銀貨一枚と引き換えに

天霧 ロウ

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「じゃあ、キスするな」
「うん」

 コペグでこっそり隠れてキスをあれほどしていたのに、いまだにキスのタイミングがつかめない。結果、リヴンはわざわざ宣言していた。
 エウェンの頬が緩み、柔らかな笑みを浮かべる。にじみ出てくる唾を飲み込み、エウェンの腰に手を回し抱き寄せる。頬を撫でていたエウェンの手が首に回り、そっと目を閉じる。それを合図に、唇を重ねる。
 最初はぎこちなかったキスも、今ではだいぶ慣れた。エウェンの薄い舌を吸えば、エウェンの肩が跳ね、蔓草の髪が小刻みに震える。

「リヴくん、あまり吸っちゃだめ」
「毒が出るからか?」

 人間のリヴンの舌と違い、エウェンの舌は葉のようにツルッとしている。エウェンが頷く代わり小さく睫毛を震わせた。
 そういえば、はじめて水を渡した時、個体差があるものの植物種の体液には毒があると言っていた。同時に、唾液のような分泌液ならエウェンの方で制御できるとも言っていた。つまり、興奮するとその調整がうまくできなくなるのだろう。
 普通なら死の唾液になりかねないため恐ろしいかもしれないが、エウェンを好きになったリヴンにとってはむしろ魅力的に思えた。

「お前の毒で死ねるなら最高だな」

 くすぐるようにエウェンの舌を撫でれば、花の蜜のごとく甘い唾液が互いの口内を満たしていく。無我夢中でエウェンの口内を味わっていると、蔓草の髪がもどかしそうにリヴンの服にもぐりこんできた。
 肌を撫でる蔓草の感触に驚いて唇を離せば、全身をほんのり蜂蜜色に染め、息を弾ませたエウェンが挑発的に笑った。

「くすぐったかった?」
「やったな、この」

 やり返すようにエウェンの服に手をかければ、光の粒になった。驚いている間にズボンも消え、しなやかな体があらわになる。
 素肌になったエウェンはリヴンの太ももに乗ってきた。リヴンの着ているシャツのボタンを一つずつ外しながら、からかうように言った。

「大半の魔物は魔力を服に変換してまとってるんだよ」
「つくづく便利な生態だな」
「でしょ? でも、僕はこうして好きな人の服を脱がして、肌が少しずつあらわになっていく方が好き」

 シャツのボタンがすべて外されれば、引き締まったリヴンの肉体があらわになる。さらけ出された上体をエウェンの細い指がそっとなぞった。それだけで、高ぶりがズボンを押し上げた。
 エウェンにもそれが伝わったのだろう。蔓草の髪を耳にかけて、ふーっと優しくリヴンの耳に息を吹きかけてきた。

「リヴくんのおちんちん苦しそうだね? どうよしよししてほしい?」

 ズボン越しに優しく撫でられれば、思わず腰が跳ねてしまう。だしたくなる衝動を奥歯を噛みしめ、ぐっと堪える。深呼吸を何度か繰り返して衝動が落ち着くと、興奮に濡れた目で包み込むように優しく微笑むエウェンと見つめ合う。
 思わず伸ばした手でエウェンの脇腹や腰を掴めば、薄い傷痕が散らばっている体が小さく震えた。
 正直に言えば、どこも捨てがたい。それこそ、全身を使ってあやしてほしいというドロついた欲望が湧き出てくる始末だ。

「俺は」
「うん」

 リヴンが興奮で過呼吸にならないよう、エウェンが抱きしめてくる。エウェンの胸は人間と違い、鼓動がなく静かだ。そのかわり朝露を吸った葉が醸し出す新鮮な空気を感じる。
 その香りごと深呼吸する。そうすれば、体の末端まで巡るのを感じる。
 無自覚にエウェンの尻へ指が食い込むほど掴んでいた。リヴンの率直な反応に、エウェンは琥珀色の瞳に恍惚の光を煌めかせ、うっとりと笑った。

「リヴくんかわいい」

 エウェンの手が頭を撫で、蔓草の髪がリヴンの背中をくすぐる。こそばゆさに思わず眉を寄せた。

「可愛いのはエウェンだろ」
「綺麗でカッコイイじゃなくて?」
「今は可愛いの割合が多い」

 エウェンの尻を揉みながら、鎖骨のくぼみを舌でなぞった。

「んぅ」

 エウェンがわずかに喉をのけぞらし、中心から透明に近い薄黄金色の滴がトロッと垂れてリヴンの腹を濡らした。その姿にますますリヴンの高ぶりは猛り、早くズボンからだしてほしいと訴えていた。
 目の前にあるツンと主張する乳首をわざと無視して、ドキドキしながら指を伸ばしてぬるついている秘部の縁をなぞる。指先へまとわりつく粘ついた感触に頭がクラクラする。

「エウェン、指。入れていいか」
「うん、いいよ」

 柔らかな声音が鼓膜を揺さぶる。ドキドキしながら、そっと触れている秘部に指を押し込んでいく。一瞬硬直するものの、まるで温かな泥に指へ沈めたような錯覚を覚える。

「中、柔らかいんだな」
「びっくり、した?」
「少し」

 そう返しながら、エウェンの腰を片手で支えながら、ゆっくり背中からベッドを押し倒す。
 リヴンは上体を起こし、あぐらをかいた。そうすれば、太ももに乗っているエウェンの足が広がった。あらわになったエウェンの控えめな中心はすでに立ち上がっていた。片手で太ももをひと撫でして掴むと、興奮で声がかすれた。

「指、動かすぞ」
「んう…、ぁ」

 指を抜き差しする度、室内はぬちゅぐちゅと粘ついた音が響いた。エウェンの中心は先端から先ほどよい濃い黄金色の滴がトロトロと垂れ落ち、エウェンの腹に薄い蜜だまりを作っていく。
 そして、秘部から溢れてくる粘ついたの蜜がリヴンの手を伝って、シーツを濡らした。
 そっと柔肉をなぞれば、エウェンが細い眉を悩ましげに寄せ、太ももを掴むリヴンの手に手を重ねた。

「ん、あ…、ぅ」
「すごいヌルヌルだな。気持ちいいか?」
「ぅ、ん…、リヴくんの指、きもちいぃ…もっと、もっと激しくしてっ」

 エウェンはゆっくり息を吐き、目尻をとろんと下げる。毛先から徐々に赤く染まった蔓草の髪がリヴンの太ももやあらわになっている上体を撫でてきた。
 安心しきったエウェンの気持ちいいという声とおねだりに、自然とリヴンは頬を緩めて微笑んだ。

「こうか?」

 指を増やして乱暴にも思える勢いで、ぐちゅぐちゅと大きな音を立てながら指を抜き差しを繰り返す。エウェンは目尻を黄金色に染め、毛先が赤く染まった蔓草の髪をピクピクと小刻みに跳ねさせた。

「あっ、ぃい…、ぁ、あぁっ!」

 ぎゅうとリヴンの指を締め付けると同時に、エウェンが上体を弓なりに反らした。ついで唯一自由がきくエウェンの片足がピンと宙へ向けて伸びる。

「ぁ、ぁぅ゛っ」

 下げた眉をよせ、つま先をぎゅうと丸めながら快感を味わっている姿にリヴンは背筋に甘い痺れが駆けるのを感じた。
 エウェンの絶頂が落ち着くと、ぬるついた柔らかな中を指で広げた。指の間から見える中は粘ついた金色の糸が引き、かろうじて確認できる最奥は琥珀色の蜜で濡れていた。
 リヴンの視線を感じたのだろう。とぷっと滴を吐き出して、ひくつく様は頭を強く殴られたような衝撃を覚えた。

「そんな奥まで、見ないで……」

 さすがのエウェンも恥ずかしいようだ。鼻にかかった震える声で訴えた。だが、口ではそう言いつつも、エウェンも興奮しているのだろう。肌は緑がかった白から柔らかな蜂蜜色の光沢を放つ。半分ほど興奮で赤く染まった蔓草の髪がシーツを這った。
 リヴンはもう我慢できなかった。

「エウェン、入れていいか」

 指を引き抜くと、そのままエウェンにのしかかるように覆い被さった。胸元にキスをし、エウェンの潤んだ瞳を見つめる。エウェンは全身を琥珀色の瞳を潤ませて頷いた。

「いいよ、僕で……気持ちよくなって」

 息を荒げながらエウェンが自らの手で尻を広げる。
 あらわになった薄緑色の秘部からは樹液のようなが細い糸を引きながらシーツへ垂れ落ちる。蜜が空気に触れれば、喉が乾きそうなほど豊潤な甘さが鼻孔を満たした。

「僕で。じゃなくて。一緒に、だろ」

 律儀に訂正すれば、エウェンの琥珀色の瞳が大きく見開かれる。そして口元に笑みを浮かべ、目を細めた。

「うん、そうだね。リヴくん、一緒に気持ちよくなろう」
「ん」

 興奮を煽るような誘いにリヴンはベルトを外すのをもどかしく感じながら、なんとか前を手早く広げた。勢いよく飛び出た高ぶりがエウェンの陰嚢や秘部へ先走りを散らす。
 解放感とエウェンと一つになれる興奮で全身は炎天下にさらされたように暑い。シャツを脱ぎ捨てると、エウェンの膝を抱えて秘部へ先端を押し当てる。

「本当に、いれるからな」
「ん、ぅん」

 口の中は緊張で乾ききっていた。心臓が爆発しそうな勢いで早鐘を打つ。深呼吸をし、意を決して腰を進めた。
 エウェンの中は、指で感じたものとは別物だった。これでもかと張ったリヴンの高ぶりをぬるついて柔らかい中が優しく包み込んでくる。

「くっ、ぅ」
「あ…、ぁ、~~っ」
 
 リヴンの下でエウェンの指がぎゅっとシーツを握りしめた。縦に割れるほど経験済みなのもあってか、的確にリヴンが感じるところを締め付けてくる。
 こみ上げてくる熱をぐっと堪え、ゆっくり引き抜いては一気に押し込んだ。

「~~っ!」

 声にならない嬌声をあげながら、エウェンの中心が蜜を吐き出す。エウェンの足がすがるようにリヴンの腰に絡みついてくる。

「ぐっ、ぅ」

 頭が沸騰しそうだ。荒れた呼吸で必死に歯を食いしばる。
 ぬぢゅぐちゅと音を立てながら突き上げていれば、エウェンから香る甘い匂いが濃くなっていく。絡みついてくる髪の先端には、風車のような五枚の花びらを持つ白い小さな花がポツポツと咲いていた。
 気になったリヴンは動きを止め、エウェンの髪を手に取った。

「これが前、お前が教えてくれた花か?」

 エウェンはリヴンの手にある髪へ気づくと、睫毛を震わせながら伏せた。

「うん……。パッとしないし、つまんないでしょ?」
「俺はすごく好きな形の花だ。匂いも好みだし」

 深呼吸をすれば、エウェンと同じ匂いがする。黄色い中心に唇を当てれば、しっとりとした感触が伝わる。同時にエウェンが「あぁっ!」と感極まった声を上げ、リヴンの高ぶりを締め付けてくる。

「く――っ」

 我慢するよりも早く上ってきた熱を吐き出してしまった。うっかり花を潰さないよう奥歯を噛みしめて耐える。
 一度目の熱を出し切るものの、リヴンの高ぶりはあっという間に硬くなった。乱れた呼吸を整え、エウェンを見下ろす。エウェンのひきしまった腹にできていた蜜だまりが、脇腹を伝ってシーツを濡らしていた。

「花でも感じるんだな」
「久しぶりに…、咲いたから。敏感になってるんだよ」
「へえ、どのくらい?」

 汗ばんだ茂みがエウェンの秘部に密着するほど腰をぐんっと突き入れる。そうすると、先端が再奥の柔らかな窪みにはまった。途端にエウェンが足を硬直させ、蜂蜜色に染まった喉をのけぞらした。

「ひ、ぅ、――っ」
「なあ、どのくらいぶり?」

 ぴったりとくっつけたまま、こねるようにゆっくり腰を動かす。先端を咥え込んだ奥はビクビクと痙攣しながらも、懸命に先端へ吸い付いてくる。

「あぁ゛っ! ぐりぐりすきぃっ、りう゛くんっ、とんとんして! お、奥、とんとんしてぇ!」
「してやるから、教えてくれ」

 緩急をつけてわざと乱暴に突き上げれば、奥から溢れた濃い蜜がべったりと先端へまとわりついてきた。上下に揺れるエウェンの中心にあわせて、ねっとりとした黄金色の蜜がリヴンの腹やエウェンの胸元に散る。
 荒々しい腰使いのせいか、じゅぽっぐぽっと淫靡な音が部屋に反響する。エウェンは眉を下げ、とろけきった声で叫んだ。

「は、はじめてっ、咲いた日…以来っ! ぁ、りう゛くん、すきっ! りう゛くん、もっと…、もっとしてぇっ!」

 エウェンの答えにリヴンの心は一気に軽くなった。
 つまり、組み敷かれた時もそれ以降も、どんなに快楽で壊されようとエウェンの花は咲かなかった。だが、リヴンとのセックスでは咲かせた。
 それはどんな言動よりも明確なエウェンの心で、エウェンがいかに自分を好きであるかの証明だった。

「エウェン…、エウェンっ」

 後遺症の影響ではなく、自分を好いているから求めてくれる事実に目の奥が熱くなる。
 エウェンの膝を抱え直しすと、今までほかの男に抱かれた記憶を塗りつぶすように、エウェンにねだられるまま奥を刺激した。

「りう゛くん、きもちいぃ! すき、すきっ、りう゛くん、あ、いっちゃぅ、とまんなぃっ!」

 エウェンの琥珀色の瞳がこれでもかと涙で濡れ、とろけきった甘い声が必死に伝えてくる。リヴンも脳が沸騰して溶けるような錯覚を覚えながら、抱える太ももに力を込める。

「俺も、好きだっ……エウェン、今度は、奥に出すからなっ」

 興奮しすぎて乱暴な腰使いになっても、エウェンはかまわないのだろう。小さく頷き、シーツを強く握りしめた。
 その手に気づくとリヴンは太ももから手を離し、覆い被さった。エウェンの手に汗ばんだ手を絡め、シーツへ押しつける。
 そして、吸い付いてくる奥へ押し潰す勢いで先端をくっつけると、二度目の熱を放った。

「ぁう゛、~~~~ッ!」

 リヴンの腰に絡みついたエウェンの足に力がこもる。体を硬直させ、蔓草の髪がリヴンの腕や体に巻き付き、エウェンの手が握り返してくる。
 エウェンの大事な秘所を自分の子種で満たす実感に興奮と充足感がリヴンの心を潤していく。

「は、ぁ……」

 二度目の熱を出し切れば、ゆっくり深呼吸をした。リヴンの下で、絶頂の余韻でとろけているエウェンに気づくと、思いっきり抱きしめた。そうすれば、互いの体についたエウェンの蜜がリヴンの体にねっとりとまとわりついた。
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