銀貨一枚と引き換えに

天霧 ロウ

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23 エウェン視点3

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 翌朝、どう切り出すか悩むエウェンに対し、朝食中にリヴンが向かいに座っている父、母、ケリックの顔を見た後、切り出した。

「あのさ、家の裏手に種を植えていいかな?」

 前触れもない切り込みにエウェンはぎょっとするものの、ケリックがすぐ食いついた。

「種? なんの種?」

 目玉焼きトーストごと食べているケリックが眉を思いっきり寄せる。両親も気になるのだろう。母はハーブジャムをたっぷり塗りながら微笑んだ。

「果物? それとも、お花?」
「えっと」

 あたりまえな反応にリヴンも子供と言い出しにくいのだろう。
 予想していた展開だ。隣でハーブソーダを飲んでいたエウェンはテーブルの下で手を握った。
 このままリヴンに全部任せるわけにはいかない。そもそも、人間のリヴンより自分の口から説明した方がわかりやすいだろう。
 核が緊張で魔力を生み出す。急速に巡る魔力を落ち着かせるよう一つ深呼吸をし、家族をまっすぐ見つめて告げた。

「僕たちの子供です」
「子供? 種が?」

 目玉焼きトーストを咀嚼しながらケリックが怪訝な顔をした。
 あたりまえの反応だ。それでも、いざ言われれば、人間との生態の違いを突きつけられてしまう。
 食事を終え、様子を見ていた父はコーヒーを飲んでいた手を止め「ああ、そういうことか」と鷹揚に頷いた。

「リヴンがエウェンくんと一緒に六日間休みをほしいと急に言ってきたからなんだと思ったら、そういうことだったのか」

 父の発言に、母も合点いったのだろう。ハーブジャムを塗ったトーストを食べ終えた母は頬を紅潮させた。

「あぁ、なるほどね! やだっ、リヴンったらなんでそういう大事なことは先に言わないの? エウェンくん、がんばったわね」

 エウェンを気遣ってくれる母に鼻の奥がツンと痺れる。いまだに状況がわからないケリックは首をかしげた。

「え、なに? なんで二人とも納得してんの?」
「エウェンくんは植物種だぞ。植物種は種類によって子作りの期間が違うんだ。そして、彼らは懐妊すれば種を産み、その種を地面に植える。種はやがて胎児になって自ら地面からでてくるが、それまで植物のように育てるんだ」
「へえ、植物種ってのはだてじゃないんだな」
「お前はもっと共生学を学びなさい」

 父がため息と共に、ケリックの頭を軽く叩くが、ケリックはその手を避けた。

「しょうがないじゃん。こんなど田舎で魔物と関わる事なんて滅多にないんだし」
「うちの宿は魔物のお客さんがたくさん泊まるようになっただろう。まったくお前ときたら」
「あー、俺。用事思い出したからもうでないと」

 ケリックはココアを飲み干し、勢いよく立ち上がった。部屋を出る手前、肩越しにリヴンとエウェンを見ると、小さく鼻を鳴らした。

「植えるなら日当たりがよくて、水はけがいいところにしろよ」

 そういってケリックは今度こそ、父の説教から逃げるように出て行った。
 不器用ながらもしっかり産まれてくる甥の心配をしてくれるケリックの優しさは学校で再会した頃のリヴンを思い出す。懐かしさでエウェンは頬が緩むんだ。
 母は目を輝かせながら、少し身を乗り出した。

「ねえ、埋める前に私たちにも見せて!」

 隣に座るリヴンへ目配せすれば、リヴンも頷いた。

「この子だよ」

 リヴンが懐からハンカチをとりだすと、そっと広げる。両親は艶々した胡桃大の種を目にすると、感心した様子で頷いた。

「本当に種なのね。この子を土へ埋めたら子供になるなんて不思議ね」
「埋める前に、土壌調査を頼むべきか?」

 真剣に悩んでいる両親に、エウェンは目尻が熱くなった。
 頭でわかっていても、自分たちの子供が種だと見せたら、嫌悪はしなくても困惑すると思っていたのだ。それはリヴンも同じ気持ちだったようだ。
 テーブルの下でずっと握っていたエウェンの手をリヴンが力強く握りしめた。エウェンもそっと握り返し、髪で背中を撫でた。
 すっかり盛り上がっている両親に、リヴンが時計を確認すると言った。

「気持ちは嬉しいけど、埋める場所はもう決めてるんだ。な、エウェン」
「うん、すみません……」

 両親へ頭を下げれば、母が大きく手を振った。

「私たちの方こそ、勝手に盛り上がってごめんね! 植える件だけど、断るわけないわ! 私も様子をみたいから絶対植えてね!」
「ごめんな、リヴン、エウェンくん。孫ができると思うと、ついはしゃいでしまった。おっと、そろそろ開店の時間だな」

 父が照れくさそうに頭を掻くと、残っていたコーヒーを飲み干した。食べ終えた皿を片付け「それじゃあ、仕込みに行ってくるよ」と厨房に行った。
 母もコーヒーを飲み干すと、カップを片手に立ち上がった。

「お父さんも言ってたけど、埋めたら絶対場所を教えるのよ?」
「わかったよ」
「はい、絶対に教えますね」

 エウェンが琥珀色の瞳を潤ませて返せば、母は腕を組んで「それでよろしい!」と満面の笑みを浮かべた。そして「私も行くわね」と笑って出て行った。
 朝食を終えた二人は宿の裏手に向かった。
 一緒に土の様子を確認した後、庭の真ん中から少し外側にずれた――朝露が残る場所にした。朝露を吸って柔らかな土を二人で掘った。

「それじゃあ、いれるぞ」
「うん」

 リヴンがハンカチから取り出した種をそっと置く。
 はじめて産んだ種。リヴンがエウェンを求めてくれた証。名残惜しく思いながら、ゆっくり二人で土をかぶせ、軽く土をおさえる。

「どのくらいで、でてくるんだろうな」
「この土壌ならだいたい五十日かな。明後日には芽がでるよ」
「早いんだな」
「ここはオーラティス山脈の霊脈に近いから土も栄養も豊富だからね。土壌がいいと種の生長もいいんだよ」

 エウェンが髪を揺らしながら返した。柔らかな日差しで照らされる土を眺めながら尋ねた。

「そうだ、名前。リヴくん、なんかいい感じの名前ある?」
「いくつか候補はあるけど、エウェンはどうだ?」

 リヴンはよほど楽しみだったのだろう。そのことが嬉しい反面、種を産んだにもかかわらず、親の自覚がまだ湧かない自分を薄情に感じ、同時に恥ずかしくなった。
 目を伏せて白状した。

「全然浮かばないや……」
「じゃあ、一緒に考えればいいだろ。そうだな、俺が考えたのは――」

 リヴンがあげた名前候補を一通り聞いた。おかげでようやく一つか二つ名前候補らしいものが浮かんだ。だが、最初に贈るものというのもあって、中々決められない。
 それからはあっという間だった。両親はもちろん、ケリックも文句を言いながら様子を見に来た。土から伸びた新芽はすくすく育ち、最初は胎児を象っていたが、四十日を過ぎた頃にはすっかり丸まっている幼児の形だ。
 そして、五十日目の今日。幼児の形をしている芽は樹液をぎゅっと固めたような琥珀色に染まっていた。

「この胎児の形をした芽が光の粒になって消えると、地面からでてくるんだよな」
「そうだよ。ここの土壌は素晴らしいから僕みたいな蔓草系統じゃないのは確かだね」

 自分が生まれたのは、邪竜が住んでいたとされるディーケ山脈の麓にある森だ。そして、その森は、妖精の兄妹が住んでいたと言われている。
 本来なら豊かな土壌で育てば、花系統が生まれる。だが、エウェンは花ではなく、まるで森に人が入るのを阻む蔓草だった。
 無自覚のうちに自虐したエウェンをリヴンが抱き寄せた。思わずリヴンを見上げれば、ふだんは他者を寄せ付けない厳つい顔が慈しみに満ちた笑みを浮かべていた。

「俺はエウェンが蔓草系統でよかったけどな。それに俺たちの子だ。どんな系統でもかわいいに決まってる」

 リヴンが頬を緩めれば、鋭い目尻と男らしい眉が下がる。エウェンしか知らない柔らかな笑顔だ。
 エウェンも張りつめていた頬を緩めると、リヴンの胸へ頭を預け、蔓草の髪でリヴンの頭や背中をつついた。

「リヴくんはすっかりパパ気分だねえ」
「お前はそうじゃないのか?」
「僕は……まだ、親になった実感は湧かないかなあ」

 種を植えて毎日様子を見ていたにもかかわらず、やはり親になるという実感がない。大事に育てたものの、目の前のできごとが他人事のようだ。
 素直に言えば「そうか」とリヴンは頷く。

「じゃあ、子供がでてきて抱っこしたらエウェンは実感するかもな」
「そんな単純なものなの?」
「そういうもんだ。大丈夫、あんなに突っぱねてた俺を好きで居続けてくれたお前なら、絶対実感する」

 安心させるように額や頬にキスをしてきた。温かな唇はくすぐったくて、思わず笑ってしまう。穏やかな茶褐色の目とあえば、どちらとともなく顔を寄せた。
 あと少しで唇が重なりそうになった時、視界の隅で琥珀色の光が強く瞬いた。
 二人でそちらへ向けば、宙で幼児の形をしていた芽がもう一度瞬き、光の粒となって空に昇っていく。ついで地面がボコボコと盛り上がった。
 エウェンは考えるより早く、盛り上がっている土をかきわけた。そうすれば、ほんのり緑がかった小さな白い手と土だらけの顔が突き出た。

「リヴくん、でてきた!」
「あぁ!」

 土まみれの子供が必死に地面から這い出てくる。エウェンは子供を抱き上げていた。幼児だからかずしっと重い。土の温度をまとった体はほんのり温かく、子供特有の柔らかさを持っていた。
 ドキドキしながら、頭や顔についている土を払ってやれば、垂れ目の影響でおっとりとした印象だ。

「この子が僕たちの子供……」
「植物っていうわりには、髪が少し鉱石っぽいな」
「オーラティス山脈の影響を受けたのかも」

 水晶を糸状に束ねたような薄緑色の髪はやや硬質的に見える。角度を変えるたび、髪の内側に虹がかかりキラキラと輝く。
 子供はエウェンの髪を目にすると、眠そうな目をゆっくり見開いた。

「ふよふよ、ふよふよ」

 エウェンの髪が揺らいでいるのが気になったのだろう。子供は小さな手を精一杯伸ばして蔓草の髪を握ろうとした。

「わ、握っちゃだめだよ!」

 慌てて蔓草の髪を掴まれないようにするものの、子供はぎゅっと握りしめてしまった。

「ふよふよ、いっぱいついてる」

 どうやら毒の耐性はついているようだ。子供の手が無事な様子にホッと息を漏らした。蔓草の髪でくすぐっていると、子供はふにゃふにゃと笑った。その笑顔を見れば、核がじわじわと温かくなった。
 二人の様子を見ていたリヴンが、ためらいがちに言ってきた。

「エウェン、俺も抱っこしたい」
「いいよ」

 隣でソワソワとしていたリヴンへ子供を渡す。子供はきょとんとした顔でリヴンを見上げた。リヴンは慈しみに満ちた目で子供を抱きしめ、子供の額に額をこすりつけた。
 その光景にエウェンの核はさらに熱くなる。リヴンが子供をあやす姿を飽きずに眺めていると、リヴンが「あ」と呟いた。

「エウェン、この子の目を見ろ」
「目?」

 子供の顔をのぞき込めば、二人を映す無垢な瞳は琥珀色と茶褐色の目をしていた。見覚えしかない色にエウェンは言葉を失った。
 リヴンが片手で子供を抱えると、エウェンを抱き寄せた。

「俺たちの色を半分ずつ宿してるぞ。人間と魔物の混血だからかもな」
「こんなこともあるんだ……」

 共通点を見つけた途端、ますます子供に親近感が湧く。核が大きく打ち、魔力が駆け巡る。リヴンが差し出してきた子供を改めて受け取ると、滲む視界で子供を抱きしめた。子供はくすぐったそうに笑い声をあげた。

「この子は僕たちの子供なんだね」
「そうだ、俺とエウェンの子供だ」

 リヴンの手がエウェンの腕の中にいる子供の頭や背中を撫でた。
 感極まっていると、宿の裏手から忙しない足音が近づいてくる。

「兄貴、さっき光ったよな!」
「こら、ケリック。落ち着きなさい」
「そういってあなたも厨房から飛び出してきたじゃない」

 ケリックと両親が二人の傍へやってきた。エウェンとリヴンは立ち上がって振り返った。一番についたケリックへ腕の中の子供を見せた。

「この子が、僕たちの子供だよ」
「うわ、すげー派手な髪。でも、兄貴とエウェンさんと同じ目色じゃん」

 ケリックが感心した様子で子供の頬をつついた。
 母は土まみれの状態が気になるのだろう。「布を持ってきたわ」と布を広げた。母に手伝ってもらい子供を包めば、母は子供の顔を見て微笑んだ。

「まあ、なんて可愛い子! 男の子と女の子、どっち?」
「そういえば、どっちだろう」

 改めて確認すれば、未熟ながらもきちんと雄の象徴がついていた。確認を終えたエウェンは母へ笑って返した。

「ついているから男の子です」
「そうなのね! じゃあ、あっという間に大きくなるわねえ」
「お腹空いていると思って、新鮮な水を用意しておいたぞ」

 父が水の入っている哺乳瓶を差し出した。哺乳瓶を受け取り、腕に抱えている子供の口元へ差し出すものの、子供は不思議そうに首をかしげた。
 父は頬を掻くと呻いた。

「飲まないな」
「地面から生まれた子だもの。哺乳瓶じゃなくて、リヴンやケリックが小さい頃、薬湯を飲む時に使ってた……ほら、注ぎ口が細長い急須みたいなアレでなら飲むんじゃない?」
「ああ、薬飲み器か。確かにそれなら飲むかもな。よし、準備してくるよ」
「あなただけだと心配だから私もついていくわ。あなたたちも、早くくるのよ!」

 リヴンとエウェンとケリックへ母が告げると、早足で踵を返した父を追いかけた。
 残ったケリックは飽きずに子供の頬を優しくつつきながら、二人に聞いてきた。

「で、こいつの名前は?」

 二人は顔を見合わせると、子供を、ついでケリックを見て答えた。

「ベルーリュだよ」
「へえ、いい音じゃん。よかったな、ベル」

 さっそくあだ名をつけて可愛がっているケリックに二人は頬を緩めて笑った。

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