電波で一途なお前と鈍感で小心者な俺による恋

天霧 ロウ

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 脱衣所でスーツやシャツを脱いで素肌になると、浴場に入った。
 頭や体を洗い終わった後、俺はバスタオルを借り忘れたのに気づく。戸惑いつつも浴場のドアを開けてみると、渦丞が黒の七部シャツとジーンズをはいて待ち構えていた。

「奥羽」
「おまえなぁ」

 こめかみを思わず押さえてため息をつくが、渦丞はいたって真面目だ。俺も細かいことは気にするのをやめて浴場から出ると素肌のまま渦丞の傍に寄れば大きなバスタオルに包まれてそのまま抱きしめられると横抱きされてそのままベッドに連れて行かれた。
 ベッドに乗ると渦丞は俺の唇に唇を重ねてきた。舌を絡めてさらに深くなっていくキスに俺の息は自然と乱れていく。
 間近で見る青い瞳は何度見たって自前とは思えないほど澄んでいる。唇が離れ、渦丞が服を脱いで素肌になると、再び覆いかぶさってくる。
 男同士なのに、むしょうに胸がドキドキして、顔が熱くてしょうがない。そんな俺におかまいなく、鎖骨の溝を辿るように舌で触れていき、そのまま胸に顔を落としていく。

「か、じょう……」
「名前」

 俺の言葉に渦丞の動きが止まり顔を上げると一言口にした。律儀に要望をしてくる渦丞に苦笑した。そういえば、名前を呼ぶのははじめてだ。知っていても、改めて呼ぶとなんだか恥ずかしい。
 けど、俺も名前を呼んでやりたかった。

「たつき……」
「うん」

 渦丞――辰喜が律儀に応えた後、再び俺の胸元に顔を埋めて乳首を口に含んできた。

「く、ふふ……」

 最初はただ変な感じがしただけだったのに、少しずつその変な感じがむずむずした感覚に変わっていく。

「ん…、はー…っ、ぁ」

 さっきまであった余裕が嘘のようになくなっていく。
 辰喜の空いている手が体の輪郭を辿るように撫でる。少し高ぶり始めている俺のそれに触れた。

「奥羽」

 胸から顔を上げて俺にキスをすると俺のそれを擦り始めた。

「っぁ、んっ……」

 はじめて他人に擦られる感覚が恥ずかしくてしょうがない。
 湿った音が部屋に響いて、その音の原因が俺だとわかっているから余計に恥ずかしくて片腕で顔を覆った。
 それでも、辰喜は容赦なく俺のを刺激してくる。手だけでも十分強い刺激なのに、辰喜は追い討ちをかけるように俺の足の間に顔を埋めると俺のを咥えた。

「ぁ…っ、辰喜、それ……っ!」

 やめろといいたいのに辰喜の舌が容赦なく俺のをさらに刺激していく。
 先端から根元まで舐め上げられた瞬間、全身に強い刺激が走っていった。頭皮がビリビリ痺れて、頭の中が真っ白になって、気持ちいいで塗りつぶされる。

「ん――っ」

 辰喜がようやく口を離すと喉がかすかに動いた気がした。俺は倦怠感に包まれながらも、勢いよく起き上がると辰喜の顔を両手で挟んだ。

「おまっ! なに飲んでんだよ!!」

 けれど、辰喜は目を瞬くと俺を引き寄せてキスをした。
 青臭いにおいが伝わりぎゅっと眉根を寄せた。辰喜の舌から与えられた俺のものははっきりいってまずい。いや、うまかったらだめだけどさ。

「まず……」

 唇が離れると共に思わず呟いた。
 辰喜は何も言わず口元に笑みを浮かべると俺を押し倒してきた。足を開かせ腿にキスをしていくたび、俺を見てくる。無性に恥ずかしくなった俺は目を晒すのもなんだか癪で、睨み返した。
 ふっと鼻で笑った辰喜が俺の足を下ろすと、ベッドサイドテーブルの引き出しからローションとゴムを取り出した。
 それを見た途端、嫌でも体が緊張する。
 見せつけるようにローションを手に垂らす光景はいかがわしくて、唾を飲み込む。未経験の俺がはじめてでいきなり辰喜を受け入れられるとは思えない。それでも、ここまで来たからには受け入れてやりたい。
 ローションを手の平で温め終えたようだ。辰喜が俺の腰に枕を差し込むと言ってきた。
 
「奥羽、指入れるから」
「お、おぅ」

 ローションでテラテラと濡れた指がそっと俺のそこへ触れてくる。ローションをたっぷり塗りつけられた後、辰喜の指が緊張をほぐすように軽く指で揉み込んできた。

「ん……」

 まず人に見せたり触られる場所じゃないだけに、やっぱり恥ずかしくて体や頭がぐらぐらする。これでもかシーツを握りしめ、こわばる俺に辰喜が落ち着かせるよう頬や鼻にキスしてきた。

「奥羽、力抜いて」
「わ、わかってるって」

 深呼吸をして、できるかぎり体から力を抜く。そうすれば「上手」と辰喜がかすれた声で褒めてくる。
 辰喜の指がゆっくり入ってくる。異物感に思いっきり眉を寄せてしまう。そんな俺にすぐ気づいた辰喜が囁いた。

「大丈夫、すぐ気持ちよくなるところ見つけるから」

 第二関節まで入ると、苦しさはいっそう増す。
 辰喜が俺の額に浮かぶ汗を唇で器用に吸うとキスもしてくる。その些細な行為が少しだけ慰めになって、いつの間にかこわばっていた体から力を抜けた。

「確か、このあたりのはず」

 二本の指がぬちゅぬちゅと音を立てながら、俺の中をまさぐる。異物感もだいぶ減り、落ち着いてきたおかげかなんだか触診みたいだ。
 俺は真剣な顔で中をまさぐる辰喜に笑いかけた。

「本当にあるのか――、ぁ」

 辰喜の指がある一点を掠めた瞬間、自分でも驚くほど高い声が飛び出た。辰喜も意図せず見つけたからだろう。
 俺たちはきょとんとした顔で見つめ合った。そして、先に行動を再開したのは辰喜だった。

「ほら、奥羽。俺が言ったとおり、気持ちよくなる場所あった」

 教えるように、辰喜の指がようやく見つけた俺の泣き所をさすっってくる。そうされると、さっきまで余裕だったのに、急に頭に靄がかかったような――フワフワした気持ちになってきた。

「ぁ、う…、んぅ」

 ちゅぷちゅぷと指の動く音が部屋に響いて恥ずかしい。なのに、浮遊感の心地よさに、ずっとそこをなで回されていたくなる。心地いい感覚にぼんやりとしていれば、不意にぎゅっと指で挟まれた。

「あぅ゛!」

 一転して腹の奥がぎゅうと重くなり、ジワジワと熱い。重い感覚に、腰が勝手に跳ねた。その動きに合わせて、辰喜の指が容赦なく緩めては挟むを繰り返してくる。

「は、ぅ゛、あぁ゛!」

 重い感覚がどんどん広がってく。せりあがってくる尿意に似たなにかを感じる。漏らしたくない一心で、慌てて身をよじるものの、辰喜の指は逃がさないというようにぎゅうっと指で挟み込んできた。

「や、やめっ、もれるっ! 腹の奥が、へんになぅ」

 ビリビリとした刺激で頭も舌もうまく回らない。ぎゅううっと強く挟み込まれれば、我慢できなかった。体が震え、俺のから透明な液が糸を引いてダラダラ流れでてきた。

「ぁ、くぅ、~~っ」

 俺の体なのに、言う事を聞かない。怖くなって視界が滲む先にいる辰喜を見つめる。そうすれば、再び辰喜の指があやすようになで回してきた。

「驚かせて悪い。ほら、奥羽。なでなで」
「ぁ…う、それ、それすきっ」

 さっきまでの荒々しさが消え、真綿に包まれるような暖かさがたまらない。好きな刺激にふー、ふーと息が乱れ、勝手に腰が揺れてしまう。

「腰揺らすほど、なでなで気に入ったんだ。じゃあ、これは?」

 撫でていた指がゆっくり叩いてくる。とん、とんと優しく叩かれる度、甘い刺激とくすぐったさで身をよじってしまう。

「ん、なんか。くすぐったい」
「じゃあ、もう少し強くとんとんしたら?」

 宣言と共に強く指が泣き所を叩いてきた。途端に、頭がビリビリ痺れた。

「ぁ、へ、んぅ!」

 笑える余裕があっという間になくなる。体をこれでもかとのけぞらしてしまった。顎に力がうまく入らなくて、唾液が口いっぱい溢れてくる。
 泣き所を叩く刺激に合わせて、重い刺激が全身を貫いて、頭皮がザワザワする。鳥肌がぶわっと立って、さっきよりも汗が噴き出て、熱い。

「だ、だめ…っ、あたま、へんになるっ、つよいのやだぁっ!」

 なんとか刺激から逃げようとするが、辰喜の指はまるでくっついたかのように逃がしてくれない。

「あぁ゛――っ!」

 気持ちいい。けど、たくさんのきもちいいに耐えきれない。思わず足を伸ばした。そうすれば、泣き所を叩く辰喜の指がまるで「イけ」というようにぐうっと強く押し込んできた。
 頭が真っ白になる。下半身が重く感じたと同時に勢いよく出て行く熱の解放が気持ちいい。

「ぁ、う」
「俺の指だけでイけて偉い」

 興奮が滲んだ声と共に俺の泣き所を優しくなで回してくる。そうすれば、体が重たくてつらいのに、また頭がフワフワして、なんでもいうことを聞きたくなってくる。

「ん、あぁっ…、ふっ、ぅ」
「口の端から涎が出るほど気持ちよかったんだな」

 辰喜が指摘と共に唇の端を舐め、キスしてくる。優しくなで回される指とは裏腹に、蹂躙する勢いで舌を絡められる。そのギャップに興奮して、体も顔も熱い。

「んっ、う……」

 ぞくぞくと背筋に駆けていく感覚に俺はぎゅっとシーツを握り締めると、辰喜が指を抜いた。キスで声がでなかったけど、体が大きく跳ねて、自分でもびっくりするくらい切なく感じた。
 舌を強く吸われた後、唇が離れていく。
 荒くなった息を整えながら目で辰喜を追いかける。ぱちっと青い目と合う。見慣れた青い目なのに、ギラギラしているせいかちょっとだけ怖い。
 辰喜が覆いかぶさってきて俺の唇に啄ばむようなキスをした。

「奥羽、奥羽」

 かすれた声で俺の名前を呼ぶ辰喜にキスを仕返してやる。そうすると、辰喜の青い目が嬉しそうに細まった。

「奥羽がつらいってわかってるのに、俺、入れたい」

 ゴムを手早くつけた辰喜が甘えるように俺の尻に擦りつけてくる。生々しいゴムの感触にぶるっと体が震えた。ガチガチに硬くなっている辰喜のそれに――あたりまえだけど――辰喜も普通の人間なんだって気づく。
 同時に、生々しさを感じさせないからこそ、俺へ向ける存在感に胸がぎゅうっと締め付けられるのと同時にキュンと高鳴る。
 必死に擦りつけて俺の回答を待つ辰喜がすごく可愛くて、可愛がりたい。そんな気持ちがドンドン湧いてきて、勝手にあそこがヒクヒクと収縮を繰り返すのがわかる。

「じゃあ、お前も俺の名前呼べよ。そしたらいれて――」
「充成(みつなり)、いれたい」

 性急に呼ばれた名前に全身が心臓になったみたいに震える。辰喜が息を荒げ、もう一度言ってきた。

「充成、お前と一つになりたい」
「俺も……だけど、はじめてだから優しくしろよ」
 
 自分で言っておきながら恥ずかしくなってきた。けど、痛い思いをしたくないのだからしょうがない。青い瞳が潤んで「あぁ」と辰喜が言った。
 膝裏を掴まれ、腰を上げさせられる。ピタッと辰喜のそれがあたる。

「ん゛」

 指よりも遥かにある質量が俺の中に入ってきた。一瞬息が止まり、ぎゅっと目を閉じた。
 痛みは感じないため、たぶん裂けてはいない。さっきよりも湿った音が大きくなり、ぞくぞくとした感じが全身を駆け巡る。

「充成、大丈夫か」
「思っていたよりかは……」
「そうか。あと半分で全部入る」

 言葉と共に腰を押しつけられた。熱くて硬い塊が俺の中を広げていく。内臓を潰すような圧迫感が苦しい。じっとりと汗が滲んでくる。
 それに耐えるようシーツを握りしめる。それに気づいた辰喜がかすれた声で言ってきた。

「充成、今気持ちよくするから」

 辰喜のものがさっきまで散々指でいじめていた俺の泣き所をついた。瞬間、指の時よりも重い痺れが脳天まで貫いた。

「あぁ゛っ!」
「ぼら、充成の好きなところ」

 血管が浮かんだ辰喜のそれが擦れる度に頭が真っ白になる。体の奥まで辰喜に塗りつぶされていく。

「名前っ、呼んで?」

 辰喜のかすれた声が耳元で囁く。
 俺はうわ言のように何度も「辰喜っ」と呼んだ。火照った辰喜の体がのしかかってくる。俺も辰喜の体を思いっきり抱きしめた。
 そうすれば、体の奥で辰喜の熱と感じながら俺も熱を吐き出し、お互いキスをするとそっと目を閉じた。




 食器の音が聞こえて俺は重い瞼をのろのろと上げた。ちらりと音のするほうへ視線を向ければ、先に身支度を整えた辰喜が台所に立っていて紅茶を入れていた。それをトレーに乗せると俺のところに来た。

「奥羽、起きてたんだ」
「今、起きた」

 辰喜をちらりと見れば、辰喜がサイドテーブルにトレーを置く。紅茶をカップに注ぐと俺に差し出した。温かい紅茶のカップからはふわりといい香りがした。
 ベッドに腰掛けた辰喜がそっと俺の目尻へ触れてくる。

「充成の目、真っ赤だな」
「どっかの誰かさんがはじめてなのにやりまくるからな」

 全身がだるくてしょうがない。それでも、最後までセックスをした事実に妙な達成感を覚えた。
 一方で、辰喜は味を占めたらしい。寝起き早々やりたそうに俺をじっと見つめてくる。応えてやりたいものの、春休みは短い。必要な手続きをしないと。

「だめだからな」
「まだ言ってない」

 拗ねる辰喜へ俺はふんと鼻を鳴らした。

「言わなくても顔を見ればわかるっつーの。俺も就職先が決まったから春から働くに当たって住む場所探さないとだめなんだよ」
「ふーん、どこの会社」

 どうでもよさそうに聞いてくる辰喜に食堂が入っているオフィスビルの名前を告げれば、一転して目を輝かせた。
 辰喜の手が俺の手をぎゅっと握ってきた。

「そこ、俺が働いている場所」
「まじかよ」

 まさかの事実に俺は呆然とした。辰喜は鼻先をすりよせてくると、さらに続けた。

「もうすぐ部屋の更新期間だし、これを機に一緒に住もう」
「しょ、しょうがねえな……」

 頬を紅潮させ、キラキラ輝く青い瞳と柔らかな笑顔に顔が熱くなる。離れて滅多に会えなくなるどころか、一緒にいる時間が増えた。
 それから、部屋の隅にある植物に気づいて、思わず目を見張った。辰喜もそのことに気づいたのか視線だけ向けて笑った。

「ストラップだけだと心配だから、実際育ててみた」

 俺からしてみれば毒々しいという印象が強いトラフアナナスだった。葉は青緑色地に黒紫色の横縞の虎斑模様が鮮やかに入り、葉の裏面はまあ美しいと言えなくもない。

「だからかな、願いが叶ったのは」

 そういって俺に視線を戻した辰喜が嬉しそうに笑った。俺もその笑顔に「そうかもな」とくしゃり笑い返した。
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