零れ落ちる。
最初に、舌の裏から蜘蛛のような蟲が這い出してくる。
毛穴が一つひとつ開き、額や頬、胸や背中、腕や脚――
全身から蠢くものがぞろぞろと湧き上がる。
鼻孔からも、
耳の奥からも、
目の裏からも、
赤く腫れた穴の奥で脚がにゅるりと揺れ、
次々と「ぞくり」の成虫が這い出してくる。
肛門からも膣からも、会陰部からも、
温かいものがどろどろと流れ出す。
私はもがき、のたうち、全身を必死に丸めて何かを守ろうとする。
でも、もう守るものなんて残っていない。
私の身体の内側はぞくりの成虫で埋め尽くされ、
骨の周りも、筋肉も、臓器も全部、内側から食い破られていく。
肺が裂け、気管が塞がり、咳き込んでも咳き込んでも、
気道から血混じりの蟲が溢れ出す。
胃が熱く膨れ、腸が引きつるたびに、
内側から「ぞくり」が這い出していく。
肝臓、膵臓、胆嚢、脾臓、腎臓、心臓――
臓器の一つ一つが蟲に食い破られていくのが分かる。
私は内臓の中身を全て“外”に押し出されている。
痛い。かゆい。苦しい。
私は必死に全身を掻き毟るが、
皮膚の下を流れる蟲の流れには全く歯が立たない。
羞恥も、理性も、体面も、何もかも全部崩れていく。
全身の開口部は次々に裏返され、粘膜が引き裂かれ、
血と膿と涙と汗が混じり合う。
指先の毛穴からもぞくりが湧き出し、体液が床に滴り落ちる。
私はもはや「肉の袋」と化している。
視界が真っ赤に染まり、光も音も痛みと混じって、
ただ「叫びたい」「止めてほしい」「助けて」
と心の中で泣き叫ぶしかない。
けれど、声にならない。
声帯は「ぞくり」に食われ、喉も潰れ、
口からはただ泡混じりの血が漏れるだけだ。
全身の感覚が痛みと痒みと痺れで飽和し、
身体が膨らんで破裂しそうになる。
私は、何もかも晒されていく。
「見られたくなかったものまで全部――」
心の奥で何度も何度も叫ぶ。
脱ぎ専の矜持も恥も、とっくに砕け散り、
内臓の隅々まで外から見られている。
「舌で稼ぎ、舌で死ぬ」その皮肉が、舌の裏で苦く甘く木霊する。
死にたくない。
消えたくない。
でも、もう何もかも遅すぎる。
最後の意識で、私は手鏡を口の中に差し込み、
腫れた舌の裏側を見る。
そこには、「ぞくり」の成虫が卵を産み付けている。
粘膜にびっしり産みつけられた卵の粒。
成虫たちは産卵を終えると、
どろどろに溶けて、肉の袋と一体化していく。
激痛と絶望の最中、舌の裏だけが微かに痺れ、
最期の「ぞくり」の甘みがふっと蘇る。
「こんな終わり方、あんまりだ」と心のどこかで泣きながら、
私は絶命の一歩手前で全てを諦める。
どこからともなく、あの老婆の気配が近づく。
動かない身体の横で、老婆が静かに屈み込み、
口を開いた私に手を伸ばす。
そして両手を口に入れ、バキバキと広げていく。
老婆は真っ赤に腫れ上がった私の長い舌を根元から掴み、
ゆっくりと引き抜く。
グチュグチュグチュ…ブチブチという肉の引きちぎれる音。
舌の肉袋を目の前に持ち上げ、老婆は満足そうに嗤う。
その舌の中で、何かが、ぞわぞわと、また蠢いている――。
私の意識が消えるその一瞬、
「もう一度、『ぞくり』を味わいたい」と願いながら、
肉袋の残骸と化した奥底に沈み込んでいった。
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