銀貨一枚と引き換えに

天霧 ロウ

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 まだエウェンの中にいれていたいが、エウェンの負担も考えるとそうもいっていられない。もどかしく思いながら中から引き抜くと、横に寝転んだ。
 エウェンに身を寄せ、腕の中へ抱き寄せる。

「エウェン、ありがとな」
「それは、僕のセリフだよ」

 余韻が引いたようだ。エウェンの手がリヴンの頬へ触れると、目尻を下げて笑いかけた。ついで徐々に赤から青緑に戻っていく髪が緩慢な動きでリヴンの頭や背中をくすぐるように撫でる。
 リヴンもエウェンの足へ足を絡めかえせば、くすぐったそうにエウェンは笑った。

「これで、僕たちは本当に繋がったね」
「そうだな。……なあ、エウェン」
「どうしたの、リヴくん?」

 汗をかかないエウェンの体はサラッとしてさわり心地がいい。エウェンの体を撫でながら、花が咲いている髪を手に取った。

「植物種は、どうやって妊娠するんだ」

 手に絡みついてくる髪と花へキスをする。
 以前聞いた時は、秘密と返された。推測の域ではあるものの、その方法が今ならわかる。それでもやはり、エウェンの――愛する人から直接知りたい。
 エウェンをチラッと見れば、エウェンの顔は煮詰めた蜂蜜のごとく濃い黄色に染まっていた。

「なんでそんなこと聞くの?」
「前、秘密って言っただろ」
「そ、そうだけど……」

 エウェンは目を伏せ、睫毛を小さく震わせた。髪からのぞいている魔物特有の尖った耳先まで濃い黄色に染まっている。

「それを聞く意味、リヴくんわかってる?」
「わかってる。だから、聞いてるんだろ」

 エウェンを抱き寄せ、唇へキスした。

「んぅ、ぁ」

 舌を優しく吸った後、そっと離して見つめ合う。やがて、エウェンは眉をハの字にして上目遣いで見上げてきた。

「花が咲いている間、一日一回奥に精液を注いでもらうこと……。孕むと、花が枯れた頃に種を産んじゃう」
「種を産んだ後は?」
「地面に植えて土の中で胎児期を過ごすんだよ。新芽が出て、それが少しずつ伸びて、土の中でどんな成長をしているか形作っていくんだよ」
「へえ。それじゃあ、明日もしっかりださないとな」

 エウェンの腹にこびりついた蜜はすっかり乾いていた。それを指先でそっと剥ぎ、エウェンの腹をそっと撫でる。エウェンの髪が激しくうねり、エウェンの目がこれでもかと見開かれた。

「リヴくん、自分が何言ってるかわかってる?」
「この花、あとどのくらい咲いてるんだ?」

 先ほど剥いだ蜜の塊を口に含みながらエウェンを見つめる。エウェンの髪が小さく揺れ動き、目を瞬かせた。

「五日くらいかな。先に言っておくけど、明日には学校に帰るから来年まで我慢だからね」
「なっ」

「なんでだよ」と言い切る前に、エウェンの唇が唇へ押し当てられる。やんわりと食み、薄い舌がリヴンの舌をなぞった。
 蠱惑的な誘いに体が火照り、またエウェンと一つになりたい気持ちがわき上がってくる。すでに半分ほど立ち上がっているリヴンの高ぶりへエウェンも腰を押しつけてくる。

「あのね、僕の花はリヴくんが一緒にいるかぎり、いつだって咲くんだ。だから、リヴくんは焦らなくていいし、僕もリヴくんが『大人』になるまで待つから」

 エウェンの腕が背中に回り、抱きしめてくる。植物種特有のしなやかさで蔓草の髪がエウェンごとリヴンを包む。全身から香る爽やかさと喉奥まで絡みつくような濃厚な甘い匂いがより部屋を満たす。
 リヴンは優しく微笑むエウェンをじっと見つめた後、男らしい眉を下げて「わかった」と返した。

「けど、その日がきたら覚悟しろよ。一日一回じゃ、済ませないから」
「いいよ、いっぱい愛し合おうね」
「ん」

 からかいのこもった甘い声に、リヴンは短く頷き、思いっきり抱きしめた。そして、ようやくやってきた心地よい疲れに、二人は穏やかな眠りについた。
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